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 408 大哲のかぶきて逝けり寒昴* [文芸(短歌・俳句) 時事]

 


随想コラム「目を光らせて」NO.408「朝日歌壇・朝日俳壇から」     


  俳壇 期間2019.2.3~2.10


      大哲のかぶきて逝けり寒昴* 


   *題目: 朝日新聞2019.2.3 


       物江里人さん(柏市)の入選作。


         アオウ ヒコ                   


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        鉛筆画家 木谷 啓の鉛筆画集:


          「ありがとう。おもしろかった。」から


            作品 その19 DSC-194、jpg 


「変な題名の画集になりました。才能が不足しましたが、まあこんな


ものでしょう。すべては天帝の計画通りです。長寿をいただいたので


絵を描ける間は描き続けられるといいなあと思います。


 皆様、ご多幸を」(木谷 啓


 


       


        朝日俳壇 2019.2.3


                


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       新宿御苑 12 dsc-0035

                   

 年の豆焼きつくしけり焼夷弾


     (東京都)片岡マサ


 


  紐にきた帯にきたきた白魚汲む           


     (津市)中山いつき


 


 二月の季語(春)を繰ると早い順に白魚(しらうお)があり、同じ


く春の季語の猫の恋の次に収録されているのも何かの因縁か。いづれ


も、厳しい冬の寒さに鬱屈していたおのこのいのちが春の到来ととも


に弾けるさまを喜んでいる。和服に包まれた細くて白い女体を手にす


るには自ずから順序があろう。まずは帯の紐解き。これはゆるりと、


次の帯解きはせかせかと。(本句ではその性急さをきたきたきた


表現)ようやく手にした白魚を素早く飲み込めば、しばし口中で撥ね


て弾けて、そのうち静かになりまする。


 


 ラグビーの大男たち笛に泣く             


   東京都) 金子文衛 


 


 つい最近国際ラグビーの試合をTVで観戦。最終時点で日本軍は3


点リード、これを守り切れば勝利となる局面。相手の大男どもの猛攻


を受ける。トライを許すまじと必死に日本チームの大型選手もタック


ルを連発。そこで、審判の終了の笛。大差をつけての試合終了ならば、


双方納得だろうが、僅差の場合はどちらかのチーム大男が笛の音と共


に泣く。


 


  探梅の先ず青空を見上げをり             


    高松市) 白根純子


 


 梅の花は白梅紅梅ともに径が小さい。花を観賞するとき、天を仰ぐ


ようになるので、曇天か晴天かで探梅の気分が分かれる。だから、探


梅に入る前に、今日の空はどうかしら、と天を仰ぐのです。


 


                


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                  新宿御苑 13 dsc-0036                                   


                                  


  光年の星の近さや冬銀河             


   神戸市) 高橋 寛


 


 つい最近、電波望遠鏡の国際的協力によって、ブラックホールの可


視化がなされた。今まではアインシュタインの学説によるブラックホ


ールの存在が広く信じられてはきたが、その形状や規模などは各人の


想像に任されていた。物理学の高名な学者が言うに、銀河のどこかに


ポッカリと穴があいていて、その中には想像を絶する重力質量物質が


あり、それに吸引されて光や何もかもが吸い込まれはするが出てこな


い。これがブラックホールだと説明してきた。「吸い込まれた光や物


質は収蔵され、どこかに収容され続けるのか、その先はどうなる?」


の問いに明確に答えられる人は地球上には誰一人いない。その中で、


ブラックホールが撮影され可視化されたことは地球の歴史始まって以


来の破天荒な文明的偉業であった。地球人は挙って「ブラックホール


可視化万歳!」と叫ぶべきであろう。


 


 幸いなことに太陽系の銀河の近くにブラックホールは存在しない。


人は夜の空を見上げては、そこに無数の星が輝き、瞬くのを見る。こ


の星々は地球に近くに存在する恒星で比較的若い光年で地球に姿を見


せている。冬銀河の冴えは地球そのものがまだ若く、若い光年の星に


囲まれているからであろう。


 


  大寒や閉づることなき阿修羅の眼


   大阪府熊取町) 森田恵子


             


 阿修羅は荒々しい性情を持つことから、天上の神々に戦いを挑む悪


神とされたりするが、仏教では天竜八部衆の一として仏法の守護神と


される。(広辞苑)


 大体、寺院に参詣する際、初めに乗り込むのが山門である。その片


側もしくは両脇に、荒々しい形相をした阿修羅の像が構えている。今


は大寒、寒さを堪えてお詣りに行けば、山門の阿修羅像に出合う。い


つもくわっと目を見開き参詣者を睥睨する眼に出合う。


 


                                          


 大哲のかぶきて逝けり寒昴 


    柏市) 物江里人


 


 これは故梅原 猛氏を悼む句である。あの大哲学者であった梅原 猛


さんがこの冬亡くなられた。いつも清新勇猛の気概で、誤れる政況や


時事への忠言をなされたが、その晩年には何を思ったのか、新歌舞伎


にのめりこみ脚本、脚色、舞台、音、衣装等に新風を吹き込み、晩


年は新歌舞伎に没入され(かぶきて)逝かれました。


 


                     


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        新宿御苑 14 dsc-0038

 


 初日出づ兜太の頭かと思ふ 


    向実市) 松重幹雄


 


 何かに没入すると、ものみなそれかと思うものである。初日の出を


見て、わが俳諧の大師匠「兜太」の頭の恰好」に似ているなあ、と思


うのか。初日の出で兜太先生、夕陽を見てこれまた兜太先生。ありと


あらゆる生きと逝けるものをわが俳諧の先達、兜太の頭に結び付けれ


ば、いつまでも忘れることはないだろうと。


 


 梅一輪大気一気に緩びけり 


    枚方市) 中嶋陽太


 


 誰でも知っている俳句に松尾芭蕉の弟子服部嵐雪の「梅一輪一輪ほ


どの温かさ」がある。これは梅の花が一輪一輪と時間の経過を経てほ


ころび暖かさを招く自然の摂理を感じさせるが、この新句は梅一輪が


ほころびるなり、大気が一気に緩みました、と一瀉千里の勢いでの春


の到来を描く。


 


 


     朝日俳壇 2019.2.10


       


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                       新宿御苑 15 dsc-0039


 


 落ち葉踏み八十路の音を踏んでをり 


    鹿児島市) 青野迦葉


 


 落ち葉が降り積んだ道を散歩がてらに歩んでいる。私は既に八十路


、体躯も細り、体重も軽い身だ。落ち葉を踏む音も、それなりの音を


立てるだけ。若いころの歩行のように、落ち葉を蹴散らすなど騒音歩


きとは縁遠い、落ち着いた静かなものです。


 


 背を正し老いを楽しむ冬帽子


    宝塚市) 錦織久夫


 


 冬帽子を被り、それなりの服装をして外出するからには、背をしゃ


んと正して老いを楽しむ気分でなくてはなりません。          


                     


 奥飛騨に氷柱薙ぎてふ一仕事


     (高山市)直井照男


 


 奥飛騨地方の冬は厳しく、ものみな凍るの風情が一貫している。そ


の奥飛騨にも春の訪れはあるもので「氷柱薙ぎ」という一仕事が待っ


ている。屋根の軒から垂れて横に連なる氷柱を、それこそ薙ぎ払うよ


うに撃ち落とす力仕事を済まさなければ奥飛騨に春はやってこない。


 


  池の鯉四温の影を濃くまとふ               


     (富津市)三枝かずを


 


 冬の間、池の鯉は深い寝所で寝静まって過ごす。池の見廻りに来る


人の目には触れない時期である。その寒季も三寒四温の季節を先頭に


春がやってくる。池の底で長い眠りを終えた鯉はやおら水底から浮上


し池を周回し始める。池の見廻り役は、この日嬉しくも鯉の姿を水面


に見る。そして彼は思う。あの三寒四温があったればこそ、鯉は眠り


から覚め、水面へと浮上したのだ。春の魁の四温の影を色濃く纏って


いる。


 


               


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        新宿御苑 16 dsc-0040

                  


 


もがり笛母の咽喉から聞えくる   


    (川口市)青柳 悠 


 


 もがり笛(虎落笛);冬の烈風が柵、竹垣などに吹き付けて笛のよ


うな音を発するのをいう。(広辞苑)虎落笛の音はひゅうひゅうと強弱


をつけた音として聞こえてくる。老齢を迎えた母の咽喉からこの音が


絶えず聞こえるようになった。ひゅうひゅう。


 


 ★原発をなほも輸出の寒さかな


     (前橋市)荻原葉月


 


 選者へと春の怒涛の六千句


     (仙台市)柿坂伸子


 


 極寒の季の句作はほかの季に比べ少ないのかも。しかし、春至ると


なれば、俳人の蠢動は逞しく朝日俳壇への投稿は春の怒涛の如くその


数、毎週約六千句に及ぶという。常連は投稿の数を意に介することな


く飽かず研鑽の作品を送り続けている。


 


          ★


 


  ( つづく → 目を光らせて NO.408-2 


 


             (2019.5.15) 





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 408-2  明日無しと言ひつつ百寿冬紅葉* [文芸(短歌・俳句) 時事]

随想コラム「目を光らせて」NO.408-2「朝日歌壇・朝日俳壇から」     


   俳壇 期間2019.2.17~24    


   明日無しと言ひつつ百寿冬紅葉 


   *題目: 朝日新聞2019.2.17


          酒井大岳さん(群馬県東吾妻町)の入選作。


          アオウ ヒコ


                            


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    水彩画家 酒井 健の作品から 「スイートピイ」


 


           190319 SweetPea、jpg


 


 


  初夏を思わせる陽気に戸惑いを感じます。


 


 松田聖子が歌っていた「赤いスイトピー」の画を送ります。


                    (酒井 健)


 


 


     「朝日歌壇・朝日俳壇から」(趣旨)


 


