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388 かこかこと獅子舞は舌をゆらしつつ通りし後に泣く子らの道 [文芸(短歌・俳句) 時事]

                                      


   随想コラム「目を光らせて」NO.388「朝日歌壇・俳壇から」


 


      期間:2018.6.3.~6.24


 
    かこかこと獅子舞は舌を揺らしつつ


 


         通りし後に泣く子らの道


 


  *題 目: 朝日新聞2018.6.3 


   (奈良市)山添聖子さんの入選作。


                  アオウ ヒコ


2-DSC_0006.JPG                          


         画像:洋画家 青沼茜雲 の作品集から  51.


              望郷「スペインにて」


        フランス・サロン・ドトンヌ会員 ・英国王立美術協会名誉会


        ・ノルウエーノーベル財団認定作家 ・世界芸術遺産認定作家


        ・日本代表殿堂作家


 


                    「朝日歌壇・朝日俳壇から」 


  朝日新聞の歌壇・俳壇の入選作の中から最近の事象を鋭い表現で切


取った作品を選び筆コメントを付けています。コメントは文芸上


範を越えることがあります。


 作品の頭に付い作品は時の政権が推進する前のめりの右傾


化路線や平和憲法を無視し国会の存在をないがしろにするさま放っ


ておけぬとする市民の声であり叫びであります。これらの作品は、ここ


では個々の作品の文芸上の軽重を問うことく、全作品を網羅、採録し


います。これらの作品に対しては作者摯な叫びに読者の耳素直に


従うべし、としてコメントはつけておりません。


 また、文中敬称は省略しています。(筆者)  


                   朝日壇 201.0


 


03-DSC_0063.JPG

                                       


 「セクハラ罪」確かにないわな天が下に「失言罪」の無き


   と同じく


          宝塚) 小竹 哲


 


 曇天のような秘書官都合よき記憶の森を抜けて何処へ行く


 


            (京都市) 森谷弘志


 


 


  万策の尽きたる時は吾も行き共に座ろう翁長雄志と


 


            (沼津市) 米山隆太郎


 


 


 


   パリの空に口づけしたまま浮いている恋人たちの萌黄の


 


    こころ


                 (フランス)松浦のぶこ


 


 厳しい冬が去り、パリにも春がきた。若い恋人たちにとっては待ちかねた季節


 


である。萌黄の色が、恋人たちにふわふわと落ち着かないこころを誘っている。


 


 


   夕されば白き魚体のまぶしかり柳鮠跳ねて水の輪生れて


 


                西条市) 亀井克礼


 


 柳鮠(やなぎばえ;小型で柳の葉のような形をしたハヤ。ウグイやオイカワを


 


いう。(広辞苑)  近くの川辺に夕刻に出て、小魚が水面に跳ぶのを見ている。そ


 


のたびに生れる水の輪も飽かず眺めて。


 


 


  「あめのうお」とはなんと美しき名しずかなる五月雨に染む


 


  青き琵琶鱒


 


                名古屋市) 山守美紀


 


 琵琶鱒をこの地では「あめのうお」と呼びならわすのは、静かに降る五月雨に


 


染まりし青をまとうから。かくも美しい名を付けてくれた先人の感性を讃えずには


 


いられない。


 


 


 かこかこと獅子舞は舌を揺らしつつ通りし後に


 


  泣く子らの道


                奈良市 山添聖子


 


 獅子舞が往く。獅子の頭には大きな口の中に、動かすたびに、かこかこと音


 


を出して揺れる舌を擁している。獅子舞の使い手は、道行く幼児を見つける


 


たびに、獅子頭でその子をパクリとやるものだから、喰われた子供の災難思う


 


べし。ギャアとの泣き声が次々に突出し、それを宥める親御の嬉しい声も混じ


 


るその道の長いこと。


 


 


  母二人百歳近くなりし日は互いに見知らぬふたり同志に


    


                 熊本市 徳丸征子


 


 若い二人が婚姻すれば、それぞれに生じる生母(又は実母)と義母。突然の


 


出会いの挨拶は「うちの子をどうぞよろしく」であったが、その二人がともに百歳


 


近くともなれば、その挨拶も経年変化して、「あのう、どちらさまで?」 となる。


 


 にこにこしているのは変わらずか。


                 


 


   保育士の膝から降りて動き出す遊ぶちからがもりもり湧いて


 


                              長岡京市) 深沢悦子


 


 下手に抱こうものなら、そのくびきから脱出せんともがき続ける。その力強さ


 


はいのちそのもの。これから百年近くを生きようとするのだもの、拘束するもの


 


は全て突破しなくちゃ、とするのです。


  


 ★ネクタイの付け根のあたりの咽喉ぼとけ本音を言へ国民のため


 


                       小城市)  野中 曉


 


  競うとき苦しげに人は走れども馬は雅にのびやかに駆く


 


        横浜市)  竹中庸之助


 


 確かにマラソンなどの長距離走では人は苦しげに走る。だが近時、


 


 俄かに激烈化した男子100m走の選手たち。9秒台の記録目指して実に


 


 のびやかに喜喜として走るではないか。速く軽快に走るをモットーに


 


 創りだされたサラブレッドの駿馬たち、競馬場のスタート枠に収まる


 


 


 まで駄々を捏ねる馬がいる。だが、軽量とは言え背に騎手を乗せて走


 


 り出す段になると、騎手の手綱と鞭に支配されての走行となるので、


 


 お世辞にも雅にのびやかな駆走とはいえそうにない。


 


 


         朝日歌壇 20110 


05-DSC_0071-001.JPG



   妻が病みわれ老いたればいづくにも手を組みてゆく


 


  恩寵として


            浜松市)  松井 恵


 


 若い男女二人が立ち歩くとき、いつも手を握り合う態をどう見るか。


 


 仲がよくいいですね、とする一方、デレデレしやがって、場をわきま


 


 ろよ、と苦々しく思う人もいることだろう。


 


 さて当方の近況;妻も私も老境に突入した今、何処に行くにも手を組


 


んで出掛けるようになった。二人で思っている。こうした姿を曝しても、


 


だれからも指弾されずに彼らの海容の中にある。大きく言えば「恩寵」


 


として受け止められていると。


 


 


  海霧がはれて闇濃き草むらに小さき光初ホタル飛ぶ


 


            (高松市)島田章平


 広大な暗闇の中の叢の中に一点の光に出会う初ホタル。あれは、誰か


のいのちの化身と思えば、なおのこと人ごととは思えなくなる。


  立ち飲みの中年客の足元の鞄の上の薔薇の花束


         (川越市)渡邊 隆


 家に帰る前にちょっと飲んでゆくかと立ち寄った店に先客あり。そ


足元に鞄があり、薔薇の花束が置いてある。ああ、そうか。今日が最


の勤務の日。仕事仲間から寄せられた退職記念の薔薇の花束をこうし


ここまでもって来た。少し暗くなって目立たぬ時刻まで、ここで時間


を潰そうというのか。早く家にもってお帰りよ、奥さん待ってるよ、と


言いかけたが、言い淀んだ。独りでいるのかもしれんよ、と思いを巡ら


したからだ。


  水張りて水鏡となる千枚田走り雨来る水鳥のごと               


      安芸高田市) 菊山正史 


 間もなく田植えだ。代掻きをし、水張りして千枚田に水鏡ができた。


そこへ走り雨が来て、水鏡が壊れた。一斉に水鳥が来た時のように。


   また今日も満員電車で食わされたりリュックパンチと


  スマホ肘打ち    


                      (浦安市) 野田充男 


 満員電車で敵わんのはリュックを背負った男よ、というのは知って


いたが、これに加えるにスマホ肘打ちが加わったというのか。


  アベックの等間隔に座す初夏の鴨川右岸の甘き夕暮れ


           安中市) 鬼形輝雄 


 京都に青春の愛を育んだ男女に忘れられないのは鴨川右岸であろうか。


等間隔の座は自然発生的にできたものであろう。陽が落ちるのを二人連


れが自然体で待ちかねている。ああ、私もここに居たことだったわ、と


懐旧に耽る人は、あの鴨川右岸の甘さ、を知っている。


                                


             つづく → NO.388-2


 


                    



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共通テーマ:日記・雑感

 388-2 妻が病みわれ老いたればいづくにも手を組みてゆく恩寵として [文芸(短歌・俳句) 時事]

 


    随想コラム「目を光らせて」NO.388-2「朝日歌壇・俳壇から」


        期間:2018.617.~6.24


 



 妻が病みわれ老いたればいづくにも


 


       手を組みてゆく恩寵として


 


  *題 目: 朝日新聞2018.6.10 


                 (浜松市)松井 恵さんの入選作。


                           アオウ ヒコ


                  


2-180601牡丹.JPG


      水彩画家 酒井 健 の作品から 2-18061  牡丹



                     


             朝日壇 20117


                                         


1-IMG_0104_1_1.JPG                                                                                

 スポーツも政治も子どもに見せられぬこの国に切る


    蜥蜴の尻尾            


                         (青森) 森 純一


 


 今もまだ不正の有無の審議中もう大学が出来てる不思議


 


            (近江八幡市) 森谷弘志


 


 


  国会の空費されいし一年に藤井四段は七段となる


 


            (水戸市) 中原千絵子


 


                                                   


 


  ゲノムから復顔された縄文人父方の伯母そっくりだった


 


                       (渋川市)木暮陶歌人


 


 かつて、人類にとって不思議でならなかったのは、生物固有の種が次世代に


 


どのように顕現移行するのか、いわゆる遺伝情報の仕組みと伝わり方について


 


の知識が得られなかったことであった。小学生の読本には色違いの朝顔を掛け


 


合わせて出来た種を翌夏植えて咲いた花の色の発現をもとにして得られた「メ


 


ンデルの法則」以上のものを得ることができなかった。この解明はおそらく出来


 


まい、と多くの人は諦めていた。


 


  だが、偉い人物も出たものだ。DNA(デオキシリボ核酸)が遺伝の鍵を握っ


 


ていることが分かり、DNAの構造を巡る遺伝物質の分析によって、ゲノム分析


 


に日が当たり、その生物の進化経路の追及が可能になった。その一例として、


 


「人間のDNAはチンパンジーやボノボ(ピグミー・チンパンジー)のDNAと98.


