So-net無料ブログ作成
前の10件 | -

404 穭田や未来ある如揃ふ青* [文芸(短歌・俳句) 時事]

 



 随想コラム「目を光らせて」NO.404「朝日歌壇・朝日俳壇から」     


    俳壇 期間2018.12.02~12.23


      穭田や未来ある如揃ふ青* 


    *題目: 朝日新聞2018.12.02 


       石橋玲子さん(枚方市)の入選作。


                アオウ ヒコ


15-15-DSC_0189.JPG

                鉛筆画家 木谷 啓の鉛筆画集:


               「ありがとう。おもしろかった。」から


            作品 その15 DSC-189



「変な題名の画集になりました。才能が不足しましたが、まあこんなも


のでしょう。すべては天帝の計画通りです。長寿をいただいたので、絵


を描ける間は描き続けられるといいなあと思います。皆様、ご多幸を」


(木谷 啓)


        朝日歌壇・朝日俳壇から」(趣旨)



 朝日新聞の歌壇・俳壇の入選作の中から最近の事象を鋭い表現で切


り取った作品を歌壇・俳壇交互に選び筆者がコメントを付けています。


コメントは文芸上の範を越えることがあります。作品の頭にが付


いた作品は、時の政権が推進する前のめりの右傾化路線や平和憲法を


無視し、国会の存在をないがしろにするさまを放っておけぬとする市


民の声であり、これを矯める叫びでもあります。これらの作品は、こ


こでは個々の作品の文芸上の軽重を問うことなく全ての作品を網羅し


、本稿に採録しています。


 これらの作品に対しては投稿者の真摯な叫びと呼び掛けに読者の耳


素直に従うべしとして、コメントはつけておりません。


 また、文中敬称は省略しています。(筆者)


    



     朝日俳壇 2018.12.02


                       


01-DSC_0004.JPG

    



 猪の入りきらざる牡丹鍋


     (新座市)五明紀春


 日本の山村部で猪の跳梁が伝えられ、その駆除に伴うジビエ料理の盛


況が伝えられる。牛豚鶏の肉を材料にすればスキヤキ鍋を囲むとしても


、食肉をそうふんだんに使うわけにはいかぬ。だが、猪鍋の場合は肉の


供給が過大で、もっと沢山食べよであり、牡丹鍋には猪肉の供給が途切


れる心配はない。


 


 戻りしかルルルルルルと鳰の声           


     (飯塚市)田中義春


 作者は河口辺りにお住まいか。冬には河口の水面に飛来、出没する鳰


(にお)の姿を日夜眺めて暮らす日常のようだ。カイツムリの姿は水面に


浮かんでは、ふいっと水没し、しばらくしてかなり離れたところに浮上


するのが常だ。声を耳にする機会はほとんどないが、作者はルルルルの


声を日常的に聞いている。


  


放射能まだ手付かずの山眠る             


   福島県伊達市) 佐藤 茂


                                             


03-DSC_0007.JPG

 


  露の世や四十分で人焼ける             


    長野市) 縣 展子


 人が死に、葬儀が行われ、荼毘に付される。葬祭場で待つ間、露の世


に別れるは四十分程だと知る。諸行無常の人の世を感じる場所にあって


、人焼けると言い放つはどうかと思われる。まだ若くて、自らが逝く日


には思いが及ばないからであろうか。今のところ、即物的に日々を渡っ


ているのか。            



  熱燗や強気弱気の入り交じり             


   兵庫県猪名川町) 小林如水


 熱燗を汲んでいる。口に入る盃ごとに酒温は定かならず、その時の思


考の成立に微妙な変化を齎している。熱燗なれば、わが思いは強気に転


び、冷め気味であれば、弱気に転じる。この二者が常に揺曳し続ける。



  防人の故郷偲ぶ壱岐の冬


   長崎市) 佐々木光博             


 九州と朝鮮との間に対馬と共に飛び石状をなす島。もと壱岐国、今、


長崎県壱岐郡。九州本土から約25㎞離れる。緩やかな丘陵、台地が多い。


(広辞苑)古代日本はこの壱岐地方に大陸諸国の侵略に対抗する防人の


部隊を配した。防人の多くは東国から徴発されて筑紫・壱岐・対馬など


北九州の守備に当った。今、冬の壱岐を訪れ、徴用された防人が故郷と


妻子を偲んだ様を切に思う。


                                 


05-DSC_0011.JPG

                                        


  牡蠣割女手の止まるとき子の話 


    岡山市) 和田大義


 賃仕事で流れ作業の牡蠣割女の仕事をしている。仲間も無言で手は動


き続けである。そして小休止の時間が来て牡蠣割女の手が止まる時が来


る。その時の話題は我が家の子の話である。爆発するように一斉にこの


話が始まるのだ。



 森深き薄日の小道けらつつき 


    ドイツ) ハルツォーク洋子


 ドイツ居住の日本人がドイツの秋を知らせてくれている。今日は近く


の深い森の散歩。深い森だけに漏れる薄日の小道を歩けば、啄木鳥が木


をつつく音が聞こえる。



 熊除けの鈴を清らに登校す 


    久慈市) 和城弘志 


 児童たちは登校するときに熊除けの鈴を鳴らして歩く。清らに、とい


うのがこの句を引き締めた。確かにこの鈴は清らな、清冽な音を点てる


のであろう。児童たちもこの鈴の音に触発されて、勢い活発な会話を交


わし続けて歩く。もし熊が近くに居ても、この涼やかな音を発する集団


から、自らを遠ざけようとするに違いない。



 穭田や未来ある如揃ふ青


    枚方市) 石橋玲子


 穭田(羊田;ひつじだ)とは聞き慣れぬ言葉だが「一面にひつじの生


え出た田」の謂いであり、とは稲刈り後に残された切り株から芽出


しした短い稲のことである。稲田に残る一面の切り株から出た新芽の


青を見て「穭田をこうして見ると何だか未来があるように思えて来ま


すね」であるが、実際にはほとんど役に立たずである。             



               朝日俳壇 201.116


                               


02-DSC_0006.JPG       


  子らの声沸けるがごとく黄落す


     (姫路市)吉田光代


 秋が深み行き、大木の黄葉がみるみる落葉するころを迎える。その様


は大勢の子供が一時にどっと喚声を上げるのに似ている。


 


  古日記出して亡き子と遊びけり               


    (鹿児島市)青野迦葉


 若いころから連用日記を付けてきておられる。日々の出来事を丹念に


綴って来た。当然子供の出生、成長の細々が含まれている。夭折した子


もいるが、今その子と遊ぶために古い日記を出してページを繰っている。


今日あることを思ってペンを走らせたわけではなかったが。


 


 禰宜と巫女着替えずテニス神の留守   


  (神戸市)日下徳一  


 このお宮の近くにテニスができる広場があるのか、社務所に務める若


い男女の禰宜と巫女が、お昼時であろうか、仕事着そのままテニスに興


じている。参拝者もなく神も中座したまう貴重な「おひるどき」である



 ばさと鮭つかみて翔てり尾白鷲


  (札幌市)前田豊作


 北海道のいずれかの河川で、鮭の上るのを見ていたその眼前で起きた


出来事。音もなく空から河川の白波に舞い降りた尾白鷲一羽。羽を畳む


暇もなく、ばさと音を立てて両足で鮭を掴み、次には羽ばたいて空に舞


い上がりました。一瞬のことに思える見事な漁でした。 



 翔ぶよりも止まりたがるは冬の蝶       


  (岡山市)伴 明子


 やはり翔ぶには寒さが邪魔するのでしょう。さすがの蝶も翔ぶよりも


とまりたがるようです。冬の蝶は。


 



  ( つづく → NO.404-2 



  (2019.3.15)


 


 



nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

404-2 鷹の目のゆっくり回しゆく大地* [文芸(短歌・俳句) 時事]

  随想コラム「目を光らせて」NO.404-2「朝日歌壇・朝日俳壇から」     


   俳壇 期間2018.12.16~23


 


    鷹の目のゆっくり回しゆく大地


 


    *題目: 朝日新聞2018.12.23


         松村史基さん(静岡市)の入選作。


            アオウ ヒコ           


190209 Cellist   jpg.jpg


   水彩画家 酒井 健 の人物画から 「チェリスト」 


 


                     190209 Cellist  jpg.


         


 


 酒井さんから去る2月18日に便りが届いた。

「昨日と違っていくらか暖かいですね! 先月私の古稀の祝いにプロの演奏家を招い

て、これまで世話になった兄弟、親戚にチェロ演をプレゼントして大変喜ばれまし

た。一同、素晴らしい音色にうっとり感動いたしました。

とても美人で気さくな人で話も上手、早速ファンになりましたが、プロフィール画を

描いて欲しいと頼まれました。人物は描いたことがなく無理ですと答えましたが、待

てよ、と考え直し初の挑戦を致すことにし、完成しました。送ります

 上掲がその作品です。(筆者)

