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378 くら谷へ地響き立てて傾れ落つ奈落の底に呻く雪魂* [文芸(短歌・俳句) 時事]

   随想コラム「目を光らせて」NO.378 朝日歌壇朝日俳壇」から


      歌壇 期間 2018.1.08~ 1.29

 

  くら谷へ地響き立てて傾れ落つ奈落の底に

    呻く雪魂

 

      目

   朝日新聞 2018.1.29 (新発田市)北條祐史氏 作

 

                                  アオウ ヒコ 

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       洋画家 青沼茜雲画伯 作品集から 41.「飛形山と矢部川」

            イギリス王立美術院名誉会員

         フランスサロン・・トンヌ会員

         ノーベルノルウエー財団認定作家     

         世界芸術遺産認定作家・日展所属

                   

       「朝日歌壇・朝日俳壇から」 

  朝日新聞の歌壇・俳壇の入選作の中から最新の世相を鋭く切取った

 作品を新た選び、コメントを付けています。コメントは文芸上の範

 を超えることがあります。

 作品の頭に印が付いている作品は、時の政権が推進る前のめり

 右傾化路線平和憲法を無視し、国会の存在をないがしろにするさま

 を危惧する市民の投稿になるものです。これらの作品は、ここでは個

 々の作品の文芸上の軽重を問うことなく、注目すべき最新の世相を凝

 縮した作品として、そのすべてを採録しています。 

  これらの作品に対しては、投稿者の真摯な叫びに読者の耳、素直に

 従うべしとしてコメントはつけておません。

  また、文中敬称は省略しております。(筆者

 

       朝日歌 2018.108

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  九十のわれひとり歌う子守唄母に会いたしあの頃の母に

                東京都)伊藤千代子

 齢九十、堂々たる人生である。この間、多くの子や孫、もしかすると

曾孫までを腕に抱いて子守歌を歌われたてきたのかもしれない。いま、

ベッドで一人、子守歌を小さく口ずさんでいる。ふと思う、私がわらべ

の頃、母が私に歌ってくれた子守歌。ああ、あの頃の母に会いたい。懐

かしいあの歌声、お母さんに会いたい。

イスラエルパレスチナはたエルサレム地球の黒点神とは何か 

                  (福岡市)南川光司

 古希近き妻がピアノを習ふとき面輪に少女の瞳が光る

                  (高崎市)宮原義夫

 間もなく七十の歳を迎える妻が、ピアノを習うと言い出して鍵盤の前

に座る。傍に先生が座って、何くれと指導して下さる。それをじっと聞

く妻の貌には、少女が少しでも上達したいとピアノに懸命に向かうとき

 

 晴ればれと「離婚したよ」と笑ふ友「バツイチじゃなく

  ルイチ」といふ      (延岡市)片伯部りつ子

 目出度く結婚した友が、なにがあったか知らぬが、離婚したよ、と晴

ればれの報せを呉れた。人生の過程で引け目を負う「バツイチ」じゃな

く勝利の印「マルイチ」ですよ、と念を押す。勝利を手に入れるまでの

過程を訊こうとは思わない。でも訊いてやった。「あなたねえ、マルい

くつまでやるつもり?」

 移植して枯死するごとく晩年に古巣離れて逝く人多し

               (高松市)菰渕 昭

 植物に例をとれば、沈丁花は移植に弱い。だから、一旦植えたからに

は、その場所を動かさないほうがいい。故郷の土地に長い期間棲みつい

た人が、老年期に子供に呼ばれて都会のマンション住まいをするように

なると、大体老い先は短くなる。環境の激変への対応力が極端に弱っていくからで

あろう。体の動く間は古巣に籠りおるのが一番のようです。

              

十二月八日思へば沸きかへる今の平壌どこか似ている

                 (高松市)島田章平

被爆国口を閉ざすも被爆者は世界に向けて口を開きぬ

                 (横浜市)村田 卓

虐待で失われたる命にもきらきらネーム燦として有り

                 (土浦市)佐藤由美子

   朝日歌 201815

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 ★ヘリの窓落とす程度の軍隊が駐留をして又も沖縄

                (川崎市)小島 敦

 エジプトに駱駝の背に乗る亡夫の写真その二年後を

 知らない笑顔       (能代市)中村弘子

  エプトに旅行して、あの駱駝の背に乗りませんか、と勧められた

ら、日本に居れば出来ぬことだし、一生の記念にもなるからとして、背

に跨り、破顔一笑の姿を同行の妻(私は乗らずこの写真を撮った)に見

せたことだった。あの時の彼、まさか2年後に身罷るなど露ほども思

なかっただろう。きゃっきゃっとはしゃぐ笑顔を、これまたポーズ付け

までして撮ったこの私。二年後を知らなかったのは彼だけではない。私

もそうだった。

 あの気迫あの速攻を観ることも叶わずなりぬああ日馬富士

                 (舞鶴市)吉富憲治

 横綱の日馬富士の取り口の速さを良しとするフアンがここにもいた。

張手専門の逃げ横綱某とは違って、生一本の速攻を旨とした男が、酒の

上とはいえ、暴力を振るい退陣に追い込まれようとは。惜しいなあ、と

する根っからの相撲好き。

 俗にいう相撲四十八手とは相撲の決り手の総称であるが、江戸中期に

相撲のルールが整備され、その後技の名称の数は細かく増え、1960年に

は日本相撲協会がこれを70手に整理した(広辞苑)。 

 現在、実際に使われるのはこの内の40手ぐらいだという。相撲の手

の数も世の流れや好みの移り変わりによる変遷があったとすれば、モン

ゴル力士が増えて増加した荒っぽい相撲道を矯正するために、相撲の手

にメスを入れることはどうか。「張り手」「かちあげ」を禁じ手に。

た、土俵での立会で二つのこぶしを確実に土俵に付けなかった力士

けとする厳格ルール徹底。日本相撲協会も、詰まらぬ内部抗争に憂き

身を窶すよりも相撲道のルールを改定する努力が必要だろう。

 サーローさん核は絶対悪と説く心の叫びに会場総立ち

                 (名古屋市)諏訪兼位           

 美智子妃の思いは深し広き視野ICANの受賞を祝い給えり

                 (長岡京市)田原モト子

 美智子妃は昨年10月20日、83歳の誕生日を迎えられ誕生日に

当たり、1年を振り返りながら文書を寄せられた。その中で今年のノー

ベル平和賞に核兵器の廃絶を目指して活動する国際NGO「ICAN」

が選ばれたことを挙げておられる。

「核兵器の問題に関し、日本の立場は複雑ですが、本当に長いながい年

月にわたる広島、長崎の被爆者たちの努力により、核兵器の非人道性、

ひとたび使用された場合の恐るべき結果等にようやく世界の目が向けら

れたことには大きな意義があったと思います」と述べられた。

 そのうえで「日本の被爆者の心が、決して戦いの連鎖を作る『報復』

にではなく、常に将来の平和の希求へと向けられてきたことに、世界の

目が注がれることを願っています」と記され

 作者は何かの報道でこの文章、もしくは歌に接したのであろうか。皇

室への思いはさまざまであろうが、皇后が思慮深く視野広きお人柄であ

ることに心からの信頼を寄せ、ほっと安らぐものがあったのであろう。

 冬の海流れつきたる難破船かかる日見むとは思はざりけむ

             (高松市)島田章平

 出漁する前に船長はこう言われたのではないか。「冬の漁は少々沖へ

出なければ豊漁は望めない。その木造漁船で目いっぱい燃料も積んで

おくので、当局のために頑張ってもらいた戻ってきたらいい目にあ

うぞ。いいな!」。アメとムチで幹部にノルマを言い渡されたのはいい

が、沖に出ると、確かに魚影は濃かったが、海流が悪く沖へ沖へと流さ

れつづけ、そのうち燃料は尽きて後は風任せの難破船の漂流。いつの間

にか、母国が敵対するジパングに漂着してしまいましたがな。木造船は

ボロボロになっており、日本沿岸の岩礁に打ち付けられて沈没したのも

あった。「おお、こんな船でよくもまあ、とほとんどの日本人は呆れ果

てたことだった。

 ★親指で隠れてしまう双葉町フレコンバッグ山と積まれぬ

                 (二本松市)開発懬和                           

 ホットワインのカップで両手暖める流星と私だけの忘年会

                  (東京都)上田結香

 天文学に関心がある人が見逃がせぬ日の一つに、「流星頻発の夜」が

ある。空を見上げることが好きな人はこの夜を待ち侘びる。なぜなら、

この夜限られた時間内に沖天の頂あたりから、良く光る流星が西空の端

を目指して、すうっと流れ落ちるからだ。手にしたホットワインのカッ

プの暖かさを両手で慈しみながら、消えてゆく星の光芒の行方に思いを

馳せるのだ。なんと床しき私だけの忘年会であることか。いくつもいく

つも、適当な間隔で、飽きもせずに流れてくれる流星の夜は、寒さも忘

れて、「あ、墜ちた、また落ちた」と声を上げるが、ふしぎと「流れた

よ」とは言わないようだ。また、その夜にいくつ流れたかを勘定するこ

ともない。適当な間隔で流れ星が宇宙の片隅に落ちてくれることにただ

ただ満足している不思議な夜である。

 通と飲む酒は一番うまい酒酒は二人で飲むべかりけり

                  (町田市)高梨守道

 酒や酒席を詠じた和歌や俳句には事欠かないが、その極は「酒は一人

で静かに飲むべかりける」となるようだ。否違うねえ、他人ともども飲

む酒が賑やかでいいよ、とする親多数派かと思ったら、この歌では必要

条件として「通」を提唱している。ここで言う「通」とは酒に関する諸

々に通暁している人のことである。流石にこの人が勧める酒は味覚の点

でまず美味しい。彼がこの酒は旨いといえば、そのままうまい酒であり、

二人で交わす話もおのずから楽しい話となる。

 まず、通の酒飲みを探せ、そしたら旨い酒も飲めるし、すべてが心地

よい酒席に通じる、としている。貴殿、酒の「通」をお持ちや?                                                                                                                        

        朝日歌壇 2018.1.22

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 火口湖の凍湖を渡アイゼンの刻む足音朝日に光る

              (小城市)福地由親

 この風景の中を、自らアイゼンを着けて踏破中の実況なのか、TV映

像の紹介なのか。いずれにしても、早朝の朝日射す凍湖の上をアイゼン

の音を刻みながら歩く姿のすばらしさ。行動しながらの自然詠もここま

で来れば、玄人はだしであろうか。

 諏訪湖:長野県諏訪盆地の中央にある断層湖というから、火山湖では

ないようだが、この湖も厳寒季には全面結氷して凍湖となり、その極の

時点では氷の中央部に氷の割れ目ができて盛り上がる現象(御神渡「お

みわたり」)が見られる。この時期、早朝にアイゼンを付けて参拝行を

すれば、御神渡りの氷盛上りの亀裂が朝日に燦然と輝く姿を拝めること

であろう。

 日常に辺野古は続く座り込み五〇〇〇日となる二六日

               (日野市)太田はるか

 インスタを始めて知った人は皆こんなに空が好きだった

                (浜松市)加茂智子

 インスタという言葉は、スマホのカメラ性能が一段と向上し、しかも

その作品の投稿をWEBの窓口が受け付けるとあって、日常生活の様々

な局面を切り取った写真の投稿ブームが起きている。如何にしてインス

タ映えする写真を撮るかが鍵だとあって、背景にもいろいろと趣向が凝

らされている。インスタ映え、という新語もできたようだ。このインス

タという言葉、installation が語源のようだが、多くは instantから

来ているとの思いから、お手軽な写真術として迎えられているようだ。

 この歌の作者もインスタ作品の背景に青空が使われているケースが多

いのを発見。青空のブルーは美しい。手軽に撮れるし、白い雲も浮かべ

てくれるし、いいわね、と。

  雪国の雪は憎まれ疎まれて雪の白さを愛でる人無し

                 (新庄市)三浦大三

 積雪も10~30センチくらいなら、可愛げがあって、大人屋根の雪

降ろしはまだいいな、と言い、子供は雪だるまを作ろうと、犬ともども

に走り回る。これが1mを超え、2メートルを越えるようになると、も

う、雪は憎まれ疎まれ、純白の白はいいね、などと言う人もない。

 ★被爆者が自身を晒して語り継ぐ「絶対悪」の証人として               

                  (三鷹市)山室咲子

 あの午後の「付いて来るか」のひと言に付いて来られて早

  五十年           (駒ケ根市)伊藤邦彦

 すでに五十年も過ぎているから、今更戻りもすまい、と夫は高を括っ

ているようですね。では私も、あの日のことを少しばかり。

「もう帰るんですか。まだいいじゃありませんか」と必死な面持ちで

した。あの時の私「そうですね、あと5,6分なら」とすげなく答え

ると慌てましたね。「あなたは私の唯一の、最後の人です。私の全て

を賭けてあなたを大切にします。なんでもあなたの言うことを聞きま

すから、ぜひぜひ私に付いてきて下さい。お願いです!」とひれ伏し

たのです。しょうがない人と思いました。口説くならもっとロマンチ

ックにおやりよ、と思いましたが、当の私も他に当てもなく、仕方な

く「付いてきてやった」のです。「よくもまあ、五十年も保ったこと

ですよ。それになんですか今日のあんたの威張りよう。付いて来られ

て早五十年。迷惑至極の年月じゃったぞなんて、よく言う面の皮。

黙っていれば付け上がりやがって。恥ずかしげもなく。いい年こい

て。なあ、おぬし。

      朝日歌壇 2018.1.29

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  ★語らない美学などないと思うなり世界にあまたもの言えぬ国        