 朝日新聞の歌壇・俳壇の入選作の中から最近の事象を鋭い表現で切


り取った作品を歌壇・俳壇交互に選び筆者がコメントを付けています。


コメントは文芸上の範を越えることがあります。作品の頭にが付


いた作品は、時の政権が推進する前のめりの右傾化路線や平和憲法を


無視し、国会の存在をないがしろにするさまを放っておけぬとする市


民の声であり、これを矯める叫びでもあります。これらの作品は、こ


こでは個々の作品の文芸上の軽重を問うことなく全ての作品を網羅し


、本稿に採録しています。


 


 これらの作品に対しては投稿者の真摯な叫びと呼び掛けに読者の耳


素直に従うべしとして、コメントはつけておりません。


 また、文中敬称は省略しています。(筆者)


 


 


      朝日俳壇 2019.2.17


          


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              新宿御苑 17 DSC-0041


              


 浮浪児を埋火のごと忘れざる


   (越谷市)奥名房子


 


 終戦の頃、空襲で焼け出され、家族とは離れ離れになった浮浪児が


都会にあふれた。戦災孤児とも称された。自分の力で生き延びて行か


ねばならず、多くの子が進駐軍兵士の靴磨きで糊口を凌いだ。私はそ


のいたいけな姿を忘れることがない。冬の火鉢の灰に埋めた炭火のよ


うに、時折、火箸で埋もれ火を搔き出してはあのころを思う。 


 


 海山と書く箸紙の三四枚


   (奈良市)名和佑介


 


 これは旧い日本文化の風習の一つであるので、意味が分からず難渋


されるかもしれない。まず箸紙である。正月や祝い事の宴席の料理に


は祝いの宴席に出る各人に添えられる祝い箸(割り箸が祝い袋(箸紙)


に入れてある)の裏にはその席に座る縁者の氏名が書いてある。宴席


料理の数を取り仕切る係はこのようにして、出席者と宴席料理の数を


合わせるようにしているが、なにかの手違いで料理の数が足りない事


態が起きる場合がある。その時のために箸紙を三四枚余分に残し、そ


の裏には海山と記入しておくという。「お客が増えたの?じゃ、この


海山さんの宴席を作ってね」という具合か。


 


                    


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          新宿御苑 18 DSC-0042


 明日無しと言ひつつ百寿冬紅葉


   (群馬県東吾妻町)酒井大岳


 


 もうこれほどに齢をとったからにはいつ明日なしが来るかもしれま


せんなと言いながら、いつの間にか百歳を寿ぐ日。外には赤く染まっ


た冬紅葉の十一月が美しい。百寿めでたし。奥さんからの招聘も少な


くなったご様子をお歓び申すべきかどうか、冬紅葉がお好きでしたね。


                 


 熱燗に音なき怒濤ありにけり


   八王子市) 額田浩文


 


 磯に砕け散るように寄せる冬の怒涛、あの激しい耳を弄する音は忘


れられない。今、熱燗をつけてぐいと一飲み、口から咽喉に広がるあ


の怒涛の広がり。効きますなあ。音もなく。


 


 


 勝独楽に乱れぬ余力ありにけり


   (倉吉市) 尾崎槇雄


 


 競い合う二つの独楽。強烈なロイソ引きがもたらす独楽の強回転。


対ての独楽を吹っ飛ばすは鎧袖一触の力を持つ我が勝ち独楽に幸あ


れ。対ての独楽を跳ね飛ばした瞬間こそ、自体も瞬時斜めに傾いだが


、十分余力があったのですね。芯をまっすぐ立て直して澄みに澄む余


裕があった。何事も乱れぬ余力を持つに如くなし。


 


 死病とは知らずに見舞ひたる寒さ


   (熊本市) 内藤悦子


 


 友が入院したと仄聞して、お見舞いしなきゃと軽く思って、出かけ


たのはいいが、病院の友の口から「もう、あまり先がないのよ」と知


らされた。まさか、死病に侵されているとは露知らず、どう慰めてい


いか判らず、そのときの思いは言いしれぬ寒さが私を包んだことだ。


友には悪いが、こんなあやふやな気持ちでの見舞いになるのでは見舞


いをするでなかったとさえ思ったことだった。


 


 


            朝日俳壇 2019.2.24


                                                          


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                                                         新宿御苑 19 DSC-0043


                              


  焦せるほど芯のよく折れ大試験                  


     神戸市) 藤井啓子


 


 昔は試験に向かうときはよく研いだ鉛筆を5,6本揃えていったも


のだ。鉛筆の芯には硬い順にH、HB、Bがあったが試験にはやはり


HBが良かったようだ。Hは固いだけにポキッと折れることが多く、


試験場での焦りを代表することだった。今どきの受験生はシャーペン


に替え芯を入れて答案の記入をしているのかも。Hを入れている場合、


焦れば焦るほどポキポキ来るのかもしれない。シャーペンの芯は押せ


ば出るので、不具合はないのかもしれないが、次々に芯が折れれば、


焦りに焦るのかもしれない。要は大試験には、落ち着いて焦ることな


く、芯を折らずに運ばれたし。」である。


 


 溶けさうで溶けぬ薄氷裏通り                 


     白石市) 鈴木鮎子


 


この句は薄氷をうすらひと読ませることで粋な俳句になっている。日


の射さぬ裏通りの道に張った氷はなかなか溶けてくれません。


  


 高々と鷹を待つかに一樹あり


   栃木県壬生町) あらゐひとし


 


 この山には高々と空を舞う鷹の姿をしばしば見かける。森林の底に


棲息する生餌を求めて、鷹は高空を音もなく飛翔し続ける。その姿求


めて、上空を見上げる鷹好きがいる。その美しさをこよなく愛して已


まぬ人は、鷹が高空を長く舞い続けた後の憩い場、高樹はないか、と


探して已まぬ人でもある。ああ、ありましたね。鷹が翼を休めてくれ


るにぴったりの山の高所に、その一樹はありましたよ。


 


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        新宿御苑 20 DSC-0045


 己が句の目方計りつ春炬燵


   甲斐市) 高橋 正


 


 春炬燵に籠りながら句作に耽っている。これならばいい線行くぞ、


完成度はどうかねと自分が詠んだ句の目方を計っている。句の善し悪


しは目方で決まるではない事は重々知っているのだが。


 


 ★春一番異臭放つや国有地          


     東京都) 片岡マサ 


 


 兜太の忌飲んで号泣する弟子も


   熊谷市) 内野 修


 


 早くも金子兜太一周忌(二月二十日)、門下生が多数参集したらし


く、その模様が報告されている。師が豪放磊落であったことから、弟


子の嘆きようも号泣に至ったらしい。一人くらい号泣する弟子がなけ


りゃ兜太が泣くぜ、これでいいのだ、と高弟の報告はクールに。


 


 静けさは降り積む雪の音ならむ


   鎌倉市) 小椋昭夫


 


 しんしんと降り積む雪の夜は静かに尽きることは、東西の文献に数


多く記載されている。雪が降り、音が聞こえないのは雪が音をマッフ


ル(包み隠す)するから。また、寒気から人の首周りを暖めるのもマ


フラーであり、自動車のエンジンの音を消す消音器を(マフラー)と


言う。ただ、この作品における「静けさ」は降り積む雪の音であろう


としているが、これはマッフルでは説明できず、なんとも苦しい。


 


                    


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       新宿御苑 21 DSC-0047


 防人の立ちたる丘や鳥帰る


   合志市) 坂田美代子


 


 辺土防衛のために徴発され、赴任した防人が立っていた丘。いま、


その丘から渡りの鳥が北の辺境巣営地へ向けて旅立とうとしている。


人の歴史の変転と変わらぬ自然界の生き物の生きざまを見ている。


 


 尉と姥あふるる眼科冴返る


   霧島市) 久野茂樹


 


 能面の世界でいえば、尉(じょう)と姥(うば)、今様では老翁と


老女か。今、冴え返る(季語)二月の頃、眼科の病院へ行けばなんと


大混雑でありました。季節が早まって、三月の花粉症が早まって二月


に始まり、尉と姥の老眼に涙ぽろぽろが発現したらしい。


 


 かまくらに臀から這入る都会の児


   町田市) 佐藤隆市


 


 一度都会の児らを動員して雪国で「かまくら」を作らせたらいい。


その経験があれば、子供はかまくらに入るに尻から這入るなど無粋な


行動はしないはずだ。初めからかまくらへの雪積作業を経験させてお


けば、臀方向へ雪を運び入れる事が理に合わぬ」事を理解する。


 出来上がった「かまくら」に入るときも、入り口は自分の頭から持


っていくことを経験上身に着けた知識として持っている。


 


                 


 


                    (2019.5.15)  


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407 病院より戻った父の手を握る冷め行く熱の冷めきるまでは* [文芸(短歌・俳句) 時事]

  随想コラム「目を光らせて」NO.407「朝日歌壇・朝日俳壇から」     


  歌壇 期間2019.2.32.10


     病院より戻った父の手を握る


     冷めゆく熱の冷め切るまでは


 


     *題 目: 朝日新聞2019.2.10                      清水君平さん(徳島市)の入選作。


           アオウ ヒコ           


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           鉛筆画家 木谷 啓の鉛筆画集:


          「ありがとう。おもしろかった。」 から


           作品 その18 DSC-192.jpg


「変な題名の画集になりました。才能が不足しましたが、まあこんな


ものでしょう。すべては天帝の計画通りです。長寿をいただいたので


絵を描ける間は描き続けられるといいなあと思います。


皆様、ご多幸を」(木谷 啓)       


          朝日歌壇 201.2.3


 


                


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新宿御苑 01 dsc-0006

                      


 背に光負うて立ちたる我が影は霧に映りて山に真向かう


     (横浜市)せきあい子


 人と生まれたからには、こういう自然現象を一度は見てみたい、と


するのがブロッケン現象だというが、幸運にも作者はその真只中に影


を落とす幸運の主人公になられたようだ。この現象はなかなか見られ


ないというが「自分の背後から光が当たると眼前の霧に丸い虹が現れ


その虹の真中に自分の姿が映って見える」という自然現象のこと。短


い字数制限の中で、効率よく見事な表現がなされている。この現象は


特に早朝に限って起きるわけではなく、日中の遭遇の可能性もあるよ


うで、歌心のある山人は一つ傑作をものにして下さるように。


 