            


 


 少年の目をして独楽の回りけり


  (霧島市)秋野三歩


 細紐を独楽の胴側に回し終えて、エイと宙に飛ばして鋭く引き、独楽


に回転をかける。落 下した独楽はまもなく芯棒を中心に澄む状態とな


り静止する。この澄む独楽を少年の目が見つめていた。今この澄む独楽


を見つめている私の目は、かの少年の目そのものをしている。 


 


 枯草やすでに大地の息づかい


  (箕面市)櫻井宗和


 この枯草は一木一草の草ではない。寒気が支配する大地の表は一面の


草が枯れた状態にある枯草である。その枯草を支えるのは大地である。


耳を澄ましてご覧なさい。枯草の下の大地には既に春の息遣いが聞こえ


るはずだ。


 


 トランプもゴーンも好かぬみかんむく


  (泉南市)西 知子


 世界をわが物扱いにしてやまぬトランプとゴーン。二人とも好かんね


え。意趣晴らしする ではないが、炬燵の上でみかんを剥いている。乱


暴なまでに大きく皮を剥き、中身の袋を二つ三つ、一度に口に放り投げ


、ぐしゃりと噛み潰すのだ。日本を舐めちゃああかんで。お二人さん。


 


 万葉のよろづの恋よ日記買ふ


  北本市) 萩原行博


 万葉の時代に歌われた数々の恋の歌。いかに当代の男女が歌の洗練と


熟練目指して和歌作りに沈潜また耽溺したか。現今の比ではないであ


ろう。その大いなる反省と今後のあるべき姿を思うとき、日常の言語の


交換記録のベースになりうる日記への記帳を考え、購入に及んだ。


 


 柿の実のきのふの空に消えにけり


  (熊本市) 坂崎善問


 庭の柿の木に、ただ一個だけ残った柿の実があった。だが、昨日まで


は在たのに、昨日の空に消えてしまった。鳥に食されてしまったに相


違ない。


 


 病院の廊下の迷路冬の夜


  加古川市) 森木史子


 大病院に入院して病室からトイレかどこかに一人で行かれたのであろ


う。なくすぐに自分の病室に戻れると思ったのが悪く、どこかの角で


曲がり損ねたらしい。なかなか、出合う人もなくガランとした病院の廊


下の迷路に嵌ってしまった。冬の夜にである。


 


 


           朝日俳壇 2018.12.23 


               


10-DSC_0022.JPG

                               


          草津温泉から遠く山並を望む 


   


 吾ゆくを妻の待ちゐる眠る山                  


    長岡市) 長谷川回天


 冬の間、ああして眠るあの山には、すでに亡くなった妻が私が行くの


を待ている。私がいつあの山に行くかはまだわからない。山を見るた


びに、そのうち逝くから待っておれ、と呼びかけてはいるが、なかなか


実現しないので、待ちかねたか、この頃はひたすら眠りに徹しているら


しい。


 


 鷹の目のゆっくり回しゆく大地                 


   静岡市) 松村史基


 鷹はどのくらい高い空を回りながら翔ぶのだろうか。中、小型のタカ


と呼大型のものを鷲と呼ぶという(広辞苑)が、地上に生息する小型


の鳥獣を鋭い目で探し、発見すると急降下して捕捉するわけだから百メ


ートルそこそこか。ゆっくりと旋回するから、きょろきょろ する必要は


なく、大地はゆっくりと回り行くようだ。鷹の目を固定した視点にして


大地を動かすという発想がいい。


 


 鶴の棹とは音の無く影の無く


  神戸市) 玉手のり子


 渡りで鶴が飛翔する形が真っすぐに長い姿で渡るのを鶴の棹と称した


らし。その鶴の棹が空を渡り行くときは音も無く影もなしですよと例


えている。


                   


14-DSC_0031.JPG

            草津温泉の内園 雪景色


 


 


 白さこそ命なりける根深かな


  島根県邑南市) 服部康人 


 色の白さを物の評価の傑出点に選ぶは数々ある。女の肌、大根の根、


雪、子等々であ る。しかし白さこそ命なりけるというのは根深葱に


ほかないという。


 


 導尿を尿の流るる寒夜かな           


   高松市) 島田章平 


 「導尿;普通にはあまり聞かない言葉だが、泌尿器科の病院の治療


では頻に使われる医学用語である。「診断または治療のため膀胱に


カテーテルを入れて尿を体外に導くこと(広 


辞苑)とある。膀胱を患らい、膀胱にカテ-テル処置した患者が冬の


寒い夜、カテーテルの 中を通って出てくる尿を見ている


 


 埋め火に鬼も手を出す寒さかな


  東京都) 大谷儀一


 日本各地の残る鬼にまつわる物語。鬼の面をつけ強い形相をした屈強


な鬼が部落の家を訪ねて歩く。中に子供がいれば、大声を出して上が


りこみ、児らが泣き出すまでは退散しない。その鬼もですよ、その日の


寒威の鋭さにはいささか参っていたらしく、家中の火鉢の中に埋め火が


あるのを目ざとく見つけ「おお寒いなあ」と悴んだ手をかざしたとさ。


 


 足跡が沖を見ている冬の海


   鹿児島市) 青野迦葉


 冬の海を見ようと浜に出た。先客がいたらしく浜には足跡が残ってい


る。その人は海に向けてまっすぐ立っていたようで足跡がそうだった。


永い時海を見ていたらしく足跡は深く刻まれて、冬の海が寄せて来る


波もなかなか消し去ることはできなかった。


 


                  


16-DSC_0043.JPG

               草津温泉宿の飾り玉


 


 ★十二月八日忘れじ改憲論 


       名古屋市) 青島ゆみお


 


 ★デモ隊と機動隊行く聖樹の灯 


          川崎市) 多田 敬


 


 寒林のなかの目玉よ生きている


  高崎市) 本田日出登


 冬の季節に車を出し、夜ライトを点けて山林を走るとき、カーヴに差


し掛かる折にライトが山中を掠め照らすとき、キラリと眼玉が光ること


がある。山林のなかで冬を越す獣が生きているのだ。ああ、恙なくいき


ていておくれ、と私は静かにアクセルを踏む。


 


 また一人詰める屋台のおでん酒


  柏市) 物江里人


 「詰めてもらえますか」の声がして、屋台のおでん屋の客が増える。


次第つまり行く屋台の椅子ではあるが、この声がするとき、席はあり


ませんよとの返事がなされることはない。それこそ、腿と腿を摺り寄せ


てまで席を詰めてくれるのだ。もっとも「も一人詰めてくれる?私女だ


けど」の声は少ないようだ。


                   


22-DSC_0063.JPG

            草津温泉宿のひな人形


 


  聖鐘に裸木唱ふごとく立つ


  ドイツ) ハルツォーク洋子


 教会から響いてくる聖鐘に寄り添うように植えられている樹木は今や


落葉て裸木、その様は教会の聖堂で立ちながら神への讃美歌を歌う人


のようにすらりと。冬のドイツの風景から。


 


予科練の短剣ほどのさんまかな


  土浦市) 茂出木皓介


 


 内濠派将外濠派鴨の陣


   福岡市) 下村靖彦


 日本国が冬を迎えると、北の国から多くの渡り鳥が訪れてくる。鴨も


そのつ。日本の名城と言われる城の濠に居所を決めるのが好きのよう


だ。それにしても不思議に思えるのは、俺は内濠派だぞ、いや外濠派じ


ゃ、と所属を決める何者かが居り、双方でそれぞれ鴨の陣が張られてい


ることである。この句で使われた「将」の字の意味するものの深さや曖


昧さには解釈でいささか難渋する。


 


       


 


  (2019.3.15) 


  XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXX


  随想コラム 目を光らせて:so-netブログ


  URL:http://columneye.blog.so-net.ne.jp/


 


 


 


nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

403 罠にかかる一羽のために集まりしカラスの大群烏合にあらず* [文芸(短歌・俳句) 時事]

  随想コラム「目を光らせて」NO.403「朝日歌壇・朝日俳壇」から     


   期間2018.12.02~23


   罠にかかる一羽のために集まりし


  カラス大群 烏合にあらず* 


    *題目: 朝日新聞2018.12.02 


          斎藤哲哉さん(蓮田市)の入選作。


          アオウ ヒコ             


14-14-DSC_0188.JPG

鉛筆画家 木谷 啓の鉛筆画集:

「ありがとう。おもしろかった。」から  

             作品 その14   DSC-188


「変な題名の画集になりました。才能が不足しましたが、まあこんなも


のでしょう。すべては天帝の計画通りです。長寿をいただいたので、絵


を描ける間は描き続けられるといいなあと思います。皆様、ご多幸を。


 (木谷 啓)


 朝日歌壇・朝日俳壇から」(趣旨)


 


