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384 膝を病む子羊は群れに遅れつつ誘導犬に見守られ行く [文芸(短歌・俳句) 時事]

 

                                      

   随想コラム「目を光らせて」NO.384「朝日歌壇・朝日俳壇から」

            

     歌 壇 期間:2018.02~4.29

 

 

    を病む子羊は群れに遅れつつ誘導犬に

 

  見守られ行く



  題 目:朝日新聞2018.4.8

       (ドイツ)ハルツォーク洋子さんの入選作。  

              アオウ ヒコ

                 

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       画像:洋画家 青沼茜雲の作品集から  47. 「春らんまん」

              フランス・サロン・ドトンヌ会員

              ・ノーベルノルウエー財団認定作家     

              ・世界芸術遺産認定作家・日展所属

 

 


   

      「朝日歌壇・朝日俳壇から」 (略)

 

         朝日歌壇 201.402 

               

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 素のままのわれで居られるパートナー生きてこの世に

 

 いるという幸

              (仙台市) 沼沢 修

 

 気取ることもなく、地のまま、素のまま二人でいられることの幸せ

 

何たる幸せ。

 

 

 ★国民を守る政治が国民をだましてまでもまもるはなにぞ

 

                    下関市) 乗安 勉

 

 

 ★強権で妻とおのれを守る人これも一つの愛のかたちか

 

               駒ケ根市) 伊藤邦彦

 

 

 ★長官は辞任し部下は自死するも確定申告に人ら列なす

 

             長野県) 小林正人

 

 

 

 マイク手に秩父音頭を独唱の白寿間近のあの日の兜太

 

             東京都) 大久保やそじ

 

 まだ、金子兜太への追悼句がつづく。そうか、マイク手に秩父音頭を

 

熱唱されたか。

 

 

 ★線量の無き様にある山桜忘れはしないが知らぬ振りです

 

                     さくら市) 大場公史

 

 

  わが産声聞きしは若きわかき母沈丁花ひらく喜寿迎う朝

 

                  枚方市)  鍵山奈美江

 

 私の呱々の声を聞いた時の母は本当にぴちぴちの若い頃よ。あれから

 

何年、幾歳月が過ぎた今朝、母は沈丁花の香りの中に喜寿を迎えようと

 

している。

 

        

    朝日壇 201.4.08

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 ★表示板に<反対2票>光りおり国家主席の任期撤廃

 

                (八尾市)水野一也

 

 もうこれで鳴らない電話を待たなくていい君にさよなら告げ

 

 た春

                (八幡浜市)大下まゆみ

 かつては「あらまた!さっき切ったばかりじゃない」と熱烈交信の日

々だったが、いつの間にか、鳴るのを待ちわびる日々に転じた。この春、

君にさよならを告げたので、しばらくは鳴らない電話を待つことはない。

 

 冷酒を真夜の厨に立ち飲めばかちりかちりと砂吐く蜆

 

              (日立市)加藤 宙

 

 頭が冴えて寝付けない。台所に行き冷酒の立ち飲みに及ぶ。

 

浅い鍋に水を張り、蜆を漬けて砂を吐かせている。蜆は二枚

 

帆を開き、その合間から水管に水を含ませピューと吹き出す時

 

に砂を随伴させる仕掛け。真夜の冷酒飲みの耳には「かちりか

 

ちり」と音がするという。新鮮な表現であることに当方も「か

 

ちり」と来た。

 

 

 唐突に進行性だと友は言い減らぬパスタと渇いた唇

 

                (千葉市)牧野弘子

 久しぶりに友に会う。食事でもとカフエに寄ると「進行性なの」と言

ったきり。運ばれてきたパスタも一向に減らず、生色の無い顔には渇い

た唇がやけに目立つ。慰めようがなく黙りこくる私。

 

 ★忠実に上司を守る部下の背に責任被せ呼び捨てにする                                             

            (高松市)島田章平

 

 生まれたる妹に母を貸すと言い兄となりし子は野へ

 駆けてゆく        (福島市)高橋啓子

 それまでは美しい母の愛を独占して已まなかったが、妹が生まれてか

らというもの、そうもいかないことが追々判って来る。兄貴の貫禄を示

さざるを得ない瞬間でもあるが、野へ駆けて行く兄の心は傷心そのもの、

「妹は許せない」と咽び涙ぐんでいる。

 

 膝を病む子羊は群れに遅れつつ誘導犬に見守られ行く

 

           (ドイツ)ハルツォーク洋子

 

 ドイツの草原の牧羊風景の一が紹介されている。羊の群れに従いてゆ

 

くのがどうしても遅れがちになる膝を病む子羊。後になり、先になって

 

それを気遣う牧羊犬。弱者を気遣う健常者の存在を示すヨーロッパ社会

 

の気概が示されている。

 

 ★財務省の暗きニュースを読みし後野良に出て聴く

 囀るひばり     (伊那市)小林勝幸 

                  