 白波の運ぶひかりを昇らせて水仙咲ける


    ふるさとの丘           


     (垂水市)岩本秀人


 あまり高くはない山に水仙がいっぱいに育っている場所がある。海


に面した温暖な土地が水仙の繁殖を促すのであろうが、作者は「白波


の運ぶ光を昇らせて」と明るく柔らかい言葉を選んでいる。


 


  猪の仔らの幼き被毛がやわらかに織りなす縞は


   木漏れ日を模す             


    丸亀市) 金倉かおる


 このところ猪の親はすっかり嫌われ者扱いであるが、仔はウリ坊と


呼ばれ親しみを持たれている。幼い仔の胴を包む幼い被毛は木漏れ日


のような縞模様に見えて可愛いものですよ、と優しい女性のご報告。   



02-DSC_0007.JPG               

新宿御苑  02 dsc-0007

 


「美しい国」には入っておらぬとみえ土砂を投げ込み


    美ら海殺す             


       掛川市) 村松建彦


   


少子化はどこまで進む防衛費過去最大は


       いつまで続く           


      大津市) 佐々木敦史


  


遠い先アメリカ軍が引き揚げても辺野古の基地は


    そのまま残る             


      敦賀市) 小島順一


             


 わが娘の嫁ぐときにと眠らせしワインをあける


    菜の花の夜             


      茅ヶ崎市) 大川哲雄


 いつ頃思い立たれてワインセラーに寝かされたのか。誕生と共にで


あればだいぶ長い眠りの時があったはずだが、当の父親にとってみれ


ば、えっもうその時期かい少し早くはないかい、であろうが、わが娘


の嫁ぐ日もきまり、菜の花咲く春の夜、眠らせていたワインを取り出


してめでたく祝杯を上げられたようです。なんとめでたい。


 


03-DSC_0010.JPG                                                   新宿御苑 03 dsc-0010


くっついて外遊重ねる昭恵氏の何も語らぬ


    にこやかな口             


      近江八幡市) 寺下吉則


 


  生きていてよかったと結ぶ日記帳百三歳の大晦日の夜


    茅ヶ崎市) 若林禎子             


 何よりも命永らえるために効果あるのは、日々綴られる日記帳と、


それをベースに詠まれる短歌の数々でしょうか。新年が来る度に今年


一年を恙なく終えて大晦日の最終ページに「生きていてよかった」と


書き記すを目途にしておられるようだから、寿命を司さどる何人と言


えども付け入るスキがないのかもしれない。


 


「寄り添う」と言うが虚しい辺野古沖濁りし海は


    もう戻らない             


      香芝市) 中村敬三


  


ベルリンの壁崩壊が平成の始まり終りは


    トランプの壁            


      高松市) 島田章平


                             


04-DSC_0012.JPG

新宿御苑 04 dsc-0012

                                       


  降り出した雪を呼ぶため子らは手を伸ばして冬の


    真ん中に立つ


     奈良市) 山添聖子


 吾子が胎内にいのちを授かったときから、羊水の中で泳がれ、腹壁


を叩かれ、蹴られた時期を過ぎて、今や母として、すくすくと成長す


る子の過程を目を細めて見つめている。その豊かな感性からは平易で


伸びやかな表現の歌が溢れ出て、子を優しく見つめ見守る女流歌人と


しての地歩を固めつつある。


 


 多喜二忌の二月を厭ひかなしみて八十七まで


      生きし母セキ


     埼玉県) 酒井忠正


 母御は多喜二の死を哀しみ、八十七歳までの間、口にされ続けてお


られたようだ。そういう家に日常を共にした息子の感慨は、母への畏


敬そのものであったようだ。立派な母御をお持ちなされたと感嘆する


一方で、母御を超える存在にはなれそうもない息子殿の嘆き節を聞か


されているようでもある。素晴らしい母御、セキ殿。 


                                                                             


            朝日歌 2012.10


              


05-DSC_0016.JPG                                       新宿御苑  05 dsc-0016

                                           伊予いよかん土佐の文旦阿波すだち讃岐うどんの


     四国蝶形


      (枚方市)山奈美江


 四国の地の讃を続ける人が、四国の産物、名物を列挙し、これらの


産出親こそ蝶の形をした四国でありますぞ、としている。四国蝶形と


いう表現は手垢のつかぬ斬新な表現のようです。


 


  宿題の音読聴きし妻の耳けふは挙式の謝辞を


    聴きをり              


      (西条市)村上敏之


 「お母さん宿題出たから私の音読聴いて」と言われ、ハイハイと耳


を澄ませた妻だったが、早くも今日は娘の挙式の日。娘から「挙式の


謝辞」の一部始終に耳を澄ませた。謝辞の内容に満足したらしく終了。


重畳なりしか。愛妻の聞耳信頼に足る。


 


  またひとつ語彙の増えゆく子を抱きて雪の降る夜に


    ペチカを歌ふ  


    (村上市)鈴木正芳  


 抱かれた幼子は、いぶかしげに抱き手を見上げ「パパ パチカ?」


「パパ ポチカ?」「ぺだよ、ペチカだよ。よく覚えてね」というお


父さんへ。「しっかり発音して下さらないと、間違い語彙が増えます


がな」


 


 理由なく存在を確かめるように泣くこともある


    赤子を見て知る


    (東京都)上田結香


 赤子は乳呑児と称されるように、母乳やミルクをひたすらにグイグ


イと飲み続け、満腹状態になると眠り、空腹になると目覚めて泣き叫


びお乳にありつく。ひたすらこれの繰り返しであると思われている。


だが、作者の観察では、空腹説ではなく、理由なく自分の存在を確


かめるかのように泣くことがある、という。すでに授乳の繰り返しで


体の部位に栄養が付き、脳細胞の充足があって命の源の脳から、体躯


のそれぞれの個所の発育具合を知るために赤子は理由なく泣く。鋭い


観察である。


 


             06-DSC_0019.JPG 


                          新宿御苑 06 dsc-0019 


                 


病院より戻った父の手を握る冷め行く熱の


    冷めきるまでは       


    (徳島市)清水君平


 父は病院でこときれていたが、すぐ自宅へ連れ戻った。だが、躰は


まだ温かい。ベッドに寝かせ、父の手を握る。いのちが退潮して行く


のが判る。お父さん、ありがとう。いのちの余熱が冷え切るまでは、


こうして手を握らせてください。あなたの命の熱が冷めきるまではこ


うしていますから。


 


 お注射の涙は乾く母の背でアイスクリーム


    の約束をして       


    (柏市)堀 千賀


 病院でのお注射の時は大きな声を挙げて泣き叫んだわね。お顔は涙


でグシャグシャ。でも、よかった。アイスクリームの約束をしたら泣


き止んでくれた。お母さんの背中で涙は乾きました。


 


 寒稽古白き足裏も翩翻と冷え切りし床


    蹴りゆく素足      


    (さいたま市)伊達裕子


 あるスポーツの寒稽古の模様を記している。この場所は床がある体


育館か。素足で、白い足裏を見せて床を蹴って動き回るというから剣


道の寒稽古であろう。観客の目には寒く冷たく見えることだろうが、


寒稽古の主は寒さなどは感じないでいるようだ。


 


                                                    ★ 


  ( つづく → 目を光らせて NO.407-2               


 


       (2019.5.01)


 


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407-2 室戸岬を金波打つとき御蔵洞にかすかに響くや般若心経* [文芸(短歌・俳句) 時事]


  随想コラム「目を光らせて」NO.407-2「朝日歌壇・朝日俳壇から」     


    期間2019.2.1~24


 


   室戸岬を金波打つとき御蔵洞に


 


    かすかに響くや般若心経 


 


     題 目: 朝日新聞2019.2.17


         大川哲雄さん(茅ヶ崎市)の入選作。


             アオウ ヒコ


           
190303Tropical Fish.jpg

           


       酒井 健 の水彩画  Tropical ish. jpg 190303


 


 


       今年は挑戦の年かもしれません。先に挑戦した人物画に続いて、


     なんと初めて熱帯魚を描きました。(酒井 健)


                    


                      


 


     朝日歌壇・朝日俳壇から」(趣旨) 


 朝日新聞の歌壇・俳壇の入選作の中から最近の事象を鋭い表現で切


り取った作品を歌壇・俳壇交互に選び筆者がコメントを付けています。


 コメントは文芸上の範を越えることがあります。


 作品の頭にが付いた作品は、時の政権が推進する前のめりの右


傾化路線や平和憲法を無視し、国会の存在をないがしろにするさまを


放っておけぬとする市民の声であり、これを矯める叫びでもあります。


 これらの作品は、ここでは個々の作品の文芸上の軽重を問うことな


く、全ての作品を網羅して本稿に採録しています。


 これらの作品に対しては投稿者の真摯な叫びと呼び掛けに読者の耳


素直に従うべしとして、コメントはつけておりません。


 また、文中敬称は省略しています。(筆者)    


 


 


    朝日歌壇 2019.2.17    


07-DSC_0021.JPG

新宿御苑 07 dsc-0021

 


戦争に「どちらでもない」はなかった 基地ある限り


   どちらかしかない


   (神戸市)加古裕計


 


 裏日本裏をうべなふ帰省して怒涛に吹雪く佐渡の荒磯に


   (箕面市)櫻井宗和


 故郷を離れていたが、しばらくぶりに帰省して裏日本の佐渡の荒磯


に立っている。怒涛に吹雪く磯の冬は凄い荒れようで、確かに裏日本


の冬は凄いと実感させられる。


 


 遠い日の父の病室に水仙は淡いひかりを残してゐたり


   (仙台市)小室寿子


 ふっと昔の日々に思いが飛ぶ。父が入院していていた病室に活けら


れていた水仙の花。あの水仙は淡いひかりを残していましたね。遠い


日の父がいた病室。そう長くないいのちを静かに養っていた父。活け


られていた水仙に淡いひかりが宿っていたのを、父のいのちのそれと


感じていたのでしょう。


 


長き戦後まだまだ続け自衛官の息子戦わず定年になる


   (松戸市)猪野富子


              