                 (水戸市)中原千絵

 吾老いて母は尚老いゆるゆると同じ問答繰り返す午後

                 (船橋市)押田久美子

 介護する人が老境を迎え、介護される母は尚更歳をとるという老老介

 

護の重層社会。二人が発する問答はゆるゆると、昨日も今日も同じ問答

 

を繰り返す日々。せめて、それぞれの日を心豊かに、問答も心楽しく。

 

               

シリアの子パレスチナの子ロヒンギァの子らを思えど

  歌作りえず        (松戸市)渡辺道子

アラートは警戒警報シェルターは防空壕とぞ戦時を

  思ふ           (加東市)上月節子

 くつをはくことなく逝きし娘の指の長かりしをおもひ

  湯船につかる      (瀬戸内市)児山たつ子

 夭折した嬰児のことは決して頭から離れることはない。まず、あの小

 

さな足。準備していたちっちゃな靴は履かないまま。あの娘の指はほっ

 

そりと長かったなア、成人してたら、爪も長くて真珠色してただろうに

 

。一人湯船に浸かっている。どうして、あなた逝っちゃったのかしらね。

 

この国に安倍の一強つづくごとわが家に妻の一強つづく 

                        (霧島市)久野茂樹

 住む人のゐなくなりたる鶴島に残りし墓はみな切支丹

              (兵庫県)札場秀彦

 いま、日本の離島が迎えているのは深刻な過疎化。若い人は島を離れ

 

都市へ向かったまま戻っては来ない。残る老人が滅してしまえば、無人

 

の孤島がまた一つ増える。この鶴島もそのうちの一つ。島に残っている

 

墓はすべて切支丹の印がついている。弾圧に耐えて苦しい生活を送り、

 

信仰に生きた祖先たちの胸中を思えば、そくそくとして胸を打つ。

 

 

 *くら谷へ地響き立てて傾れ落つ奈落の底に呻く雪魂

              (新発田市)北條祐史

 これは、降り積もった大雪を山の斜面が支え切れずに斜面を流れ下る

「雪崩」の一代記。雪を主題に、あたかも生き物であるかのように描か

れ、どんのつまりに奈落の底で呻く雪の魂。確かに、山の斜面からもん

どり打って雪煙を上げて次々に落下する雪崩雪の堆積。さぞや重かろう

である。いかんともし難い。そのまま我慢召されい、というほかはなく。

              (2018.2.15)

                     


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377 高稲架に蹴躓き行く雲のあり [文芸(短歌・俳句) 時事]

 

    随想コラム「目を光らせて」NO.377 「朝日歌壇・朝日俳壇

 

 

      俳壇 期間 2017.11.6~12.25

 

 

       高稲架に蹴躓き行く雲のあり

 

   

              * : 朝日新聞 201.11.06

                (群馬県東吾妻町)酒井大岳氏 作

                アオウ ヒコ

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    洋画家 青沼茜雲画伯の作品集から。40.「岩戸山より飛形を望む」

 

                     

       「朝日歌壇・朝日俳壇から

  朝日新聞の歌壇・俳壇の入選作の中から最新の世相を鋭く切り取った

 

 作品を新た選び、コメントを付けています。コメントは文芸上の範を

 

 超えることがあります。

 

  作品の頭に印が付いている作品は、時の政権が推進る前のめり

 

 右傾化路線平和憲法を無視し、国会の存在をないがしろにするさまを

 危惧する市民の投稿になるものです。

 

  これらの作品は、ここでは個々の作品の文芸上の軽重を問うことなく、

 注目すべき最新の世相を凝縮した作品として、そのすべてを採録してい

 ます。これらの作品に対しては、投稿者の真摯な叫びに読者の耳、素直

 従うべしとして、コメントはつけておません。

 

  また、文中敬称は省略しております。(筆者)

   朝日俳壇 2017.106

 

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   怒濤とは仙石原の花薄                                 

              (北本市)萩原行博

 外洋の海に風が吹き募って波が逆巻くさまを怒涛というのか、いやそ

 

の様に似たものが陸路にもある。それは仙石原の花芒の群に山風が吹き

 

下ろして起きる涛の姿。いつ見ても飽きない。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                       

                                                          

  蛇穴に我が闘争の二十代

 

               (豊田市)小澤光洋

 

 冬がまじかになり、蛇穴に入る季節である。この頃になると、私は自

 

分の将来を思い悩んで、蟄居したような暮らしに埋没した二十代が思い

 

出されてならない。この冬が明けたら、春になったら、と幾たび繰り返

 

したことやら。

                                                                           

 

  どの鯉もすっ裸なる水の秋

 

               (上尾市)中野博夫

 

 川を泳ぐ緋鯉や真鯉はなにかを纏って泳いでいるのか、と問われて素

 

っ頓狂な声を上げるでない。川魚はいつも裸で泳いでいる。その姿がい

 

つもと違ってくっきりと美しく見えるのは、秋近くなって水が澄んでき

 

たからだ。冷涼な好時節が巡ってきたから水が澄み,鯉の姿態もきれい

 

に見えるというわけ。

 

 

  長き夜やもう半分の酒かなし

 

                 (塩尻市)古厩林生

 

 秋口から冬にかけては日の暮れるのがみるみる早く、長い夜が続く

この長い夜を日によっては酒を飲みながら過しているのだが、あれ、気

 

が付けば、その肝心要の酒がもう半分以上も空けられている。寂しいこ

 

とかぎりなし。

 

 

  人麻呂の世の山河あり鳥渡る

 

                (浜田市)田中静龍

 

 今、日本の地図を空から俯瞰すれば、都市部にはニョキニョキと高層

 

ビルが林立しているが、そこを抜けると、昔変わらずの緑の山野が広が

 

り、川が流れている。大きく日本の土地を概観すれば、人麻呂の時代

 

山河とそうたいして変わっていない。その証左にはいまも変わらず多く

 

鳥が渡ってくるではないか。かれらが疲れた翼を下す場所は都会の摩

 

天楼のきざはしではない。昔ながらの変わらぬ緑の山河である。

 

 

   高稲架に蹴躓き行く雲のあり

 

              (群馬県東吾妻町)酒井大岳

 

 昨秋10月初旬、大学の旧友10人と連れだって新潟旅行をした。

 

その二日目、新潟駅で大型タクシーをチャーターして女性運転手の案

 

内で市内見物をした。10人の客を乗せて、タクシーは新潟の海岸線を

 

延々と走り、目的地の弥彦神社(新潟県西蒲原郡弥彦村にある元国幣

 

中社。祭神は天香山命(あまのかぐやまのみこと)に向かった。

 

 途中、車は稲田沿いの道を走り、今ではほとんど他では見られない

 

「高稲架(たかはざ)」の現物の傍に寄り道した。

 

               

 

 農家では、稲刈りが済むと、稲穂を束ね穂を下にしたものを二つ分け

 

にして乾燥するために稲掛けをする。掛ける物や場所を、稲木(いなぎ)

 

稲畑(いなばた)稲掛(いなかけ)稲架(はざ、はさ)などと呼び、地

 

域により異なる(広辞苑)が、稲を掛ける横木が何本もあって空に高く伸

 

びているものを「高稲架」と呼びならわすらしい。田圃の際にいくつか

 

の垂直に伸びる喬木を予め数本、均等に植えておき、稲の収穫時にはそ

 

の木に棒や竹を差し渡すように括りつけ、幾段かの「高稲架」とする。

 

 ここの「高稲架」は残り少ない証人みたいなところがあって、「ここ

 

に来るとほっとする」、「この稲架は末代々まで残したいものだ」と墨

 

書した賛が添えられ、額に入れて掲げられている。

 

              ■

 

 さて、ここでこの「高稲架」を詠った朝日歌壇入選歌の登場となる。

 

 歌の作者は今、農家が稲刈りを終えて、高稲架にかけて稲穂の乾燥に

 

大童の時、そこにいた。そして高い位置に干されている稲架を見るため

 

に天を仰いでいた。青い空には白い雲が浮かび、こちらへ流れて来る。

 

その雲が高稲架のところで、あたかも蹴躓いたかのようにぎくしゃくし

 

て、流れていった。その瞬間を彼は歌に詠んだ。

 

 愛妻を亡くした作者は、妻がこの世から消え失せたことが信じられな

 

い。眼には見えないが、妻は自分の周りに在る自然や小さな事物に事あ

 

るごとに乗り込んで、秘かに、または大っぴらに夫を見つめてくれてい

 

る現象に出会う。そこには地球上に残してきた主人への大らかな愛の配

 

慮と発露が込められており、夫はそれを聡くも蝕知しうる才を研澄ます

 

日々を送り、その経緯を句作にまとめる日常を送っている。

 

 この歌では、妻は夫に「私ね、高稲架の下で空を見上げているあなた

 

を、白い雲に乗って見詰めていたのね。そしたら、まさかあんなところ

 

に高稲架(たかはざ)が天に延びているのに気付かず、白雲が蹴躓いて

 

しまったの。それであなた、私が乗って居る事分かったのね。ちょっと

 

失敗したかしら?」であろうか。

 

                                                                             

   朝日俳壇 2017.11.12

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 沖縄にアメリカの空天高し

               (福島県伊達市)佐藤 茂

 一票を投じ天下の秋を知る

               (長野市)縣 展子

 凩や原発灯る枕元

               (豊田市)鈴木吉保

 

 

  秋の夜の親子の酒量逆転す

              (尾張旭市)古賀勇理央

 

 いつの間に子供のおまえ、こうも飲めるようになったのか。もう、酒

 

量では敵わんなあ。嬉しいようであり、悔しいようでもあるなあ。

 

 

  新米を収めし蔵に二重錠  (今治市)横田晴天子

 

 漸く収穫した新米。これまでの苦労は大変なものだった。この頃は知

 

ってか知らないでか、新米を狙う泥棒が跋扈するとあれば、収納蔵には

 

二重の錠を掛けておかねば。

 

 

 ★冷さまじや聾者の被爆語る手話

 

             (埼玉県宮代町)酒井忠正

 

 

  携帯の父の名削除十三夜 (加古川市)森木史子

 

 何かとお世話になった父。携帯の父の名を何度押したことだろう。

 

もう、押しても詮無いことだから、そろそろ削除しましょうか。

 

 

  父が酔い兄の饒舌新走 (神奈川県寒川町)石原美枝子

 

 今年の新酒は出来がよかったようですね。父が酔いつぶれ、兄の饒舌

 

かぎりなしですよ。私も少々お相伴に与れば言うことなしですよ。親子

 

の酒盛り、かくありたしで。

 

 

 

   朝日俳壇 2017.11.20

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  よく光る所が浅瀬天の川 (大村市)小谷一夫

 人間の眼光鋭く才豊かにして判断の凄さ、すばらしさ。凡夫が眺め上

げても確かに光る箇所あり、なるほど浅瀬のようだ。じゃ、光らず、飽

くまで暗い箇所はどうか。光らぬところは深々、宇宙の果ての冥府なり

しか。彦星と織姫、今宵の逢う瀬に浅瀬の淵で脚を滑らさぬように。

  大綿の飛べば十日で雪来ると (小樽市)伊藤玉枝

 秋が深み行くと次はいつ頃雪が来るかと冬の知らせが脳裏をかすめる。

「大気に大綿の白い繊維がふわふわと混じって飛ぶようになれば十日後

には雪が来る」との言い伝えがある。大綿は未だか。

  大琵琶の点睛得たり初鴨来  (西宮市)近藤六健

 琵琶湖は大きくて広すぎ、湖の風情に乏しいのが今一つ。そこへ、初

鴨到来で、漸く茫洋とした大琵琶湖にも,見どころができた。構図的にも

点睛を得たりの気分になりました。

  紅葉山全山落暉燃え尽きん  (大阪市)行者 婉 

 山全体が紅葉に包まれているのに、そこへ秋の落暉の赤が落ちるとな

れば、相乗効果で山のすべてが燃え尽きるようである。この落暉のピー

クはそう長くは続かず、まもなく陽は落ちて終結に向かうのだが、それ

までの巨大燃焼の推移にただ打ちのめされて見守るだけ。

  凩や樹の無き街は素通りす  (北本市)萩原行博 

 台風も暴風も雪吹雪も、これを遮る遮蔽物がなければ、その勢いを削

ぐものはなく、猛々しい風の勢力を維持したまま前進し続ける。凩も町

角の生垣に咲く赤い山茶花や町角で焚く焚火の煙にちらと目をやっても

防風林と思しき樹木の繁りがない街は素通りして行くようだ。

      朝日俳壇 2017.11.27

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  冬めきて両手に包む湯呑みかな (大津市)井上孝夫

 その昔、日本の家屋は冬の暖房には弱く、座敷に炭を熾した火鉢が一

つの部分暖房であった。家人は冬の寒さには慣れてはいたが、何かと暖

を求めて火鉢を囲んだ。今はエアコン暖房の時代。それでも、冬めく日

が続くと、茶を淹れた湯呑を両手で包み込むようにして冷たい手を暖め

ようとする。

  白樺の色付くころや鷹渡る  (長野市)鈴木しどみ

 鷹の渡りは一番遅いといわれている。それは白樺の木が色づく頃。目

安になる。そろそろですね、鷹が渡るのは。そろそろ冬に向いますね。

  小春の日憩ふ刈田の仰臥かな (八尾市)濱田幸策

 空はあくまで青く、風もなく、日が燦燦と輝きく温かな小春日の一日

稲刈りが済んだ田に仰臥する幸せを何に例えんです。

  石地蔵霰食ろうて家遠し (西東京市)からさわかつのり

 山の峠近くで旅人を見守る石地蔵に出会う。おりから、空が黝ずんで

パラパラと霰の飛散あり。このままの推移では、道中の難儀が思われる

。脚を早めよう。まだまだ家に帰りつくには相当あるぞ。

  尖りたるものに末枯忍び寄る (今治市)横田晴天子

 「尖っているものにはいつのまにか、完璧なほどの破壊が忍び寄るも

のだ」とのご託宣。先端が尖っているもの、鋭いもの、群れの中にあっ

て際立ち、目立つもの等は回復不能な末路に遭遇する、と言う意味を表

わす箴言であるのか。

 立冬のさみしき国の首相かな (横浜市)山本 裕

 