 きのふまでその気配なく群れゐしに鴨は夜明けに北へ発ちた

 り            (ひたちなか市)篠原克彦

 渡りの鴨が日本での居留を終えて再び渡りに転ずる季節になる。

に住む日本人は、いつ頃旅立つのかと気になるらしい。日本へ

 昨日まで、何かと騒がしかった湖面が今朝はひっそりと静かだ。夜明

けに北へ渡りおった                   

 ★森友が諸共だった日の写真昭恵夫人の不覚の笑顔

           (下関市)牛島正行

 

 ケンカした朝はそれぞれ犬にだけ声かけをして職場に向かう

           (佐渡市)藍原秋子

 共働きの二人。昨夜ケンカをしたようだ。家を出るときに、どちらも

犬にだけは声をかけてそれぞれの職場にでかけた。帰りにはどちらも

「お帰り、ただいま」がもどっていることだろう。

                                       

 石垣はコンクリートで固められもう何年も蛇を見てない

             (西宮市)佐竹由利子

 俳句の世界では冬と春の季の季語として「蛇」が欠かせない。短歌の

世界では季語のきまりがないので、蛇が登場することは少ない。昔の垣

根は玉石小積から今やコンクリート固めへ変化しているので、蛇が潜り

込む穴が少なく、春時、蛇を見かけることが少なくなった、とぼやいて

いる。

 

 キラキラが並び入学待つ名簿「子」の付く子ついにゼロと

 なる春          (鎌倉市)半場保子

 日本人の名前も、かつての太郎、花子に代表される昭和の名前の面影

いずこで、男女共に、キラキラ名が目立つようになり、特に今春入学を

待つ名簿から女子の名には「子」のつく子ついにゼロとなるという報告

である。

 

 ★参政権もたねど楷書で名を書けり改憲ノートの署名用紙に

 

             (大阪府)金 忠亀

 

   つづく  → NO.384-2

 

 

           (2018.5.15)

 

 

 

 

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                     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384-2 もつれ合いくるくる回る天狗蝶滝は光りてゆっくり落つる [文芸(短歌・俳句) 時事]


 

  想コラム「目を光らせて」NO.384-2「朝日歌壇・朝日俳壇から」

  歌壇 期間:2018.4.15~4.29

    もつれ合ひくるくる回る天狗蝶

       滝は光りてゆつくり落つる

 

   題 目:朝日新聞(2018.4.15

            (熊谷市)内野 修さんの入選作。

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酒井 健の水彩画 7-180406 Tulip

                       


                 アオウ ヒコ    

   朝日歌 20115       

5-IMG_1007.JPG

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                           

  あんなにも平和愛せし兜太氏が小林多喜二の忌に逝き給ふ                                                                 

                 (成田市)神郡一成

 早朝のラジオで、「今日は何の日」という短いお知らせを伝えている。

 

それに耳を傾けながら、「へえーそうか」などと追憶している自分がい

 

る。作者は兜太逝去の日と同じ日に身罷った有名人を探しているうち、

 

小林多喜二のそれに出くわした。反骨精神旺盛なところが共通している

 

な、と思ったのだろう。

               

 

 ★総理いかにと答弁迫る議員越しのけぞる議員目薬を注す

 

            登米市)菅原小夜子

 ★ちまちまと新聞記事の後追ひをする国会の野党ぞ悲し

 

            高松市)島田章平        

 ★戦争はそこに立ちおりその前に薔薇色をした絨毯敷くな

 

          (ひたちなか市)十亀弘史

 

 

 

 もつれあひくるくる回る天狗蝶滝は光りてゆっくり落つる

 

             (熊谷市)内野 修

 

 

 これは独立した二つの事象を単一な背景の中に、それぞれ異なった時

 

間の推移の中に見事にまとめている。2匹か3匹の天狗蝶がじゃれ合い

 

ながら、やや速度を上げてくるくると、一方の滝は光を受けながらゆっ

 

たりと落下してゆく。透徹した観察眼が生きる自然詠。

 

 

 

 つぼみには今年の春が入ってるハクモクレンの手のひらの中

             

            (奈良市)山添聖子

 

 成長したハクモクレンは比較的高い枝に花をつけるため、蕾だけが単

 

独でぼてりと墜ちることはまずない。だから、ハクモクレンの蕾を手の

 

平にする機会はほとんどない。もし、あるとすれば、強烈な霜に焼かれ

 

て、蕾も花も褐色に変じた春の朝であろうか。

 

 だが、その蕾は純白ではないから、その蕾に今年の春が詰まっている、

 

と感じることはなかろう。高枝切鋏の出番があれば別だが。

 

 

 定年のわれが泣かれてハグされて「先生細い」と笑われて

 

 いる

            (佐渡市)藍原秋子

 

 

 お仕事一途に勤められて、お仲間に愛されて定年の祝いの日が来た。

 

お仲間に祝われて、泣かされて、ハグされて、挙句の果てに「先生細い

 

よ」で皆の哄笑が来た。あゝこの和気藹々。みなさんどうもありがとう。

 

 

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                               

      朝日歌壇 2018.4.22

 

            

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  浪人しようやくむかえた入学式敬語で話す同級生おり

 

            (東大阪市)大野聖子

 

 