  朝日新聞の歌壇・俳壇の入選作の中から最近の事象を鋭い表現で切り


取った作品を歌壇・


 俳壇交互に選び筆者がコメントを付けています。コメントは文芸上の範


を越えることがあり ます。作品の頭にが付いた作品は、時の政権が


推進する前のめり の右傾化路線や平和法を無視し、国会の存在をない


がしろにす るさまを放っておけぬとする市民の声でありれを矯める叫


 でもあります。これらの作品は、ここでは個々の作品の文芸上の軽重


問うことなく、全作品を網羅、採録しています。これらの作品に対し


ては作者の真摯な叫びと呼び掛けに、読者の耳素直に従うべし、としてコメントはつけておりません。また、文中敬称は省略しています。(筆者)


 


 


   朝日歌壇 2018.12.02


                            


04-DSC_0009.JPG

 


 


 蘖のごとく大樹に寄り添ひて植物の時間を生きる黒猫


   (東京都)大泉章子 


 植物も大樹となると鬱蒼とした枝葉伸ばしの他に、根元にはもじゃもじゃと


(ヒコバエ)が生え出るものだ。日向であろうものなら、温かい場所でもあるか


 猫が寄り付く。その景を見て植物の時間をきる黒猫と看破したようだ。


 


 村上は三面川を遡上する鮭を崇めてイヨホヤとぞ呼ぶ          


   (鎌ヶ谷市)羽鳥健一郎 


  新潟旅行をするまでは村上なぞという地名は知らなかったが、 彼の


地へ行ってすぐに気づいた。村上の地が新潟では図抜けて著名で文化の


薫り高い地であることを。三面川を遡上する鮭を捉え、これに塩引して


土間の梁に吊るされた大鮭はかっと口を開いて次第に枯れて熟れてゆく。


イヨホヤ様と崇めるのであろう。


 


メキシコにモーセなくとも乳と蜜流れる国がそこに あるのだ


    渋川市) 中村幸生


 


あると聞く山の三叉路梼原に竜馬を偲ぶ脱藩定食             


  松山市) 宇和上 正 


 かつて時代の風雲児、坂本竜馬が藩したとき通った山の三叉路梼原


馬を偲ぶ定食屋(その名を脱藩定食)があると聞く。自分で行って


かめたわけではないが、と伝聞であることを断ってはいるが、え? ほん


とかよ、として現地へ走った人の報告で確かだそうな。そのお人はそ


で何を食したのか。「竜馬はあたふたと食ったか、それとも悠然とか


」定屋の主人は「路銀はたっぷりお持ちだったようで」と答えたら


い。


 


 罠にかかる一羽のために集まりしカラスの大群烏合にあらず


   蓮田市) 藤哲哉 


 烏の大群がぎゃぎゃあと鳴き騒ぐので、何事ならんと首を出と、罠


にかかった仲間の一羽のためだった。烏が大群をなすことを烏合と言い


それでいて増しな知恵も解決策も出せずにいることを烏合の衆として


視するのだが。実は烏の知恵は相当に高いことで知られている。下手


手を出せば「罠を仕掛けたのはお前だったのかよう」と一斉に嘴太鴉


の襲撃 を呼ぶこと間違いなしであろう。


 


  朝日歌壇 2018.12.16


      


02-DSC_0006.JPG

 


 


 家出する母を追いかけ早朝の赤信号を無視して渡る                 


   さいたま市) 竹下敬子


 これは緊急避難の状態でありますから、許してつかわさい、という叫


でありますなあ。家出する母御は相当に老齢のお方で、そのまま放置


ておけば、車に刎ねられて交通事故を引き起こすは必然。私が赤信号


を無視して渡るも必然でしたね。


                                         スケールはゴーンに比して微々たれど我が心にも強欲存す


   (三原市)岡田独甫


 日本人は昔から「天知る地知る我知る」をモットーにして強欲に走る


を諫めてきた。スケールの大小ではなく、こころ穏やかな人生でな


ければ人としての価値に悖るとの思いが強く働いたのであろう。ゴーヨ


クゴーンは、私は何も悪いことはしていない、ゴーヨクはプチもノンと


言い張っている。微々たる強欲はあるという日本の和尚さんの正直さを


見習えってことか。


 


 ★原発の電力微塵も使わざる福島の地に核積もり行く  


  (横須賀市)梅田悦子


 


 二百貫の黒牛売って魂抜けの小屋にどかっと冬の日の入る


  (津市)中山道治


  黒牛1頭の重量が弐百貫もするわけはなく、飼っていた牛の殆どを


りに出し、牛が居くなった小屋はガランとして、静かな小屋のすべ


に冬の日がどかっといっぱいに入る状況になった。こんなにも静か


な牛舎を見るのはたまらない思いだ。


 


「満蒙開拓」に兄も征き死を免れて帰れど病みて若死にたり   


  (伊那市)小林勝幸


 


いっかしょにこれほどきちをおしつけてふんぞりかえる


せかい例なし (大和市)李 種太


 


 


 田仕舞のけむりが閉ざす視界から手品のごとくバスが貌出す


  (霧島市)久野茂樹 


 稲作農家の田仕舞は、稲刈り、稲架干し脱穀後に生じた籾殻を稲田


み上げて、裾に火 を付ける燻炭作りで終わりを告げる。数多くの稲


田跡から立ち上る田仕舞の煙が重なると、視界をを閉ざすほどになる。


その煙の中から、不意に、手品でも見るようにバスの頭部が姿を見せ


たりする。


 


 


   朝日歌壇 2018.12.23


                


03-DSC_0007.JPG

 


 


 ★阿武隈の空広くして葛尾に七年ぶりの牛棟に充つ


  (福島市)青木崇郎


 


 山頭火も木曽へと越えし峠路も廃れて猿の大き群ゐる 


  (伊那市)小林勝幸


 木曽路の近況を一つ、ご紹介。あの山頭火も木曽へ 越えていった峠


も、今は廃れてしまって、あの辺は猿の大群を見かけるようになった。


 


 ★汚染土の埋まる庭先黄杭四つ掘り出しは年明となるらし 


  (郡山市)柴崎 茂 


 


動員の鉢巻締めて糸繰りし級友の訃を聞くのこるもさびし


   (大分市)岩永知子


        


反戦を忘れるよなとめぐりくるわが生まれ日の十二月八日


   (嘉麻市 野見山弘子


 


福島の猿に異常が起きている小さい記事がとても気になる


   東京都) 野上 卓


 


沖縄に愛無き人が基地負担軽減をいう悪しき冗談        


   国分寺市) 田辺龍郎


 


原発事故風化の中に帰る所無きまま彷徨う八年目の苦悶


   いわき市) 守岡和之


 


 木曽路この氷と雪と灯の祭馬込の宿の路地の坂道                  


   伊那市) 小林勝幸


 木曽路をめぐる風景をいくつか。氷、雪、灯の祭り。それにお見せ


たいのが馬込の宿の路地の坂道。


 


  笹かまを贈れば丹波の芋とどきこころ行き交う師走となれ


  り 仙台市) 沼沢 修


 


 知人にちょっとしたものを贈る。お返しにその知人からちょっと


たものが贈られてくる。心行き交う師走の嬉しさがある。


                                          故郷を守れと辺野古に座り込む熱き心のおじいおばあよ


  調布市)  豊 宣光


                


柚子.JPG

  


 


       水彩画家 酒井 健の作品から「柚子」

 *=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=* 

 


   2019. 3.01


  


 


nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

402 蒼天は予言の如し鮭上る* [文芸(短歌・俳句) 時事]

   随想コラム「目を光らせて」NO.402「朝日歌壇・朝日俳壇から」     


  俳壇 期間2018.114~11.25


  


    蒼天は予言の如し鮭上る* 


  *題目: 朝日新聞2018.11.04


     萩原行博さん(北本市)の入選作。


           アオウ ヒコ              


13-13-DSC_0187.JPG鉛筆画家 木谷 啓の鉛筆画集:


 「ありがとう。おもしろかった。」から


   作品 その13  DSC-187 


 変な題名の画集になりました。才能が不足しましたが、まあこん


ものでしょう。すべては天帝の計画通りです。長寿をいただいた


で、絵を描ける間は描き続けられるといいなあと思います。


 皆様、ご多幸を。」(木谷 啓)


朝日歌壇・朝日俳壇から」(趣旨)


 


 朝日新聞の歌壇・俳壇の入選作の中から最近の事象を鋭い表現


切り取った作品を歌壇・俳壇交互に選び筆者がコメントを付けています。


コメントは文芸上の範を越えることがあります。作品の頭にが付い


た作品は、時の政権が推進する前のめり の右傾化路線や平和憲法を無


視し、国会の存在をないがしろにするさまを放っておけぬとする市民の


声であり、これを矯める叫びでもあります。これらの作品は、ここでは


個々の作品の文芸上の軽重を問うことなく全ての作品を網羅、本稿に採


録しています  これらの 作品に対しては、投稿者の真摯な叫びと呼び


掛けに、読者の耳素直に従うべしとして、コメントはつけておりません。


 また、文中敬称は省略しています。(筆者)