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新宿御苑 08 dsc-0027

 


室戸岬を金波打つとき御蔵洞にかすかに響くや


  般若心経


   茅ヶ崎市) 大川哲雄


 この歌には次の漢字にルビが振ってある。金波(きんぱ)御蔵洞


(みくらど)である。室戸岬に月光に照らされ金色の波が静かに寄せ


来る宵の刻、この御蔵洞(洞窟)の中では座して修行する空海が読む


般若心経の声がかすかに響いていたことでありましょう。と想念を働


かせている。ずしりと格調高い語感が継続する稀にみる作品。


 


 水分(みくまり)の祖母山(そぼ)の流れは魚を分く豊後に


  エノハ日向にアユを


   (大分市) 岩永知子


 この歌もルビを見てゆこう。水分(みくまり);山から流れ出す水


が分かれる所。「水配(みくばり)から来ている」。エノハ;榎葉、


ヤマメの方言。(広辞苑)土地の人には広く伝えられていることであろ


う。祖母山の水分(みまくり)の場所で二つに分かれた流れがそれぞ


れの魚を作り出していますよ。豊後にはヤマメ、日向にはアユを。


 


 介護とは負担であらうか恵まれし合一の時であるかも


   しれぬ


   (水戸市) 檜山佳与子


 夫婦のどちらかが病に倒れて、元気な方が連れ合いの介護に回る。


「介護って大変よ、負担が大ありよ」と嘆き、その難行が一日も早く


終わるのを願う。だが本当にそうなのか、一度じっくり考えてみまし


ょうよ、と言う。介護の時の二人の間に愛があれば、だれにも邪魔さ


れずに心身共にいのちを寄せ合う貴重な機会と時間でありますよ、と


鼓舞しているようだ。


 


       朝日歌壇 2019.2.2    


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             新宿御苑 09 dsc-0028


 


                       


黒糖のこくは霜夜に増してゆき沖縄の苦渋黙して語る


   (ドイツ)三原はるみ


 


 谷間から我を見詰めるかもしかの時間を止める


   まなざしに逢ふ                 


     徳島市) 清水君平


 これは夜昼の違いはなく、谷間に居る羚羊からの凝視に出合うと、


こちらはしばらく動けない時間を持つようになる。羚羊は、撃たれる


ことはないな、と知るとやおら視線を外して、おもむろに歩き出す。


 


 紙切れに遺されしうた破棄できず妻の手書きを


   呆然と見る                 


     アメリカ 松村史基


 妻に先立たれた後、遺品の整理をしている夫君。能率よく仕事をこ


なしていたが、遺品の中の紙切れに歌の遺作があることを見つけて呆


然。さてどうしたものかと思い悩んだと。この紙切れ、ポイをされな


かったこと、さすが、歌をよくする亡妻の夫君たりしよ。歌を作る人


は一首仕上げるために脳に莫大な負荷をかけて言葉を紡ぎ、推敲の過


程をも紙切れに書き付けることを知っておいででしたね。単なる紙切


ではなかったのです。


                


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新宿御苑 10 dsc-0031

 


やっている事は支持せずやっている人は支持する


   不思議な世論


   (京田辺市)鵜飼礼子 


 


 ふた親に愛という名をもらいしに愛されなくて


   殺される子ら


   藤沢市) 藤村佐枝子


  両親から愛の字がつく名前をもらったものの、愛されることなく


事もあろうか虐待の果てに殺されるという事件が起きている。そんな


ことなら、いのち誕生を寿ぐ命名の時、愛の字なんか使うでない!と


怒り爆発、可哀そうな児をおもいやっている。


 


 慎重に君が代なぞる玉鷲の初優勝の品ある口もと


   安中市) 鬼形輝雄


 國を代表して国際スポーツ戦に臨む一流選手がそれぞれ自国の国歌


を斉唱する場面がTV画面に流れる。外国の選手は、やや陽気に声を


出して斉唱するが、日本選手はすっぱりと「君が代」を歌うでもなく、


モゴモゴと唇を動かすだけでお茶を濁す選手も多い。「君が世」が天


皇家の代々君主の弥栄を祈念する歌であるので口に出してまでは歌い


たくないという理由が永く尾を曳いているのか。歌詞が気に入らぬの


なら「君が」を「我らが」または「我らの」と言い換えて斉唱したら


どうか。後に続く歌詞はそののままぴったりと続くことだ。


 大相撲で玉鷲が優勝した場所の国歌斉唱のシーンは目にしなかった


のでよく判らないが、口元に品があったと褒めているので、しっかり


と歌ったのであろう。よく耳を澄ませば「おいらが世は」と優勝を謳


歌していたのかも。おめでとう。


    


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新宿御苑 11 dsc-0032

 


 やっと手に入れた時間を「暇」などと夫も友も


   わかっちゃいない           


     佐渡市) 藍原秋子


 私は晩年にやっと手に入れた時間が愛おしくてたまらない。何物に


も制約されず、わが自由のままに使える時間は神仏が与え給うた天与


の貴重な時間だ。それをなんです!「暇」などと抜かしおる。判っち


ゃいない奴らじゃなあ。


 


 信濃では何処へ向かふも峠越え風に削られ馬頭観世音


   長野県) 沓掛喜久男


 信濃は小山の連続する土地で、どこへ行こうにも峠越えをせねばな


らぬ。そこには風に削られた馬頭観世音が建っている。頭を下げてお


詣りして峠を越え、次の峠へと向かうのだ。


 


                      


 


       (2019.5.01)


 


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 406 一瞬の木の葉の綺羅と風の修羅* [文芸(短歌・俳句) 時事]



 随想コラム「目を光らせて」NO.406「朝日歌壇・朝日俳壇から」     


  俳壇 期間2019.1.6~1.27


    一瞬の木の葉の綺羅と風の修羅 


   *題目: 朝日新聞2019.1.13 


        古庄たみ子さん(佐賀県基山町)の入選作。


                               アオウ ヒコ


17-17-DSC_0191.JPG


鉛筆画家 木谷 啓の鉛筆画集:


                                「ありがとう。おもしろかった。」から


                         作品 その17 DSC-191.JPG


「変な題名の画集になりました。才能が不足しましたが、まあこんな


ものでしょう。すべては天帝の計画通りです。長寿をいただいたので


絵を描ける間は描き続けられるといいなあと思います。


皆様、ご多幸を」(木谷 啓)


                                                     


        朝日歌壇・朝日俳壇から」(趣旨)


 


 朝日新聞の歌壇・俳壇の入選作の中から最近の事象を鋭い表現で切


り取った作品を歌壇・俳壇交互に選び筆者がコメントを付けています。


コメントは文芸上の範を越えることがあります。作品の頭にが付


いた作品は、時の政権が推進する前のめりの右傾化路線や平和憲法を


無視し、国会の存在をないがしろにするさまを放っておけぬとする市


民の声であり、これを矯める叫びでもあります。これらの作品は、こ


こでは個々の作品の文芸上の軽重を問うことなく全ての作品を網羅し


、本稿に採録しています。


 これらの作品に対しては投稿者の真摯な叫びと呼び掛けに読者の耳


素直に従うべしとして、コメントはつけておりません。


 また、文中敬称は省略しています。(筆者)


    



       朝日俳壇 2019.1.6


                     


01-DSC_0075.JPG

                                           



  存在やど真中なる置炬


       (越谷市)新井高四郎



 外の気温が高く、初夏の陽気であれば、その存在はもう在って欲し 


くない邪魔者になっているのだろうが、この寒気、そとから帰って来


てまず目に入るのは置炬燵の在りか、部屋のど真中にドカーンと我を


待っている。いそいそとその中に脚を突っ込むこの私。これなくして 


この厳冬を過ごせるものか。その存在は、ど真ん中にあって至極至当。


独占気味の存在あってこそ、助かるなあ。



  有難き生きた証の晦日蕎麦           


       (河内長野市)西森正治


 


 蕎麦好きな人は多い。月の末日に決まって蕎麦を食べるほどではな 


くとも、大晦日の夜には必ず晦日蕎麦を特別な思いで食する人はこれ 


また数多い。蕎麦を啜りながらみな一様に思っている。あゝこの日が 


迎えられて本当にありがたい。この一年生きてきた証拠がこの晦日蕎


麦なんだからと。そばつゆをお替りして蕎麦湯をぐい飲みする向きも


 



 仕舞湯の柚子と分け合ふ疲れかな             


     仙台市) 柿坂伸子



 主婦は何かと忙しい。一番風呂に入れないわけではないが、一日の仕事


を終える頃にはどうしても仕舞湯となる。家の柚子の木には実が沢山生るの


で今日も柚子を浮かべている。ごくろうさんだったわねと柚子に声をかける。


疲れが取れますよと柚子が向こうから寄ってくる。どちらもご苦労さんである。



                                                          


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  ふかふかになりゆく心落葉踏む             



    八代市) 山下さと子


 


 木々が春夏秋の3季をかけて作った樹葉は冬の季には枯れ落葉となる。


落ち葉の上を踏み歩くのをこよなく好む乙女がいる。なぜか? 落ち葉


を踏めば、心がふかふかになりゆくからである。


                                        

  しきり鳴く夜鴨のこゑのみな違ふ             


    (鹿児島市) 青野迦葉


 渡ってきた鴨が水辺で仲間を作り、夜には頻りに鳴き声をあげる。


鴨陣営の傍に住まう作者は、その声に耳を澄ましていて、夜鴨の声が


一様ではなくみな違うことに気づいた。鴨陣営の昼の宴ではほとんど


無口でぐるぐる水辺を回るだけだが、鴨陣営の夜の宴では格好の相手


を極めんものと声高らかに叫ぶなり、の真剣勝負に及ぶのである。


そりゃ、こゑも個々の美声でありましょうし、高らかに艶やかで蠱

惑的もありましょう。初心なお方はついつい寝そびれてしまうかも。



  あの頃は雪の降る町口遊み


   我孫子市) 大谷修介


             