 同期の桜であるはずなのに、私の貌に浪々の色漂うのを聡くも感じた

 

のか、入学式の顔合わせの時、私は敬語をもって話かけられた。現役パ

 

リパリで入学してきた秀才女が放つ、極上のオーラ、差別語であったか

 

もしれず、当方にっこりとこれを受容。「ああ、あなたに会えてほんと

 

によかった。これに勝る幸せはありません。」

 

 

 ★妻に代わり答える首相のアップ見る「女性の活躍」どこか

 

 空しく

             (浜松市)古橋妙子

 

 

 川堤おほふ菜の花四、五本を摘みて川守り地蔵に供ふ

 

            (ひたちなか市)篠原克彦

 

 川堤を被ういちめんなのはなを四,五本摘んで川守地蔵にお供えしま

 

した。洪水が堤を越えませぬように、川に流されたときは、しっかりお

 

助けめされるように。なにしろ、私は飛び切りの金槌野郎でありますか

 

らに、どうぞ末永くお忘れなくと。

 

                 

   ★森友・加計があれども支持率四十で何か怖いなこんな日本

 

               (徳島県)一宮一郎

 

 ★真相を語らぬ人と語らせぬ人たちがいて闇深くなる

                     

            (埼玉県)島村久夫

 

 ★国民を欺いてまで守りたいものについては誰も語らぬ

 

          (筑紫野市)二宮正博

  

 

 しゃがみこみ幼児は拾ふはな子亡き象舎の前に散りし花びら

 

           (三鷹市)増田テルヨ

 

 

 おばあちゃん、ここに象さんの花子がいたのよね。長いお鼻をぶら下

 

げた象さん、花子が。あの時も、桜の花が咲いていましたね。ちっとも

 

変わらずに桜がさいてる。あのときも、さくらの花びらを、こうしてし

 

ゃがんで拾っていましたね。 

                

 

  花びらののる天皇の背にそっとふれる皇后の春の指さき

 

            (安中市)鬼形輝雄

 

 

 東宮御所のさくらどき。お二人はさくら花散るお庭へ出て、目を細め

て歩ませらる。天皇の背広の肩に、いつしか桜のはなびら数片がひっ

りと載り、これに気づいた皇后は天皇に近づき、手を伸ばし、指が背

にそっと触れる。気付いた背の君が申される。「なにか付いている?」

「いえ、花びらがいくつか、すこし」「ふりかかっている」「ええ、重

くはないでしょうけれど」「猫背が受けているのか。じゃ、ぐっと背伸

びをしましょう」いつもながらの、あいあわれむ、にこやかなお二

散策。

      朝日歌壇 2018.4.29   

3-IMG_1005.JPG



  茶をたてて心鎮める武士のごと音無き風聴く初登攀まえ

 

              (アメリカ)大竹 博

 

 大事に臨むには心を鎮めるの儀式があらまほしいと。かつて出陣前の

 

武士は茶をたてた。高山への初登攀前のアルピニストは、耳を澄まし音

 

無き風を聞く。いずれも大事成就にとって欠かせぬ要諦である。

 

  花筏分け泳ぎゆくかいつぶり水尾はたちまち花びらに閉ず

 

          チエコ)クロウスカー美莎子

 

 

 花筏が湖面一杯を埋め、鳥やボートが落ちた桜花びらで埋め尽くされ

 

る場所と言えば、東京で言えば、千鳥ヶ淵公園のボート場であろうか。

 

チエコにもこの同等の景色が見られる湖はどこかと詮索するよりも、チ

 

エコ在住の作者がこの4月、日本を訪れてこの歌を詠んだ、とする方が

 

早いようだ。

 

 

 女児の名にその一文字を与えたき〈梨〉の花咲く真白に

 

 ましろに        

            (さいたま市)伊達裕子

 

 

 漢字、特定な思い入れのある字。その極は自らの児や子の名にその字

 

を使いたいとするようだ。ここでは〈梨〉の字への思い入れがいっぱい。

 

 

 ★善人の沈黙それが最大の悲劇とキング牧師は言った

           

            (館山市)吉良康矢

  

 ★忖度の次は改竄隠蔽と画数ふえて闇深まりぬ 

           

            (横須賀市)小知和弘子

 

 

 

 伊那節を歌ふがごとく権兵衛峠を越えさりゆけば花の木曽谷

 

             長野県千葉俊彦

 

 地元の地名、愛着のある場所への限りない愛好はとどめなしである。

 

古くから歌われている伊那節を口ずさみながら権兵衛峠を越えれば花

 

いっぱいの木曽谷にさしかかる。

 

  

 ものを食う児らの優しさ愛しさを見ており入学初日の朝餉

 

              伊那市小林勝幸

 

 結婚から出産、幼児の成長は小学校への入学で一区切りがつく。入学

 

初日の朝食の膳で食事をする子等の優しさ愛しさを目を細めて見ている。

              

 

 ★「七年がすぎたのですね」「七年も続いているのです」

 

  積む廃棄物

           (横浜市)細野八重子

 

             (2018.5.15)       

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 


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383 白梅に我が慟哭や兜太逝く [文芸(短歌・俳句) 時事]

   

   随想コラム「目を光らせて」NO.383朝日歌壇・朝日俳壇

 

      俳壇 期間 2018.3.5~3.26

 

 

           白梅に我が慟哭や兜太逝く

   

      題 : 

      朝日新聞 201.3.19 船橋市)斉木直哉 作

              アオウ ヒコ

 

41-DSC_0025.JPG

      洋画家 青沼茜雲 画伯 の作品集から。 46.