 


 


  朝日俳壇 2018.11.04 


                                         


ohchid0025.jpg

                                                 らん カトレア


                       


 吾よりも山美しく粧へる


  (長野市) 縣 展子


 秋を迎えて向こうに見える山が美しく色づいた。こうして対峙する私も、先ほど、


程よく化粧してその出来栄えに満足して山を見上げている。でも「私より美しい 


じゃない!」と思わず口に漏らしそう。大自然の美を称える一方、私もそれ以上


に美しく見えるでしょう」と自分の美を誇示したい思いは十分の季節。


 


 鰯煮る心やさしき箸使ひ           


  (堺市) 吉田敦子


  鰯を丸のまま煮つけるときに留意すべきはその表皮の薄さであろうか。


箸で強引な箸使いをすれば、鰯の表皮は破れて身は露出して無様とな り、


皿に盛り付けに苦労することになる。料理人は何時それを体得したの か。


主婦や彼らは、鰯の煮つけをするとき、実に心やさしい箸使いをする。


箸の胴を揃え、ゆっくりと鰯の身を動かし、火も優しめにして、あまり


過ぎない。こうして、ふっくらとした鰯の煮つけが出来上がるのだ。


  


 稲刈女八頭身をもてあます             


  横浜市)  飯島幹也


 稲作も収穫時の稲刈から脱穀までを大型のコンバインでやる時代にな


 て、稲刈女の出番も少なくなったようだが、土地狭隘で、稲作の土台


が棚田である場合は、従前の稲刈女の出番もあろう。だが、そこで身長


が八頭身もあれば、身を持て余すこと限りなしであろう。稲の背丈は高


くても1 m、稲刈りのために背を前に屈すれば、ちょうど背が隠れる程


度の農婦背が実用上便利であろうが、それより高いとなと、何かと不都


合が出てくるものだ。弥生式農耕文化を支えた稲刈女たちは、低頭身で


労働に勤しみ、文化の中心を支えたものだった。過ぎたるは及ばざるが


如し、である。


 


 月光や魑魅の躍る石舞台             


  大阪市)  森田幸夫


  この句では魑魅を すだま とルビを振っている。日常会話では「魑魅魍魎」


(ち みもうりょう)と四文字にして使うことが多い。(山の怪物や川の怪物。さま


ざまのばけもの)。二文字の「魑魅」(すだま)には「山林・木石の精気から生じ


る」 という人 面鬼身の怪物」(広辞苑) との説明である。 


 皓皓と照る月光が明るく石舞台を照らしている。その舞台の上でさまざまな


化け 物たちが、ここを先途と踊り狂っているようである。


 


 蒼天は予言の如し鮭上る             


  北本市)  萩原行博 


 春になると春の空(造物主がお造りになる蒼天)が大空に現れる。こ


が現れると、不思議なことにあたかも予言であるかのように川に鮭が 


上ってくる。


 


 二つ三つ木の実拾えば手の湿り


 松原市)  加藤あや            


 不思議なものですね。木の実は樹下に落ちて仮死の状態に見える。


でも、これを手で二,三個拾ってしばらく歩くと、手の平には湿り気が 


来るんですね。生きている徴でしょう。


                                       


 廃材をよせて猪垣大雑把 


  伊賀市)  西澤与志子


 手間かけて作った農作物めがけて、余計なものがやってくる。イノシ


シというヤツ。荒らされるのを防ぐために猪垣を作らねばならぬ。でき 


だけ、金がかからぬように、到る所から廃材を集めて猪垣を作る。こ


れさえ作れば、畑には金目の作物が成り下がるというわけではない。


入られたら困るから作る垣だ。大雑把な造りになるのは致し方なかろ


う。                                          


   朝日俳壇 201.1.11       


ohchid0122.jpg

         


  枯野径吾そつくりの老に遇ふ


   (高山市)直井照男


 今冬の枯野径を散策している途中、びっくり驚いたことに出遇った。 


向こうから歩いてきた人に出会ったのだが、その人が私とそっくりの老


人であったことだ。そっくりというから容貌もそれであったのだろう。 


老い加減も類似して、背丈も背の曲がり具合も歩き方も極端に類似した


お人だった。数年前に唯一の弟を亡くしていたから、彼奴がこの辺りを 


徘徊しているはずはない。あまりに突然だから、声をかけそびれて、や 


り過ごしてしまったが、今から思えば、「もしかしてあなたは・・・」


と呼び止めて話をすれば新しい展開があったかもしれず、惜しいことを


した。数日後、同じ径に出てみたが、その老には出合えず、以来、かの


人は妖として行方しれずである。


 


 存へて拵へて旨き栗おこは               


  (岐阜市)阿部恭久  


 その栗おこははおいしい。例えようがないほどに。それは、私の家に 


命永らえて、長年培った先祖代々の料理の腕を完璧ならしめた婦女の


 手で拵えなさった栗おこはであるからだ。おこはの中には確かな栗剥き 


の腕が揃えた粒よりの栗が程よく混ざり、蒸された粳米の薫りが鼻腔を


擽り過ぎるとき、この旨さを作り出す手が、存(ながらへ)て拵(こし


ら)へて下さった婦性の手であることに気付かされる。


 


 新米の弁当提げて村歌舞伎   


  (加古川市)森木史子  


 当地の一年の収穫祭に当るのが秋口に演じられる村歌舞伎。この日を 


待ち兼ねるようにして村人は総出で村の演舞場に駆けつける。もちろん、


もちろん今年の新米の弁当を引っ提げての蝟集である。


 


 ノーサイド友の訃告げし笛


  (神戸市)岸田 健 


 ラグビーをよくした友人の訃が届いた。この地と彼の地を分けて鋭く


り響くノーサイドの笛。長年の友情もついに終止符を打ったるか。ラ


グビー観客席や飲み屋の席で隣り合わせで座り、口角泡を飛ばすことも、


すでに今はない。敵味方の確執を一遍に解消する知らせが本来のノーサ


イドの笛なのだが、親友とのノーサイドは此岸、彼岸への永久の別れの


笛だ。のほほんと聞けるものか。


 


 洋上に全うしたる流れ星      


  (三木市)酒井霞甫 


 洋上か高山の頂上などに立ち、宙天を眺め上げる機会があろう。短い


 時間にも多くの流星が降る。短く光ったかと思えば須臾に消える流星


が多い。だが宇宙の端から光芒を発して沖天を過ぎ、光芒を曳きつつ宇


宙の果てに没し去る特大の流れ星もある。宇宙の神秘を小さい地球人が


見ている。


                   


ohchid0107.jpg

 


 


 主婦なるや恙治れば秋刀魚焼く


  (横浜市)小川みゆき


 わたし主婦なんです。しばらく病に罹っていましたが、治癒しました


ので本業の台所に戻り、秋刀魚を焼いている。なんだか、本業を取り戻


せたようで嬉しい日々です。


 


 蓮根堀比良の夕日にせかされる


  (奈良市)田村英一


 蓮根の収穫期とあって蓮根堀りが行われる。水中の作業ことだし深い


根が張っていたりして、そうは簡単にはいかない。初冬のことゆえ比良


夕日の入りが早く、そろそろ終りにせねば日も暮れるわよと急かされ


 ることだ。


 


 焼き芋の帆布のごとき皮を剥ぐ


  (三鷹市)二瀬佐恵子 


 本式のつぼ焼きに吊るされた甘藷芋。周りから、ゆっくり、じっとり


 十分に焼かれるため、藷の外皮はあの厚い帆布のようになっている。


 食べるには、まず、この厚皮を剥がさねばならない。


 


七五三憲法九条第一項


   越谷市) 伊藤 と し昭               



 ( つづく → 目を光らせて 
NO.402-2   


 


 (2019.2.15) 


 


  随想コラム[目を光らせて]so-netブログ


  URLhttp://columneye.blog.so-net.ne.jp/


 


 


 


 


 


nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

402-2 瀧落ちて紅葉一刀両断す* [文芸(短歌・俳句) 時事]

    随想コラム「目を光らせて」NO.402-2「朝日歌壇・朝日俳壇から」     


    俳壇 期間2018.1118~25


 


 


     瀧落ちて紅葉一刀両断す


 


    *題目: 朝日新聞2018.11.18


        村中聖火さん(敦賀市)の入選作。


                 アオウ ヒコ


           
190121極楽鳥花.jpg

          水彩画家 酒井 健 の作品から  極楽鳥花 


 


                                 190121


 


 


 


       朝日俳壇 2018.11.18 


 


ohchid0102.jpg

                                                                                                                          


    腸までも食ひし夫の忌秋刀魚焼く                  


                    茨木市) 窪田宣子


 二人とも秋刀魚は好きでしたから、秋口にはよく焼いて食べました。


夫ははらわたまで食べました。今日は亡き夫の忌日でしたから秋刀魚


日、たまには私も腸まで食ってみましょうかね。


    