 あの頃(1953 今から66年前)には高 英雄というシャンソン歌手が


居て同年「雪の降る町を」というヒットを飛ばしていた。内村直也作


詞、中田喜直作曲というから錚々たる作者達である。高 英男の静か


な染み入るような歌い振りが、中年の女性を中心に広く気に入られた


のか、この俳句の作者のように口ずさむファンを獲得した。私も高英


雄の「雪の降る町を」を持ち歌にして何かの時には歌っている。当時


芦野 宏 というシャンソン歌手もいたように思う。 


                                         


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 入院の妻の胸中十二月 


    米子市) 中村襄介



 妻が入院してから数か月経つ。まもなく十二月、そのあとは年を越


すことになる。入院中の妻の胸中はどうであろうか。千々に乱れてい


るのではなかろうか。と夫の私の思いも何かと乱れる年の暮れである。



 百の幸百の災禍に暦果つ 


    泉大津市) 多田羅紀子



 過ぎ去った一年を顧みると、いろいろとありました。百の幸運ごと


あれば同じく百の災禍ごと、適当にばらまかれて今年の暦が終った。


 



       朝日俳壇 2019.1.13


          


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 鰤起し大佐渡小佐渡灯の見えず 


    柏崎市) 須田久男



 【鰤起し】十二月から一月頃のブリの漁期に鳴る雷(広辞苑)


 鰤魚が行われる海に向かって立つ。今日は荒天にて大荒れ。大佐渡


と小佐渡の両灯台の灯が見えない。しかし、このように鰤起しが到来


したからには鰤の大漁がまもなく到来するであろうと期待している。



 生牡蠣を啜るフジタの絵の白の


    武蔵野市) 福田一政



 打牡蠣女が大きな牡蠣を手にしてパンパンと叩き、こじ開け取り出


した生牡蠣をそのまま口に入れて啜る。その感触と味と香りに通ずる


のは西洋画家フジタが描く裸婦の白。あの白い恋人も牡蠣と同じよう


に啜ってみたいとする強い願望を呼ぶ。


                                                  


 行く人の鳩蹴散らすや年の暮


     (芦屋市)笹尾清一路



 年の暮は何かとせわしい。街を歩くにしても、邪魔になるものがあ


れば、人は容赦なく蹴飛ばして歩く。前を鳩がヨチヨチ歩いていれば


人は蹴散らして歩く。年の暮れの通弊


 


                               


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  一瞬の木の葉の綺羅と風の修羅               


     (佐賀県基山市)古庄たみ子


 


 木の葉が翻る時に見せる一瞬の美しさは、本来木の葉が持つ見た目


の美しさと、そこをさまざまな強弱で吹き抜けようとする風の争いが


遭遇してこそである。


 


 丸くなりし我が人間の寒さかな   


    (船橋市)斉木直哉


  


 このところ、自我を張るばかりでなく、我が人間性に頑なさが減り


丸くなったようだ。その結果、我が人間性にうそ寒い思いをするよう


になった気がしてならない。


 


                                


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                 ★


 



                   ( つづく → 目を光らせて NO.406-2 




                                              (2019.4.15) 



 



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406-2 山手線去年と今年のすれ違ふ* [文芸(短歌・俳句) 時事]

 随想コラム「目を光らせて」NO.406-2「朝日歌壇・朝日俳壇から」     


   俳壇 期間2019.1.20~27


 


    山手線去年と今年のすれ違ふ* 


    *題目: 朝日新聞2019.1.27


           鈴木清三さん(埼玉県宮代町)の入選作。


          アオウ ヒコ


                                                


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                           水彩画家 酒井 健の作品から。


        


         190324 メジロ、jpg


 


     こんにちは! 天気晴朗なれど寒い一日でした。


        これだから冬、春、夏の衣料のこまめな着替えが欠かせません。
    小鳥に挑戦しました。メジロです。
  最近描きたい気持ちが次第に強くなり、花も描きたい、
  鳥も描きたい、です。(酒井 健)

 


        朝日俳壇 2019.1.20


       


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 冬の雨奈良にも在ます野の仏


   (霧島市奈良県広陵町)松井矢菅


 


 奈良には有名な寺院に多くの仏像があることで知られる。豪華な仏


舎に展示されて大切にされているが、このような庇護を受けていない


野仏も今、冬の冷たい雨に打たれている。


 


 落葉して子供の銀行賑はへり


   (飯塚市)釋 蜩硯


 


 銀行ごっこをするにはお札が入用だ。大きな木が落す広い大きな落


ち葉、一万円札にぴったりだ。秋から冬にかけては落ち葉の季節、子


供の銀行がこよなく繁盛する。


 


 濁声の釣銭温し歳の市


   (さいたま市)齋藤紀子


 


 歳の市で買い物をする。すると、上から「ホイ、お釣りだよ」と濁


声がして、手渡された釣銭の温かいこと。


 


 漆黒の天集落の冬灯


   北見市) 藤瀬正美


 


 夜、空を見上げれば漆黒の天が見えるだけ、目を地に転じれば集落


にともる冬の灯が明るく暖かく見える。静かな冬の夜。


 


 初日の出富士のしっかり目覚めゆく


   (東京都) 丹羽ひろ子


 


 富士山が前に見える位置に立ち、初日の出を待っている。山の周辺


が次第に明るくなるにつれて確かに富士山はしっかり目覚めてゆきま


すね。


                 


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 炉火育て難題軽くなってをり


   (群馬縣東吾妻町) 酒井大岳


 


 朝起きれば、まずは部屋を暖める炉火を熾す作業にかかる。炭火であ


れ何であれ、これがすんなりと熾ってくれれば、後に控える難題の数々


の着手も完了も軽い軽いとなっている。雪国の朝の火熾しの業を楽し気


に述べている。


 


風花や空中戦のありし空


   (鹿児島市) 青野迦葉


 


 風花の地をさぐりつつ消えにけり


   (国東市) 真城藺郷


 


 これは風花を受ける人の受容の姿を述べるのではなく、風花を意志


ある主人公に見立てて風花の一生を描いている。風花曰く「空から抜


けて、風の中を探り探り落ちているから、もうそろそろ地に出合う頃


だよね、あゝここだ、ここが風花の到着点だよ」と言いつつ消えにけり


である。


 


         朝日俳壇 2019.1.27 


                                       


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 雪と告げたき人に墨を磨る                  

     神戸市) 岩水ひとみ


 


 私が住んでいる所ね、今初雪なのよ、と知らせてあげたい人に一筆参


らせんと墨を磨っている。受け取った人の「相変わらず達筆よねえ」の


声が聞こえそう。


 


 初春やをのこ二人のつむじ愛づ                 


     彦根市) 阿知波裕子


 


 ようやく万物伸びゆく春が参りました。私には男の子二人がをりまし


て、育ち盛りのつむじ二つを、かわるがわる撫で撫でしております。


 


 風花やそのやわらかな横なぐり


   広島市) 谷脇 篤 


 風花(かざはな)とは:


①初冬の風が立って雪または雨のちらちらと降ること


②晴天にちらつく雪。風上の降雪地から風に送られてまばらに飛来する


雪(広辞苑)


 であるから、吹雪、豪雪、暴風雪などの威力も凶暴性とは縁遠く、可


愛げのある優しい降雪として好まれる。風花であっても吹かれればそれ


なりに被害を伴うのだが、そのやわらかな横なぐりなどとやさしい語感


である。


                


DSC_0136.JPG

 


 鷹の目の円周無限大山河


   神戸市) 高橋 寛


 


 山岳地帯の上空を大きく円弧を描いて飛翔し続ける鷹の目の動きを


誉めそやしている。獲物を探す炯炯たる眼の円周は無限で対象は大山


河ですよ、としている。(この句の読み方は、ここは円周無限で、と


一度切り(無限大としない、最後の3字を大山河として生かすように。


 


 ★九条俳句掲載まじか女正月           


     さいたま市) 関根道豊


 


 初空へ生きると指で大書せり


   新潟市) 斎藤達也


 


 元旦に初めて仰いだ空に指で「生きる」と大書された由。これは効


き目があることでしょう。指さし効果はいろんな仕事の現場で行われ


て、間違いない成果を上げているようです。これとは少し違っていま


すが、私が個人的に習字教室の字の出来を判定するときに使う「字画


のなぞり判定」も人差し指を使うものです。私の町内には小中学生を


対象に、毛筆、硬筆を対象に習字の指導が熱心になされ、その演書の


後の清書(氏名付)が会議室ホールに板書、公開されている。


  拝見すると、どの作品も甲乙つけがたい程旨い。(これはw先生の


指導による賜物である。)甲乙を付けるにはどうするか?である。


 


 私は一字一字、字画の書順を指でなぞり始める。するとどうだろう


。字画の途中で指がふと止まる。またなぞり始める、これを何回か繰


り返して終るのだが、私の指が経由した字の巧拙データが脳にインプ


ットされて、しかるべき評価基準の評点付けが出来上がる。これは、


指を動かしてなぞることから得られる優れた評価法である。


 


 ★平成を包み切れずに除夜の鐘           


     岡崎市) 沢 博史


 


 山手線去年と今年がすれ違ふ


   埼玉県宮代町) 鈴木清三


 


 これは目の付け所がいい。なかなかこうはいかないものだ。


東京山手線は内回りと外回りがあり、それぞれ逆方向に走り続けてい


る。だが去年と今年がすれ違う瞬間、と言っても(連結車両の数によ


るがお互いが通り過ぎるには5秒間余はかかる)をどこで採るかが問


題になったりする。大晦日の夜、飲み過ぎて24時ジャストを移動中に


れ違った山手線の中で過ごした人よ、その歴史的運命の瞬間を察知し


得たであろうか。


                           


                    


DSC_0132.JPG


 


            (2019.4.15)  


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 405 決め手なる王手の駒を指すように置くべき助詞を静かに置きぬ*                                     [文芸(短歌・俳句) 時事]

 随想コラム「目を光らせて」NO.405「朝日歌壇・朝日俳壇から」     


  期間2019.1.06 ~13


 


   決め手なる王手の駒を指すように


     置くべき助詞を静かに置きぬ


  


    *題目: 朝日新聞2019.1.06


         宇和上 正さん(松山市)の入選作。


 