                  「桜と富士と万葉の歌」

         ・イギリス王立美術院名誉会員

         ・フランス・サロン・ド・トンヌ会員

                  ・ノーベル ノルウエー財団認定作家

                      ・世界芸術遺産認定作家日展所属

                   

       「朝日歌壇・朝日俳壇から

 去る一月、俳人金子兜太が朝日俳壇の選者の労に堪えられずとなり入

が伝えられるや、その快癒を願う投稿が朝日に殺到した。だがその願

いは叶わず、薬石効なく、兜太は秩父の狼群の悲痛な遠吠えを耳にしな

がらの幽冥入りとなる。つづく二月、三月と朝日の歌壇・俳壇は兜太惜

別のうねりに包まれ、大きく揺さぶられた。特にトップ選者を永年務め

てきた朝日俳壇の三月は兜太惜別の追悼句特集とも言える趣を示した。

 本稿もこの三月の朝日俳壇(NO.383)が計らずも金子兜太追悼

句に溢れる場となった。特に2018.3.19の朝日俳壇には朝日俳

壇を支える俳人諸子による兜太追悼句のあらましが掬われて並び、後年

後日、改めてこの号を繙けば、あゝこの時季、兜太死せりかと追憶の情

ほとばしり已まぬとなるであろう。

                

 作品の頭に印が付いている作品は、の政権が推進る前のめり

 

傾化路線平和憲法を無視し国会の存在をないがしろにするさまを危

 

惧する市民の投稿になるものである。このところ国会では財務省による

 

公文書改竄を巡って、与野党の攻防が頂点に達し、通常なればのつ

 

いた慷慨的作品に満ち溢れたことであろうが、本号では兜太逝去に押さ

 

れてそこまでは手が回らなかったようだ。しかし本号に先立つ朝日俳壇

 

(2月19日)には既に下記の追悼句が投稿されていた。

 

 

 冴え返れ兜太戦後を終はらすな 鹿児島市)青野迦葉 (兜太追憶句)

 

 作品の頭に印が付いている作品は、投稿者の真摯な叫びに読者の耳、

 

素直に従うべしとしてコメントはつけておません。

 

 また、文中敬称は省略しております。(筆者)



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    朝日俳壇 2018.3.5

                      

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    爛漫へ梅一輪の序曲かな

           (枚方市)中嶋陽太

 何事も嚆矢をもって始まる。戦場では鳴り響く鏑矢によって、オーケ

 

ストラでは慎重きわまる指揮者のタクトの先端のそよぎによって。春爛

 

漫の梅林の喜悦も、先導役のこの梅一輪によって始まるのだ。

 

                                                                                                                                                                                                                                                                           

                                                 

   冬麗や一水流れつつ光る

 

         (熊本市)内藤悦子

 

 間もなく春を迎えようとする冬の川が、天から降るたっぷりの光を浴

 

びて流れながら光っておりますよ。なんと優れて美しい冬の眺めである

 

ことか。

 

 

 

   引き鴨に別れ馴染めぬ湖面かな

 

             (松戸市)をがわまなぶ

 

 先導役の鴨に、言い渡された。ここでおしまい、あとは自由にね。こ

 

れまでは、先生の言われるがままに従えばよかった。ありがたかった。

 

 さて、自由な湖面に放されて、食物も自由になさいな、といわれても

 

初めてのこの湖面なかなか馴染めぬことですわいな。

 

 

 

   紅の蕾に生るる梅真白

 

          (芦屋市)酒井湧水

 

 紅梅の場合は、蕾も開花しても紅色の花を付けるから、間違えること

 

はないが、白梅の場合は蕾の時に紅の表皮に包まれていることがあり、

 

開くにつれて純白の花に生まれ変わることがある。それだけに慈しみの

 

思いに駆られる。

 

 

 

   難問に挑む鉛筆冴え返る

 

          (神戸市)藤井啓子

 

 卒業試験や入学試験が行われる季節はまだ寒さがぶり返す早春の頃、

 

受験生は鉛筆をしっかりと握って難問に立ち向かう。

 

 

 

    暮れて又消したつもりの畦火見に

 

              (姫路市)西村正子

 

 農作業の折、畦で火を使った今日。消したつもりで家に戻ったが、本

 

当に消したかどうかを確かめにまた畦火の場所へ出かけた。丹念な農作

 

業の主であることよ。

 

 

 

    兜太選生涯四句温みたり   (東京都)金子文衛

 

                    (兜太追憶句)

 

 朝日俳壇に応募し続けた私の生涯。兜太先生に4句だけ、取り上げて

 