  枯るるもの枯れぬもの抱き山眠る

              (前橋市)荻原葉月

 樹でいえば、冬季に葉を落とすのが落葉樹、落とさずが、常緑樹。山

にはこの双方の樹々が混在している。冬季には落葉樹の成長はほとんど

ないが、常緑樹の場合も、その機能は弱弱しい。この両者を抱いて、山

は春の準備に余念がないが、人はこの間の山を「山眠る」と呼んでいる。

     (つづく → NO.377-2 )

                (2018.2.01)

 

 

 


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377-2  月もご覧ぜ歌も詠みませ御退位 [文芸(短歌・俳句) 時事]

 

   随想コラム「目を光らせて」NO.377-2 「朝日歌壇・朝日俳壇

 

      俳壇 期間 2017.12.4~25

 

 

     月もご覧ぜ歌も詠みませ御退位

   

      : 

      朝日新聞 201.12.25東京都)池田半呆子

             アオウ ヒコ

20-151029枯葉.JPG

                     20-151029  「枯葉」  酒井 健 (水彩画家)

 

                     

       「朝日歌壇・朝日俳壇から」(略)

   朝日俳壇 2017.104

            

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   紅葉山盲導犬とすれ違ふ                                 

             (加古川市)森木史子

 秋も深み行き、全山紅葉した山麓に、吸いよせられたように愛犬を連

 

れて散策している盲人とすれ違ったようだ。これだと、盲導犬に必要以

 

上に主人警護の負担をかけることなく、秋到るの風情を主人同様に満喫

 

できる状態にある。人も犬もそれで十分。周りも納得。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                      

                                                          

 収束をせぬ福島の師走かな  (三郷市)岡崎正宏

 

 北風よめぐみを連れて早く来よ(さいたま市)関根道豊 

                                                                         

 

 

  来るわ来るわ喪中の報せ十一月

 

                (川口市)寺田秀夫

 

 「喪」は人の死後、その親族が一定期間、世を避けて家に籠り、身を

 

慎しむこと。親疎によってその期限には長短がある。(広辞苑)

 

 確かに高齢人口の増加に伴い、命を滅する人の数も増え喪に服する人

 

や家は今年だけではなく、今後も増加し続けるだろう。また、親族の範

 

囲についての明確な基準がないことも、遠縁の人の死のすべてを親族扱

 

いにして喪を発する風潮を助長しているような気がしてならない。それ

 

も、来るわ来るわ に輪をかけている一つの原因のようだ。今後は、親

 

疎のに重点を置いて喪を発すべきであろう。

 

 

  秋蝶に亡き子の名前付けにけり

 

                (流山市)石戸幹子

 

 秋蝶が飛ぶ、蝶の道を、高く低く我が家の庭にも姿を見せる。冬ま近

 

とあって、飛翔に夏の精悍さはないが、それでも元気に飛ぶ。その姿を

 

見つつ、あの可愛く美しかった亡き子の姿が思い出されて、ついつい吾

 

子の名をつけ、呼び掛けてしまった。「いいわね、元気に翔ぶのよ。」

 

 

  横綱のマスクかなしや飛行場

 

               (高岡市)池田典恵

 

 相撲取りたちが昨秋、場所後酒盛りの中で、言うことを聞かなかった

 

若手の力士の頭を酒瓶や携帯機器で殴りつける事件が発生。その主な当

 

事者が横綱某だったことから、大きな社会問題となった。地方巡業の途

 

中とあって、某は東京に召喚されていたようだ。これは長崎空港での目

 

撃だったか、大きなマスクで顔を覆い、何も言わずに悲しげだったなあ。

 

 

  枯尾花かぜみちのはや無き阿蘇に

 

                 (大分市)高柳和弘

 

 昨秋の盛りに、銀色の穂を出して一斉に靡き、阿蘇に吹く風道を指し

 

示していた尾花(すすき)。今や穂先は抜けて棒のごとく佇立する枯れ

 

尾花となり、風道を示すことはない。静かな阿蘇の冬景色だ。

 

 

  小春日や万物の箍緩みたる

 

             (神戸市)岩永ひとみ

 

 あまりに暖かい冬の小春日。あらゆる物を容れる樽容器を締めるつけ

 

る箍(タガ)が緩むほどでしたね。

 

 

                                                                             

   朝日俳壇 2017.12.10

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  凩やあなたが眠るまで歌ふ

               (熊本市)寺崎久美子

 

 私は冬の凩。あなたがお住まいの家へ向けてびゅうびゅうと音を立て

 

て寒風を募らせている。夜になっても、その勢いは止まりません。あな

 

たが寝所に就かれても、眠りに落ちるまでは歌い続けます。

 

 

   男の音女の音や落ち葉踏む

 

               (尼崎市)ほりもとちか

 

 冬の林道を二人が歩く。男が踏む落ち葉の音、女が踏む落ち葉の音。

 

時折挟まれる二人の会話。落ち葉が醸し出す静かな音の世界。

 

 

  散紅葉なほ燃え尽くす池の底

 

               (大阪市)友井正明

 

 散るもみじ葉は赤く山を染めた後、山麓に落ち、紅く用土を染めて

 

終りを迎えるが、山の周辺の池に落ちたもみじ葉は沈んで池底へ辿り着

 

き、そこでもう一度赤々と紅葉色を燃えつくす。

 

 

  光るものすべて星なり山眠る

 

               (奈良市)田村栄一

 

 冬の星空と地球の冬山との対比。上を見よう。あくまでも明るく光る

 

もの。それは星。下を見よう。それは大地。昏く静まった山地。ぐっす

 

りと寝静まっている。

 

 

 福島に帰る日やいつ寒茜  

              (福島県伊達市)佐藤 茂

 

  生卵飲んで大将冬ごもり

               (川西市)山口和男

 

 冬には蛇は穴に入るが、その前に青大将君は精を付けるために、生卵

 

をいくつか呑み込んだのか。翌春、目覚めの後、すぐさま春の息吹に順

 

応しうるために。

 

 

   朝日俳壇 2017.12.18

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  品格を問うて無言や冬の月 (いわき市)星野みつ子

 これは大相撲理事会に呼ばれたのはいいが、黙りこくった理事が一人

いて、世の顰蹙を買ったことを詠む。はてさて品格が上がりましたか。

冬の月が皓皓と冴えております。

  虎落笛棺の中の友と会う   

              (日南市)宮田隆雄

 外は寒空のもと、ひゅうひゅう寒風が吹き渡っている。友の訃報を聞

、葬儀場へ駆けつけお棺に収められた友と会う。友は静かに既に現世

と隔絶した空間に横たわっている。「おい外はな、虎落笛がぴゅうぴゅ

うだぞ。ここは静かだが、あのもがりに吹かれて送られてというのも悪

くはないぞ」

  美しく散る庭落葉夫は掃く  (小樽市)遠藤嶺子

 冬が来て紅葉した木の葉が次々に散り、美しく庭を彩る。暫らくはそ

の姿のままにしておいて。だが、せかせか屋の夫はそれを掃く。言って

も判らんやっちゃ。なんでこんな男と連合いに。秋の美しい彩りを壊

て已まぬ性が悲しい。

  皇帝といふ名で冬も咲くダリア (筑紫野市)多田蒼生

 冬も咲くとあるが、ダリアだもの。低温には弱い。霜にやられて枯

れてしまうのがふつうだ。それでも冬の宙空に皇帝の名で出ています、

というからには、御地は冬でも暖かい土地であるのか。

 なぜ皇帝という名がついているのか。詮索したわけではないが、この

ダリア、丈が長い。幹がずんずん高く伸びて6、7㍍になり、花もよく

つける。ここまで高い空間を独占するダリアは皇帝以外にないからか。

 昨秋、仲間の山歩会で訪れた足湯の里の出口で「あれ、皇帝ダリアよ」

と教わった。仲間のITHさんが庭に皇帝ダリアを咲かせ、日夜女帝よろ

しくかしづいていることを知った。

  ふと割れば津軽溢るる冬林檎  (青森市)天童光宏 

 よく歌われる流行歌「リンゴ追分」(昭和27年)は津軽平野のりん

ご農家に働く小娘がリンゴの花びらが風に散る頃、ちょうどそのころ、

東京で亡くなった母を想起して涙がてらに唄うのがこの「リンゴ追分」

である。唄には津軽リンゴは美味しいとか旨いとかの歌詞はないが、

情味豊かに津軽林檎のイメージを広げ、人気を博した。

 手にした冬林檎にナイフを入れると、あの津軽の林檎畑がたちどころ

に溢れてなつかしいのだろう。

  来た道を真っ直ぐに見る冬の空 (鴻巣市)佐久間正城

 北海道の道はくねくね曲がったりはしない。まっ直ぐに作られてい

る。車で言えば、直線道路に乗り入れ、一旦把手の位置を設定すれば、

ずっとそのまま走らせ得るほどにである。目を閉じて歩いてもよい。

 どのくらい歩いたかを知るために、ふと振り返って来し方を見れば、

真直ぐの一本道、その上に冬の星空が輝いて見える。

      朝日俳壇 2017.12.25

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  新調の巫女の烏帽子雑煮の座 (大分市)高柳和弘

 元旦の雑煮を祝う席に家族が集まった。そのうちの一つに、新調の巫

女の烏帽子が置かれている。娘さんが今春目出度く巫女の座を射止め、

その祝いの席が設えてあるのだ。新年おめでとうございます。すべてが

旨く回りますように。

  冬雲雀冷たき体開け放つ (長野市)鈴木しどみ

 高い空の温度は相当に低く寒いことだろう。冬ひばりはその寒さをも

のともせずに、上空高くに舞い上がっていく。羽を広げて飛翔し続けれ

ば、胴は寒さに曝されて身は打ち震えるだろう。この状態で高空から獲

物を探すというから偉いというか。凄いというか。

  返り花婚姻届け出しにけり  (一宮市)岩田一男

 二人は一緒にはなったが、法的には未だ、だった。届けを出しましょ

うよ、と言ったのはどちらだったのか。物事を決めるには何かのきっか

けが要る。とすれば、あの花の返り花が咲いたことだ。春、本格的な花

を開いて、そしてこの秋、少し小さいが返り花を付けた。花は薔薇だっ

たか。二人はそれを見習うことにした。なんと自然の摂理に叶うことで

はないか。

  月もご覧ぜ歌も詠みませ御退位

              (東京都)池田半呆子

 天皇夫妻が間もなく退位めされる。先代の昭和天皇が一国の統治権を

総攬した政治、軍事の最高権力者の立場から、一転、国の象徴としての

端役に転じられたとき、皇居に蟄居されたような状態で、そこにただあ

らせられればよい、と言い放つ、かつての臣民もいた。

 昭和天皇の逝去を受け継いだ現行天皇は、戦争を生じせしめた昭和天

皇の自らの罪業への贖罪意識とは別に、平和憲法の下の二代目の天皇と

して、平和憲法に定められた「象徴」とはなにか、それを完遂するには

日々、何をどうするかに思慮を巡らせた。有能な補佐役にも恵まれず、

頼るのは自らの思考力と判断力であったか。具体的な方法を考えれば考

えるほど、思いはちじに乱れたことであろう。救いは補佐役たる美智子

皇后の存在で、その怜悧冷徹は百万の味方に勝るであっただろう。一方

では、年の初めの「歌の会」、ここでは並みいる皇族や召人が詠む歌が

なんと平凡に見えたことか。到底追従しえない傑れた歌が皇后によっ

やすやすと披露された。

 ここ数年、天皇は「象徴」たる己の姿をほぼ完成され、その肖像への

接近をほぼ完成された趣がある。その「象徴としての自画像」の完成ほ

ぼ近し、の時点で自らの退位を口にされた。退位後も、自らを「象徴」

として見守ってくれた国民への奉仕をなほ継続したい旨のご意向を示さ

れている。しかし、それは新しい天皇に任されよ、移譲されよではなか

ろうか。本欄に国民の一人が寄せた俳句をごになって、今後はゆった

りと日々をお過ごしあれ、である。どうぞ、ご退位の後は、名月が出た

らよくよく御覧じろ、お庭散策の折には歌も俳句もお詠み下されである。

 軽井沢での美智子さんとの出会いをも懐かしみ、よければ、ウインブ

ルドンのテニスなどにも脚を伸ばされんことを乞い希う。

  熱燗や酒が貴君を駄目にする (柏市)藤嶋 務

 旨いなあ、熱燗は。これがあれば、何もいらない。金も名誉もいらぬ

なあ。あ、君がいたか。酒に溺れてはいけないよ。特に熱燗は駄目だよ。

貴君を骨抜きにしてしまうからね。

  月光を一枚板に結氷湖 (栃木県壬生町)あらゐひとし

 湖が凍り付き、さざなみの立たぬ一枚板になり、そこへ月の光が降っ

ている。皓皓と静かな反射板が見える。

  眠る山そびらに父母の墓のあり(尾張旭市)古賀勇理央

 冬が来てあの山は今眠っている。山の中ほどに父母の墓があり、今は

そこで静かに眠っています。春が来るまで今はそっとしておきましょう。

                     (2018.2.01)             