 


8%が一致することが明らかになった。ゲノム復顔の縄文人の顔が父方の伯母


 


さんそっくりだったとしても、取り立てて驚くことはない。貴方もそっくりだわね。


 


 


   九十歳のベーター叔父さん今日もまた自慢料理で我等


 


  を待てり


 


               ドイツ) ハルツォーク洋子


 


 ドイツの居宅の近くに夫の親類筋のベータ叔父さんが住む。料理が自慢で、


 


家に来い来いと会うたびに言う。日本人の家族との交流をことのほか楽しみに


 


している。招かれるのは楽しみだし、その料理も確かにおいしい。


 


 幸せなドイツの洋子さんの近況までにて。


 


 


      朝日歌壇 2018.6.24


  


12-IMG_0161.jpg

 



 


   日光の湯の湖に入りて釣る人の湖心に向いて一心に立つ


 


                   熊谷市) 内野 修


 


 渓流釣りを趣味とする釣り人が居る。日光の湯の湖に立ち入り、湖心に向け


 


 てただ一人、竿を出している。鱒の類を狙っているのか。静かないのちのやり


 


 取りを尽している。


 


 


  栃ノ心の気力体力白鵬を勝りて座布団宙を舞ふなり


 


                五所河原市 千葉育子


 


 急に力を付けて人気も急上昇の力士、栃ノ心。真正面から当り、左差しが決


 


 まれば、後は前に出るだけ。勝ちが約束されている。この場面は横綱白鵬


 


 とのがっぷりの力比べの様相を呈したが、栃ノ心の力が勝り白鵬を寄り


 


 切った。途端に座布団が宙を舞いました。直ぐに張り手を見舞う横綱の負


 


 けは、鬱憤晴らしの座布団投げにつながったようでした。


 


 


  おおまかで能天気なる妻がいて肉じゃがの味


  みくじのごとし


                茅ヶ崎市 大川哲雄


 


 わがマグサイサイならぬ細君はおおまかにして能天気、お作り召される肉じ


 


 ゃがの味に至っては、その時々の天気を映して定かならず、みくじのように当


 


 り外れが定かならずでありまする。


 


                 


   公園の草分けて立つデゴイチはさびしすぎるよ帰りたからむ


 


                 長野県) 沓掛喜久男


 


 国鉄の廃棄デゴイチ頒布係員の口車に乗せられて、「このあたりに置けば、


 


 絶好です。子供さんに連れられて大勢大人も来ますよ」だったが、今は夏草


 


 が生えるだけ。こんなところに置き去りにされてさぞやデゴイチ君帰りたかろう、


 


 あの賑やかな都会の路線へ戻りたい。


 


 


 きっぱりと「総理も議員も辞めますよ」あの発言がそもそもの因


 


                    前橋市)  松浦 蔚


 


 改竄も隠蔽もして咎めなし木下闇に思ふ自殺せし人


 


             前橋市)  荻原葉月


 


 潔く観念せいという言葉このごろ通じぬ世の中となる


 


                    東京都)  野上 卓


 


                                     


                  


 肩書のどれもがとれてふるさとの沼のひとりの鮒釣りとなる           (館林市)  阿部芳夫 


 ひっそりとただ一人沼に出て竿を出しヘラブナを狙っている。幾重


も重なり肩を圧していた肩書の数々が今はなく、男一匹鮒釣りとなる。


  時鳥ひねもす鳴いて教室の窓は全開十二の瞳                


           (霧島市)秋野三歩


 ホトトギスの啼き音が一日中聞こえて、教室の窓は開け放し、そこ


6人の生徒が瞳を輝かしている。


  馬鈴薯の白い花咲けど畑にはモンシロチョウのいない


  静けさ       (備前市)山形芳子


 キャベツ畑には卵を産み付けるためにモンシロチョウが寄り集まって


いるのが普通だ。だが、白い花が咲いた馬鈴薯畑にはその姿はない。


この下にはハンサムな男爵さんがいるのよねえ、と誘っても言っても


モンシロは見向きもしない。


  収穫の蚕豆を肴に酌む夜は迷いなどなし辛口と決む


               舞鶴市)  吉富憲治 


 蚕豆がみるみる肥えて収穫期になった。今夜はこのそら豆を薄塩で


煮た肴で酒を飲もう。合うのはもちろん辛口の日本酒だ。


  田に水を引くと蛍もついて来て今年の稲はこっちが甘い       


             山陽小野田市) 秦 一憲 


 そんなこともあるのか。掻いた代に水を引くとき連れに蛍がやってき


た。さあ、歌うぞ、ほうたる来い来い、蛍が来れば、こちらの水は甘い


ぞ、今年の稲はこっちが甘いぞ、と。


               (2018.7.15)



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387 李白杜甫何するものぞ花見酒 [文芸(短歌・俳句) 時事]

  随想コラム「目を光らせて」 NO.387「朝日歌壇・朝日俳壇から」


        俳壇  期間:2018.5.6.~5.27


 
    李白杜甫何するものぞ花見酒


 


 


   *題 目: 朝日新聞2018.5.6 (岡崎市)沢 博史さんの入選作。


 


                  アオウ ヒコ


 


5-DSC_0030.JPG


      洋画家 青沼茜雲 の作品集から   50.  「日本の屋根と鳩」


          フランス・サロン・ドトンヌ会員  ・英国王立美術協会名誉会員


       ・ノルウエーノーベル財団認定作家  ・世界芸術遺産認定作家


                                    ・日本代表殿堂作家


 


 


                    朝日歌壇・朝日俳壇から」


 


  朝日新聞の歌壇・俳壇の入選作の中から最近の事象を鋭い表現で切


取った作品を選びコメントを付けています。コメントは文芸上


範を越えることがあります。作品の頭に付い作品は時の


が推進する前のめりの右傾化路線や平和憲法を無視し国会の存在を


いがしろにするさま放っておけぬとする市民の声であり叫びであり


す。


  これらの作品は、ここでは個々の作品の文芸上の軽重を問うことなく、


全作品を網羅、


 録しています。これらの作品に対しては作者真摯な叫びに読者の


素直に従うべししてコメントはつけておりません。 


 また、文中敬称は省略しています。(筆者)


 


 


  


            朝日壇 201.0


 


01-DSC_0060.JPG


               


 


 


  ★靖国の遺児てふ絆し青き踏む   福岡市) 下村康彦


 


 


  母亡くて弟亡くて桜かな       (姫路市) 伊達冨美子


 


 若くして父が逝き、その後は母の手一つで、兄弟二人は育てられた。その母


 


が逝き、仲が良かっ弟が先に亡くなった。ふたりがいないこの春、桜は爛漫


 


と咲いたが,寂しさが余りある桜だった。


  


 


    ある時は親に逆らい卒業す             神戸市) 岸下庄二


 


 長い学生時代の年月を父母は大変上努力と愛を傾けてくれた。親の心子知


 


らずで、言いつけに き、親に逆らったこともたびたびあった。そして、このた


 


びの卒業。なんと、ありがとうございます。この御恩は一生忘れません。


 


 


    黎明の驟雨浮世を朧へと               秋田市) 堺 栄輔


 


 今朝の空は厚い雲に覆われて、驟雨が一面に降り注ぎ万物が濡れそぼって


 


いる。この浮世を朧包みはじめている。


   春愁や街にひとつの書店消え   東京都  青木千禾子

 何かと気が晴れずモヤモヤが続くこの季節。街にただ一つあった書店

が閉店したのだ。気晴らしに本を眺めに行くこともできなくなった
。  

  それぞれに花の余韻の吉野山   芦屋市  奥田好子


 