   陽だまりを命だまりに冬の蝶                 


                稲沢市) 杉山一川


 夏の蝉があっという間に命を落すのとは違い、蝶は秋から冬まで命永 


らえるようだ。陽だまりにじっと動かずにいる姿を見かける。人はその


姿をて、陽だまりは蝶の命だまりだね、と即決するのか。


 


  茸山や兜太に虚子に似て豊か                  


                 三郷市) 岡崎正宏 


 近くに茸がよく獲れる山がある。この山に分け入って思う。今は亡き 


太や虚子に似て豊かそのもの、豊潤にして豊麗な言の葉に満ち溢れて


 いる。


 


  瀧落ちて紅葉一刀両断す


          敦賀市) 村中聖火


 秋口になると、瀧の両翼の樹木は紅葉して瀧を囲む姿を見せる。その


瀧を遠望するとき、紅葉樹林を白い刃が一刀両断しているように見え


る。秋の紅葉を見る立位置による美しさの変化が楽しい。


  


  爽やかや帰郷するてふ子の電話


            大牟田市) 古賀昭子


 


 嬉しい電話の数々はいくつもありましたが、子供の時に共に育ち暮ら 


た子が休みを取って帰郷しますとの電話を受けたときの嬉しさったら


 ありませんでした。耳朶に残る声のなんたる爽やかさ、本当に嬉しい知


らせをありがとう。


 


  良き水と米の新酒の薫りけり


            流山市) 渡部和秋


 この候になると、新酒の薫り立つ頃となる。蔵元の位置する土地の良


水と酒米が時を経て醸し出す到達点。今年もやってきましたね。


 


  軒のある家誇らしや吊し柿


           横浜市) 村中聖火


 吊し柿は、あまり早い時期に剥いて吊るしてはならない。外気が寒気


変わる11月の半ばに吊し始めるのがいい。さて、どこに吊るすかが問


題になる家もある。窓だけはあっても軒がない家に住む人は、軒いっぱ


いに柿を吊るす家を見て羨ましくてならない。「あの家、軒下に誇らし


げに吊し柿を干しているなあ」と最後は歎声になるようだ。


 


  風葬の死者の叫びよ虎落笛


          大村市) 小谷一夫


  虎落笛(もがりぶえ);冬の烈風うが柵・竹垣などに吹き付けて笛のような音


を発するものをいう」(広辞苑)


 


ひゅうひゅうと隙間風が忍び寄る。あれは風葬にされた死者の叫びで


よ、と身を竦ませて聞いている。


 


 シベリアの鶴出水野の鶴となる


            霧島市) 秋野三歩 


 渡りの季節である。世界を塒(ねぐら)にしている渡りの鳥たちにと


ては、人間どもが折々の政治・戦力で決めた国境などは一顧だにしな


 い。昨日までシベリアにいた鶴が、厳しい冬を避けて日本に飛来して、


 今日は出水野の鶴と呼ばれている。余計なお世話をするでない。私らは


世界の鶴でありますよ。


                                    


      朝日俳壇 201.125         


ohchid0010.jpg                      

  秋の雲流れる事を定めとす         


               (西宮市)近藤六健 


「雲流れる果てに」という名の映画があった。若い飛行機乗りが、爆弾


や魚雷を積んで、片道切符の特攻機に跨って南海の海に消えた物語では 


かったか。確かに、秋の雲は一所に止まることをしない。もし、あの


雲が片道分の燃料をも入れずして特攻機を目的地へ辿り着かせるとした 


ら喜んだのは誰か、助かると思ったのは誰であったろう。


 


  鹿の眼に映ゆる入日の遠くなり               


                   (大阪市)行者 婉


 私は鹿のごく近くに居てその目を見ている。鹿の眼には入日が近い太


陽が映っており、刻々と過ぎる時が経つにつれて鹿の目に映ゆる入日が


 くなり、次第に小さくなって行く。


 


  身中に老いさらばへし鷹を飼ふ               


                  (川越市)渡邉 隆


 過行く時間と随伴する老いの進行には抗すべきものがない。だが我老


いさらばへれど、身中に眼色爛爛たる鷹を飼っておりまする。よって、


う簡単には滅し果てることはなく、気概ますます盛んなりである。


 


  猪垣に掛かる突進無用札


         (市川市)竹内空夫 


 猪害が大々的に報じられる今、田畑を囲む猪垣が常備されるようにな


た。見廻れば、猪垣に掛かる札あり「突進無用」。さて、これは何を


 伝えようとするのか。


  もし、猪が札の字を読めたなら;


此処いらは吾の畑なれば、頼むから荒らさずにしておいておくれ。 


突進して畑に入っても、ろくなものは育っていませんぜ。


突進したら大変、頑丈な造りだからお前さんの鼻がひんまがりますぜ。


 


 読後、猪は静かに独語するだろう。「ワカッタ シズカニ ホルヨ」


  


  戦死者の本音聞きたし虫の声


            (伊丹市)宮川一樹


 


  汚染土の墳墓の如く山眠る


         (福島県伊達市)佐藤 茂


   



ohchid0092.jpg


 


  つぶやきが一句となりて黄落す


            (加賀市)笠原千恵子


 秋の吟行、今や金色の銀杏並木が屹立、蒼天に映えて真っ盛り。何とか


 一句、秀句に留めんと、つぶやきに呟くことしばし。ようやくに一句を得


 て、心は晴れ晴れとして清朗。その途端です。真向いの金色の黄の塊が一


時にどさっと大地に落ちて参りました。


 


 


                 (2019.2.15)  


 


  XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXX


  随想コラム[目を光らせて]so-netブログ


  URLhttp://columneye.blog.so-net.ne.jp/


 


 


 


nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

401 随想コラム 目を光らせて 「時事寸評」 [時事寸評]

 随想コラム 目を光らせて NO.401 「時事寸評」


        

              オールド ブラック ゴーン 


                                     アオウ ヒコ


190102Black LIly.jpg

                                               水彩画家 酒井 健の作品から「黒百合」190102


 


 早くも月となりました。埼玉県狭山市のアオウ ヒコです。


 お元気にお過ごしのことと存じます。


 日本列島を一つの視野で見れば、東西のいづれかで降雪あり、


吹雪ありで冬の景観としては通常の冬としての推移のようですが


、ここ東京から当地あたりの関東地方に限って言えば、正月から


ずうっと晴天続き、雨が降らず雪も積もらずで、空気が乾き風邪


も流行っています。気温も低く、これだけは冬らしいと言えそう


ですが。(31火夜、久しぶりに雨が降りました。雪になるかも


との予想でしたが、雪にはならず翌朝は快晴に戻りました。


 
 メルボルンでのテニス大会での日本選手の活躍、大坂ナオミ


選手の活躍は抜群、日本中を歓喜の中に引込みました。スタミナ


も切れず、精神的な耐久力の涵養もなされて、世界中の選手と観


客を驚嘆させました。一方の男性選手の錦織君も出だしは相当な


ものでしたが、セットを6:6で落としても最後にタイブレーク


で〆ればいい、とする戦略が疲労の蓄積を招き、5セットを戦い


終われば五時間以上のプレイになっていました。こういう試合が


続けば次に勝ち進むことは無理で、今後はまあ、3セットくらい


でケリを付けねばこれ以上に勝ち上がることは無理というもの。


ジョコ君に途中棄権の申し出をするのは無念、残念でしたが、自


業自得でしたね。



 アジアサッカー予選も順当に勝ち上がり、これは、新しい若


手の台頭を上手に配した新監督の采配の勝利でした。あと、カタ


ールとの試合を残すだけで、アジア代表となれる。大いに応援致


しましょう。



 さて、日産自動車のゴーン会長の金銭疑惑、日本の検察にさ


っと空港で拘束されて、そのまま拘置所暮しが長引いています。


彼は10日ぐらいで、済むだろうと多寡を括っていたようですが、


なんのなんの、素直に吐かねば留め置くまでさ、どこまでも留め


とけ、そのうち吐くさと日本検察。案の定、ポロポロと余罪が出


てきた。


 長すぎるじゃないの、などと日本特有の同情節も出始めていた


が、これは日本人の悪い癖。検察は無視してポイポイと蹴散らし


ていきました。


 ゴーン、ゴーンと鐘が鳴り響くうちに、ルノー本社でも、ゴー


ンの素行や専横ぶりが露見の形となり、このままじゃいかんぞ、


となり、ルノー会長の更迭、新しくスナール会長登場となりまし


た。ルノー社の日産株式保持率の高さを無視するわけにはいきま


せんが、ゴーンの際立った専横が今後も許されるべくはないこと


を、新ルノー会長は理解しているでしょうよ。



 ゴーンゴーンと鐘が鳴るなり 法隆寺 ではないが、あまり


にも数多くの報道がなされるものだから、私の頭の中には,いつ


からか、ゴーンの音がメロデイを伴って流れるようになった。


ゴーン旧会長のゴーンのスペリング(調べる暇がなかった)とは


おそらく違った綴り字のGoneの音がフオスターのメロデイの


出だしの音として流れてくるのだった。


 近くに住んでおられる音楽教師に、庭のバラの誘引の途中出会


い、少年時代から愛唱していた Gone are the days whenの出だし


を持つ歌の題名を問い、ついでに歌詞を教えてもらった。それが


、下記の世界民謡である。歌の内容は今は亡き黒人ジョーを切々


と偲ぶ歌であり、あの専横ゴーンの行く末そっくりを歌うのでは


なかったが、まあ、このフオスターの歌曲を歌うときには、かの


専横男の傲慢な面構えを苦々しく思い起こし、オールド ブラッ


ク ゴーンと歌い捨てることにしようと考えている。


              ★ ★ ★ ★ ★ ★



    Old Black Joe     Foster 作曲  


    オールド ブラックジョー   緒園凉子 訳詞


 Gone are the days when my heart was young and gay! 