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376  富士山の肌に日の差しおもむろにやがて元気にばったは跳べり [文芸(短歌・俳句) 時事]

 

 

   随想コラム「目を光らせて」NO.376朝日歌壇朝日俳壇」から

       

     歌壇 期間 2017.11.06 ~ 12

 

  

    富士山の肌に日の差しおもむろにやがて

 

     元気にばつたは跳べり

 

 

 

     題 目:

      朝日新聞201.11.6熊谷)内野 修 氏作



                 アオウ

 

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   洋画家 青沼茜雲 の作品集から。39.望郷 [ポルトガルにて】

           ・イギリス王立美術院名誉会員

           フランスサロン・・トンヌ会員

           ・ノーベルノルウエー財団認定作家     

          ・世界芸術遺産認定作家 ・日展所属

 

 

                  

       「朝日歌壇・朝日俳壇から」 

 朝日新聞の歌壇・俳壇の入選作の中から最新の世相を鋭く切り取った

 

 作品を新た選び、コメントを付けています。コメントは文芸上の範

 

 を超えることがあります。

 

 作品の頭に印が付いている作品は、時の政権が推進る前のめり

 

 右傾化路線平和憲法を無視し、国会の存在をないがしろにするさま

 

 を危惧する市民の投稿になるものです。これらの作品は、ここでは個

 

 々の作品の文芸上の軽重を問うことなく、注目すべき最新の世相を凝

 

 縮した作品として、そのすべてを採録しています。

 

  これらの作品に対しては、投稿者の真摯な叫びに読者の耳、素直に

 

 従うべしとしてコメントはつけておません。

 

  また、文中敬称は省略しております。

  

.昨201712ヶ月間の朝日歌壇、俳壇の入選作品全てを拝見しての

 

 感想を記します。春過ぎて真夏の8,9月は猛暑続きに頭脳明晰ならず

 

 だったのか、優れた作品が極めて少なく意外でした。セプテンバー

 

 ソングが流れた後の11,12月の冷涼季に移ると一転して、佳句、秀歌

 

 が充ち溢れました。通常の月なら当ブログに採択されたであろう作

 

 品が競り負けて姿を消したのは残念なことでした。平和主義で過ご

 

 してきた国民を再び戦争に加担させようとする政府の動きに対する

 

 批判と反対は事あるごとに峻烈を極めました。「文芸」が政治の動

 

 向を左右する時代として認められたことでもありました。今後も、

 

 使われる言葉もしっかり吟味して一層のご努力に期待する思いや切

 

 です。「文芸」にかかわる人は善き「政治」を唱道し、唱導に繋げ

 

 ねばなりません。AIが人の仕事を奪いつつある社会において、こ

 

 れに対抗しうるのは「文芸」の道を極める人の知能にほかなりませ

 

 ん。より上質の作品の提供がなされ、鑑賞後の余韻に浸る人間の喜

 

 びをエンジョイ致しましょう。(筆者

 

 

 

   朝日歌 2017.106

 

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        らん      aou.hiko

                                                                                                                                                                                     

 

 ★「核の傘」の下にあっても条約に参加することICAN

   (わたしはできる)     

              (神栖市)寺崎 

 

 ★「まだ」と「もう」二つの間に今があるつかめない鏡の

 

   中にように      (神奈川県)九螺ささら

 

              

 

 *富士山の肌に日の差しおもむろにやがて元気にばつたは

 

    跳べり       (熊谷市)内野 修

 

 富士山麓の叢に冬を生きるばった。朝が来て太陽の日差しにいのちを

 

もらったのか、しばらくしてばったは元気よく跳びあがった。雄大な景

 

観を背景に小さな命との対比を描く。

 

 在りし日に父が書きたる表札を最後に外し更地となりぬ

 

             (郡山市)菊池亮子

 

 典型的な日本家屋の一代記。戸建て家屋を手に入れた父君は表札を墨

 

書、玄関に掲げた。以来、父とその家族がその家に住み続けて幾星霜。

 

子らは巣立ち、両親も旅立った。住まう人なき今、娘の私は古びた表札

 

の最後の外し役になった。家は解体されて更地になった。

 

 

 ★責任は電力会社と国と出る福島原発二〇〇〇〇の死者よ

 

             (橿原市)澤 正宏

 

 

 

    朝日歌 2017.112

 

59-IMG_0108.jpg  
らん         aou.hiko

 

  沖縄に重ね見守りしカタルーニヤ今日自治権の停止を

 

   知れり       (水戸市)中原千絵子

 

                                                                         

  川三つ秋を蒐めて淀となる湾処に揺れる一艘の雲

               

             (吹田市)辻井康祐

 

 川三つ流れ流れて、途中の秋の景を蒐めて淀となり、最後に落ち着く

 

 は湾処。白い一艘の雲がここに浮かび、揺れている。船ではなく雲が。

 

 

   よりましな地獄を選ぶしかないと手を引かれ来ぬ

 

   第2投票      (所沢市)風谷 螢

 

 

  ★殺す側と殺される側どちらから考えているか考えてみる

 

                (伊丹市)宮川一樹

 

 

  あちこちが痛きと老いら嘆きつつミサイル飛べば熱く

 

   怒れり          (枚方市)鍵山奈美江

 

 

  総選挙に沖縄の辺野古や福島の被災地のことは棄民の

 

   ごとくに         (東京都)松崎哲夫

 

 

  ミサイルが飛べど仕事に向かうだけいつもの朝のいつも

 

   の電車           (東京都)山崎昌実             

 

 

  仙台味噌スティック野菜にちょいとつけ旅の夜ふかむ酒は

 

   一の蔵           (名古屋市)山守美紀

 

 日本酒の味わい方を指南している。さっぱりと芳醇な日本酒を楽しむ

 

にはごてごての味付けをした料理は要りません。味深い仙台味噌を、包

 

丁で◇の棒状にした野菜(セロリか胡瓜など)にちょいとつけて召し上

 

がれ。そこで盃に満たした上等の日本酒(私は「一ノ蔵」なんですけど)

 

とくれば、旅の夜はいっそう深まりゆきますよ。

 

 

45-IMG_0076.jpg

           らん      aou.hiko  

 

 

  再々会短く約し去りゆくを一期一会のこころに送る

 

              (茅ヶ崎市)若林禎子

                                                                                                                                                                 

 会の終わりに「近いうちにぜひぜひまたお会いしましょうね」という

 

挨拶言葉。若い頃はただただ習慣みたいに放なってきたが、この頃は違

 

った。「ああ、この方との縁にしは今日のそれが最後であるかもしれな

 

い」という思いが付いて回り、口から出る「また会いましょう」の挨拶

 

にも心からの思いを込めているように思われてならない。

 

 

 北限の石蕗(つわぶき)は忘れはしないこの地に原発禍の

 

   あったこと       (福島市)美原凍子

 

 

          (2018.01.15)

 

 

               つづく [→] NO.376-2


 


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376-2 雪虫を子らは追えども手のひらに捕らへてみれば雪となりけり [文芸(短歌・俳句) 時事]

 

  随想コラム「目を光らせて」NO.376-2朝日歌壇朝日俳壇」から

 

 

    歌壇 期間 2017.12.04 ~12 .25

 

  

   雪虫を子らは追へども手のひらに捕らへて

 

   みれば雪となりけり

   

 

    題 目:

     朝日新聞(2017.12.25 (奈良市)山添聖子氏 作。

 

                アオウ ヒコ

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171027 赤い薔薇  酒井 健 (水彩画家) 
 

       

   日歌壇 2017.12.04

 紅葉のまた黄落のやまに光るいざよひ月に露天のゆあみ

 

               (大分市)岩永知子

 十六夜の月(陰暦16日の月は満月よりも遅くためらうように出てくる

からこういう【広辞苑】)が紅葉や黄に染まる山を照らす頃、私は独り温

泉の露天風呂に身を委ねている。なんという眼福と快感。この幸せがい

 

つまで続くのか。やおら露天で立ち上がり裸身を月光に纏えば金色の十

 

六夜月に映えて一段と美しかろうと肩まで湯に浸かりながら身を竦めて

 

、眼を閉じているのかも。

 

 

 菊花展ありて賑はふ大寺の裏山にあり猪の罠

 

               (熊谷市)内野 修

 近くの大寺の境内で、恒例の菊花展が開かれている。近郊の菊好きの

 

園芸家は自らが出品する菊花の仕上り具合を調整し、わが菊の展示位置

 

の確認のために数日前から会場へ出かけ展示に協力する。

 

 展示した後も、会場荒らしに会わぬように寝泊り警備も欠かせない。

 

 近郊の畑荒らしのイノシシの跋扈が伝えられるだけに、大寺の裏山に

 

は猪罠が仕掛けられている。せっかく仕上げた菊花展の精華が猪に荒ら

 

されるのは忍びないので、念のために菊花より美味な餌付罠を仕掛けて

 

いるのだろう。

 

 

 ミサイルを打ち落とすとう兵器らしセールスマンも大物

 らしき          (名古屋市諏訪兼位

  子を生さぬわれがとうとう母になる百五歳の母から「母さ

 

   ん」と呼ばれ     (佐世保市)近藤福代

 

 ずうっと母の介護を続けて今や母は御年百五歳。その母が今日、子を

 

生さずに来た私のことを「母さん」と呼んだ。そこにいるあなた とい

 

う意味で呼んだのでしょうが、自分の腹を痛めた娘の名も思い出せずに

 

「ホイ、そこの母さん」とやったのですよ。しかたがない。「ハイハイ

 

母さんはここに居ますよ」という以外に道はなしでした。

 

 

   朝日歌壇 2017.12.10                   

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                  らん      aou.hiko

   走者なく日当たるままに走路あり雪来る前の静けさの中

                     

               (熊谷市)内野 修

                   

 高学年向き学び舎に設設されている競技用走路を見ている。秋の日が

 

誰もいない走路に陽を落としている。もう間もなく雪の季節が来て、白

 

雪に埋まる走路の静かなこと。何の変哲もない走路を題材に歌を詠むこ

 

とができる自然詠の好例。

 

 

  地軸傾ぐ音して冬に入る日に林檎剥く妻 地球は廻る

 

             (日立市)加藤 宙

 

 十二月二十二日頃、地球は冬至を迎える。地球は人間のサイズに比較

 

すれば相当に巨大だから、軸の傾ぐ音がギィと聞こえるわけではないが、

 

この夫婦は円いものを手にして、その様を疑似体験している。林檎剥く

 

妻にも上手下手あり、皮を厚く剥く人、薄く剥く人。近くの表面がそぎ

 

取られるの厚薄が覿面に影響する地表もありて。

 

 

  花びらの薄さになったかみねんど三年生の男子がくれた

 

              (奈良市)山ぞえ 葵

 

 紙粘土を時間をかけて、指先で薄く薄くのばしてゆけば、花びらほど

 

の薄さになって、次の工程の花作りの材料になるのだろう。時間をかけ

 

て作った大変な代物である。そう簡単には他人に与えられるものではな

 

い。あの上級生の男児が私にこれを呉れたのよ、私を憎からず思い、大

 

切なひとと思ってのことなんだわ。私、もててるのね。きっと。

 

 

  ★搬入車待ちて立つ人杙のごとし中間貯蔵の巨穴の底 

             (福島市)青木崇郎    

  ねむり込み車庫まで行きし中学生やさしい車掌と共に

 

   帰り来        (摂津市)内山豊子

 

 悪質な犯罪もどきの世相がゴロゴロの今。この世相にあって、電車を

 

乗り越して終点まで行った中学生。帰宅が遅くて一家が心配している中、

 

親切な電車の車掌さんがその子を連れて家に戻ってきた。ほっとした一

 

家。感謝感激雨あられであったことだろう。

 

 だが、そんなにも眠りこけるほど、勉強させてどうする。大概にせん

 