 山桜が主体の吉野山。ソメイ吉野の派手な趣向とはちがって、咲くにしろ、散


 


 るにしろ、花の余韻感じさせるところがある。今年は行かなかったが、来春に


 


は訪れてみたいものだ。


                 


    のどけさの先に果てある命かな神奈川県松田町) 山本けんえい


  今、老年の境地にあり、世のためにしかるべく尽くした後の安堵感か

らくるのだろうか。
日々、のどかさを感じて過している。だが、この先

にはいのちの果が待ち受けていることを
漠然と感じていることも事実だ。

 
李白杜甫何するものぞ花見酒    岡崎市)  沢 博史

 中国の詩人、李白、杜甫のお二人さん。酒豪であったらしい。飲むに


 


つけ、呷るにつけ、漢詩の傑作の数々が溢れるように流れ出た。さて


 


当方の御同輩、花見に繰り出し大いにもうぞ、中国の酒仙に負けず


 


やりましょうず。李白・杜甫など目じゃないよ、と気張った迄はよか


 


 たが、飲めど尽せど、傑作は疎か、歌も句の一つも一向に出て来ない。


 


   花屑に小魚群るる河口かな   西宮市)  黒田國義 

 春爛漫、花びらが散り敷き、川の上流では花筏となって流れ下ったが

行きつくところは大川の河口。このあたりになると、花筏は汚れた花屑

となって浮かび、餌だぞとする小魚が群れている。上流で、桜を愛でた

数奇人よ、かくのごとき花筏の成れの果てを想像しておくれだったかど

うか
。  

  鶯やその拙さも個性なり    筑紫野市)  二宮正博


 


 ものの出来具合を評価するに「うーん、個性的でいいですね」という


 


のがある。この場合、作品の出来がてんでんばらばらでなんとも収束し


 


かねる啼きを「個性」の所為にしてしまう。鶯の啼きも完璧な啼きが期


 


待されていて、練習中の若鳥の啼きの拙さを耳にして、下手だね、若い


 


な、笹鳴きだねえ、と言うべきところを「個性的だな」としたり顔で言


 


う。というのを個性的評論家というのかも。


 


 


 


      朝日壇 20113 


02-DSC_0061.JPG


忘れ潮埋め尽くしたる花の屑兵庫県太子町)  一寸木詩郷 

 


 ここでも花筏の成れの果てが描かれている。潮が引いて干潮になった


 


砂浜に残った「忘潮」に取り残された花の屑が干からびている。


 


 


  本当は父の揚げたき凧なりし  (徳島市)椎野たか子


 


 車いすに乗った父を押して、この凧揚場に来ている。そこで私が凧


準備し、糸を繰って、どうやら宙空に凧を浮かせることに成功した。


はそれまでの私の所作を食い入るよな目で、じいっと見詰めていた。


 分かっています。父は本当は自分で凧揚をなさりたかったのです。


 


  幸せは崩れやすくて紅牡丹    (姫路市)上原康子


 今、本当に幸せだと思ったら、その瞬間を大切にしましょう。なぜ


ら、幸せはそう長きしないから。ちょうど庭に花開く紅牡丹のように


盛期は短く、その間に一雨あったりしたらもっと短くなる。                                          春愁を重ね束ねて括りけり  松戸市 をがわまなぶ 


 そんなにいくつもの愁いを背負いながらこの春を過ごされたのか。時


過ぎて春愁の状を保つ必要がなくなり、さあ一時も早く捨て去りま


しょうと重ね束ねて括りました。緩んだりしないように、きつくきつく


縛りました。


  鯉のぼり太刀も兜も戦わず    (日立市)加藤 宙


04-DSC_0068.JPG

 


   花冷えと思へ白刃の我が心  船橋市) 斉木直哉 


 人の死に際して、これほどの心身の冴えが到来するのか。私を衷心か


 


ら知り尽くし、暖く理解し、認めてくれたお方であるだけに突然の逝


 


去には惜別の思いが募り、あの時から私の心は研ぎ澄まされた白刃のよ


 


うに、人を寄せ付けないまま、冷たく静謐に鎮まりかえっている。この


 


異常ともいえる私の心身の冷え込みから、私はいつ脱却できるのか、覚


 


束ないの旬日である。


 


  そうだ、この私の心の冷えは、このところの春の花冷えがもたらした


 


ものだと思うようすれば、なんとか収拾がついてくれるかもしれない。


 


   年年の治山歳歳の花うぐひ    (松江市)三方 元


 永らく治山の仕事をされているのか。そうであれば、年年歳歳とふ重


語彙を軽々と使て山の花を讃え、詠じることができるというもの。


桜の花に加えて鶯も啼いていますよ、と告げる余裕も。


   新選者兜太の後は恐ろしき   青梅市) 津田洋行 


  朝日俳壇の長老、金子兜太の死去に伴い、朝日新聞は俳壇の新選者


 


一人選ぶ必要に迫れることになった。ただ、兜太の選句が普通の


 


選者とは違って、斬新な切り口での選句に特徴があったので、新選者


 


もそれを踏襲することを願う人は数多いようだ。現在、朝日俳壇


 


入選者はほぼ、常連に占められており、選者が変わらないから、入選


 


者も変わらないと言えないこともない。よって、朝日新聞社は、俳句


 


作りに斬新な世界を切り開いてる斯界の新人に白羽の矢を立ててい


 


ることだろう。


 


  朝日の俳句読者が兜太の後は恐ろしい、という気持ちには、新機軸


 


の俳句が求められるぞ、という期待、また、今後われらはそれに応じ


 


れるだろうかとする一抹の不安を抱いのことであろう。間もなく


 


7月、颯爽としての登場である。期待して待ちたい。


 


  釣り人や花の盛りに背を向けて   東京都) 家泉勝彦 


 釣り場の背に何があろうと、釣り人の目は水に浮かぶ釣り具の動き以


 


に目を転じるこはない。後ろには満開の桜がありますよ、としつこ


 


く話し掛ければ、チョイと振り返ることはあっても、二度とは振り向か


 


ない。花なぞ、あってなきがごとしなのである。


 


 


         つづく → NO.387-2


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387-2 花冷えと思へ白刃の我が心* [文芸(短歌・俳句) 時事]


   随想コラム「目を光らせて」NO.387-2「朝日俳壇から」

            


          期間:2018.520~5.27


 



       花冷えと思へ白刃の我が心


 


  *題 目: 朝日新聞2018.5.13 (船橋市)斉木直哉さんの入選作。


                  アオウ ヒコ


                          180509Iris2.jpg


                           水彩画家 酒井 健 の作品から 180509  Iris


      



                                   朝日俳壇 201.2


09-DSC_0083.JPG

                                                                              


  第一糸仕損じ蜘蛛の逆さ吊り


              (川越市)佐藤俊春


 よく見かけるシーンである。これから我が家を作ろうと庭の枝から、


蜘蛛が一番糸を風に乗せて流すのだが、旨く枝に絡みつかなくて失敗。


糸の送り手の蜘蛛は自らの助け糸に乗ったまま宙に逆さ吊になって漂


っている。こんなことは日常茶飯事、しばらくして蜘蛛は二番糸を流


し始める。今度は旨く行く。次々に旨く行く。


 


   大いなる股間輝き初節句


             (矢板市)菊地壽一


 端午の節句には腹掛けをして鉞(まさかり)を担いだ金太郎が飾られ


 


 る。(広辞苑)とある。ここの家では、プクプクと太った童子が初節句


 


 とあって、素肌に金太郎の腹掛けだけを付けられて、縁側に座らせたの


 


 であろう。男座りをさせられるとそこには大いなる股間が輝いて頼もし


 


 い限りでありました。


 


 


   夏きざす海の音するネックレス


                    (平塚市)日下光代


 


 夏になり胸の空いたブラウスを着ればネックレスが欲しくなる。でき


 


 れば、海の音がするのがいい。小さい貝を繋ぎ合わせた首飾りならぴっ


 


 たりということか。早く夏よ来い。


 


 


   青空を見上げて無言鯥五郎


                  (霧島市)久野茂樹


 


 鯥五郎さんてどこのお方? 歌舞伎役者にいなかったかな。人間じや


 


 なくハゼ科の海産の硬骨魚。有明海の沿岸の泥海に棲む。全長20セ


 


 チ、両眼は接近して頭上に突出。干潟を這って進む。美味である。


 


 引き潮の時、潟スキーを滑らせて漁師が太い掛け針を糸に付けた釣り


 


 竿を揮って「青空を見上げて無言鯥五郎」を狙うのだ。ムツゴロウは突


 


 っ立っているものだから手慣れた漁師の手に掛かれば、あっという間に


 


 掻っ攫われ、囚われの身になる。


 


 


   母の日や海に苺に母の文字


                 (高松市)桑内 繭


 


 なんといっても母は偉大なり。その証拠には、多くの字にはこの母の


 


 部位が含まれているのだ。父はボオーとしているから、そのことにはな


 


 かなか気付かない。


 


 