いただき入選した。いわば、血の温みがこの4句には通ったわけだった。

 

 

 

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       朝日俳壇 2018.3.12

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                                       ■

     三寒に萎えて四温に励まさる

 

            (吹田市)久留島信子

 

  今年の三寒四温は酷い格差でわれらを痛めつけた。酷い寒威の三寒、

 

漸くに緩んだかの四温、これが突拍子もなく高温となったことに救われ

 

た感があった。

 

 

 

   水温む日本託せる若人よ

 

          (神戸市)守岡喜惠子

 

 漸くに日本にも春がやってきましたね。これからの日本を託さねばな

 

らぬ若人たちよ、春夏秋冬を通して、確りと精進してやってくださいね。

 

お頼み申しますよ。

 

 

 

   菜の花を抱へ信濃へ帰りけり

 

            (塩尻市)古厩林生

 

 信濃はまだ冬だった。房総の海へ出かけたついでに、春の花、菜の

 

花の黄を見た。菜の花を抱えて信濃へ帰れば、一刻も早く春を信濃に齎

 

すかのように思えて。意気揚々と菜の花の切り花を抱えて。

 

 

 

   よちよちの出たがりの靴春の泥

 

            (日光市)土屋恵子

 

 新しい靴を履いて外に出掛けましてね、家に戻ったら春泥てやつを付

 

けておりました。

 

 

 

    たのむべき語り部の葬いぬふぐり

 

              (熊本市)今村榾火

 

 今は亡き石牟礼道子さんの追悼句。惜しい人を亡くした。路傍には犬

 

ふぐりの小さな空色の花が満開でした。

 

 

 

    いつもいつもこぼれてばかり雛あられ

 

              (下田市)森本幸平

 

 雛あられだけじゃありません。なんでもかんでも私の周りはぽろぽろ

 

と零れてばかりで、老いの行きつく先の致し方なき行状の数々。

 

 

 

   冴返る兜太の山河巨星墜つ

 

           (長野市)縣 展子

 

                兜太の追悼句)

 

 

    入試終る一家寛ぐ夕餉かな

 

          (いずみ市)近藤 遼

 

 入試を控えた子供を持つ家族は、数年かけての準備期間を通じて、ひ

 

っそりと静寂と栄養の補給に家族中の協調が期待されている。そして、

 

一旦入試が終われば、一家はほっと息をつき、その夕餉を寛ぐ、となる。

 

 

 

     つづく  → NO.383-2

 

 

       

                      (2018.5.1)

 

 

 

 

 

 

 


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383-2 俯瞰して紅白梅の谷浄土 [文芸(短歌・俳句) 時事]

                                                                                                                    

 随想コラム「目を光らせて」NO.383-「朝日歌壇・朝日俳壇

 

     俳壇 期間: 2018.3.19~3.26

 

 

 

      俯瞰して紅白梅の谷浄土

 

    

 *題 目: 朝日新聞 2018.3.19 (藤沢市)小田島美紀子

 

 

 

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            酒井 健の水彩画  2018 Mognolia

 

 

    

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     朝日俳壇 2018.3.19

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   白梅に我が慟哭や兜太逝く 

           (船橋市)斉木直哉

 肉親ならぬ人が死しても滅多に「慟哭」に及ぶことはないのが普通

だろう。だが、この作者の場合は、自らの作品の深奥を巡って兜太との

度々のやり取りと親身な指導を受け、心底からの私淑の関係にあったと

いう。ならば、白梅の咲く早春に、師とも仰ぐ人の死に「慟哭」が随伴

したとしてもおかしくない。さぞや無念であったことだろう。

 

    生き物の春よ兜太のこころざし 

          (長野県川上村)丸山志保                 

 春到るとともにすべての命が躍動する。兜太のいのちをつたえるかの

ように。(兜太追悼句)

 

    春の雪兜太を食べてしまいけり

                (一関市)高橋悦朗

 今年の雪は例になく深雪でした。その積雪も春が来てみるみる融けて

しまいましたが、兜太もいなくなりました。食べちまったのですかね。

                        (兜太追悼句)

    冷え切った朝刊兜太の選の無し

             (姫路市)山崎ゆみ子」

 例のごとく今朝も寒いうちに朝刊取りにでたのですが、兜太の選はあ

りません。唯一願いの私の名掬いもなく、寂しい朝でした。

                   (兜太追悼句)

 

    兜太逝きもう永遠に無き兜太選

          (千葉県東圧町)星 美愉

                    (兜太追悼句)

 

    雪富士の鮮烈白寿の兜太のようだ

             (交野市)西向 聡 

                  (兜太追悼句)

    三月や評も形見の兜太選

         (寝屋川市)木村美智子

               (兜太追悼句)

 

     梅しろし一句宝の兜太選

       (埼玉県上里町)吉野ミヨ子

               (兜太追悼句)

 

    幻の狼の来て兜太逝く

           (小諸市)小泉博夫

                (兜太追悼句)

                  

    梅の下兜太の青鮫集まれり

           (一宮市)岩田一男 

                (兜太追悼句)

 