 若き日はや夢と過ぎて


Gone are my friends from the cotton fields away; 


 わが友みな世を去りて                                 


Gone from the earth to a better land, I know, 


 あの世に楽しくねむり


I hear their gentle voices calling, "Old Black Joe"       


  かすかに我を呼ぶ オールド ブラック ジョー  


I'm coming, I 'm coming for my head is bending  low; 


 我も行かんはや老いたれば


I hear their gentle voices calling, "Old Black Joe!"  


 かすかに我を呼ぶ オールド ブラック ジョー


     愛唱名歌 (野ばら社) 2010.8.5 より


 ★コラム更新しております:


 NO.400「妻という啄木鳥一羽と縁があり初恋の樹は老木


        になる」


 NO.400-2「いかばかり我は悔ゆらむ重たしと思ひたる


          こと母との日々を」         


        下記の URLからお入りください。


    URL:http://columneye.blog.so-net.ne.jp/ 


         目を光らせて アオウ ヒコ


スマホでご覧になるときは横位置にし、最上段の「リーダ表示」


を押せば、挿画もご覧いただけます。


          (2019.2.3)



   

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

400 妻という啄木鳥一羽と縁があり初恋の樹は老木になる [文芸(短歌・俳句) 時事]

       


  随想コラム「目を光らせて」NO.400「朝日歌壇・朝日俳壇から」     


    期間2018.11~11.25


  


  妻という啄木鳥一羽と縁があり初恋の樹は


 


  老木になる


 


        *題目: 朝日新聞2018.11.18


              葛岡昭男さん(流山市)の入選作。


                      アオウ ヒコ           


12-12-DSC_0186.JPG      

 鉛筆画家 木谷 啓の鉛筆画集:

                     「ありがとう。おもしろかった。」から


             作品 その12


                              DSC186


        「変な題名の画集になりましたが、そう感じました。


      才能が不足しましたがが、まあこんなものでしょう。


      すべては天帝の計画通りです。長寿をいただいたので、


      絵を描ける間は描き続けられるといいなあと思います。


       皆様、ご多幸を。」(木谷 啓)


          朝日歌壇・朝日俳壇から」(趣旨)


 


  朝日新聞の歌壇・俳壇の入選作の中から最近の事象を鋭い表現


 で切り取った作品を歌壇・俳壇交互に選び筆者がコメントを付け


 ています。コメントは文芸上の範を越えることがあります。


  作品の頭にが付いた作品は、時の政権が推進する前のめり 


 の右傾化路線や平和憲法を無視し、国会の存在をないがしろにす


 るさまを放っておけぬとする市民の声であり、これを矯める叫び


 でもあります。これらの作品は、ここでは個々の作品の文芸上の


 軽重を問うことなく、全作品を網羅、採録しています。これらの


 作品に対しては作者の真摯な叫びと呼び掛けに、読者の耳素直に


 従うべし、としてコメントはつけておりません。 


  また、文中敬称は省略しています。(筆者)


 


 


 


        朝日歌壇 2018.11.04


 


koubai0011.jpg

                             


 


                  


   台風の強まる風に鷹柱厳しき渡りの儀式おごそか


 


                     (岐阜市) 後藤 進


 


  「渡り」の季節に入った。このころは台風の頃でもあるので、上空は強い風が


吹いているようだ。鷹の一群が渡りの準備に入り、ぐるぐると上空を舞いながら


隊列を確かめているのを儀式と見ている。飛び立つ前にそれなりのを厳かに済 


ませないと、渡りの無事が保証できないのであろう。


 


   柿五十軒に吊るせばハロウィンの飾りかと問う隣の白人


           


                     (アメリカ) 大竹幾久子


 


  柿を剥いて天日に干す柿すだれは日本では見慣れた秋の風物詩である


が、その習慣がない米国のお隣さんから、「それ、なんですか?ハロウ 


ィン飾り?」と尋ねられた。南瓜をくり抜く習慣とどこか相似たものを 


感じたのかもしれない。


 


 


 オスプレイ飛行ルートか山頭火句碑めぐる町に機影が三つ


 


                 交野市)  西向 聰


 


  凍結の鮪大物鳶打ちて秤に乗せし築地消えけり


             


                福岡市)  前原善之


 


 長らく築地の町に入り浸り、鮪の糶の模様の一部始終を目の当たりに 


して来た御仁、築地への愛着はただならず、あゝ今の思いは築地消えた


りと嘆くだけ。


 


  太陽光発電、派遣の労働者?少し余ればすぐに切られる 


            


                 西海市)  前田一揆


 


  ふくしまの牛には競りのランプ減り牛も牛牽く男も俯く


                  


                 福島市)  青木崇郎


                                                                              


        朝日歌 201.111         


koubai0007.jpg

   


  田の形残して続く蕎麦畑生き残るとはこういうことか


 


                  (須賀川市)山本真喜子


 


 今は稲作技術も進歩して、多少の不作要因が重なっても、収穫皆無と


いう事態にはならないが、昔にはそれがあった。その時、彼らはいかに 


して糊口を養ったか。それは、田の傍に蕎麦を植えて、飢饉の際の穀物


として重用したのだ。作者は稲田と蕎麦畑の傍らに立ち「生き残るとは


こういうことか」と改めて納得の面持である。


 


  芋畑に試し堀りする老いのゐて色良き一つわれは賜る


               


                  (ひたちなか市)篠原克彦


 


 芋畑の傍を散策中に、芋の出来具合を見るため試し掘りをする老農夫 


に出合った。「出来具合はどうですか」と声をかけたことだが「あゝ、


これ持っていかっしゃい」と色好い芋を一つ私に呉れなさった。


 


被爆後の瓦礫のなかを姉捜し彷徨いたる児が九十となる   


            (西海市)原田 覚  


 


 「ほらこれ」と君が差し出す合鍵にほのかな恋は愛へと変わる


 


            (神戸市)新井 幸


 


 まあ、女性から、唐突に彼女の部屋の合鍵を渡されたとき、すべての


男性がこのような愛の変容をなすかどうかはわからない。逆効果的に、


俺はそんな手に乗ると思うのか、と逆切れしないとは限らない。この歌


が詠まれたは次のような、恋の経緯があってのことである。すなわち、 


二人が繰り返し会う瀬のおしまいに「じゃ此処で」と彼女の部屋に入れ


てくれない回数が増え、彼がこれに不満を抱いた過去が存在したことで 


ある。であれば、合鍵の手渡しは「いつでもいいわよ」との意思表示で


あるだけに、彼が抱いていたほのかな恋が、その瞬間激愛へと変貌して


も可笑しくはない。


 


  二〇〇〇キロをアサギマダラは渡るらし今日は我が家の


  フジバカマに寄る    (広島県府中市)内海恒子


 


 蝶は特定の植物の花だけに立ち寄る種がいる。アサギマダラは好例で 


ある。遠距離を飛翔することでも知られ、全国に咲くフジバカマの花の 


存りかを小さい脳にインプットしているらしい。


 


 柚子坊は蛹へ変る日のために蜜柑一枝の葉を食べ尽す


       


            (福岡市)下村靖彦


 


 「柚子坊」ナミアゲハ、クロアゲハなどの幼虫。ユズやカラタチなど 


の葉を食害する。(広辞苑)


 


 ユズボウは食欲旺盛。大事な蜜柑の樹なら、駆除も必要だが、そうで 


もなければ、食欲旺盛のままにアゲハを育ててもらいたい。アゲハ好き、


蝶好きの人の心からの願いでもある。


 


  うすもものまなことろりと秋の蛇つがひ日の没る海を


 みてゐる    (埼玉県)酒井忠正


 