   花は葉に力蓄へ始めをり


                 (高山市)大下雅子


 


 すでに葉桜、と言いますよね。あれだけの桜の花を満艦飾で付けた後


 


 です。ぼんやりしていたら、来年の桜の花は咲きません。葉桜というは


 


 、来年の桜のために力を蓄えはじめているんです。


 


 


   心までみどりに染めし若楓


                  (寝屋川市)岡西恵美子


 


 なんと清々しい緑色に染まった若い楓であることか。心が緑に染まり


 


 ゆくのを感じます。


 


 


   


           朝日俳壇 2018.5.27


            


08-DSC_0079-001.JPG

           


 


 


    母の日や孫に余命を問われけり


 


                  (越谷市)荒井高四郎


 


 おばあちゃんはいつまで生きるの?」というのが、典型的な問いら


 


 しい。「そうねえ、孫ちゃんが大学を卒業してまもなくよ」「あ、そう。


 


 となるとあと何年後かな」と計算するのが面倒くさくなるらしい。


 


 「じゃ訊くよ。孫ちゃんいつ結婚するの?」これには返事がない。答え


 


 が困難であるらしい。


 


 


    大岩に袈裟の如くに藤垂るる


 


              (群馬県東吾妻町)酒井大岳


 


 先達の誰かがこの大岩むき出しじゃあまりに殺風景じゃよ、と嘆じ


 


 のがはじまりで、藤でも生やそう、となったのか。いつしか藤は根から


 


 岩の上に這い上がり、蔓は人の腕ほどになり、それから垂れ下がった枝


 


 の数々から側枝が伸びに伸び、今では袈裟のような紫の直垂になってい


 


 る。こんなにまで大きくなることを、かの先達は想像したであろうか。


 


 


   桐咲いてむらさきの風紡ぎけり


 


                 (加古川市)森木史子


 


 桐の木は高く上に伸びる喬木だから、その花も高所に咲き、下ばかり


 


 見て歩くと、藤の花には出会えない。上を向いて藤の花に出会えたら、


 


 そこで咲く桐の花の紫が風にゆすられて大きく揺れているのに出会う。


 


 


                 


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   てふてふに鯨のごとき古墳かな


 


            (茨城県阿見町)鬼形のふゆき


 


 蝶々が巨大な古墳の上を飛ぶ。あの蝶から見下せば、下に見る古墳は


 


 おそらく鯨がねそべっつているように見えることだろう。


 


 


 


   すぐ横は地震の断層代を掻く


 


            (熊本県菊陽町)井芹真一郎


 


 この稲田の横には地震で出来た断層があるんですよ。間もなく田植え


 


 のころとなりますから、こうして代を掻いているんです。


 


 


   食べ終へし葉の大きさよ柏餅


 


            (高槻市)会田仁子


 


 気が付いてみると、柏餅そのものは小さなものですね。それにひきか


 


 え、食べ終わってみる柏の葉の大きいこと。広いこと。


 


 


 


   地震の城持ち上げそうな楠若葉


 


            (熊本市)山澄陽子


 


 若葉の頃となって楠の木から出る若葉の勢い。地震で壊れた熊本城を


 


 持ち上げそうな力を感じます。


   


 


        (2018.7.01)


 



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386 世界中で暗殺毒殺虐殺があってシェイクスピアは眠れず [文芸(短歌・俳句) 時事]

    


    随想コラム「目を光らせて」NO.386「朝日歌壇・朝日俳壇から」


 


     歌壇 期間:2018.5.6.~5.27


 


    世界中で暗殺毒殺虐殺があって


                   シェイクスピアは眠れず


 


   *題 目: 朝日新聞2018.5.6 (川越市)小野長辰さんの入選作。


 


                アオウヒコ


 


1-DSC_0002.JPG

  画像:洋画家 青沼茜雲 の作品集から  49. 「丘の上の桜並木」  


            ・フランス・サロン・ドトンヌ会員


                ・英国王立美術協会名誉会員


                        ・ノルウエーノーベル財団認定作家     


               ・世界芸術遺産認定作家


                                  ・日本代表殿堂作家


 


 


                  朝日歌壇 201.0


       


1-rose0007.JPG                                                  

   ★内閣と各省庁の不真面目さ気にならぬ人四割もいる


 


              宇都宮市) 水島敏雄


 


  芭蕉越えし猿羽根峠のやまざくら残雪細る谿に散りゆく


 


                (仙台市) 沼沢 修


 


 さばね峠と読むのか。猿に羽があってようやく越え得るというのか険しいこの


 


  ここに咲く山桜が雪の残る谿に、ひっそりと花びらを散らしている。芭蕉も


 


  越えた峠に私はひっそりと佇む。


 


 


    もう落ちるほかなき滝に似た水と同じ思いで乘る手術台


 


                     東京都) 橋本栄子


 


 ナイガヤラ大滝でも、崖に至る前まではなだらかな静水として推移しているの


 


 が、河床盤が途切れれば一瞬にして滝の水に変じ、滝壺への落下である。


 


  ああ、あそこからダイビングする思いですよ。 手術台に乗るというのは。


 


 


    詰問のやうな質問穏やかに答へてをられし兜太先生


 


                    前橋市) 荻原葉月


 


 金子兜太を偲ぶ在りし日の想い出。こういう一瞬、一期一会の姿を脳裏に収


 


 めている人の幸せ。多くの優れた人物との交流によって、人は練磨され、優れ


 


 人格を具えるようになる。


 


 


   ★四月十三日啄木忌に思ふこの時代閉塞感いつまで


 


                    京都市)  森谷弘志 


  


    ★セシウムが一日20億ベクレル海に漏れてる八年目の春


 


                                               福島市)  澤 正宏


 


                    


   世界中で暗殺毒殺虐殺があってシェイクスピアは眠れず


 


                    川越市)  小野長辰


 


  イギリスの劇作家シェイクスピアは多くの作品を世に問うたが、その多くは人


 


 持つ悪徳、悪業をテーマにした。当時、劇場を埋めた観衆は舞台の主役


 


 演じる主人公の悪徳悪業の様に熱狂したが、日常生活においては非業悪


 


 への反省の日々を送る幸せに恵まれた。シェイクスピアは生涯を通じて殆ど 


 


 悪徳を紹介し終えて自らは安眠し得たのだろう。だが、彼が示した人間の生


 


 規範の遵守がなされず、このところ世界で繰り返される悪業非業の様を見れ


 


 シェイクスピアは安眠できないのではないか。書き残した悪徳があったなと。


 


 


  ペダル踏む白き素足のピアニストグリークの協奏曲は満つ 


 


                     深谷市)  時田 清


 


  コンサートホールに登場した若い女人ピアニスト。白い素足がペダル


 


 踏む姿も初々しい。白い指も鍵盤に踊って、やがて、あのグリーク


 


 ピアノ協奏曲の旋律が佳境を迎え、ホールは満ちてくる。


 


 


   遅く来た合格通知を携えて搭乗ゲートの向こうは未来


 


               東京都)  佐藤知寧


 


 合格通知を出してきたのは日本の会社、ようやくに届いた合格通知で


 


 方赴任だった。だが、ありがたい。通知書を携行して空港の搭乗ゲー


 


  トに向かう。私にとって、あの先は未来だ。どのような未来が待ちうけ


 


 るのか。


 


 


  吸いて吐く息に栃笛鳴らしゆく鳥居峠と言う木曽の道


 


                       伊那市)  小林勝幸


 


 木曽の道というだけで、道具は揃う。口で栃笛を鳴らし鳥居峠を歩い


 


 いる。笛がなければ、木曽のなあー♪と声を張り上げるところだ。


 


 


  つばくらめ燕尾を分けて低く飛ぶ冷えしんしんと秩父長瀞


 


                  横浜市)  竹中庸之助


  


 これも金子兜太を悼む歌であろう。初夏の夏空を分けて低く翔ぶ燕。


 


  秩父、長瀞の景を背景にして。


 


  


     朝日壇 20113 


7-rose11.JPG




  若いのに杖が要るのかと言われたり七十五の吾が米寿の爺に


 


                三原市)  岡田独甫 


 


 悪態を吐く輩はどこにでもいる。悪態をつかれないように日頃から用


 


 心して身構えるしか方策はない。また、悪態をつく様な人間とは付き


 


 わないことも大切。人は年取るにつれてひねくれてゆく。背も曲がる


 


 口先もひん曲がる。お前みたいな奴は早くくたばっちまえ。


 


 


 ★取り敢えずと庭に置かれし汚染土が四年経て今運ばれてゆく


 


                    (福島市)稲村忠衛 


 


 


  この惑星にたんぽぽの花が満つる頃こと座流星群が宙にあらはる                                                                       (越前市)内藤丈子


 地球がこの季節を迎える頃、天空には琴座流星群が現れるのですよ、


との天文知識をさりげなく披露する人に出会う。そのたびに吃驚もし偉いなあ


と感心もする。その昔、ユーホで飛来した宇宙人が地球監視役として仲間数人


を残して去った折の末裔たちではないかと考えたりする。なら、宇宙に詳しい


ことは当然。納得できますね。


 