          アオウ ヒコ


16-16-DSC_0190.JPG


             鉛筆画家 木谷 啓 の鉛筆画集


   「ありがとう。おもしろかった。」から


 


    作品 その16 DSC-190.jpg


 


 「変な題名の画集になりました。才能が不足しましたが、まあこんな


 ものでしょう。すべては天帝の計画通りです。長寿をいただいたので


 、絵を描ける間は描き続けられるといいなあと思います。


  皆様、ご多幸を。(木谷 啓)


 


   「朝日歌壇・朝日俳壇から」(趣旨)


 


 朝日新聞の歌壇・俳壇の入選作の中から最近の事象を鋭い表現


で切り取った作品を歌壇・俳壇交互に選び筆者がコメントを付け


ています。コメントは文芸上の範を越えることがあります。作品


の頭にが付いた作品は、時の政権が推進する前のめりの右傾


化路線や平和憲法を無視し、国会の存在をないがしろにするさま


 を放っておけぬとする市民の声であり、これを矯める叫びでもあ


 ります。これらの作品は、ここでは個々の作品の文芸上の軽重を


 問うことなく、全作品を網羅、採録しています。これらの作品に


対しては作者の真摯な叫びと呼び掛けに、読者の耳素直に従うべ


しとしてコメントはつけておりません。


 また、文中敬称は省略しています。(筆者)


 


   


      朝日歌壇 2019.01.06


              


01-DSC_0437.JPG


                                       


 決め手なる王手の駒を指すように置くべき助詞を


   静かに置きぬ


      (松山市) 宇和上 正 


 将棋盤を挟んでの対局も王手の駒を動かす終盤にかかると、俄然白熱する。


短歌の作者にあっても共通するところがある。まず、言葉を選ぶ過程での取捨


選択とその配置に始まり、最終的には効果的な助詞と措置場所について深い


 考察に及ぶ。最終的な助詞をそっと書き添えるの心境は、将棋の王手必殺駒


 をそっと盤上に配するときのそれと同じか。どちらも完璧な勝利の裏打感を伴う。


 


 干し柿も干し大根も旨味増す遠火強火のお日さま調理           


      (熊本市) 徳丸征子


 太陽と地球の関係は地球上の生物の命の存在をめぐってすでに切っても切 


れぬ関係にある。生の食物も陽に曝すことで旨味が増すこと限りなし、魚の一


夜干しから、干鱈、利尻昆布まで完全乾燥まで。生柿を剥いて吊す干し柿や 


、漬物を漬ける前に陽に干す大根や白菜など、太陽が発する熱線を上手に適


度に案配する人の知恵。お日様調理とはよくぞいったものである。


 


「親ばかでいい」と言われて育てたがバカ親だった


  と思う私は


     金沢市)  川渕和美 


 子供が幼少の頃は、可愛さが先だって、なにもかも許してしまう親ば


かであったが、育ってしまった子供の行状を見るにつけ、育てた私はバ


カ親であったなあ、と思うようになった。


 


  男湯に行ってしまった子の声を湯気の向こうに遠く


   聞きおり             


     奈良市)  山添聖子 


 がまだ幼少の頃は、風呂や温泉いづれであろうと、浴槽の男湯女湯


を意識することはなかった。児は当然のこととして女湯に連れてきてい


 た。だが、児が成長した現在、そうもいかなくなって、児は男湯に行き 


、そこで何やらしゃべっている。その声を、私は女湯から立上る湯気の


向こうに聞いている。


           


02-DSC_0438.JPG

 


  国会も煽り運転実施中喫緊だからと


   数の力で            


     行方市)  前野平八郎


 


  決められぬ政治にとって代わりたる何でも決める


   政治のこわさ                  


     京田辺市)  鵜飼礼子


 


 法案は皆多数決異論無視民主制下の総理専制             


     大坂市)  由良英俊


 


 温かいけど温みを感じない住めど暮らせど


   仮設なるもの                  


     東京都)  東金 吉


 


 大量の土砂に埋もれて惨死する辺野古の海で


   暮らす生き物               


     葛城市)  島田美江子


                                                       


                      朝日歌 201.013        


03-DSC_0440.JPG          

  次つぎと土砂の汚れの広がりて辺野古に辺野古の


    海は還らじ                


      観音寺市)  篠原俊則


 


 土砂とても己が運命を哀しまん民を傷つけ


    海汚すこと                


      高崎市)  小島 文


 


 ★空母持ち戦闘機買ひ土砂投ずすでに九条なきが


     ごとくに                


      長野県)  千葉俊彦


 


 ★土砂投入逸る政府は西郷どんを追ひ詰めし


    政府軍に重なる               


      山形市)  岩瀬信夫


 


 平和にも賞味期限のある如く歯止めの利かぬ


    防衛予算                 


      三郷市)  木村義煕



04-DSC_0443.JPG

 


 指先で紙の表裏をかぎ分けて清書に向ひ衿正しをり                 


      飯塚市)  春 春代 


 書道に励んでおられる。何枚かは練習のために、反古にされたのであ 


ろう。さあ、清書だ、となればそれなりのルーチン(手順)がある。紙 


の裏に書かないように、指先で紙の表裏を確かめ、さあ清書ですよ、背


筋をピンとし、衿を正している。さあ、始めますよ、清書のそれを。


 


 猫舌の吾子のココアを冷ましつつかさこじぞうの


  音読を聞く                 


      奈良市)  山添聖子


「お母さん、熱いココアは駄目よ」「はいはい、判ってますヨ」と、母


はいつもの猫舌の吾子用ココアを作っている。子はココアが程よく冷め 


るのを待つ間、「かさこじぞう」を声に出して読んでいる。静かに流れ


る親子の成長の一日。こうした日々が流れて親子はすくすくと育ちゆく。 


なんと大切な生活の日々の経過の積み重ね。これありてこそ、である。


 


 沖縄の民意が無視をされるのは民ではないと言う


    事なのか                 


      筑紫野市)  二宮正博


 


 トップではないのか今日の土砂投入このニュース


    でもあのニュースでも               


    町田市)村田知子


 


 パラボラのごとき葉に宇宙の呼気を集め


    月夜の甘藍しづかに太る


       (三豊市)石井彰太郎


 甘藍を栽培している。月夜の畑へ出て、甘藍の育ち具合を見ている。


甘藍とは①葉牡丹の別称。②キャベツ。(広辞苑)とあるが、ここでは


 キャベツのことをやや大仰に表現したかったのか。円状に広げた下葉を


 パラボラのごとき葉と称し、これに宇宙の呼気を集めて、甘藍は月夜に


 静かに太る、とある。言葉の駆使が作り出す歌への精進の試みがある。


 


 心にも黒く重たき土砂を置き辺野古の海は


    埋められ始む   


   (水戸市)中原千絵子


 


 黄濁の海が美ら海だったことマンタ、ジュゴンも


   みな知っている   


   (高松市)島田章平


 


 「肩透かし」も決まり手のひとつと言いたげに


     外務大臣質問逸らす


   (埼玉県)島村久夫


  


05-DSC_0449.JPG

 


             (つづく → NO.405-2)


 


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            2019.4.01



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405-2  兄ちゃんの彼女が家にやってきた手土産を持つその爪を見る* [文芸(短歌・俳句) 時事]

 随想コラム「目を光らせて」NO.405-2「朝日歌壇・朝日俳壇から」     


   期間2019.1.20 ~27


 


    兄ちゃんの彼女が家にやってきた


 


         手土産を持つその爪を見る


     


     *題目: 朝日新聞2019.1.27


            山河 初美さん(倉敷市)の入選作。


         アオウ ヒコ     


1-190214水仙.jpg

   水彩画家 酒井 健の作品から「水仙」jpg 0214



        朝日歌壇 2019.01.20


06-DSC_0450.JPG

   


 寄り添ふといふ言の葉は枯れて散り辺野古の海は


   陸になりゆく


     前橋市)  荻原葉月


 


  ここは元海でありしと言はすなよ無下にするなよ


   辺野古の海を             


     和歌山市)  佐武次郎


 


  吊し柿の深き皺まで差してくる冬至の夕陽


   あかあかとして                 


     太田市)  川野公子 


 吊し柿は収穫した柿を11月中旬頃皮を剥いて紐に吊し、日光に当て


て水分を抜き甘味を凝縮するのだが12月に入り冬至の頃になると、そ


れこそ、当欄登場の歌人の歌にあったように、太陽によるお日様調理の


効果で、吊し柿には深い皺が寄り収穫時近しとなる。冬至の頃の夕陽は


吊し柿の皺に斜めにあかあかと差し込み続け、仕上げに余念がない。


 


  いくたびも雪の深さを聞きし母逝きてしずけし


   ふる里の雪                                 


    仙台市)  沼沢 修 


 子規の句にも、いくたびも雪の深さをたずねけり、と言うのがあった


ように思うが、床についたままの病人や外の気配を自分で確かめらない


老人は雪が降ると「どのくらい降ったの、積もってるの?」を連発する。


 床を離れられなかった母もそうだったが、その母も逝き、いまでは故


郷に降る雪のなんと静かなこと。


 


 スマホなく施設の母と交わす手紙恋文のように


   もどかしくもあり                  


     大阪市)  大島いづみ 


 そうか、老齢の母を施設に送ったからには、日夜何かとよしな仕事や


連絡の草々を伝えねばならない。これが、今日のように双方がスマホを


持ち、使いこなせるのならなんと便利なことだろう。今のところ、双方


が致し方なく手紙を書き、これを交わしている。この手紙の交換はかつ


ての恋文の交換のように、見たの、読んだの、返事呉れないのね、とも


どかしい感じが伴うのですね。


 


 ジエット機は五億円てふ八百九の見切り大根


   百円の夜に             


     横浜市)  小関由佳


 


  沖縄に寄り添ふといふ真意とはこれであったか


  「補助金交付」             


     長野県)  山口恒雄


 


 なんとなく平和を思ふ年の暮れ


   皇居八万競馬十万            


     川崎市)  杵淵有邦


                                                                           


           朝日歌壇 2019.01.27           


07-DSC_0452.JPG

           さくら


 