 そろそろ、蛇穴に入るの季節が来る。特に俳句をよくする人にとって


は今年の蛇は冬ごもりのためにいつ穴に入るのかが関心事で、いつまで 


も巷をうろつく蛇を見付けては、何をぐずぐずしているのかとお節介を 


焼く季節でもある。 


 ここでは蛇好きの歌人登場。蛇は薄桃色の眼をしてるんですね、番う


ときにはとろりが加わり、その目はあらぬ方向の日没の海を見ていまし


たよ、との観察報告。いつ穴に入るのかは関心外であるらしい。


 


                   


koubai0005.jpg

 


                        ( つづく → NO.400-2)


 


 


 


           随想コラム 目を光らせて  アオウ ヒコ

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

400-2  いかばかり我は悔ゆらむ重たしと思ひたること母との日々を [文芸(短歌・俳句) 時事]

 


  随想コラム 目を光らせて NO.400-2 「朝日歌壇・朝日俳壇」から


      歌壇  期間:2018.11.18~25

     いかばかり我は悔ゆらむ重たしと思ひ

          たること母との日々を

       題目:朝日新聞2018.11.25

              檜山佳与子さん(水戸市)入選作


                     アオウ ヒコ     

                   落葉181208.jpg


                                              水彩画家 酒井 健の作品から 「落葉」181208


 


 


 


 


          朝日歌壇 2018.11.18


 


7-DSC_0053-001.JPG

  


                              三色すみれ


 



 アメリカがサウジに売るは武器にして日本が買うは



  防衛装備         長野県)  清水節雄


 


  カショギ氏は行ったその日に殺された昔多喜二も捕


  まった日に       名古屋市)  須原りえ



  妻という啄木鳥一羽と縁があり初恋の樹は老木になる


                  流山市)  葛岡昭男



 私は若いころ妻という啄木鳥一羽と縁があり、初恋の樹に止まらせた


ものだ。そして年を経た今、その樹は老木になっている。もって回った


言い方で二人の永い来し方を説明しているが、老木となった恋の樹には


さぞかし、愛しい啄木鳥さんの鋭い嘴につつかれて開いた深い穴が到る


所にボコボコと見えるのだろう。が、老木は吾も年経て大樹となったか


ら、一向に構わないよ、と悠然の構え。 



  沖縄に愛無き人が基地負担軽減をいう悪しき冗談            


                  国分寺市)  田辺龍郎



  原発事故風化の中に帰る所無きまま彷徨う八年目


  の苦悶         いわき市)  守岡和之 



 藤袴いかなる術で導くやアサギマダラをこの裏庭へ                  


                  大洲市)  村上明美



 アサギマダラと藤袴の関係に触れた歌が本欄にあったが、ここでは 


とストレートな言い方をしている。藤袴はいかなる術でこの蝶を導く


のか、不思議でたまらぬ、としている。NHKの児童を対象にした電話


相談番組「なんでも相談」にでもこの両者の関係を訊かれたら、回答役


の先生はどう答えるだろう。悶絶してしまうのではなかろうか。


 


 ジャンプして上手にわれに抱かれくる五歳は日増し重く


  なりゆく         横浜市)  山本雅子



わたしの姿を見つけるなり「ママァ」か「ばばァ」の声を挙げて上手


に我が胸に飛び込んでくる五歳の児。嬉しいことに、その度に重くなっ


ていく。 



       朝日歌 201.125  


4-DSC_0050-001.JPG

           さざんか


   沖縄の民の意思を汲まずして寄り添うというは如何


   なる策か          所沢市)  南条憲二



 あけび四つあれど無心に果汁吸うアサギマダラに譲りて


  採らず            (東京都)大村森美



 あけびの実は甘くておいしい。人がそう思うほどに蝶のアサギマダラ


には無心に果汁を吸い続ける図がみごとだ。庭にあるあけびの実4ケの


うち、1ケくらい採って食してもと思わぬではないが、あのアサギマダ


ラの一心不乱の吸い様を見れば、譲らずにはおれない。


 


   本当にやる気あるのか核禁止出来ない理由ばかり


   並べる        筑紫野市)  二宮正博



 産声はこの世で最初の深呼吸一生続く吐くこと吸うこと               


                  (東京都)清水真里子



 母の胎内の羊水に浮かぶ胎児が、期満ちてこの世に仲間入りする瞬間


は「産声」だ。今か今かとこの声を待ちわびる家族は、この声を耳にし


てどっと喚声を上げる。確かにこの世で最初の深呼吸である。この呼吸


は死ぬまでの一生涯続く。



学生に小嘘つかれてもの悲しごはん論法はびこる浮世   


                 (東京都)山木海絵子  



 ぬばたまの闇また闇の山間に一夜ともせり夜神楽舞台


            (安芸高田市)菊山正史


 


 普段は山間にある社の片隅にひっそりと鎮座している舞台であるが、


夜神楽が行われる日は格別。漆黒の闇に閉ざされた山間のこの舞台に


明々と灯がともる。この夜神楽を見るために、近隣の住民がここに集


い、夜神楽の舞いを堪能する。


 


 いかばかり我は悔ゆらむ重たしと思ひたること母との


  日々を       (水戸市)檜山佳与子



 日々深み行く母との日々。あゝいつまで続くこの老介護の日、辛い


重たいと思わないではない。だが、母が身罷りし後、母在りし日に瞬


といえども私がその思いを抱いたとすれば、そのことを、どんなに後悔 


するであろう。それを思えば、今のこの奉仕の日々を重たいなどと思う 


は絶対にあってはならないと思っている。


 


 カラカラと落ち葉が走る音がして新幹線の見える坂道


          (横浜市)山際美保子



 小高い山か丘にいて、秋の風情を楽しんでおられるようだ。足元では


落ち葉が風に吹かれてカラカラと音をたてて走る。ここは眼を挙げれば、


遠くに新幹線が走るのが見える坂道。でも、ゴオッとする音は聞こえ 


ない。小さい新幹線が遥か遠くを静かに移動している。ここで聞える音


は落ち葉が風に吹かれていく足元のカラカラだけ。


 


suisen0008_1.jpg

             すいせん


              (2019.2.01)


 



        随想コラム 目を光らせて  アオウ ヒコ


 


 


nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

399 金簪の中の銀簪芒原*                                   金簪の中の銀簪芒原*    [文芸(短歌・俳句) 時事]

                                                 


  随想コラム「目を光らせて」NO.399「朝日歌壇・朝日俳壇から」


         


    期間2018.10.7 ~ 10.28


              
     金簪の中の銀簪芒原


     *題 目: 朝日新聞2018.10.21.


             (札幌市)村上紀夫さんの入選作。


                   アオウ ヒコ 


11-11-DSC_0185.JPG 

                鉛筆画家 木谷 啓の鉛筆画集


                   「ありがとう。おもしろかった。」から  


           その11.DSC-185


     「 変な題名の画集になりましたが,そう感じました。


      才能が不足しましたが、まあこんなものでしょう。


     すべては天帝の計画通りです。長寿をいただいたので、


     絵を描ける間は描き続けられるといいなあと思います。


      皆様、御多幸を。」(木谷 啓)


 


       朝日歌壇・朝日俳壇から」(趣旨)


 


  朝日新聞の歌壇・俳壇の入選作の中から最近の事象を鋭い表現


 で切り取った作品を歌壇・俳壇交互に選び筆者がコメントを付け


 ています。コメントは文芸上の範を越えることがあります。


 


  作品の頭に印が付いた作品は、時の政権が推進する前のめり


 の右傾化路線や平和憲法を無視し、国会の存在をないがしろにす 


 るさまを放っておけぬとする市民の声であり、これを矯める叫び


 でもあります。これらの作品は、ここでは個々の作品の文芸上の


 軽重を問うことなく、掲載作品の全てをここに採録し、これらの 


 作品に対しては作者の真摯な叫びに読者の耳素直に従うべし、と


 してコメントはつけておりません。 


  また、文中敬称は省略しています。(筆者)


 


 


 


        朝日俳壇 2018.10.07  


23-IMG_0041.jpg

                                                                                             カトレア                                                   


  ギリシャ風おじやに搾る檸檬かな


              ドイツ) ハルツオーク洋子


 


 もちろん、日本風おじやがベースになっている洋風、詳しくはギリシャ風の


おじやだ。それに檸檬を搾ってかけて食べているある日の食卓。素朴さでは 


通するところがある。日本でも、おじやにレモンを搾ってかけてみるかとする


いにかられる。


 


  径迷い来て蜩の森のカフェ  (仙台市) 三井英二


 


 山歩きの途中、道に迷い蜩の鳴く森にでた。そこは賑やかな若々しい住人が


集う森のカフェそのもの。しばし、足を停めて、天を仰ぎ、カフェの仲間になりま


したよ。


 


    露万朶百歳七万に迫る      多摩市) 吉野佳一 


 


 老齢なれど矍鑠たる百歳の人がこの日本、統計では6万台の後半、七万に


近いという。その数たるや、近くの山の木の枝のすべての葉が露を結んでいる


かのように大変な数でありますぞ。


  