 真夏日の飛火野のなか水辺へと冬毛の鹿が群れて過ぎる


               奈良市)宮田昌子


 真夏日を迎えた奈良の飛火野、ここにあるシカの水場めがけてまだ


が取れぬ鹿が集団で集まってくる。とりあえず水ですよ、冬毛はその


うち、落とせばいいのだから。


 


          つづく → NO.386-2


             (2018.6.15) 



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 386-2 やはらかにくぬぎの若葉光る枝に山蚕のいのちむすびたまへり [文芸(短歌・俳句) 時事]

                                      

       随想コラム「目を光らせて」NO.386-2「朝日歌壇・朝日俳壇から」


            


      歌壇     期間:2018.513~5.27


 


 
    やはらかにくぬぎの若葉光る枝に


 


                 山蚕のいのちむすびたまへり


 


             題 目: 朝日新聞2018.5.27(埼玉県)酒井忠正さんの入選作。


 


              アオウ ヒコ



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         水彩画家 酒井 健 作品集から  180607 薔薇三昧


          


  輝きは一葉一葉にゆれてあり青葉若葉に雨ふりし朝


               〈逗子市)織立敏博


 雨あがりの朝、朝の日差しが雨に濡れた木々の一葉一葉に輝いている。


美しい緑葉が匂う。久しぶりに降ったからでもあっただろう。 


 


  ★忖度とおもねりの差は如何ばかり猫も思案の国の行く末


                                  


                   上尾市)鈴木良一


 


 


 人形は嘆き喜び怒れども頬だに動かさぬ主遣い(おも使い)


 


                (八尾市)水野一也


 


 文楽の人形遣い達。彼らの指使い操作によって、人形は喜怒哀楽の情


 


注入されて演じるその素晴らしさ。いつしか、人形使い達の存在を


 


忘れ去られるほどであるが、主役の人形を遣う「主遣い」は自らの頬


 


さえ微動もさせずに演じ続ける。その集中力おどろくべし。


 


 


 君生まれ君育ち君我と生き君病んで果て眠る相生


 


                (相生市)吉田晋爾


 二人(君と我)がこの世に生まれ、それぞれに育ち、結婚して共に生


 


き、君が病を得て逝去し今は眠る、長い二人のいのちの寄り添いだった。


 


 


 


             朝日歌 201.2


5-rose10.JPG

 


   岸の桜舞う中揚々と新人エイトは瀬田川漕ぎゆく


               (大津市)中尾博子    


 若々しい青年八人が漕ぐ新人エイト、両岸の桜舞う中、瀬田川を漕ぎ


くのを観ている。風景に青年の清冽さが加わり、女人の目を釘付けに


して。             


   熱湯で緑に変わるカメレオン潮の香りのわかめのサラダ


           松阪市)こやまはつみ


 海藻のワカメ、これに熱湯をかければ緑色に姿を変えるところから


レオン。この美しいサラダがいま人気だ。  


  表面は柔らかく内は凛とした人になるためヨガを深める                                                                (東京都) 上田結香


 とすると、今のあなたは表面はざらざらごつく、内も雑なる人でお


すか。ヨガを深めれば、よかオゴジョになるは必定。待っておりまする。


 


  山林に自由は存れど家近き山除染せず帰還るに難しと


            (福島市)青木崇郎


 


 ★唯一の被爆国なり発議して賛成すべきを「反対」と言う


 


             (名古屋市)諏訪兼位


 


 


  前に山思ひ思ひに山桜白山桜紅山桜


 


      (熊谷市)内野 修


 


 人、山と対峙す。見えるは山桜、白と紅との一山ヤマザクラかな。


 


 


 


  桟俵に女男の雛乗せ流したり美しけれど悲しき祭り


 


              (鳥取市)山本憲二郎


 


 何しろ男女相思の雛を乗せて流しびなとするのだから最初は美しい


 


 束が綺麗に見えた。が流れつくところはどこ?と思えば、河原の果


 


 て以外にはなく、これは悲しき祭りだよ、と嘆いたのだ。


 


 


 ★問ひ掛くる記者を振り切る大臣の中折れ帽に歪む口角


 


              (青森市)森 純一


 


 ★「アベ政治を許さない」の文字太太と兜太のいない憲法の日に


 


                 (高松市)島田章平


 


 


 


           朝日歌壇 2018.5.27


 


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   天皇に捧げた子供と思えば 語りし祖母も五〇回忌


 


                   (名古屋市)上小路規子


 


 


  いつまでもゐたいと妻がいっているやうな骨壺三回忌きて


 


                   (高松市)島田章平


 


 それはあなた様の感慨でごわして、骨壺女史は「いつまでここにおい


 


 おくつもり?そろそろお墓に遷してもいいんじゃない」と望んでお


 


 れるのかも。


 


 


 ★さもしさは保身ばかりの男達見よ初夏のけやき堂々


 


                 (名古屋市)山守美紀


 


 隠蔽とセクハラ・改竄くくりたる古紙回収の軽トラが行く


 


                 (吹田市)野々村紘一


 


 


  やはらかにくぬぎの若葉光る枝に山蚕のいのちむすびたまへり


 


                  (埼玉県)酒井忠正


 


 <山蚕>の繭からとれる絹はうっすらと緑がかって、風合いも細く優


 


 しいと聞く。ひところは日本の財政を支えた日本の絹産業の主流「正絹」


 


 ではあったが、「山蚕」の風合いを愛でる文化も存続させて来たようだ。


 


 「むすびたまへり」の主体は雅なお方の手になる感じを与えてやまない。


 


 


  水張りて苗を待つ田は一面の鏡となりて白山を映す


 


                   (白山市)盛田和代


 


 白山の麓に位置する水田は既に代掻きされ、水張りされて、田植えを


 


 っている。その一面の鏡には白山を映し出している。


 


 


             (2018.6.15) 


 


 


 


 


 


 


 


                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                           


 


 


 





 


 


 


 


 


 


 


  


                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              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共通テーマ:日記・雑感

385 鳥雲に入り杣びとら山に入る [文芸(短歌・俳句) 時事]



  随想コラム「目を光らせて」NO.385「朝日歌壇・朝日俳壇から」

            

       俳壇 期間:2018.02~4.29

 

 

 

     鳥雲に入り杣びとら山に入る

 

        題 目朝日新聞2018.4.2

       (群馬県東吾妻町)酒井大岳さんの入選作。  

             アオウ ヒコ

                                 

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   画像:洋画家 青沼茜雲 の作品集から  48.日本の四季「筑後路」   

              フランス・サロン・ドトンヌ会員

              ・ノーベルノルウエー財団認定作家     

              ・世界芸術遺産認定作家・日展所属

 


           「朝日歌壇・朝日俳壇から」(略) 

         朝日壇 201.4 

             

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山歩会 越生つつじ公園

 

 

  夜もすがら轟く富士の雪崩なる

 

           (富士吉田市) 子俣紀子

 

 冬の間に富士の嶺に降り積もった雪。春の到来とともに、あの壮大な

 

スロープを雪どけの雪崩が頻発するのか。昼間は人間どもの動きに邪魔

 

されて気付くことはないが、夜のしじまにはそれは轟きの音として聞え

 

てくる。

 

 

  お水取果つ飛火野の星の屑

 

               大阪市) 友井正明

 

 今年も、春のお水取りが盛大に執り行われた。漆黒の闇に弾ける火の

 

粉をふりまいて大松明を抱えて降りる東大寺2月堂あたり。あれは奈良

 

の飛火野の空に見える星の屑のようでもありました。

 

 

  初蝶のどこに隠れてゐたのかと

 

            阿南市) かつせ千津

 

  まだ寒さの残る早春の山野や町の角々でふと見かける初蝶。思わず感

 

じるのはどこかでひそと越冬していたんだな。キャベツに産み付けられて

 

、青虫となり、蛹から成虫となる過程を経るにはあまりに早すぎる。

 

 

  此処かしこ桜大樹や西行忌

 

          多摩市) 吉野佳一

 

  逝くならば、滅するならば、桜大樹の元ならで、と西行が願った大

 

樹の桜をあちこちで見かけるようになりました。

 

 

  日と月と白さを競ひ昼の蝶

 

              稲沢市) 杉山一三

 

  この世の昼夜に明るさを齎してくれる日と月。その白さを競い合うように飛ぶ

 

の蝶の白。際立ちますよね。

 

                          

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  三月や記憶の中に死者生きる

 

           東京都) 縣 展子

 

 これは、まだ、金子兜太への追悼句でしょう。まだ、亡くなられて間

 

もなく、記憶の中に活き活きとして生きておられる。

 

 

  残されし人のあはれや花の頃

 

                 愛西市) 小川 弘

 

  人はいつの季になくなるかはわからない。しかし、残された人にと

 

っては、花の頃に人が身罷れるは何かと鮮烈で、忘れがたい想いに包

 