 森の奥聖なるものの呼ぶごとく梟が鳴く猪撃ちの夜


   (安芸高田市)菊山正史 


 猪撃ちに夜、森の奥にまで分け入っている。静かな闇の中で聖霊が呼ぶ


かのように梟がホッホと鳴く野が聞こえる。この声をどう聞いたものか。おぬし、


猪の命を奪わんと、そこに潜み居るのか、それでよいのか、とも聞えたりして。


 


  鮒鮓の一の桶過ぎ新年の二の桶囲む晴れの日来る              


     (津市)中山道治


 すでに鮒鮓の一番桶の開封日は昨蝋某日、すでに関係者が集まり、


それなりに済ましている。一番桶はまずは昨年仕込みの鮒鮓の仕上が


り具合を試味するすための集いであり、新年の二番桶の開封こそが晴


れの日の本番としての仕上がりを予告するものである。ああ、今年の


鮒鮓の第二の桶を皆で囲む晴れの日がまもなくだ。待ち遠しい。


 


兄ちゃんの彼女が家にやってきた手土産を持つ


  その爪を見る


    (津倉敷市)山河初実  


 その家族は父母と兄、妹の4人、またはもう少し多いかも。今日は


その兄が交際している「彼女」を家族に紹介するために帯同してきた。


彼女は手土産を持ってきたが、兄の妹の私は手土産なんかではなく、


手土産を提げている彼女の爪に見入ったことだった。爪化粧を見るの


は初めてだった。


 


 花園に蜜蜂が二群乱れ飛ぶ楕円のボールに


  摂理をのせて  


    (富田林市)芝田 敦 


 前半で、花園という名が付いたラグビー場で二つのチームの蜜蜂が


乱れ翔ぶ様を、後半では楕円のラグビー球がこの2チームの試合の全


てを支配する権能を持つことを紹介している。


   


 少しずつ首根の位置が前に来るそんな気がして


  背骨正すも


    (茅ヶ崎市)若林禎子


 今では老化が進む男女にいろいろな整体体操が勧められている。彼


女も、人に勧められてその体操を受けるうちに、あなたは首が前に出


ていますよ、猫背になりつつありますよ、と言われたのであろう。


「壁を背にして踵と尻と背中と頭をぴったり壁に付けられますか?」


と言われて、試みたのがこの一首になったのかもしれない。


 


 電線に椋鳥並ぶ椋鳥は隙間隙間の隙間に止まる       


   (館林市)阿部芳夫 


 良い歌を作るには一にも二にも観察が大切ですよ、と言われてこの


歌人は或る日、頸が痛くなるほど電線に並んで止まる椋鳥の性向を観


察し続けた。結論は椋鳥の電線隙間指向はそれぞれの椋鳥個体が持つ


電線上の隙間への(志向、思考、嗜好、試行、至高、試行)により行


われ、激しく行われる隙間選びは、試行錯誤の結果辿り着いたもの、


であった由。再度の報告になるが、空と電線と黒を見つめ過ぎた歌人


の首の凝りは相当なものであったらしい。同情に値いする。


 


 声上げぬことを美徳とする国の教師でありし


   三十八年           


     観音寺市)  篠原俊則 


                 


19-DSC_0493.JPG
 さくら                

                          


 


                        2019.4.01


 


(特記)上記二つのコラムの源泉「朝日歌壇」(掲載日は2019年1月


6日~)ですが、すでにお気付きかと思いますが、この号には作品の


頭にが付いた作品が合計21に及び、初めてのことでした。いかに


現今の内外政治経済、国際


外交その他についての問題が多く、国民の多くが憂慮し、頭を抱えて


るかを如実に示すものでありました。


 


 これらの作品にはお約束とおり、コメントはついておりません。読


者諸子の鑑賞眼による熟慮塾考を期待しております。(筆者)


       


    下記の URLからお入りください。


 URL:http://columneye.blog.so-net.ne.jp/


     随想コラム 目を光らせて アオウ ヒコ  


   


 


 


       



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404 穭田や未来ある如揃ふ青* [文芸(短歌・俳句) 時事]

 



 随想コラム「目を光らせて」NO.404「朝日歌壇・朝日俳壇から」     


    俳壇 期間2018.12.02~12.23


      穭田や未来ある如揃ふ青* 


    *題目: 朝日新聞2018.12.02 


       石橋玲子さん(枚方市)の入選作。


                アオウ ヒコ


15-15-DSC_0189.JPG

                鉛筆画家 木谷 啓の鉛筆画集:


               「ありがとう。おもしろかった。」から


            作品 その15 DSC-189



「変な題名の画集になりました。才能が不足しましたが、まあこんなも


のでしょう。すべては天帝の計画通りです。長寿をいただいたので、絵


を描ける間は描き続けられるといいなあと思います。皆様、ご多幸を」


(木谷 啓)


        朝日歌壇・朝日俳壇から」(趣旨)



 朝日新聞の歌壇・俳壇の入選作の中から最近の事象を鋭い表現で切


り取った作品を歌壇・俳壇交互に選び筆者がコメントを付けています。


コメントは文芸上の範を越えることがあります。作品の頭にが付


いた作品は、時の政権が推進する前のめりの右傾化路線や平和憲法を


無視し、国会の存在をないがしろにするさまを放っておけぬとする市


民の声であり、これを矯める叫びでもあります。これらの作品は、こ


こでは個々の作品の文芸上の軽重を問うことなく全ての作品を網羅し


、本稿に採録しています。


 これらの作品に対しては投稿者の真摯な叫びと呼び掛けに読者の耳


素直に従うべしとして、コメントはつけておりません。


 また、文中敬称は省略しています。(筆者)


    



     朝日俳壇 2018.12.02


                       


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 猪の入りきらざる牡丹鍋


     (新座市)五明紀春


 日本の山村部で猪の跳梁が伝えられ、その駆除に伴うジビエ料理の盛


況が伝えられる。牛豚鶏の肉を材料にすればスキヤキ鍋を囲むとしても


、食肉をそうふんだんに使うわけにはいかぬ。だが、猪鍋の場合は肉の


供給が過大で、もっと沢山食べよであり、牡丹鍋には猪肉の供給が途切


れる心配はない。


 


 戻りしかルルルルルルと鳰の声           


     (飯塚市)田中義春


 作者は河口辺りにお住まいか。冬には河口の水面に飛来、出没する鳰


(にお)の姿を日夜眺めて暮らす日常のようだ。カイツムリの姿は水面に


浮かんでは、ふいっと水没し、しばらくしてかなり離れたところに浮上


するのが常だ。声を耳にする機会はほとんどないが、作者はルルルルの


声を日常的に聞いている。


  


放射能まだ手付かずの山眠る             


   福島県伊達市) 佐藤 茂


                                             


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  露の世や四十分で人焼ける             


    長野市) 縣 展子


 人が死に、葬儀が行われ、荼毘に付される。葬祭場で待つ間、露の世


に別れるは四十分程だと知る。諸行無常の人の世を感じる場所にあって


、人焼けると言い放つはどうかと思われる。まだ若くて、自らが逝く日


には思いが及ばないからであろうか。今のところ、即物的に日々を渡っ


ているのか。            



  熱燗や強気弱気の入り交じり             


   兵庫県猪名川町) 小林如水


 熱燗を汲んでいる。口に入る盃ごとに酒温は定かならず、その時の思


考の成立に微妙な変化を齎している。熱燗なれば、わが思いは強気に転


び、冷め気味であれば、弱気に転じる。この二者が常に揺曳し続ける。



  防人の故郷偲ぶ壱岐の冬


   長崎市) 佐々木光博             


 九州と朝鮮との間に対馬と共に飛び石状をなす島。もと壱岐国、今、


長崎県壱岐郡。九州本土から約25㎞離れる。緩やかな丘陵、台地が多い。


(広辞苑)古代日本はこの壱岐地方に大陸諸国の侵略に対抗する防人の


部隊を配した。防人の多くは東国から徴発されて筑紫・壱岐・対馬など


北九州の守備に当った。今、冬の壱岐を訪れ、徴用された防人が故郷と


妻子を偲んだ様を切に思う。


                                 


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  牡蠣割女手の止まるとき子の話 


    岡山市) 和田大義


 賃仕事で流れ作業の牡蠣割女の仕事をしている。仲間も無言で手は動


き続けである。そして小休止の時間が来て牡蠣割女の手が止まる時が来


る。その時の話題は我が家の子の話である。爆発するように一斉にこの


話が始まるのだ。



 森深き薄日の小道けらつつき 


    ドイツ) ハルツォーク洋子


 ドイツ居住の日本人がドイツの秋を知らせてくれている。今日は近く


の深い森の散歩。深い森だけに漏れる薄日の小道を歩けば、啄木鳥が木


をつつく音が聞こえる。



 熊除けの鈴を清らに登校す 


    久慈市) 和城弘志 


 児童たちは登校するときに熊除けの鈴を鳴らして歩く。清らに、とい


うのがこの句を引き締めた。確かにこの鈴は清らな、清冽な音を点てる


のであろう。児童たちもこの鈴の音に触発されて、勢い活発な会話を交


わし続けて歩く。もし熊が近くに居ても、この涼やかな音を発する集団


から、自らを遠ざけようとするに違いない。



 穭田や未来ある如揃ふ青


    枚方市) 石橋玲子


 穭田(羊田;ひつじだ)とは聞き慣れぬ言葉だが「一面にひつじの生


え出た田」の謂いであり、とは稲刈り後に残された切り株から芽出


しした短い稲のことである。稲田に残る一面の切り株から出た新芽の


青を見て「穭田をこうして見ると何だか未来があるように思えて来ま


すね」であるが、実際にはほとんど役に立たずである。             



               朝日俳壇 201.116


                               


02-DSC_0006.JPG       


  子らの声沸けるがごとく黄落す


     (姫路市)吉田光代


 秋が深み行き、大木の黄葉がみるみる落葉するころを迎える。その様


は大勢の子供が一時にどっと喚声を上げるのに似ている。


 