    ラグビーのような生涯兜太逝く

             (横浜市)飯島幹也 

                  (兜太追悼句)

    兜太逝く狼の群引き連れて          

          (東京都)奥村喜代子 

               (兜太追悼句)

 

    雉子鳴くや兜太の系譜絶やすまじ

              (高岡市)野尻徹治

                  (兜太追悼句)

 

     突然に白寿の春を待たずして

            (大村市)小谷一夫

 本当に、卒然として逝かれてしまいました。もう少しで白寿の春が参

りましたのに。 (兜太追悼句)

                

     雛の間時間止まってをりにけり

             (岡山市)伴 明子

 ふと、雛を飾っていた座敷に、障子を引いて入ったのです。緋毛氈の

段飾りにそれぞれの雛たちが静かに座しておりました。その時、感じた

のです。雛の間の時間が止まっていたことを。人が見てやらねば、雛た

ちは華やげるいのちのかんばせで接してはくれないのだと。

 

     俯瞰して紅白梅の谷浄土

          (藤沢市)小田島美紀子

 城か山の高みから俯瞰して下の谷を見れば、紅梅白梅の林の谷がぼう

っと翳んで見える。あたかもあそこが浄土であるかのように。

 

     木の芽吹く森のささやき始まりし

              (福山市)信清愛子

 落葉樹は寒い冬の間、すべての葉を落として眠りにつく。春が来て

木の芽が動き始めると、とたんに森の囁きが始り、山は笑い始める。

  

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      朝日俳壇 2018.3.26

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    遠嶺の名残の雪や兜太見ゆ

              (岡崎市)沢 博史

                  (兜太追悼句)

 

    夜桜やふと異次元の客となり

            (武蔵野市)相坂 康

 さくら爛漫を夜も楽しもうと、照明を当てて夜桜にする趣向。どれど

れと夜桜の林に紛れ込むと、満開の桜に一面だけ光が当たり、裏の宵闇

が黒く 沈み込むからか、異次元の世界に迷い込んだ客の一人になりま

した。

                     

    火の匂ひ残る朝風お水取

          (枚方市)中嶋陽太

 昨夜は盛大な火の祭り、二月堂のお水が行われた。一夜明けた今日の

朝風には昨夜の火の匂いがまだ残っている。

 

    園丁のしばらく落花まかせてふ

             (相模原市)石田わたる

 園丁の仕事は庭園をきれいに整理し、清掃することにありで、目はい

つも、園内の汚れを除こうと忙しなく動いている。だが、桜の頃は桜の

落花の清掃をどうしたものかと、思わないでもない。さくらは落ちた花

びらはゴミだ、清掃の対象だとする清潔漢と、落ちた桜は美の対象よ、

そっと、そのままにとする風流漢の二つがいる。肝腎の園丁はどちらか

といえば「落花はそのままさくらに任せておきましょう」でしたよ。

                   

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    鳥の眼の鋭き気配地虫出づ 

           (岐阜市)花川和久

 そろそろ啓蟄の候か、時ならぬ鳥声が聞こえるのは即、鳥の眼の鋭い

気配を示す。そろそろ地虫が這い出してきた証左。

 

    福島を汚染土の山あざ笑ふ

          (福島縣伊達市)佐藤 茂

 

    春の虹すなわち兜太在る如し

            (秋田市)松井憲一 

                    (兜太追悼句)

 

    涅槃図に兜太の姿でんとあり

            (福岡県鞍手町)松野賢珠 

 今生における金子兜太は、俳諧の世界で、群れを抜く存在として認め

られたが、はて来世においてどうか、涅槃図のいずれに御座すと遠眼鏡

を駆使した賢珠菩薩あり。兜太先生の姿の寝姿、仏のそれに似て涅槃図

の中央にでんと在らしたぞ、と報告し来たる。(兜太追悼句)

 

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    春水を待ちゐし鯉や直進す

           (長岡市)内藤 孝

 河の水温が低い冬季には鯉は川の深淵に潜み、じっと動かずにいる。

筑後川で名を挙げた「鯉獲りのまあしゃん」は潜る前に焚火で身体を暖

め、漁舟を淵にこぎ寄せゆるりと潜る。淵には半ばまどろむ巨鯉が潜ん

でおり、まあしゃんはそろりと近づき、暖めた胸を近づけて鯉を抱くよ

うにする。鯉は自ら寄ってくる。それを抱きかかえるようにして急速浮

上、待ち舟に鯉を跳ね上げる。有名な久留米の鯉獲りまあしゃん物語。

 春になれば、鯉は深淵に潜むことはない。春水が流れ来れば、鯉は直

進一途、伸び伸びと。それ以外はなしである。

 

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                      (2018.5.1)


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382  ひとりづつ雛飾り行くわが裡に吾娘はいくども幼子となる* [文芸(短歌・俳句) 時事]

                                    

  随想コラム「目を光らせて」NO.382 「朝日歌壇・朝日俳壇から」

 

     歌壇  期間:20105~3.26

 

    

   ひとりづつ雛飾りゆくわが裡に

 

      吾娘はいくども幼子となる

 