れることになります。

 

 

  鳥雲に入り杣びとら山に入る

 

          群馬県東吾妻町)  酒井 大岳

 

 日本で冬を過ごした渡りの鳥が、春の到来とともに再び異郷の地へ旅

 

立つ頃となる。山野の恵みで暮らしを立てる杣人達は、春を迎えた山に

 

仕事をせんと分け入ってゆく。愛妻に先立たれて以来、作者は自らを囲

 

繞する自然物の中に亡き妻の存在を見出して、その交流を句作に残し続

 

けたが、この句の雲に入るの鳥に愛妻を背負わせてしばしの別れを託し

 

、自らも、杣人の一人として独立の気概を持たせての生活を宣言してお

 

られるようでもある。

 

 

   春の夜や虚子命名の酒を酌む

 

                  松原市) 西田鏡子

  

 そう言えば俳人、歌人の正岡子規は名は常規(つねのり)別号は獺祭

 

(だっさい)だったか。いつの頃からか、大吟醸酒として「獺祭」ブラ

 

ンドが登場、日本酒業界に名を成さしめた。虚子が存命中に命名したか

 

どうかは別として、首相が前米国大統領オバマ氏をこの酒でもてなした

 

時、オバマ氏は「これは旨い」と感嘆したという。

 

       

   朝日俳壇 201.4.8        

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  西行の立ってゐそうな山桜

 

          (大和郡山市)宮本陶生

 西行は吉野の山を山桜でいっぱいにしようと,数多い山桜の苗木付け

 

に献身的に奉仕したと伝えられる。

 

いまでは、日本で「桜」といえば染井吉野であり、今の吉野にもこれが

 

殖えられているが、西行の時代の桜は山桜であり、吉野の山々のを彩る

 

桜は「山桜」であり、大きく育った吉野の山桜の傍に立てば、かの西行

 

が傍らに立っているような思いにとらわれる。

 

 

  菜の花の花粉にまみれ浅間山

 

           (熊谷市)内野 修

 

 浅間山には軽井沢に出かけた折に、幾たびも脚を運んだので親しみ深

 

いが、浅間山は常時噴煙を上げており、過去の火山爆発の遺構や噴石が

 

示す、男性的なイメージが先立ってならない。鬼の押し出しは1783

 

年の大噴火の際にできたが、浅間山一帯は上信越高原国立公園に指定さ

 

れ、ここには高原を彩る草花の開花が見事そのものであるらしい。浅間

 

のどのあたりだろうか、菜の花の大群落が黄色の花粉を放出し、それに

 

塗れる浅間山もなかなかですよと言うのは。

 

 

  大空はひとりにひとつ卒業す

 

             (東京都)土方けんじ

 あなたは学生さん。小学校、中学校、高校、大学、この辺までの学校

の課程を終えて今日めでたく卒業した。校庭に出て、空を見上げる。見

事に青に染まった空が果てしなく広がる。何人の学生が巣立つのか。こ

の大空は、一人一人の学生にそれぞれ一つづつ準備され、与えられてい

る。学生諸君!大きく羽ばたき給え。君の大きな将来図をあの青空に自

由に描き給え、としている。

 

  狼と兜太の故郷旅したき                                                             

           (川口市)青柳 悠

 あの兜太を生み出した故郷はどんなところか。あの作風とそれを生み

出した土性骨ともいうべきものに旅をして触れてみたい。 

              

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  卒業証書丸めて覗く未来かな

              東京都)吉田かずや

 卒業証書、それは平らな紙にあなたの氏名と過去数年間の学業過程終

了を告げる言葉が書かれており、それを証する校長の氏名と印形が捺し

てある。生徒は一人ずつ名前を呼ばれて校長の前に立ち、この証紙を押

し頂くようにして手渡される。もう、もらったら私のもの、くるくると

巻いて望遠鏡のように外界を見てみる。極小の視野ではあるが、あなた

の未来図がほの見えて来るという次第。学校よ、さようなら。

 

  太く濃き兜太の一書あたたかし

 

              (茅ヶ崎市)清水呑舟

 

 これも兜太追悼句の一。安倍政権の愚をデモ行進で訴えたときのプラ

 

カード用に墨書したもののようだ。

 

  

  梅咲いて庭に兜太の句が確と

           (倉敷市)森川忠信 

 これも兜太追悼句の一。春がきて、梅の花が咲く庭をみれば、兜太の

句が確と存在することです。

 

  初蝶の青信号を渡りけり

          (玉野市)加門美昭

 初蝶に見参するときは庭から庭へ、高きから低きに、力強い飛翔を

せるが、街中でも、おっ初蝶じゃないかと空を見上げることがある。そ

れも、偶々街中の交差点で青信号の時に初蝶が渡り行くのを見たようだ。

 蝶は自動車とは違って 宙空路線を自在に渡り行く自由を持っている。

何を好き好んで青信号を見て渡るものですか!と蝶は反発し「なんなら

赤信号の時に渡りましょうか」と言うに違いない。

 

  紅梅も薄紅梅も競ふ彩        

         (堺市)徳澤彰子

 この俳句。句を読み進むだけでそれぞれに競う彩のいのちの世界に引

き込まれる。紅色も薄紅色もそれぞれに自らの彩を良しとして競い合っ

ている。それぞれに美しい。 

              

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             山歩会  つつじ公園 藤棚

 

       つづく  → NO.385-2

 

                 (2018.6.1)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                            

 

                                                                    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385-2 若鮎の宙より落ちてまた跳べり [文芸(短歌・俳句) 時事]


 随想コラム「目を光らせて」NO.385-2「朝日歌壇・朝日俳壇から」

     俳壇 期間:2018.4.15~4.29

    若鮎の宙より落ちてまた跳べり

       題 目:朝日新聞(2018.4.22

        (神奈川県松田町)山本けんえい さんの入選作。

180501 Iris.jpg              

      酒井 健 の 水彩画 「アイリス」 180501 

 

                         アオウ ヒコ

 

     朝日俳壇 2018.4.15

             

03-IMG_0113.jpg

              

   花明り黄泉に紛れてしまひけり

           (大阪狭山市)神郡一成

 満開の桜が夕べを迎えると、しばらくは花のいのちのちからで明るさ

 

を保つ、実に貴重な数刻「花明り」がある。だが、次に控るは広大な

 

夜の闇の世界「黄泉」だ。すぐに紛れてしまう。

 

 

 

  兜太悼む句の並びたる彼岸かな

 

             飯塚市)釋 蜩硯 

 今年の彼岸は特別だった。金子兜太が逝去して、その死を悼

む句がずらりと並んだ。私もその一つに加わった。

 

  かたくなに汚れ汚れて残る雪

 

           (札幌市)前田豊作

 

 そろそろ降ってもよさそうにと待たれる雪。降れば初雪、新雪、降り

 

れば深雪、大雪。融けてくれれば融雪、融けず残れば根雪、残雪。

 

いつまでも黝ずんで汚れが目立つ雪はだれにも歓迎されず、道の隅で見

 

捨てられたままのおゆき(汚雪)さま。

 

 

 

  農継ぐと決めしや次男麦踏めり 

            

            (神戸市)日下徳一

 

 おや、次男坊が麦踏に出たらしいな。農を継ぐと決心したらしいよ。

 

そんならそうと言ってくれればよさそうなもんだに。いやいや行動をも

 

って意思を示すってやつじゃよ。嬉しいことだ。こんな朗報は久々だ

 

う。今夜あたり、お祝いの席を設けねばなあ。

 

 

 

  春愁や妻の逝きたる部屋に覚め

 

            (長岡市)長谷川回天

 

 冬が過ぎて暖かい春が来たというのに、今朝目が覚めたのはつい先日、

 

妻が死去したその部屋でだった。誰もいない。人の声がしない。なんと

 

も、気分の乗らない思いが漂う静かな朝であることか。

 

 

 

  枝は地に花は天まで大桜

 

          (流山市)荒井久雄

 

 桜の下枝は地を被いつくすように低く伸び、桜の主幹は花を纏うて天

 

にまで延びる。凄い大桜に遭遇した日。

 

 

 

  雪嶺の神々しさも信濃なる

 

            (藤沢市)青木敏行

 

 私が住むは信濃。四季を通じての変化の美しさ、快適さに加え冬から

 

春には遠望する雪嶺の神々しさはいうことなし。なにしろ信濃だもんね。

 

 

 

  行く春や狼哭き鮫の目は泪

 

         (石川県能登町)瀧上裕幸

 

 なんとも、有職故実に詳しく、先輩連の作品にも通じる才豊か人溢

 

れる日本。言葉を自在に兜太逝去を悼む。「行く春や鳥啼き魚の目に泪」

 

(芭蕉)を踏まえて。

 

 

  虚子忌来て朝日俳壇日曜へ

 

           (横浜市)御手洗ゆきを

 

 これは朝日歌壇・俳壇の掲載日が従来の月曜から日曜に変更になった

 