かい、という声も澎湃として起きる。これにも気づく必要がある。

 

だが、ともあれ親切な車掌さん、ありがとう。本当にありがとう。

 

 

  ★貝殻を耳に当てれば聞こえ来る遠き潮騒水爆の音       

              (長野市)原田浩生

 コロッケもうどんも五円だった頃真面目にお札を刷ってた

  日銀        (大和郡山市)四方 護

  渓流の音も揺れゐる蔓橋母の手にぎり阿波の国ゆく

               (越前市)内藤丈子

 母と二人で阿波の国を遊覧している。ここは蔓で作った橋を二人で渡

 

っている。下を流れる渓流が発する音も蔓橋ともども揺れている。二人

 

は手を取り合ってゆっくりと渡り始めている。母が大切だ。自分も怖い

 

のだが。

 

 

   朝日歌壇 2017.12.18

 

らん        aou.hiko

             

 

  婆ちゃんのもんぺと並び柔道着物干し竿のまん中占める

 

               (霧島市)久野茂樹

 

 働き者のばあちゃんの日常着はもんぺ、これがなければ仕事ができな

 

い。一方、息子は学校の部活で柔道を選択、しとどに汗を流すので、洗

 

濯もほぼ毎日である。一家の洗濯物は干し竿に通して干されるが、モン

 

ペと柔道着はその頻度と重要性においてほゞ互角、よって常に干し竿の

 

中央部を両者が占めることとなる。

 

 

   最終の貯蔵地もなく列をなし大熊町に集まるダンプ 

      

              (茂原市)植田辰年

  ★昼夜なく地表を覆うヒトもまた絶滅危惧種ボタン一つで      

              (島田市)水辺あお

  ★もう一度ゆっくり言ってくれないか核持つ国が持たせぬ

    理由         (守口市)小杉なんぎん

  黄色だけなぜ「ばむ」と言うのだろうか「病床六尺」いよ

  いよ黄ばむ       (坂戸市)山崎波浪  

 「ばむ」;≪接尾語≫ 動詞の連用形、形容詞の語幹などについて五

 段活用の動詞を作る。そのさまを帯び、その様子のあらわれることを

現す。上代には例がなく、源氏物語に次の記載がある。

(蜻蛉);「すきばみたる気色あるかと・・・」、(夕霧);「なよら

かにをかしばめる事を、このましからずおぼす人は」。があり、このほ

か古語には、「汗ばむ」「黄ばむ」「黒ばむ」「心ばむ」「戯ればむ」

「塵ばむ」「萎えばむ」「情けばむ」「生ばむ」「濡ればむ」「辺りば

む」「優さばむ」「気色ばむ」「怪しばむ」「老いばむ」「隠ろへばむ」

「嗄ればむ」などがある。(広辞苑)

 この歌の作者は子規の歌を大事にして「病床六尺」をいつも手にして

おられるようだ。いつのまにか、この冊子は黄ばみ、その愛読度が判る

というもの。ばむは黄ばむのほかにいくつもありますね。「濡ればむ」

など憎いことです。

          

     朝日歌壇 2017.12.25

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                らん    aou.hiko

 

 線量は遺骨にまでも沁み込んで持ち出せぬという条理

 

  が悲し          

               (さくら市)大場公史

 

 かばねなき漁夫らいずこに漂うや木造船は佐渡に着き

 

  しも          

               (小金井市)神蔵 勇

 

  ★ゴルフしてステーキ食べてさようなら武器購入は

 

   決まったらしい    

               (大津市)佐々木敦史

 

 

  雪虫を子らは追へども手のひらに捕らへてみれば雪と

 

   なりけり        

               (奈良市)山添聖子

 

 晩秋の一日、そろそろ雪が待たれるころ、子供たちは雪が降るのを心

 

待ちにしている。そのころ、林檎などの果実に着く白い切片に似た雪虫

 

も空中に浮遊する頃でもある。子供たちは「ワアーイ雪虫だよ。」と声

 

を上げて白い雪虫を追いかけ、手に捕まえようとする。「雪虫取れたよ」

 

の声がまもなく上がる。手を開いた子が次に発したことば、「違わーい

 

雪だ雪だ。雪虫とは違わーい」そしてすぐに「融けっちまったよー」が

 

続く。

 

 

 しぐれ来て又しぐれ来て雪になる石蕗の一叢黄の明るうて

 

               (福井市)甘蔗得子

 

 冬の庭の隅に植えられていたつわぶきの一叢がその黄の深さを如実に

 

示す時が来た。しぐれが次々に来て雪になり叢を覆う中、丈夫な太い花

 

茎はすっくと立ち、丈余の積雪も花茎尖端の黄を覆いつくすことはない。

 

 

 本人に書けぬ届は二つあり出生届と死亡届と

 

               (東京都)東 賢三郎

 

 今生に命を享けた命の印として出生届をその両親が届け出る。この

 

ことは確かに本人にはできない。爾後その命は命を燃やし続けていつの

 

日にか、その終わりを迎える。登場の届と同様に、退場の届を死亡届と

 

して届けるのは確かに自分ではない。血を分けた後胤の誰かにお世話に

 

なることはこれまた確かであろう。人はこの二つの届け出は自分では書

 

けぬことを知ってはいるが、自分事とは承知していないように見えるの

 

は今一つ不思議だ。

 

 

  秋の日が斜めに射せば満天星(どうだん)と櫨(はぜ)がもっとも

 

   赤く滴る

                (幸手市)森 暁香

 

 冬が近くなると多くの樹木は冬支度をする。樹々は紅葉し、実をつけ

 

るなかで、赤色の極にまで至るのは満天星と櫨の木。その赤は滴るまで

 

に美しく外観を変えて秋を彩る。まもなく寒風が吹き、雪にとじ込めら

 

れる厳冬が来る。寒さに震えながら、あの秋の日に照り映えた満天星と

 

櫨の実の赤の滴りを懐かしく思わずにはいられない。 

 

 

                 (2018.01.15)

               


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375 花々に埋もれ彼の地へ嫁ぎゆく母よ真白き髪整えて [文芸(短歌・俳句) 時事]

 

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   随想コラム「目を光らせて」NO.375朝日歌壇朝日俳壇」から

 

       

     歌壇 期間 2017.10.02 ~ 10.30

 

  

       花々に埋もれ彼の地へ嫁ぎゆく

 

        母よ真白き髪整へて

 

   

     題 目:

    朝日新聞201.10.16(新居浜市)東 京子氏 作

 

                 アオウ ヒコ

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    洋画家 青沼茜雲 の作品集から。 38. 望郷 ギリシャにて

 

 

                 ・イギリス王立美術院名誉会員

                 フランスサロン・・トンヌ会員 

                 ・ノーベルノルウエー財団認定作家     

               ・世界芸術遺産認定作家 ・日展所属  

 

                     

       「朝日歌壇・朝日俳壇から」 

 朝日新聞の歌壇・俳壇の入選作の中から最新の世相を鋭く切り取った

 

 作品を新た選び、コメントを付けています。コメントは文芸上の範

 

 を超えることがあります。

 

 作品の頭に印が付いている作品は、時の政権が推進る前のめり

 

 右傾化路線平和憲法を無視し、国会の存在をないがしろにするさま

 

 を危惧する市民の投稿になるものです。これらの作品は、ここでは個

 

 々の作品の文芸上の軽重を問うことなく、注目すべき最新の世相を凝

 

 縮した作品として、そのすべてを採録しています。

 

  これらの作品に対しては、投稿者の真摯な叫びに読者の耳、素直に

 

 従うべしとしてコメントはつけておません。

 

  また、文中敬称は省略しております。  (筆者

 

 

 

        朝日歌 2017.1002 

              

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                           aou.hiko                                                                                                         

                                                                           

             

 

 ★基地あれば「ミサイル落ちるのはやがべ」と床屋の主人

 

  語る秋の日

             (三沢市)遠藤知夫

 

 

 

  アボガドの寿司巡り来て颯と過ぎぬまた巡り来て

 

   淋しアボガド

             (小美玉市)津嶋 修

 

 

 回転すしもすっかり定着、シャリの上にに乗せる具材もあれこれと工

 

夫され、目新しさを見せているが、客がすぐに手を伸ばすまぐろと違っ

 

て、新参アボガドの人気はサッパリのようだ。食感や味、風味で言えば、

 

海の鮟鱇の肝、陸のアヒルの肝フォアグラ、畑産のアボガドは共通した

 

食味を持ち、美味しさもそれぞれ抜群である。だが、アボガドは日本で

 

は輸入されてまだ日が浅く、愛好者の層が薄い。輸入当初は恐る恐る@

 

90円で売り出し、長い100円前後​の時期を経て、今は~@160円。

 

 鮟キモやフォアグラが回転寿司に登場しないのはコストが高いからだ。

 

アボガドがお敬遠されているうちに早めに手を出した方がいい。今日の

 

寿司はうまかったなあ、アンキモ、フォアグラと同じ味だぜ。アボガド

 

を淋しがらせるなんて、あなた、食通の名が泣きますぜ。

 

 

 

  若きとも老いともつかずあどけなさ残す埴輪の眼窩の

 

   深遠

             (横浜市)竹中庸之助

 

 

 亡き人を悼み、出来ることなら死者との陪席を願い、その代わりに埴

 

輪を創った。衣装装束は、当時のそれを模したが、顔付をどうするか、

 

特に眼をどうするかに困ったようだ。当時の切れ者が眼球は切り抜いて

 

眼窩を太く大きくデザインした。お陰で眼窩の深遠を覗くとき、そこに

 

は老若を超えたあどけなさが揺曳するようになった。

 

 

 

 ★知らぬふりしようが先に延ばそうが不都合な過去を

 

   終わりにはできぬ

             (橿原市)福田示知恵

 

 

 

  風わたる気賀汽水に竿をうち鯊またハゼを釣る秋にゐる

 

             (浜松市)松井 恵

 

 

 人ようやく、ハゼ釣りに出かける秋になったよ。汽水ゾーンの川岸に

 

腰をおろし、竿を伸ばして当りをみる。餌をつけて竿を軽く撓らせて

 

汽水の沖まで糸を打つなり、すぐに食いつくあたりが早い。ゆっくり腰

 

をを下ろしている暇もなく竿を上げたり、鯊を取込んだり、餌の付け替

 

えも、とこの忙しさ、忙しなさが秋のハゼ釣りで、堪えられない。

 

 

 

  ブータンには墓は見当たらぬ人はみな死して転生して

 

   生まれ変わると言う

 

             (名古屋市)諏訪兼位

 

 

 人は長く生きても、百歳前後。30歳までには基礎的な学業を終え

後は70歳までの40年間、自らのいのちが命ずるままに命が生きた時

 

代のために懸命に努力し、尽くして果てる。この間に遺していくものが

 

そのまま消滅してしまうとあれば、いかにも勿体ない。そのブータンで

 

は転生して新たに生まれ変わるという命のサイクルの由、次は前世とは

 

違うジャンルでの100年間、改めて幼児の時代から勤め上げる。

 

お墓?前世の100年間の記録がどこかのAI簿に遺されて、いつでも

 

照会出来るというシステム。確かにお墓はいりませんね。

 

 

 

  僧父の受けし布施にて育てられ吾も僧となり布施受け

 

   生き来

 

             (三原市)岡田独甫

 

 

 日本の宗教は、古来から自然発生的に形成されてきた「神仏習合」の

 

状況にあったが、明治維新直後の明治政府はその宗教政策の一として、

 

天皇制の下で神道のいづれを国家宗教に選ぶかについて、大議論を展開、

 

議論沸騰結論を得ないため、その採決を明治天皇に一任、天皇は三日三

 

晩熟慮した後、天照大神を選択したと言われる。以後、天照大神は皇室

 

の祖神とされ、伊勢神宮(内宮)に祀り皇室崇敬の中心となる。

 

 この神仏分離令が出たあと、神道家などによって各地で寺院・仏像の

 

破壊や僧侶の還俗強制などが起きた。しかし廃仏毀釈の過渡期を経て仏

 

教の革新も行われ、戦後は多くの新興宗教をも生んだ。

 

 仏教も生き残り、葬式を司る専門職のような形で存続するお寺と僧侶。

 

この歌にあるように、檀家制度の下にお布施を頂いて生活している。

 

だが、はたして、次世代にはどうなるか、安穏とお布施に頼れるのだろ

 

うか、と僧侶の悩みは尽きない。

 

                                                                                            

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     朝日歌壇 2017.10.09

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                                                            aou.hiko

 国内の問題処理はは二の次で外交好きで外交が下手

 

                (川崎市)小島 敦

 

 

 西郷像の前で待ち合うふるさとの竹馬の友を探すときめき

 

              (流山市)葛岡昭男

 

 

 長年月の交歓なしで過ごした故郷の親友が上京する。どこで会おうか

 

が上野の西郷さんの銅像前でとなり、その日を思うと、心が落ち着かな

 

い。お互いに相貌の変化がある。すでに到着しているのにともに気付か

 

ない。スマホ時代の今、その扱いに慣れないとしたら、ここは一番、次

 

のセリフを投げ掛けよう。「失礼ですが、もしかしてあなたは○○さん

 

?」「え?お前さん××君かいね」。これでよかった、邂逅成立。後は

 