  題 目:

  朝日新聞(2018.3.19)(福島市)新妻順子さんの入選作。

            アオウ ヒコ

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         画像:洋画家 青沼茜雲画伯の作品集から。                        

           45.「古代の雄 磐井 像」   

              フランス・サロン・ドトンヌ会員

   

              ノルウエー財団認定作家

       

                 世界芸術遺産認定作家

 

                 日展所属

 

 

 

       「朝日歌壇・朝日俳壇から」 

 朝日新聞の歌壇・俳壇の入選作の中から最近の事象を取上げた

作品を選び筆者コメントを付けています。コメントは文芸上

の範を越えることがあります。作品の頭に付い作品は

時の政権が推進す前のめりの右傾化路線や平和憲法を無視し

国会の存在をないがしろにするさまを危惧する市民の投稿作品

す。これらの作品は、ここでは個々の作品の文芸上の軽重を問う

ことなく、注目すべき最新話題の作品として、そのすべてを採録

しています。これらの作品に対しては、作者真摯な叫びに耳素

直に従うべし、としてコメントはつけておりません。

 また、文中敬称は省略しています。(筆者)

 

      朝日壇 2018.3.05   

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 すいれんの巻葉の紅に日は差して池の底にもうごめくいのち

 

     (松阪市)こやまはつみ

 

 花を愛してやまぬ人。地の上に咲く花だけでなく、水上に浮かぶ睡蓮

 

の巻葉の紅にも目を凝らす。春の日を感じているのだろう。池の底では

 

睡蓮のいのちが動き始めているようだ。

 

 

 相ともに握り合いたる日もありし妻の両の手組み合はされつ

 

        (長野県)  殿内英穂

 

 夫婦としての長い期間中にお互いに手を握り合って歩いたり、過した

 

りしたものだ。だが、妻に先立たれた今、妻の両手は胸の上で組み合わ

 

せられて静かに動かない。ああ、ともに手を握り合う日はもう来ない。

 

 

 あけぼのに一瞬煌めき迫り上がる氷の合掌諏訪湖御神渡り

 

         (碧南市)  鳥谷春江

 

 ここしばらくは暖冬のため諏訪湖の全面結氷は起こらず「御神渡り」

 

忘れられた感があった。しかしこの冬の厳寒は久しぶりに諏訪湖の

 

御神渡が報じられた。その現象を「氷の合掌」という表現を使った歌

 

に初めて出会った。 湖の氷の盛り上がり破裂の現場はもっと荒々し

 

いが、神事というのだから合掌で収斂させたというのであろう。

 

 

 何ごともなかったように日は昇り名護市長選報道される

 

       (横浜市)田中懬義

 

 

 不知火の海は水銀の毒に泣き石牟礼道子を喪いて哭く

 

          (三鷹市)  山室咲子

 

 

 滅びまでたった二分と予測する人類の知は賢く愚か 

                   

      (郡山市) 柴崎 茂

 

 

 捨て雪の山は春には消えてゆく春にも消えぬ核廃棄物

                    

      (村上市) 鈴木 正芳

 

 

 きさらぎの十日夕刊一面で和服に笑ふ石牟礼道子

                     

         (東京都) 荒井 整

 

 

   朝日壇 2018.3.12

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 ほんとうに使う気なんだ核兵器を扱いやすい大きさにする

                      

         (千葉市) 佐々俊男

 

 

 湯を注ぎ3分待っているうちに終末時計はあと2分という

 

      (新潟市) 太田千鶴子

 

 

 宰相の夫人の名前今日も読む電光ニュースにパートの帰り

 

         (所沢市) 若山 厳 

 

 

 

  中指と薬指との間から四回転の羽生を見る女

 

      (伊賀市) 上門善和

 フイギュア選手権に出た羽生選手を見ようと集まった観衆たち。彼の

 

四回転の成功と失敗は、嬉しさと恐ろしさの表裏一体。まともに見るの

 

は恐いから、目の前に指を二本翳してその隙間から着氷を見る女性フア

 

ンがいた。ご本人は羽生君を見ず、観客席を観ていたらしい。

 

 

 沖縄の嘆きは深く海濁り儒艮(ジュゴン)は去りて軍船来る

 

      (秋田市) 小松俊文

 

 

 

  人間が槍のごとくに飛んで行くスキージャンプは気を付

 

   をして    (大阪市) 小熊光子

 

 鋭角の斜度を持つ滑走路を腰を低めて滑降りるスキージャンプ。この

 

歌はそれから先を描写している。放たれた槍は高く風に乗せて、水平を

 

維持しながら、馭者は「気を付け」の姿勢を崩さずに着地を完成させる。

 

 

  雪積もり如月の空晴れ渡り雪吊縄のゆるみてうらら

 

     (金沢市)林 英一

 季節外れの雪が積もってはいるが、きさらぎの空は快晴、雪は解けて

 

雪吊縄も緩み、暖かい春の季節になりました。

 

 