ことを知らせるニュースだった。

 

                                                                 

 

        朝日俳壇 2018.4.22

       

09-DSC_0049-001.JPG

 

 

   輪郭のみな失せてゆく朧の夜

 

             (小樽市)遠藤嶺子

 

 朧、おぼろ。春の季語。薄く曇るさま。ぼんやり。ほんのり。朦朧。

 

(広辞苑)。北海道に住む人にしか、この現象は知覚しえないのか。

 

これによく似た現象として「夜霧」がある。「夜霧よ今夜もありがとう」

 

に歌われている夜霧の視界遮蔽力は抜群、二人の仲を完璧に隠してくれ

 

る。だが、朧は局所的視界の遮蔽ではなく、物や記憶をぼうーと、はっ

 

きりしないさまにもっていく。朧は事象が周りの輪郭からぼやけていく

 

というから、恐ろしい。

 

 

 

  人惜しみ落花惜しみてゆく歩み

 

          (島根県邑南町)服部康人

 

 

 人が亡くなりこれを悼む。桜の花が落ちるのを惜しむ。これらの歩み

 

はすべて時の歩み。人はこれに抗うことはできない。

 

                 

  囀りに万の蕾の語り初む

 

          (柳川市)木下万沙羅

 

 春と共に小鳥たちの囀りが木々の枝で聞かれるようになる。それを春

 

の到来と聞くのか、木々の奥に隠れ潜む万の蕾たちが動き始める。われ

 

らの出番ぞよと。

 

 

  兜太亡き虚空を流れ春の雲

                     

           (調布市)川井政子

 

 春が来て、空には春の雲が流れていますが、なんとも虚ろで寂し

 

い思いにとらわれております。金子兜太追悼句。

 

 

 

  若鮎の宙より落ちてまた跳べり

 

        (神奈川県松田町)山本けんえい

 

 友釣り仕掛けに掛かった若鮎が鮎竿のしなりで渓から離れ、宙を飛ん

 

で釣師のたも網に飛び込んだ。勢い余ったのか、若鮎の力が勝ったのか、

 

一旦タモに収まったかに見えた鮎は、たも網から跳ねて渓に落ちた。

 

 さて、その先はどうなったか、杳としてわからず。

 

 

  羊頭の自由と民主霾(つちふ)れり

 

               (川崎市)多田 敬

 

 

  今もなほ鉄のカーテン鳥帰る

 

            (札幌市)渡辺健一

 

 

 

  汝も吾も桜吹雪の中にをり

 

            (熊本市)寺崎久美子」

 

 二人で桜を観に行った日。突然に桜吹雪に見舞われた。圧倒的な桜花

びらが風と共に二人を包み込んだ。なんと晴れがましく、息のつけぬよ

うな場に居合わせたことか。この経験、二人にとっては瑞気そのもの、

幸せを呼び込む思いでお互いを見つめ合った。 

  北国に花の吉野をなつかしむ

 

            (北海道音更町)信清愛子

 

 数年前に初めて吉野地方を訪れ、花の吉野を楽しんだ。それまでは、

 

九州と東京の染井吉野で済ませていたから、山桜の吉野のなんと新鮮で

 

あったことか。北海道居住の人も山桜の吉野の経験を積まれたようで、

 

その懐かしさは尋常ではありません。

 

      朝日俳壇 2018.4.29

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  血みどろの平和憲法記念の日

            

         (福島県伊達市)佐藤 茂

 

 

  菜の花の色の月浮く菜花畑

 

           (稲沢市)杉山一三 

 

 この句は、色彩の黄を中心に作られている。菜の花燦讃、菜の花畑。

 

お月様も菜の花色の黄に化してしまっている。

 

  春来忌即ち兜太の平和主義

 

           三郷市)岡崎正宏

 

 早々と兜太の忌の呼称が決まったようだ。春来忌か。金子兜太が年来

 

の念願を人類の平和主義に合わせて貫いてきたことからも、未来にかけ

 

て春来たるの忌はぴったりであろう。

 

 

  ★戦争の長き影ある昭和の日

            

           (倉敷市)森川忠信

 

                 

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アルペンブルー

 

 

  行春を惜しみて命惜しみたる

        

            (神戸市岩水ひとみ

 

 ああ、ことしの春も過ぎてゆきましたね。それに、この春にはあの方

 

のお命もなくなってしまいました。この春、多くのいのちが亡くなられ

 

た人への心からの追憶と愛惜の情をお伝えいたしたく。兜太追悼の句と

 

しても。

 

            (2018.6.1)

 

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 



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共通テーマ:日記・雑感

384 膝を病む子羊は群れに遅れつつ誘導犬に見守られ行く [文芸(短歌・俳句) 時事]

 

                                      

   随想コラム「目を光らせて」NO.384「朝日歌壇・朝日俳壇から」

            

     歌 壇 期間:2018.02~4.29

 

 

    を病む子羊は群れに遅れつつ誘導犬に

 

  見守られ行く



  題 目:朝日新聞2018.4.8

       (ドイツ)ハルツォーク洋子さんの入選作。  

              アオウ ヒコ

                 

47-DSC_0019.JPG

       画像:洋画家 青沼茜雲の作品集から  47. 「春らんまん」

              フランス・サロン・ドトンヌ会員

              ・ノーベルノルウエー財団認定作家     

              ・世界芸術遺産認定作家・日展所属

 

 


   

      「朝日歌壇・朝日俳壇から」 (略)

 

         朝日歌壇 201.402 

               

1-IMG_1002.JPG
 

 

 

 素のままのわれで居られるパートナー生きてこの世に

 

 いるという幸

              (仙台市) 沼沢 修

 

 気取ることもなく、地のまま、素のまま二人でいられることの幸せ

 

何たる幸せ。

 

 

 ★国民を守る政治が国民をだましてまでもまもるはなにぞ

 

                    下関市) 乗安 勉

 

 

 ★強権で妻とおのれを守る人これも一つの愛のかたちか

 

               駒ケ根市) 伊藤邦彦

 

 

 ★長官は辞任し部下は自死するも確定申告に人ら列なす

 

             長野県) 小林正人

 

 

 

 マイク手に秩父音頭を独唱の白寿間近のあの日の兜太

 

             東京都) 大久保やそじ

 

 まだ、金子兜太への追悼句がつづく。そうか、マイク手に秩父音頭を

 

熱唱されたか。

 

 

 ★線量の無き様にある山桜忘れはしないが知らぬ振りです

 

                     さくら市) 大場公史

 

 

  わが産声聞きしは若きわかき母沈丁花ひらく喜寿迎う朝

 

                  枚方市)  鍵山奈美江

 

 私の呱々の声を聞いた時の母は本当にぴちぴちの若い頃よ。あれから

 

何年、幾歳月が過ぎた今朝、母は沈丁花の香りの中に喜寿を迎えようと

 

している。

 

        

    朝日壇 201.4.08

2-IMG_1003.JPG

               

 

 ★表示板に<反対2票>光りおり国家主席の任期撤廃

 

                (八尾市)水野一也

 

 もうこれで鳴らない電話を待たなくていい君にさよなら告げ

 

 た春

                (八幡浜市)大下まゆみ

 かつては「あらまた!さっき切ったばかりじゃない」と熱烈交信の日

々だったが、いつの間にか、鳴るのを待ちわびる日々に転じた。この春、

君にさよならを告げたので、しばらくは鳴らない電話を待つことはない。

 

 冷酒を真夜の厨に立ち飲めばかちりかちりと砂吐く蜆

 

              (日立市)加藤 宙

 

 頭が冴えて寝付けない。台所に行き冷酒の立ち飲みに及ぶ。

 

浅い鍋に水を張り、蜆を漬けて砂を吐かせている。蜆は二枚

 

帆を開き、その合間から水管に水を含ませピューと吹き出す時

 

に砂を随伴させる仕掛け。真夜の冷酒飲みの耳には「かちりか

 

ちり」と音がするという。新鮮な表現であることに当方も「か

 

ちり」と来た。

 

 

 唐突に進行性だと友は言い減らぬパスタと渇いた唇

 

                (千葉市)牧野弘子

 久しぶりに友に会う。食事でもとカフエに寄ると「進行性なの」と言

ったきり。運ばれてきたパスタも一向に減らず、生色の無い顔には渇い

た唇がやけに目立つ。慰めようがなく黙りこくる私。

 

 ★忠実に上司を守る部下の背に責任被せ呼び捨てにする                                             

            (高松市)島田章平

 

 生まれたる妹に母を貸すと言い兄となりし子は野へ

 駆けてゆく        (福島市)高橋啓子

 それまでは美しい母の愛を独占して已まなかったが、妹が生まれてか

らというもの、そうもいかないことが追々判って来る。兄貴の貫禄を示

さざるを得ない瞬間でもあるが、野へ駆けて行く兄の心は傷心そのもの、

「妹は許せない」と咽び涙ぐんでいる。

 