積る話をごゆるりと。

 

 

 

 葛の葉の土手に連なるまんじゅしゃげ地上に出でし

 

  マグマの華燭

 

               (桑名市)土井寿美子

 

 

 秋口の河川の土手は曼殊沙華の赤で延々と彩られる。この紅色の形容

 

もありきたりが数多いが、地中のマグマが地上に噴出したとするのは珍

 

しい。マグマの華燭である。

 

            ■

 

 今ならば勝てそうだからやろうかと試合の話では

 

   ないらしい

                (大津市)佐々木敦史

 

 

 ★世界終末時計は二分三十秒残るのみだがまた進むだろう

 

                (東京都)野上 卓 

       

 

 ★国民の命を守る参戦と言ひだしかねず米に請はれて

 

                (長野県)井上孝行

           

 

 ★さしば舞う一万倍余の上空をミサイル飛ぶと緊急放送

 

                (栃木県)荷見泰一

 

 

 執拗に恋猫の啼く夜は更けて閣僚指名まだ揉めてをり

 

                (茅ヶ崎市)若林禎子

 

            ■ 

 

 

 終焉の息たえだえのこの集落を看取るごと棲む梟が鳴く

 

              (岩手県)山内義廣

 

 

 山間部の集落の高齢化が進むと、住民の話し声も聞こえず、終焉もま

 

近い夜、フクロウの鳴き声が看取りの声に聞こえる。寂しいまでも深刻

 

な夜の推移。

 

 

 

 花々に埋もれ彼の地へ嫁ぎゆく母よ真白き髪整えて

 

             (新居浜市)東 京子

 

 

 旅立つ先が「彼の地」でなく「かの地」であれば、嫁ぎ先の選択の幅

 

も広がり、想像の巾も広がりゆくであろうに、と惜しまれる。

 

せっかく、ま白い髪を整えて出かけても先に逝った夫が黒髪で現れたり

 

すれば、どうなるかね。そこまで考えると、広大な彼岸を指す「かの地」

 

とした方がいい、とそうは想いませんか。

 

 

                                                 ■

 

                           つづく → NO.375-2

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                


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375-2  弦楽の音の水位の上がり来てトランペットのソロを呑みこむ* [文芸(短歌・俳句) 時事]

 

  随想コラム「目を光らせて」NO.375-2 「朝日歌壇・朝日俳壇」

 

    歌壇 期間 2017.10.16 ~10 .30

  

 

         弦楽の音の水位の上がり来て

 

          トランペットのソロを呑み込む

   

 

      題 目:

  朝日新聞(2017.10.16 (可児市)前川泰信氏 作。

 

            アオウ ヒコ

                

151031柿.jpg

                 151031 柿  酒井 健

 

 

 

 

 

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       日歌壇 2017.10.16

13-DSC_0049.JPG

                                           aou,hiko

 頑丈な建物もない地下もないJアラートも寝て

   やり過ごす     (西海市前田一揆

 

 沖縄の戦禍を知らぬ沖縄の少年居ると知り目が眩む

    

             (大阪市)由良英俊

 

 

 母は終戦の前日空襲で死にましたと穏やかに言ふ

   老女の歳月     (茅ヶ崎市)若林禎子

 

 帰るべき家あるごとく白き蛇夕陽を受けて海に入りゆく

 

             (東京都)渡部鈴代

 そろそろ、蛇穴に戻るの時季、夕陽を浴びて蛇が行く。白い蛇はよく

 

あるとしても海に入りゆくが判らない。あ、海蛇であれば別ですがね。

 

                  

 

 白い小花朝もやのごと立たす風会津盆地にそば畑ふくらむ

 

               (郡山市)昆 キミ子

 この畑に何が植えてありその花の状況について延々と説明している。

 

読み下す最後の方で、あ、そば畑か、その花粉かと納得する。

 

 

 ★戦死者はもう日本から出しません墓地を囲みて赤曼殊沙華  

              (村上市)鈴木正芳                
                  

  弦楽の音の水位の上がり来てトランペットのソロを

 

   呑み込む 

             (可児市)前川泰信

 この頃、クラシック音楽会は、youtubeのクラシックパート(登録して

 

おけば、この曲どうですかと、世界一流レベルの演奏家と曲目を向うか

 

ら示してくるので、これを自由に選び出して視聴できる)を利用する

 

ようになってから、生のホールにはとんと出かけなくなった。というの

 

も、一時帰京したスペイン在住の友人Ishiが「向こうではyoutube

 

クラシックがふんだんに聴けて、これ以上の至福ったらないね」と囁い

 

たからだ。なるほどと思い、早速日本の我が家でも、家内の外出中には

 

4KTVにyoutubeのクラシックを呼びだし大音響で楽しんでいる。

 

奏家の中には新人の他、かつての演奏大家も混じるが、ピアノのルー

 

ビンシュタインがショパンを弾く姿や運指に接したときは確かに至福の

 

ひと時だった。

 

 シンフオニイの演奏会で、曲の内容を短歌に詠むケースに出合ったこ

 

とはないが、それは、人は耳から音を受容して、脳に流すことに懸命で

 

あり、リサイタルの外形的な報告などあまり重用しないからでもある。

 

 だが、この歌の弦楽の音の水位の上がり来て という表現はシンホニ

 

ーの弦楽パートの音のうねりの強弱を水位に例えてこれまでにない素晴

 

らしさがある。

 

 DVDやCDからの音楽では、この水位のあげさげ、うねりの強弱を

 

体感することは難しい。特に優れた楽士を揃えた交響楽団のストリング

 

パートが練達の指揮者が振るタクト通りに音の水位を微妙に上げ下げす

 

る場面、高潮するストリングのうねりに包まれるところ、などは演奏会

 

場ならではキャッチできない。たまには、演奏会に出かけて、あなたの

 

耳を精練させる必要があります。

 

 

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      朝日歌壇 2017.10.22

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                  aou.hiko

 

 妻と来て山ぶどう買う道の駅嗅げば蔵王の秋かおりたつ

                     

               (仙台市)沼沢 修 

 

                  

 今年10月2,3の両日、新潟へ大学の旧友と小旅行をした。3日は

 

大型タキシーをチャーターして新潟界隈を見て回ったが、稲田の取り入

 

れを終えた田圃に、イチジク盛期の看板があり、無性に食べたくなって、

 

運転女史に近くの道の駅に立ち寄ってもらった。盛期は過ぎていると聞

 

いたが、新鮮な大粒のイチジクがパック詰めで6ケ400円で売ってい

 

た。これはうまそうだ、として諸君用と運転女史用に2箱求め、1果ず

 

つ分けるつもりだったが、後からぞろぞろ従いてきたかれらも「美味し

 

そう」などと言いながら、1パックずつ買うじゃないか。分けて食べる

 

算段の私のイチジクはどうなる、だったが。

 

 「道の駅」は車持ちには便利で、ちょくちょく立ち寄っては、新鮮な

 

季節の果物をエンジョイしている。この歌の持ち主も蔵王の秋が香り立

 

つ山ぶどうを道の駅で買い求めたようだ。道の駅讃。

 

 

 ぶら下がるパンは上から攻めるべしライオンの獲物

 

  襲ふがごとく 

           (東久留米市)関沢由紀子

 

 

 パン喰い競争に参加されたか。実戦の経験から言われているのか。

 

、この競技では、パンは競技者の頭上すれすれあたりに吊り下げられ

 

おり、ブラブラの餌を求めて人は仰向けに口をむけるが、これではなか

 

なか餌にありつけない。身長の低い人思えらく「あゝ私の口が上の方に

 

あればなあライオンのように。短足嘆息す、ウオーの咆哮である。

 

 

 

 年子でも双子のように育てられコスモスゆれる兄一周忌

 

              (仙台市)木村次郎

 

 

 一つ違いの兄弟。両親は均等に可愛がり、二人も仲良く育った。兄は

 

昨秋死去し、この秋コスモス揺れる一周忌を迎える。懐かしい兄。

 

 

 

  ゆさゆさと道に沿いつつ稲刈りの鎌持つ男の時間は続く

 

                (奈良市)宮田昌子

 

 

 幸いにも今年の稲作は豊作であった。道沿いの稲田にはゆさゆさと稔

 

った稲が稲刈り鎌を手にした男の刈り取りを待っている。この調子だと、

 

まだ相当な時間がかかるようだ。

 

 

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       朝日歌壇 2017.10.30

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                    aou.hiko

 

  鳥海に初冠雪の日白鳥の最上川に五羽飛来の律儀

 

            (酒田市)富田光子

 

 

 今年も五羽やってきたのか、律儀だねえ。鳥海山に初冠雪の日、最上

 

川に白鳥飛来す。律儀なことです。が、嬉しい。

 

 

  アルプスの峰より紅葉始まってふもとに下る安曇野が好き

 

               (安曇野市)曽根原幸人

 

 

  安曇野を故郷にする人が町内にいる。カラオケの番になると必ず

 

「安曇野の歌」を歌う。柔らかい音程が流れ、温かい包容力に満ちた故

 

郷を思わせる。彼はこの歌しか歌わない。この歌にぞっこん嵌っている。

 

 

 ★飯館の唯一未帰還長泥地区風の萩むら見る人無しと

 

             (福島市)青木崇郎

 

                    

 

  スカートの裾を広げて零余子採る誰も通らぬ逢魔が時に

 

                (茨木市)窪田宣子

 

 逢魔が時は大禍時(オオマガトキ)から来ている。この時間には何か

 

が起こりそうな時間帯になるから、留意せよ、である。この時間だれも

 

見てはいないからと、スカートを前にまくって受袋にし、零余子を投げ

 

入れる。「だいじょうぶよ、だれも見ちゃいないからさ」とは元気なお

 

女中連。この時間帯、それは危ない行為でありまするぞに、かまわんか

 

まわん秋の暮れさ、と露出した脚の白さよ、を誇っている。

 

  

 この選挙明らかになる憲法を守れる人とそうでない人

  

              (姫路市)綾部佳子

 

 

 ICANは日本政府を非難せず「核廃絶のリーダーに」

 

  と乞う 

             (近江八幡市)寺下吉則

 

 

 

 水がめの蓋に一匹のカマキリと影のカマキリじっとしており

 

 

             (仙台市)小室寿子

 

 一匹のカマキリがじっと動かないのは近くにもう一匹のカマキリがい

 

るからである。自分の影だとは思っていないらしい。動かない。じっと

 

している。このまま推移したらどうなる。共倒れの死が待っているだけ

 

だ。いつ気付くか、どちらが行動を起こすのか。

 

 

 

 一人子に子を授かりし秋の日よ深き安堵にわれは年寄る

 

             (徳島市)上田由美子

 

 

 漸くに一人息子の連れ合いが子を出産した。このまま子に恵まれなけ

 

れば、孫なしで、一家が途絶えるところだった。これで一安心。深い安

 

堵が今度は急に老化に向かうように思えてくる。

 

 

 三年ぶりの家は朽ちゆくと言うフクシマのかなしみ黙過す

 

  る再稼働

             (帯広市)小矢みゆき

 

 

 ★分断の元なる軍事境界線いつか無窮花咲ける野となれ

 

             (岡崎市)石川休塵

 

 

 銃さえも規制できずに苦しめる地上に唯一核使用国

 

             (水戸市)中原千絵子

 

 

                                       (2017.12.15)

                               


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374  秀麗や地球を守るパリ協定 [文芸(短歌・俳句) 時事]


 

     随想コラム「目を光らせて」NO.374 「朝日歌壇・朝日俳壇

 

       俳壇 期間 2017.9.04 ~ 9.30

 

  

       秀麗や地球を守るパリ協定

 

   

     題 目:

    朝日新聞201.10.02ドイツ)ハルツオーク洋子氏 作

           

                アオウ ヒコ

23-DSC_0043.JPG

 

 洋画家 青沼茜雲 の作品集から。37.桜の明治の館「グリーンピア」

                ・イギリス王立美術院名誉会員

                フランスサロン・・トンヌ会

                ・ノーベルノルウエー財団認定作家     

              ・世界芸術遺産認定作家 ・日展所属  

 

                     

       「朝日歌壇・朝日俳壇から」 (略) 

 

     朝日俳壇 2017.1002

 

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                                      aou.hiko

  秋天を秋天らしく描く雲                                 

                   (高松市)白根純子

 空が青一色、または鉛色の曇天、雨天しか、ないとすれば、これまた

 

面白くないこと甚だしであろう。そこで活躍するのが空に浮かぶ雲であ

 

る。夏の夕立の前に空に垂直に盛り上がる積乱雲。

 

 そして秋が来て空気が澄むと、天空高くには巻雲が一面に拡がる。こ

 

の雲がなければ、秋天らしさはなく爽やかに吹く風に包まれることもな

 

い。中秋の名月にも、翳めて過ぎる千切れ雲がなければ、お月見の芒や

 

団子にも風情なしにて。

 

                                                                                                                                                                                                                                                                                                        

                                                          

  わが筆よ祭りとなれよ虫時雨

 

                (秩父市)浅賀信太郎

 

 普段から使い慣れた筆よ。万年筆、ボールぺん、サインペン、鉛筆よ。

 

私が命じたように字句を書いて呉れてありがとう。そのあいつが「やっ

 