   木犀の星屑のごと撒かれをり  東大和市) 杉山利一


 


 満開を過ぎた木犀の木の下には薄黄いろの花屑が、あの夜空に撒かれた


星屑のように撒かれている。そっと、そのままにしておきたい。箒で掃いたりせ 


ずに。


 


 


    朝日壇 201.10.14            


31-IMG_0049.jpg

                   カトレア

   ★銀漢や小さき星の核兵器   いわき市) 馬目 空 


   亡き妻の靴残り居る秋彼岸  (国分寺市)新田恭隆 

 在っても使われなくなった妻の靴。玄関の片隅か下駄箱の中にひっそ

り鎮座しているのか。秋彼岸の好時節だもの、彼女が居れば颯爽とあの

靴履いて闊歩していたであろうに。

   月天心今日を手放さうと思ふ (岐阜市)柚 香 里


 今夜は満月,今その月が中天に懸かろうとしている。ああ、なんと美しい。それ


にひきかえ、私の今日はいくつもの問題や悩みを抱えて抜き差しならない。せ


めて、天心で皓皓と輝く月を見る間、よしな今日の懊悩を手放してしまうぞと思


う。                                      


  鯛のあと太刀魚の糶(せり)ぞんざいに大阪市) 森田幸夫


 高価な鯛の糶には糶人も多く集まり、糶事も丁寧に運ばれる。だが、


高値のつかない太刀魚の糶となると、人も、値付けもぞんざいに運ばれ 


てゆくようだ。


 


   初めての海見るも居り渡り鳥 横浜市)  藤木義弘


 鳥渡る頃となる。多くの鳥が極寒の地から比較的温暖の地、日本国を


目指して渡ってくる。その中には幼鳥が混じっており、おそらく彼らは


渡りにあたって、海を見たのは初めてだったろう。エラカッタネ。


  


   見るからにその後の我や捨案山子 新潟市)  岩田 桂


 要るとき、使えるときは重宝するが、要らなくなると容赦なく捨て去


り、放擲してしまう。この世におけるこの私の使いようは、そっくりこ 


れに似る。可哀そうな捨て案山子君。


             


    朝日俳壇 201.1021           


        32-IMG_0050.jpg                           カトレア


  金簪の中の銀簪芒原   札幌市)村上紀夫


 


 芒原を眺めたことがおありか。秋口に穂が出て、艶々しい穂に変わり


、太陽や月光の浴びようによっては金色の簪、銀色の簪をこき交ぜての


芒原となる。金簪、銀簪という表現は出色そのもので、讃嘆舌を巻く一


句として評価されるであろう。


  雑踏にうづくまる人原爆日  (川口市)青柳 悠                                    


  根気よく栗むく背を懼れけり(群馬県東吾妻町)酒井大岳


 今は栗を剥く器具が市販されているようで、昔日のように包丁、小刀


、ナイフで丹念に厚い栗の外皮を剥く作業からは解放されているようだ。


栗の実が落ち、栗剝きの季節が来ると、この仕事は主として主婦に委ね


られ、男性は傍観者である場合が多く、この句のように、根気よく栗を


剥く女性の背に尊敬の思いさえ抱く。  


  名月や絵本閉じれば子の寝息  (小城市)福地子道 


 名月の夜、一家総出で月見に興じ夜更かしをした。子供には絵本を読


んでやっていたが、ふと気付いて本を閉じたころには、子の寝息がして


いた。


  鳰(かいつぶり)(また)鳰鳰  (いわき市)馬目 空


 この句は漢字が四つ並んでいるだけ。湖水か水場に姿を見せる黒い水


鳥の鳰が潜っては次に浮き上がる。一羽だけでなく数羽がいるようだ。


(余談だがIMEでこの字をかいつぶりで検索したが難渋した。そうだ 


におとも読むなと気づき、試みると一発での字との遭遇に成功した


 


 


  逝きし子と手をつなぎゆく花野かな(尼崎市)ほりもとちか


 


 小さい花が一面に咲き乱れる花野を歩くと、いつのまにか、遠い昔


の思いにつながり、いつのまにか、亡き子と手をつないで嬉々として歩


いている。


 


  捨案山子俯き歩く吾見上ぐ   (蒲郡市)古田明夫


 


 目と目が合うというのは素敵な出会い。思い合う異性と目が合うとき


など、心が弾んで死にそうなくらいである。さて、このケース、農道の 


そぞろ歩きでのこと、俯き加減で歩いていた私の視線がばったり出合っ


たのは捨てられた案山子が縋るように私を見上げていた目だった。


 


     


     朝日俳壇 2018.10.28 


     


30-IMG_0048.jpg

                         カトレア


  しなやかにしだれて風をさがす萩 (大阪市)山田 天


 


 萩は白い小さな無数の花をつける秋の花だが、長くてゾロリの姿で


あるだけに、人の目を惹く存在ではない。だから、萩はしなやかにしだ


れて、そこまでは自らやるとして、適当な風が吹いてくれるのを待ち居


るのですよ。


 


  たましひが抜けると白くなる芒(すすき)(竹原市)岡元稔元


 


 すすきの穂は出始めの頃から、月夜の光に金銀色に映えてなびくころ 


が旬であろうか。魂(命)が抜けると、穂は輝きを失い、白くすすけて 


芒原は茫々と立ち枯れる。こうなると、一穂を花瓶に挿したり活けるこ


となど皆無となり果てる。


 


  無月とて一夜美しかりしかな  (久喜市)斉藤たみ


 


 せっかくの名月の夜、あいにくの一面の雲に蔽われて肝心の名月の


姿が見えぬ夜のことを無月と呼ぶらしい。今夜は生憎のその夜に当った。


私はその無月の夜を見上げる。雲の向こうには皓皓と輝く名月があるた 


めか夜空は普段よりも明るく、この一夜、無月であるとて美しい一夜で


 ありました。


 


  ★戦争と平和の空や蜻蛉飛ぶ (我孫子市)森住昌弘


 


 


  先陣を競ふ城壁蔦紅葉    (福岡市)下村靖彦


 


 城の造築に当っては、精悍無比の武士による攀じ登りを防ぐために、


城壁はほぼ垂直に組合わせて設計された。難攻不落の評判をとったこの 


名城の城壁を今、蔦紅葉が我こそがこの城を落す先陣なりとして競い合 


っている。御身は補給も十分、身のこなしも軽く、秋陽の色を身に取込


む余裕をみせながら、である。


 


  この道や死と擦れ擦れの秋の暮 (船橋市)斉木直哉


 


 俳句道をただひたすらに歩んできた人の修行道への思いは極限までの


彷徨幾たびか、「死と擦れ擦れ」の道だった。この秋の暮もそのままそ


の道が続いている。


 


  田仕舞の煙一村包みたる   (加古川市)森木史子


 


 数年前の秋に、大学の同窓諸子と山形に遊んだ時は、平坦な山形平野


の稲田の収穫が終えた頃だったか、広域の稲田それぞれに小高く円錐状


に積み上げられた籾殻を焼く(炎を挙げて燃やすのでなく、円錐籾山の


裾に小火を点けてチロチロと燻らせる)煙が薄くたなびいて切り株を残 


した稲田を覆っていることだった。田仕舞という言葉のなんとぴったり


であることか。村人の誰一人、このたなびく煙に苦情を言うでなく、却


って深呼吸さえする気配である。ここを訪れた人は誰もが、その風潮に


同化されてしまうから妙である。


                


181223ベニチガヤ.jpg

    水彩画家 酒井 健 の作品から ベニチガヤ 181223


 


 


        (2019.1.15)


 


++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++


 


 


             随想コラム 目を光らせて アオウ ヒコ


 


 


 


                      


nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

398 新春御慶 平成三十一年元旦 [新春御慶]

 


随想コラム  目を光らせて NO.398 


 


  新春御慶  平成三十一年元旦 


 


  かにかくに平和に終えし平成よ     


   あらたまる元号の紀 慈しみゆかむ                        日 兒 


               17-DSC_0570.JPG


   谷川岳 明神平ロープウエイから見た紅葉樹林  2018.10.30


      


 昨夏、天皇退位と新天皇即位及び新元号施行日をいつにするか


宮内庁で議論される中、安倍首相が平成三十一年一月一日とす


ることに反対した。この日を以って新元号の施行日にしたいとす


る有力な意見が出されたが、当会議の議事録には留め置かれず、


またしても忖度の満場一致の形が採られたようだ。


お陰で本賀状の日付は従来の平成を冠したままとならざるを


なかった。                               


             年もお健やかに ご多幸を祈ります                                        
 


     随想コラム「目を光らせて」 アオウ ヒコ


     URL http://columneye.blog.so-net.ne.jp/ 


       メール ・ アドレス hiko@yc5.so-net.ne.jp     


              (2019.1.1)


   




 





nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感
前の10件 | -