 膝を病む子羊は群れに遅れつつ誘導犬に見守られ行く

 

           (ドイツ)ハルツォーク洋子

 

 ドイツの草原の牧羊風景の一が紹介されている。羊の群れに従いてゆ

 

くのがどうしても遅れがちになる膝を病む子羊。後になり、先になって

 

それを気遣う牧羊犬。弱者を気遣う健常者の存在を示すヨーロッパ社会

 

の気概が示されている。

 

 ★財務省の暗きニュースを読みし後野良に出て聴く

 囀るひばり     (伊那市)小林勝幸 

                  

 きのふまでその気配なく群れゐしに鴨は夜明けに北へ発ちた

 り            (ひたちなか市)篠原克彦

 渡りの鴨が日本での居留を終えて再び渡りに転ずる季節になる。

に住む日本人は、いつ頃旅立つのかと気になるらしい。日本へ

 昨日まで、何かと騒がしかった湖面が今朝はひっそりと静かだ。夜明

けに北へ渡りおった                   

 ★森友が諸共だった日の写真昭恵夫人の不覚の笑顔

           (下関市)牛島正行

 

 ケンカした朝はそれぞれ犬にだけ声かけをして職場に向かう

           (佐渡市)藍原秋子

 共働きの二人。昨夜ケンカをしたようだ。家を出るときに、どちらも

犬にだけは声をかけてそれぞれの職場にでかけた。帰りにはどちらも

「お帰り、ただいま」がもどっていることだろう。

                                       

 石垣はコンクリートで固められもう何年も蛇を見てない

             (西宮市)佐竹由利子

 俳句の世界では冬と春の季の季語として「蛇」が欠かせない。短歌の

世界では季語のきまりがないので、蛇が登場することは少ない。昔の垣

根は玉石小積から今やコンクリート固めへ変化しているので、蛇が潜り

込む穴が少なく、春時、蛇を見かけることが少なくなった、とぼやいて

いる。

 

 キラキラが並び入学待つ名簿「子」の付く子ついにゼロと

 なる春          (鎌倉市)半場保子

 日本人の名前も、かつての太郎、花子に代表される昭和の名前の面影

いずこで、男女共に、キラキラ名が目立つようになり、特に今春入学を

待つ名簿から女子の名には「子」のつく子ついにゼロとなるという報告

である。

 

 ★参政権もたねど楷書で名を書けり改憲ノートの署名用紙に

 

             (大阪府)金 忠亀

 

   つづく  → NO.384-2

 

 

           (2018.5.15)

 

 

 

 

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                               

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                             

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 


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384-2 もつれ合いくるくる回る天狗蝶滝は光りてゆっくり落つる [文芸(短歌・俳句) 時事]


 

  想コラム「目を光らせて」NO.384-2「朝日歌壇・朝日俳壇から」

  歌壇 期間:2018.4.15~4.29

    もつれ合ひくるくる回る天狗蝶

       滝は光りてゆつくり落つる

 

   題 目:朝日新聞(2018.4.15

            (熊谷市)内野 修さんの入選作。

7-180406Tulip.JPG
酒井 健の水彩画 7-180406 Tulip

                       


                 アオウ ヒコ    

   朝日歌 20115       

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  あんなにも平和愛せし兜太氏が小林多喜二の忌に逝き給ふ                                                                 

                 (成田市)神郡一成

 早朝のラジオで、「今日は何の日」という短いお知らせを伝えている。

 

それに耳を傾けながら、「へえーそうか」などと追憶している自分がい

 

る。作者は兜太逝去の日と同じ日に身罷った有名人を探しているうち、

 

小林多喜二のそれに出くわした。反骨精神旺盛なところが共通している

 

な、と思ったのだろう。

               

 

 ★総理いかにと答弁迫る議員越しのけぞる議員目薬を注す

 

            登米市)菅原小夜子

 ★ちまちまと新聞記事の後追ひをする国会の野党ぞ悲し

 

            高松市)島田章平        

 ★戦争はそこに立ちおりその前に薔薇色をした絨毯敷くな

 

          (ひたちなか市)十亀弘史

 

 

 

 もつれあひくるくる回る天狗蝶滝は光りてゆっくり落つる

 

             (熊谷市)内野 修

 

 

 これは独立した二つの事象を単一な背景の中に、それぞれ異なった時

 

間の推移の中に見事にまとめている。2匹か3匹の天狗蝶がじゃれ合い

 

ながら、やや速度を上げてくるくると、一方の滝は光を受けながらゆっ

 

たりと落下してゆく。透徹した観察眼が生きる自然詠。

 

 

 

 つぼみには今年の春が入ってるハクモクレンの手のひらの中

             

            (奈良市)山添聖子

 

 成長したハクモクレンは比較的高い枝に花をつけるため、蕾だけが単

 

独でぼてりと墜ちることはまずない。だから、ハクモクレンの蕾を手の

 

平にする機会はほとんどない。もし、あるとすれば、強烈な霜に焼かれ

 

て、蕾も花も褐色に変じた春の朝であろうか。

 

 だが、その蕾は純白ではないから、その蕾に今年の春が詰まっている、

 

と感じることはなかろう。高枝切鋏の出番があれば別だが。

 

 

 定年のわれが泣かれてハグされて「先生細い」と笑われて

 

 いる

            (佐渡市)藍原秋子

 

 

 お仕事一途に勤められて、お仲間に愛されて定年の祝いの日が来た。

 

お仲間に祝われて、泣かされて、ハグされて、挙句の果てに「先生細い

 

よ」で皆の哄笑が来た。あゝこの和気藹々。みなさんどうもありがとう。

 

 

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                               

      朝日歌壇 2018.4.22

 

            

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  浪人しようやくむかえた入学式敬語で話す同級生おり

 

            (東大阪市)大野聖子

 

 

 同期の桜であるはずなのに、私の貌に浪々の色漂うのを聡くも感じた

 

のか、入学式の顔合わせの時、私は敬語をもって話かけられた。現役パ

 

リパリで入学してきた秀才女が放つ、極上のオーラ、差別語であったか

 

もしれず、当方にっこりとこれを受容。「ああ、あなたに会えてほんと

 

によかった。これに勝る幸せはありません。」

 

 

 ★妻に代わり答える首相のアップ見る「女性の活躍」どこか

 

 空しく

             (浜松市)古橋妙子

 

 

 川堤おほふ菜の花四、五本を摘みて川守り地蔵に供ふ

 

            (ひたちなか市)篠原克彦

 

 川堤を被ういちめんなのはなを四,五本摘んで川守地蔵にお供えしま

 

した。洪水が堤を越えませぬように、川に流されたときは、しっかりお

 

助けめされるように。なにしろ、私は飛び切りの金槌野郎でありますか

 

らに、どうぞ末永くお忘れなくと。

 

                 

   ★森友・加計があれども支持率四十で何か怖いなこんな日本

 

               (徳島県)一宮一郎

 

 ★真相を語らぬ人と語らせぬ人たちがいて闇深くなる

                     

            (埼玉県)島村久夫

 

 ★国民を欺いてまで守りたいものについては誰も語らぬ

 

          (筑紫野市)二宮正博

  

 

 しゃがみこみ幼児は拾ふはな子亡き象舎の前に散りし花びら

 

           (三鷹市)増田テルヨ

 

 

 おばあちゃん、ここに象さんの花子がいたのよね。長いお鼻をぶら下

 

げた象さん、花子が。あの時も、桜の花が咲いていましたね。ちっとも

 

変わらずに桜がさいてる。あのときも、さくらの花びらを、こうしてし

 

ゃがんで拾っていましたね。 

                

 

  花びらののる天皇の背にそっとふれる皇后の春の指さき

 

            (安中市)鬼形輝雄

 

 

 東宮御所のさくらどき。お二人はさくら花散るお庭へ出て、目を細め

て歩ませらる。天皇の背広の肩に、いつしか桜のはなびら数片がひっ

りと載り、これに気づいた皇后は天皇に近づき、手を伸ばし、指が背

にそっと触れる。気付いた背の君が申される。「なにか付いている?」

「いえ、花びらがいくつか、すこし」「ふりかかっている」「ええ、重

くはないでしょうけれど」「猫背が受けているのか。じゃ、ぐっと背伸

びをしましょう」いつもながらの、あいあわれむ、にこやかなお二

散策。

      朝日歌壇 2018.4.29   

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  茶をたてて心鎮める武士のごと音無き風聴く初登攀まえ

 

              (アメリカ)大竹 博

 

 大事に臨むには心を鎮めるの儀式があらまほしいと。かつて出陣前の

 

武士は茶をたてた。高山への初登攀前のアルピニストは、耳を澄まし音

 

無き風を聞く。いずれも大事成就にとって欠かせぬ要諦である。

 

  花筏分け泳ぎゆくかいつぶり水尾はたちまち花びらに閉ず

 

          チエコ)クロウスカー美莎子

 

 

 花筏が湖面一杯を埋め、鳥やボートが落ちた桜花びらで埋め尽く