たあ!」の祭り(入選)となればなあ。家の外では、虫たちが秋のお

 

前奏曲を奏でている。盛大にやっておくれ。間もなく冬だからね。

                                                                           

             

 

 ★敬老日「きけわだつみのこえ」読破

 

             (札幌市)渡辺健一

 

 

 

   運動会頑張れ母のにぎりめし

 

             (大分県姫島村)堂園美和子

 

 

 走るからには頑張っておくれ。今日の運動会。心こめて、ぎゅっと

 

力を入れておにぎり作っておいたから。お昼に食べれば 母さんの力

 

がぐっと乗り移ってくれるは必定。大声で応援もしますよ。

 

 

 

  秀麗や地球を守るパリ協定

 

             (ドイツ)ハルツォーク洋子

 

 

 人類の歴史始まって以来、多くの発見・発明が行われて今日があるが、

 

そのすべての智慧集積のなかでも、秀麗(すぐれて麗しいこと)のベス

 

トワンは「18,19世紀の産業革命以降爆発的に増加した機械エネルギーが

 

排出した炭酸ガスの累積増加が地球温暖化の元凶とする考察」だという。

 

 地球の温暖化により、極地の氷山が次々に融け出し、海水量が増えて

 

いる。洋上の小島の渚は海面上昇によって頓に水没が進み、住民は近い

 

将来島を離れる運命にある。

 

 また、世界各地で頻々として起きる超大型台風、ハリケーン、集中豪

 

雨が齎す水害、逆に極度の少雨による大規模の山火事、土地の砂漠化の

 

進行etc.今までにない自然現象を前にしてこれはおかしいと皆が感じ

 

出していたころだった。この「地球温暖化」の進行を極力防止せねば、

 

地球の未来はないとして、世界の指導者は真剣に検討を始めた。その嚆

 

矢は日本国で行われた「京都会議」による提言(議定書)であり、その

 

重要性に目覚めた世界大国の指導者たちであった。そして対策の実現に

 

向けて協調が得られつつあった。

 

 最新の会議はパリで行われ、その内容は「パリ協定」と呼ばれ、各国

 

は目標年次までに実施可能な目標を持ち寄り、行動に移す段階へと進む

 

ことを国際確約した。

 

 ああ、ところがどうだ。米国大統領は「地球温暖化は米国だけによる

 

ものではない」とこれに反旗を翻した。世界一の産業国家の米国大統領

 

が、地球の将来を救う施策立案に脊を向けた。何たる資質の持ち主であ

 

ろうか。その名はトランプ。他の資質では秀でていようと「パリ協定」

 

に背を向けるようでは話にならない。このままでは、米国が毎夏、超大

 

ハリケーンに見舞われるは必至であり、全世界が異常気象の被害を受け

 

て悲嘆にくれることになる。必ず、そうなる。

 

 

 

   稲の香の颯と乗り込む無人駅

 

              (東京都)望月清彦

 

 

 稲刈りが済むと、稲穂を束ね穂を下にしたものを乾燥するために稲掛

 

けをする。掛ける物や場所を、稲木(いなぎ)稲畑(いなばた)稲掛

 

(いなかけ)稲架(はざ、はさ)などと呼び地域により異なる(広辞苑

 

 ちょうど旅をされた時が稲刈りを終えて稲架にかけられて稲穂の乾燥

 

に回っていた頃だった。稲作地帯を走る電車が無人駅に停車して、ドア

 

が開いた瞬間、稲の香りがさっと乗り込んできた。秋の稲の香りを胸い

 

っぱいに吸いこんだ。

 

                                                                                                    

 

    朝日俳壇 2017.10.09

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                                      aou.hiko

 

   まだ歩くまだまだ歩く敬老日

 

               (嘉麻市)松井春光

 

 

 大相撲の今九州場所、久しぶりの稀勢里復帰とあって、対戦する相手

 

との取組みに観衆の目が集中する。この日は逸ノ城との取り組みだった

 

が、稀勢里の勢い鈍く、あっけなく逸ノ城に押し出された。取組後、ア

 

ナは好調の原因を逸ノ城に質したが「体が一人で動いてくれるものです

 

から」とだけ云った。肉体は、若い時には脳がああせい、こうせいと言

 

うまでもなく、おのづから動くようである。

 

 ところで、敬老日である。人は歳をとると脚が弱る。そこで、脚さえ

 

丈夫であれば、健康な老齢期が送れるとして、歩くことが奨励される。

 

脚はみずからは動かないので、脳が指示を出して初めて脚が出る。そこ

 

で、この句のように「まだ歩くまだまだ歩く」となる。脳が意識さえす

 

れば脚が動くように脳を訓練するためにである。

 

 脚は敬老日など、認めていない。

 

 

 

   台風や蝋燭の火に父と母

 

               (高松市)島田章平

 

 

 台風が吹き募って近所の電線が切れたりすることは珍しくない。停電

 

である。人は暗闇で過ごすことに慣れていないので、慌てて蝋燭を取り

 

出して灯を点ける。

 

 外は台風が通過する音がごうごうと吹き荒んでいる。その時、弱弱し

 

い蝋燭の火の周りに父と母が座っている。「この位の風、大丈夫ですよ」

 

と私が話し掛けると、二人ともしきりに頷く。妻が言う「お茶でも淹れ

 

ましょうか」父母は揃って頷く。「御萩があったね」と私が付け加える。

 

 甘党だった老夫婦は蝋燭の揺らぎの中で、大きく頷きあう。表情のな

 

いまま。瞬きもしないようだった。

 

 

 

    はたはたやこどもみたいに笑ひたい

 

               (加賀市)西やすのり

 

 

 その昔、鰰(はたはた)は網さえ入れれば、大魚間違いなしの魚だっ

 

た。秋田を代表する魚で、ハタハタ漁の最盛期1966年(昭和41)には、

 

秋田県で21000tも獲れていた。それがピークで、次第に右肩下がり

 

なって、1978年(昭和53)に3500tに激減、終に1991年(平成3には

 

71tしか捕れなくなった。

 

 それで漁業関係者の中から「このままでは秋田でハタハタが獲れなく

 

なってしまう」という危機感が現実味を帯びて、3年間(平成47年)

 

の禁魚が決まり、漁師はそれに随い、愛好者もしぶしぶこれに従った。

 

 禁魚期間が過ぎ、鰰の資源は見事に回復、はたはたは漁師の網に一杯

 

に獲れるようになった。なんと嬉しいことか。

 

鰰の大魚をよろこびたい。子供が嬉しい時に歓ぶように、わたしも大笑

 

いして歓びたい。

 

              

 

 ★反戦が最後の仕事敬老日

                (伊佐市)清水ひさし

 

 ★引き揚げを語り聞かせる秋彼岸

 

                (福島市)引地こうじ

 

             

 

   膝さへもわからぬ霧の登り道

 

               (芦屋市)酒井湧水

 

 

 登山家でなければこのような経験はできない。登る道が深い霧に閉ざ

 

されていれば、頂上を目指す者としては安泰とは言いかねる。まもなく

 

晴れて視界も広がるだろうという見通しも確率は五分五分で、このまま

 

雨天になるやもしれぬ。しかし霧の朝は、日中は晴れるというのが常識

 

だから、うまくいくだろう。

 

                       つづく [→] NO.374-2

 

         (2017.12.1)

 

 

 

 

 

                


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374-2  あちこちで籾殻焼きぬ眠れぬ夜 [文芸(短歌・俳句) 時事]

                                                   随想コラム「目を光らせて」NO.374-2 朝日歌壇・朝日俳壇
俳壇 期間 2017.10.02 ~10 .30

  

 

    あちこちで籾殻焼きぬ眠れぬ夜

   

 

        題 目: 朝日新聞(2019.10)

                    (玉野市)勝村 博氏 作

                アオウ ヒコ

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              1315080 スイス・ベルン 黄薔薇  

                    水彩画  酒井 健

 

 

 

 

     日俳壇 2017.10.16

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                             aou.hiko

 

  運不運菜を間引きつつ思ひけり 

                (知多市)岩崎光子

 菜園に植えた菜が育って間引きの頃を迎えて、しゃがんで生育の遅れ

 

た菜を間引きしている。そして思うよう、菜っ葉にも運不運があります

 

ね。この私にその運が任せられていると言えないこともない。大きく

 

えば生殺与奪の権利。ごめんなさいね、不運な菜っ葉さん。難しいわよ、

 

このような権利の付与というか、運命の選択。

 

 

 

 

   新米の五風十雨の光かな

 

              (大阪市)平谷茄美

 脱穀された新米を手に取って眺めている。田植えの時の稚苗を水田に

 

植え付けて以来、めでたく造粒を終えたこの新米。この日があるために

 

はあなたは生育を左右する五風十雨と呼ばれる自然の災難を旨く経てき

 

たことでしたね。その結果結実した穀粒が発する光のたくましさ、美し

 

さ。完璧なお米の誕生。

 

 

 

 

  終に来しひとりの暮らし秋刀魚焼く

 

                  (二宮市)岩田一男

 老境にある夫婦の関心事は、どちらが先に行くか、であろう。夫が先

 

に逝けば、あとは妻に託せばいい。が、その裏の展開だったら、どうし

 

よう。掃除も洗濯も三度の食事も、何の準備もなされていない。困った

 

なあ、に陥る。

 

 しかし、現実に伴侶に先立たれれば、日本の男子たるもの、異なれる

 

境地や境遇に投げ込まれても何とかなる、何とかするようだ。現にこの

 

夫君、どこかのスーパでさんまを調達、ぶら下げて帰り、ざっと水洗い、

 

サッと塩して、すぐさま塩焼きにしているではないか。しかし、終に来

 

しというやつ、いつまでも来ないで欲しかったなあ、が先に立つ。

 

 

 

  懐かしや母の御萩の秋彼岸 

 

               (木更津市)本郷政信

 どこにも、秋のおはぎ作りにかけては抜群、名人というおばあさんが

 

いる。大粒の小豆をコトコト、甘く煮含めて、糯米をやわら目にに焚い

 

て、太めに丸め、これに粒小豆餡をたっぷりと塗り付ける。懐かしや母

 

の手になる秋彼岸のおはぎ、あの甘い香り立つ小豆餡のおはぎを、今ま

 

でに何回食したことだろう。「春は牡丹餅、秋は御萩というのよ」が口

 

癖だったこともあわせて、♪ 彼岸が来ると思い出す、母の御萩よ^^♪

 

ある。

 

 

  

  千畳の波よせ崩る大夕焼 

  

             (西宮市)黒田國義

 通常、大夕焼けが海岸を赤く染める時分は風もなく、波も静かである

 

ことが多い。この日も穏やかな夕焼けの景色に恵まれたままの落に恵

 

まれたかと思われたが、突然海の彼方から千畳もの広さの波が現れて、

 

周りの海の景をかき混ぜたものだから、大夕焼が崩れてしまった。

 

津波じゃなく、大型船舶通過によるものさ、などと言うあいだに日没は

 

終っていた。

 

             

 

 ★かぎりなき廃炉の空を鳥渡る 

               (敦賀市村中聖火

 

 

 

 

 

       朝日俳壇 2017.10.22

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                                                   aou.hiko

 

  天空にコスモス揺るる棚田かな

                     

               (加古川市)森木史子

                   

 棚田の最上段(もちろん棚田にも大小さまざまある)を最下段の下

 

から見ると、かなりの距離であり、しかも仰ぎ見る姿勢になるから、

 

天空と称しても可笑しくはなかろう。また、その最上段の田にコスモ

 

スが植えてあれば、粋なことよと賞賛されるだろうが、これが、畦道

 

の縁にあればなおさら、野趣も加わり天空の花として、秋の好日には

 

色とりどりのコスモスが揺れていることだろう。

 

 この句の作者は、棚田の何処ら辺に居て、この天空詠をなしたのか。

 

最下段の田からか、中段田からか、天空近くの最上段の田に身を置い

 

ての句作か。一考するだけの価値がある。

 

 結論的には、三者択一いづれもありうるが正解だ。検地せずに断じ

 

た最下段からが、想像の付与がより加わる分だけやや有利の評価にな

 

るようだ。ほんの少しだけ。

 

 

 

  夫在さぬ寂しき自由夜長の灯 

 

             (香川県琴平町)三宅久美子

 

 濡れ落ち葉のどこがいい、だれからも拘束されぬ自由よ万歳と唱えて

 

みたが、この夜長、夫いまさぬ寂しさをなんとしよう。何とかして、と

 

叫んでおります。( 妻在さぬ寂しさ、これも同じです。)

 

 

 

  夕霧をうすくれなゐに染め落暉

 

                (神戸市)涌羅由美

 

 

 海山がある景色に落ちる夕日をテーマにしている。日没に近い夕べに

 

「夕霧」が発生し、景色はすべて霧に包まれたが、落暉に近いこともあ

 

って、白い霧が落暉の赤を受けて薄い紅色に染まり、そのまま日没とな

 

った。

 

 

 

  日の陰り色に出にけり鳥兜

  

              (熊谷市)内野 修

 

 

 夏の終わり、秋の日に近い一日。日が急に蔭って、これまで陽を受け

 