  古日記出して亡き子と遊びけり               


    (鹿児島市)青野迦葉


 若いころから連用日記を付けてきておられる。日々の出来事を丹念に


綴って来た。当然子供の出生、成長の細々が含まれている。夭折した子


もいるが、今その子と遊ぶために古い日記を出してページを繰っている。


今日あることを思ってペンを走らせたわけではなかったが。


 


 禰宜と巫女着替えずテニス神の留守   


  (神戸市)日下徳一  


 このお宮の近くにテニスができる広場があるのか、社務所に務める若


い男女の禰宜と巫女が、お昼時であろうか、仕事着そのままテニスに興


じている。参拝者もなく神も中座したまう貴重な「おひるどき」である



 ばさと鮭つかみて翔てり尾白鷲


  (札幌市)前田豊作


 北海道のいずれかの河川で、鮭の上るのを見ていたその眼前で起きた


出来事。音もなく空から河川の白波に舞い降りた尾白鷲一羽。羽を畳む


暇もなく、ばさと音を立てて両足で鮭を掴み、次には羽ばたいて空に舞


い上がりました。一瞬のことに思える見事な漁でした。 



 翔ぶよりも止まりたがるは冬の蝶       


  (岡山市)伴 明子


 やはり翔ぶには寒さが邪魔するのでしょう。さすがの蝶も翔ぶよりも


とまりたがるようです。冬の蝶は。


 



  ( つづく → NO.404-2 



  (2019.3.15)


 


 



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404-2 鷹の目のゆっくり回しゆく大地* [文芸(短歌・俳句) 時事]

  随想コラム「目を光らせて」NO.404-2「朝日歌壇・朝日俳壇から」     


   俳壇 期間2018.12.16~23


 


    鷹の目のゆっくり回しゆく大地


 


    *題目: 朝日新聞2018.12.23


         松村史基さん(静岡市)の入選作。


            アオウ ヒコ           


190209 Cellist   jpg.jpg


   水彩画家 酒井 健 の人物画から 「チェリスト」 


 


                     190209 Cellist  jpg.


         


 


 酒井さんから去る2月18日に便りが届いた。

「昨日と違っていくらか暖かいですね! 先月私の古稀の祝いにプロの演奏家を招い

て、これまで世話になった兄弟、親戚にチェロ演をプレゼントして大変喜ばれまし

た。一同、素晴らしい音色にうっとり感動いたしました。

とても美人で気さくな人で話も上手、早速ファンになりましたが、プロフィール画を

描いて欲しいと頼まれました。人物は描いたことがなく無理ですと答えましたが、待

てよ、と考え直し初の挑戦を致すことにし、完成しました。送ります

 上掲がその作品です。(筆者)

            


 


 少年の目をして独楽の回りけり


  (霧島市)秋野三歩


 細紐を独楽の胴側に回し終えて、エイと宙に飛ばして鋭く引き、独楽


に回転をかける。落 下した独楽はまもなく芯棒を中心に澄む状態とな


り静止する。この澄む独楽を少年の目が見つめていた。今この澄む独楽


を見つめている私の目は、かの少年の目そのものをしている。 


 


 枯草やすでに大地の息づかい


  (箕面市)櫻井宗和


 この枯草は一木一草の草ではない。寒気が支配する大地の表は一面の


草が枯れた状態にある枯草である。その枯草を支えるのは大地である。


耳を澄ましてご覧なさい。枯草の下の大地には既に春の息遣いが聞こえ


るはずだ。


 


 トランプもゴーンも好かぬみかんむく


  (泉南市)西 知子


 世界をわが物扱いにしてやまぬトランプとゴーン。二人とも好かんね


え。意趣晴らしする ではないが、炬燵の上でみかんを剥いている。乱


暴なまでに大きく皮を剥き、中身の袋を二つ三つ、一度に口に放り投げ


、ぐしゃりと噛み潰すのだ。日本を舐めちゃああかんで。お二人さん。


 


 万葉のよろづの恋よ日記買ふ


  北本市) 萩原行博


 万葉の時代に歌われた数々の恋の歌。いかに当代の男女が歌の洗練と


熟練目指して和歌作りに沈潜また耽溺したか。現今の比ではないであ


ろう。その大いなる反省と今後のあるべき姿を思うとき、日常の言語の


交換記録のベースになりうる日記への記帳を考え、購入に及んだ。


 


 柿の実のきのふの空に消えにけり


  (熊本市) 坂崎善問


 庭の柿の木に、ただ一個だけ残った柿の実があった。だが、昨日まで


は在たのに、昨日の空に消えてしまった。鳥に食されてしまったに相


違ない。


 


 病院の廊下の迷路冬の夜


  加古川市) 森木史子


 大病院に入院して病室からトイレかどこかに一人で行かれたのであろ


う。なくすぐに自分の病室に戻れると思ったのが悪く、どこかの角で


曲がり損ねたらしい。なかなか、出合う人もなくガランとした病院の廊


下の迷路に嵌ってしまった。冬の夜にである。


 


 


           朝日俳壇 2018.12.23 


               


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          草津温泉から遠く山並を望む 


   


 吾ゆくを妻の待ちゐる眠る山                  


    長岡市) 長谷川回天


 冬の間、ああして眠るあの山には、すでに亡くなった妻が私が行くの


を待ている。私がいつあの山に行くかはまだわからない。山を見るた


びに、そのうち逝くから待っておれ、と呼びかけてはいるが、なかなか


実現しないので、待ちかねたか、この頃はひたすら眠りに徹しているら


しい。


 


 鷹の目のゆっくり回しゆく大地                 


   静岡市) 松村史基


 鷹はどのくらい高い空を回りながら翔ぶのだろうか。中、小型のタカ


と呼大型のものを鷲と呼ぶという(広辞苑)が、地上に生息する小型


の鳥獣を鋭い目で探し、発見すると急降下して捕捉するわけだから百メ


ートルそこそこか。ゆっくりと旋回するから、きょろきょろ する必要は


なく、大地はゆっくりと回り行くようだ。鷹の目を固定した視点にして


大地を動かすという発想がいい。


 


 鶴の棹とは音の無く影の無く


  神戸市) 玉手のり子


 渡りで鶴が飛翔する形が真っすぐに長い姿で渡るのを鶴の棹と称した


らし。その鶴の棹が空を渡り行くときは音も無く影もなしですよと例


えている。


                   


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            草津温泉の内園 雪景色


 


 


 白さこそ命なりける根深かな


  島根県邑南市) 服部康人 


 色の白さを物の評価の傑出点に選ぶは数々ある。女の肌、大根の根、


雪、子等々であ る。しかし白さこそ命なりけるというのは根深葱に


ほかないという。


 


 導尿を尿の流るる寒夜かな           


   高松市) 島田章平 


 「導尿;普通にはあまり聞かない言葉だが、泌尿器科の病院の治療


では頻に使われる医学用語である。「診断または治療のため膀胱に


カテーテルを入れて尿を体外に導くこと(広 


辞苑)とある。膀胱を患らい、膀胱にカテ-テル処置した患者が冬の


寒い夜、カテーテルの 中を通って出てくる尿を見ている


 


 埋め火に鬼も手を出す寒さかな


  東京都) 大谷儀一


 日本各地の残る鬼にまつわる物語。鬼の面をつけ強い形相をした屈強


な鬼が部落の家を訪ねて歩く。中に子供がいれば、大声を出して上が


りこみ、児らが泣き出すまでは退散しない。その鬼もですよ、その日の


寒威の鋭さにはいささか参っていたらしく、家中の火鉢の中に埋め火が


あるのを目ざとく見つけ「おお寒いなあ」と悴んだ手をかざしたとさ。


 


 足跡が沖を見ている冬の海


   鹿児島市) 青野迦葉


 冬の海を見ようと浜に出た。先客がいたらしく浜には足跡が残ってい


る。その人は海に向けてまっすぐ立っていたようで足跡がそうだった。


永い時海を見ていたらしく足跡は深く刻まれて、冬の海が寄せて来る


波もなかなか消し去ることはできなかった。


 


                  


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               草津温泉宿の飾り玉


 


 ★十二月八日忘れじ改憲論 


       名古屋市) 青島ゆみお


 


 ★デモ隊と機動隊行く聖樹の灯 


          川崎市) 多田 敬


 


 寒林のなかの目玉よ生きている


  高崎市) 本田日出登


 冬の季節に車を出し、夜ライトを点けて山林を走るとき、カーヴに差


し掛かる折にライトが山中を掠め照らすとき、キラリと眼玉が光ること


がある。山林のなかで冬を越す獣が生きているのだ。ああ、恙なくいき


ていておくれ、と私は静かにアクセルを踏む。


 


 また一人詰める屋台のおでん酒


  柏市) 物江里人


 「詰めてもらえますか」の声がして、屋台のおでん屋の客が増える。


次第つまり行く屋台の椅子ではあるが、この声がするとき、席はあり


ませんよとの返事がなされることはない。それこそ、腿と腿を摺り寄せ


てまで席を詰めてくれるのだ。もっとも「も一人詰めてくれる?私女だ


けど」の声は少ないようだ。


                   


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            草津温泉宿のひな人形


 


  聖鐘に裸木唱ふごとく立つ


  ドイツ) ハルツォーク洋子


 教会から響いてくる聖鐘に寄り添うように植えられている樹木は今や


落葉て裸木、その様は教会の聖堂で立ちながら神への讃美歌を歌う人


のようにすらりと。冬のドイツの風景から。


 


予科練の短剣ほどのさんまかな


  土浦市) 茂出木皓介


 


 内濠派将外濠派鴨の陣


   福岡市) 下村靖彦


 日本国が冬を迎えると、北の国から多くの渡り鳥が訪れてくる。鴨も


そのつ。日本の名城と言われる城の濠に居所を決めるのが好きのよう


だ。それにしても不思議に思えるのは、俺は内濠派だぞ、いや外濠派じ


ゃ、と所属を決める何者かが居り、双方でそれぞれ鴨の陣が張られてい


ることである。この句で使われた「将」の字の意味するものの深さや曖


昧さには解釈でいささか難渋する。


 


       


 


  (2019.3.15) 


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  随想コラム 目を光らせて:so-netブログ


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