てキラキラ明るく輝いていた多くの花々の色が俄かに退嬰して目立たな

 

くなった。鳥兜の花も本来、その美しい紫碧色で知られるが、曇り日と

 

なって、他の花の色が薄れ、目立たなくなったいま、トリカブトの花だ

 

けが俄然、人を蠱惑する強い美しさを見せ始めている。おお、恐わ、怖

 

いぞ、近寄るな!のサインでもあるのだが、人は「どこ?どこ?どこに

 

咲いてる?」と目の色を変えてこの有毒の花を捜し始め、近づいてゆく。

 

         ■ 

 

 人類の滅びしのちも鳥渡る 

 

              (町田市枝澤聖文

 

 

 

  あちこちで籾殻焼きぬ眠れぬ夜

 

               (摂津市)内山豊子

 

 

 稲作の収穫時に山形へ旅行したことがある。稲の刈取、乾燥、脱穀

 

を終えた頃だった。広い山形平野の稲田のあちこちに籾殻が山の形に

 

積まれ、裾の数か所に小火が放たれ、炎ではない火がじわじわと籾殻

 

を焦がして行く。火が生きている証拠に煙が低くたなびき、燻煙の匂

 

いが広く拡散して行く。燻炭作りは山形だけではなく、全国各地で行

 

なわれているのだろう。眠れぬ夜を過すとき、鼻腔を通過する薄い薄

 

い燻煙の匂いが懐かしく戻り、浅い眠りに留めているのか。

 

 

 

  光りつつ飛びゆく命草の絮

 

              (横浜市)森 晶子

 

 

 多くの植物がわが命を次世代に残すために種々の方策を考えだしてい

 

る。その一つは風媒花の類い。また草の絮を風に流して子孫の種子を拡

 

散させるものも多い。憎いことに、風に運ばれるとき、種子が太陽の光

 

に曝されてキラリと光るのは、命の巣立ちを寿ぐ印しであるかも。

 

 

 

 

        朝日俳壇 2017.10.30

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                                      aou.hiko

 

   菜虫とる野を舞ふ未来知りつつも

 

             (兵庫県太子町)一寸木詩郷

 

 

 キャベツ畑の上に舞う蝶の乱舞は蝶がキャベツの葉に卵を産み付けて

 

いる種付けの舞である。にぎやかだね、可愛い蝶の舞だねなどと、目を

 

細めるわけにはいかない。蝶の卵はすぐに青虫になり、キャベツや野菜

 

の葉を旺盛に食害する。この青虫、蛹になった後、蝶になり、野を舞う

 

美しい蝶になることは重々承知なんだが、ここではキャベツを駄目にす

 

る悪い奴だからな、取っちまうのさ、と。

 

 

 

   大鯉のなすことのなき秋日和

 

            (神奈川県松田町)山本けんえい

 

 

 秋日和は冬を前にして、暖かな快晴の日である。さざ波一つ立たぬ池

 

や湖沼に住まう大鯉は湖底での捕食にも飽きたのか、することがなくて

 

やってきましたという風情で水面に浮上し、悠然と水面近くを遊弋する。

 

胴はまるまると太り、貫禄十分な泳ぎを見せる。池の端から餌を撒けば

まことに大きな大口をぽっかりと開けて食するから、満腹の状態でもな

 

いらしい。人も秋日和には外に出て、大鯉のアングリ口を見守っている。

 

   

 ともに聞けわたつみの声虫の声

 

             (岸和田市)小林 凛

 

 不戦こそ何より嬉し敬老日

 

             (長崎市)松尾信太郎

 

 露の世の忘れ去られし兵の墓

 

             (堺市)松木みゆき

 

 

 

  稲架棒を担ぎ踏切渡けり

 

            (塩尻市)古厩林生

 

 

 稻刈を終え、稻を束ねたが、稲架場には少し距離がある。こういう時

 

近時は、軽トラの出番であろうが、ここでは稲架棒名人がいるので、彼

 

に任せたのか。「私に任せなさい」と天秤棒担ぎ手は主張したのであろ

 

う。稻架棒の両端の荷台に稲束を荷重一杯に置き、エイヤとばかりに持

 

ち上げる。稻架棒は中心部で円くしなり、担ぎ手の肩と両脚が過重をし

 

っかりと支え歩き始める。近くに踏切がある。ここでは一気に渡りたい。

 

素早く左右を見渡して車輛の姿認めずであったので、そのままの揺歩運

 

搬を継続、無事に踏切を渡りにけり。

 

 よかったですね。

 

               

 

           (2017.12.01)

 

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373  渦潮に揉まれし海月は永遠に戻ってこないま白き帽子 [文芸(短歌・俳句) 時事]


 

       随想コラム「目を光らせて」NO.373 「朝日歌壇」から。

 

 

       歌壇 期間 2017.9.04 ~ 9.25

 

  

   渦潮に揉まれし海月は永遠に戻ってこない

 

   ま白き帽子

   

 

      題 目:

     朝日新聞(2019.18)奈良市)山添聖子 氏作



                 アオウ ヒコ

     4-DSC_0059.JPG

     洋画家 青沼茜雲 の作品集から。36.「櫨 路」

          ・イギリス王立美術院名誉会員

          フランスサロン・・トンヌ会

          ・ノーベルノルウエー財団認定作家     

          ・世界芸術遺産認定作家 ・日展所属  

 

 

 

            ■

   

       「朝日歌壇・朝日俳壇から」 

  朝日新聞の歌壇・俳壇の入選作の中から最新の世相を鋭く切取った

 

 作品を新た選び、コメントを付けています。コメントは文芸上の範

 

 を超えることがあります。

 

 作品の頭に印が付いている作品は、時の政権が推進る前のめり

 

 右傾化路線平和憲法を無視し、国会の存在をないがしろにするさま

 

 を危惧する市民の投稿になるものです。これらの作品は、ここでは個

 

 々の作品の文芸上の軽重を問うことなく、注目すべき最新の世相を凝

 

 縮した作品として、そのすべてを採録しています。

 

  これらの作品に対しては、投稿者の真摯な叫びに読者の耳、素直に

 

 従うべしとしてコメントはつけておません。

 

  また、文中敬称は省略しております。  (筆者)

 



      朝日歌 201704

14-DSC_0670.JPG

                            aou.hiko

負の日本に学びし数多なる国が核兵器を禁止せよと言うのに                       

          (近江八幡市)寺下吉則                                                                                                                                                  

広島は広島の鐘長崎は長崎の鐘鳴る原爆忌

 

               (広島市)岡山玲子

 

                                                          

「ヒバクシャの条約になぜ参加せぬ」忖度をせず長崎市長

 

            (町田市)冨山俊朗

 

 

市長の役務めるうちに本物の市長になりし長崎市長

 

             (神奈川県)神保和子

 

                                                                                     

今こそは田上市長が立ち上がる政府に迫る核兵器禁止条約

 

             (たつの市)藤原明朗

 

 

草むらにキリギリス鳴く平和あり原爆の図の地獄の外に

 

             (熊谷市)内野 修

 

 

八月九日、三七度でたへがたし原爆投下の地上は一〇〇〇

 

 度超          (三鷹市)増田テルヨ

 

 

上等兵と刻みし墓の無言にて若き兵士は平和を知らず

 

             (大阪狭山市)山本信子

 

 

しんじつを言えばこんなに悲しくて長崎市長の平和宣言

 

             (水戸市)中原千絵子

 

 

原爆忌どこの総理かと問いただす日本の総理黙して語らず

 

             (小金井市)チャオ菰田

 

 

<核兵器禁止条約.>に一言も触れぬ首相の六日、九日

 

             (安中市)鬼形輝雄

 

 

大人でも泣くと初めて知ったのは雑音だらけの玉音放送

 

             (青森県)岩舘 順

 

 

黙祷のひとりのしじま原爆忌五人兄弟われのみ残る

 

             (国分寺市)越前春生

 

 

「どこの国の総理ですか」と総理に問うナガサキのヒバク

 

シャ核禁止への意思    (埼玉県)島村久夫

 

 

墓碑に読む叔父は衛生上等兵友を看護しつつ撃たれしと

 

             (前橋市)荻原葉月

 

 

被爆の日過ぎて一日一日と報道の減ることへの不安

 

             (長崎市)田中正和

 

 

             

 

 びっくりなされたでしょう。今号はのっけから歌の頭にを戴いた作

 

品がかくもずらりと並ぶとは、日本国の世情になにか、大異変が出来し

 

たとしか思えないではありませんか。

 

 

                 

29-DSC_0727.JPG
  aou.hiko

 

 日本国民は戦後70年間の穏和な平和の世情の中に、日常の安寧と安

 

堵を感じ取り、その継続を希求しているにも拘らず、戦争を知らぬ世代

 

が政治の中枢を占めるようになってから、かつて軍国主義の先導の下、

 

無謀な大戦を引き起こし、関係諸国はもとより自国も膨大な人的物的損

 

害を蒙り、苦しい戦時下の生活を強いられたことなど、戦争がもたらし

 

た歴史的教訓への理解が浅薄皮相で推移していることは真に嘆かわしい

 

ことではありませんか。

 

 第二次世界大戦の一、太平洋世界戦争とも称された日米戦争は、最終

 

期に於いて米国大統領トルーマンは首都無差別爆撃に次いで、新兵器の

 

原子爆弾を日本帝国の広島、長崎の無辜の市民の頭上に投下させ、無差

 

別大量殺戮作戦の仕上げに打って出ました。炸裂したきのこ状の雲の原

 

子爆弾が発した高熱と放射線によって、この日本の中堅都市は惨憺たる

 

被害を蒙り、そのあまりのむごさに、国は戦意喪失、漸くに収束に向か

 

った事実があります。

 

 

 この事実を身近に体験することなく育った世代が、指導者を含めて日

 

本だけでなく世界でも「核戦争を知らない世代」として大半を占めるよ

 

うになり、好戦的な妄動が始まっています。知らないことこそ、げに恐

 

ろしきことかな、の謂いです。

 

 戦後、日本は平和憲法を選択、世界に二度と戦争を仕掛けたりはしな

 

いと世界に向けて宣言、その言行一致により世界諸国も承認するように

 

なり、爾来、戦後七十年間の平和が保証され、実現し、今日に至ります。

 

 だが、国民はあの戦争のことを忘れてはいない。戦争に巻き込まれる

 

こと、平和が失われることへの惧れは本能的なものになっている。これ

 

が今年の夏、ひろしま・ながさきの原爆忌、核兵器禁止条約への不参加、

 

それらに触れた田上長崎市長の平和宣言、現首相の式辞と陛下のお言葉

 

との格差等。これらを取り上げて詠んだ歌として私たちの目に触れるこ

 

とになりました。

 

08-DSC_0692.JPG

                               aou.hiko

 

                 

 

 朝日歌壇の選者も全国から寄せられたこの澎湃たる平和への希求の声

 

を前にして、竦むほどの感動に支配されたようです。従来とおり花鳥風

 

月を題材にした短歌も寄せられていたが、今週の投稿に限ると、平和へ

 

の願い、戦争反対を叫ぶ歌が圧倒的であり、これだけの数のつき文芸

 

品が揃うと、それは国民輿論を担うものであり、簡単には無視したり

 

できない性質のものと理解すべきでしょう。

 

 

 本来の文芸作品としての投稿もあったが、本ブログではこの週、次の

 

一首だけが筆者の選に残り、コメントを付ける作業が大幅に減りました。

 

 

            

 

 

 お土産の貝殻六つ耳に当て海鳴り聴かむ君見し浜の

 

          (さいたま市)伊達裕子

 

 

 遠くの海からの貝殻に耳を当てて耳を澄まそう。その浜の海鳴りが聞

 

こえる、という詩がその根底にあるのか。どこかの詩人のように、貝殻

 

を耳に当てて、その海の海鳴りを聞いて下さい。と、彼はその浜の貝殻

 

を6個送ってくれたので、今から海鳴りの音を聞いてみるつもり。

 

 どうして6個も送ってくれたのか。大ぶりの貝を1個でよかったに、

 

その方が、大きな海鳴りがとよむかもしれないのに。

 

 

          

 

    日歌壇 2017..1       

01-DSC_0583.JPG

          

 

  死亡した母の手握る我が手には無言の愛の温もり残る

                   

              (三郷市)木村義

 

 

 母が亡くなった。遺体は命が滅すると次第に冷えてゆく。私は何度も

 

母の手を取って握る。そのたびに無言ながらも母の手から愛の温もりが

 

伝わってくる。いつもそうだった母の愛の温もりが。

 

 

 戦争を<憎む>はあれど<反省>は無き日本の首相の式辞

 

              安中市)鬼形輝雄

 

 

 

 ★八月の死者の魂語らねど沼一面に咲く蓮の花

 

              仙台市)矢口つとむ

 

 

 

 くちびるを噛みて「焼き場に立つ少年」直立不動に七十

 

   余年         宮崎市)木許裕夫

 

 

                                                                                                                                                                        

 トランプをモノクロ画面で鮮やかに虚仮にするだろ

 

   チャップリンなら  ひたちなか市)十亀弘史

 

 

 

          (2017.11.15)

 

 

           つづく → NO.373-2

 

 

 

 

   。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

 

 

 

 

 

 

 


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