 「のさり」とふ受容の言葉哀しけれ水俣に添ひ石牟礼さん

  逝く(さいたま市) 伊達裕子

 二月十日死去した石牟礼道子さんを悼む歌。水俣病を「のさり(天か

らの授かりもの)」として受容する被害者に寄り添ってきた作家。

 水俣病:有機水銀中毒による神経疾患。四肢の感覚障害・運動失調・

言語障害・視野狭窄」・ふるえなどを起こし重傷では死亡する。

 1953年~59年に水俣地方で工場廃液による有機水銀に汚染した魚介

類を食したことにより、集団的に発生した。(広辞苑)

 

 「ああ」という声のしばらく漂いて独り居なれば行き場失う            

     (名古屋市) 山西喜子

 永らくともに過ごした連れ合いが亡くなって、居る人が居ないことに

漸く気付くようになって「ああ」と嘆声を出すと、それは部屋に暫ら

漂い、その声を受け止める人がいないために収蔵する場所がありません。

  小型核開発目指す米国に遠き故郷長崎想ふ

 

     (鳥取市) 石井千代子

 

                 

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   「目を光らせて」NO.382「朝日歌壇・朝日俳壇から」

 

            つづく → NO.382-2                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                               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382-2 忘れたら君は二度死ぬ七年を供養のために拾う桜花 [文芸(短歌・俳句) 時事]

 

                           ■                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                               

                        朝日歌 201.319 

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  意味もなく泳げた夏は遥かなり常に乾かぬ友の胸板                                                              

      岐阜市)後藤 進     

  「泳ぎに行くかい」と友を誘えば「そうさな、行こう」と夏の川や

 

海へ出かけたものだ。あの夏はもうとっくの昔の思い出になってしまっ

 

た。しょっつう彼とは一緒だったから、彼の胸板は泳ぎの水でいつも濡

 

れていたことだった。

 

 

 四十余で隠居せし祖父の口癖は「捨てた命じゃ」インパー

  ル遥か (東京都) 斑山 羊

 

  兜太逝き今は秩父の狼と遊んでいるか歌っているか                                                

      (白井市) 毘舎利愛子

  これも金子兜太の逝去を悼む惜別の歌。明るい気分に満ちている。

   

 

  薔薇一輪挿され明るい玄関で門出といわれる退職の朝

 

      (東京都)青木公正

 

 長い間、ご苦労様でしたと、心からの感謝の印を告げて夫を送り出す

 

退職の朝。

 

 

  ひとりづつ雛飾りゆくわが裡に吾娘はいくども幼子となる

 

     (福島市)新妻順子

 

 段飾りの雛飾りを、ひとりづつ緋毛氈の段に飾ってゆく。そのたびに

 

当時の吾娘の姿が幼子の姿になって目の前に現れる。懐しい想いと共に。

 

 

                                

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  道端にたんぽぽひとつ咲いてゐて金子兜太の笑顔浮かべり

 

      (熊谷市)内野 修

 

 これも金子兜太の逝去を悼む惜別の歌。大きな黄色いタンポポの花が

 

金子兜太の笑顔を思い出させる。

 

 

  てのひらに春の光を掬ふとき迷い雪降るふたひらみひら

 

      (山形市)佐藤幹夫

 

 空から明るい春の光がさんさんと降り注ぐ中に分け入って掌にそれを

 

掬っている。その時、あろうことか、迷い雪が降りおりてきた。ふたつ

 

みっつ。

 

 

  ラバウルの野戦病舎の敷地にて父呼びたれば風立ち騒ぐ

 

      (高知市)佐野暎子

 

 

  やり場なき怒りかかえて兜太さんのあのプラカードと

 

   佇ちし夏の日

 

      (水戸市)中原千鶴子

 

 

 

  忘れたら君は二度死ぬ七年を供養のために拾う桜花

 

      (さくら市)大場公史

 

 まだ君を忘れてはいない。毎年その日のために供養の桜花を供え続け、

 

君はまだ僕のうちに生きている。それでも、もう七年が経つのか。だが、

 

君への供養をなしにすれば、君は確実に二度死んでいく。僕のもとから離

 

れて行ってしまう。ああ、それは出来ない。

 

 

 

             朝日歌壇 2018.3.26

 

                    

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 千年の楠芽吹きけりその樹下のこの町よりの戦死者の墓碑

 

     (沼津市)石川義倫

 

 

 先住民の土地を奪ひし末裔が国境に塀を築かんとする

 

     (横浜市)籾山 肇

 

 

  逢瀬橋、逢隈橋を風と渡り幼き吾に会いに行く春

 

      (福島市)美原凍子

 

 作者はまさかあのような原発事故に遭遇し、連れ合いを亡くす不幸に

 

苛まされてきたことだった。再び巡りくる春、福島に架かる懐かしい橋

 

の幾つかを渡り歩いて、幼年時代の自分に会いに出かけましょう、っと。

 

 

 

 先生に銃を携帯させようとう嘘か本当か本当の話

 

     (舞鶴市)吉富憲治

 

 

  仲たがひしたる姉妹とそれぞれの向きもちて咲く山茶花の

 

  花

 

     (茅ヶ崎市)若林禎子

 

 二つともそっくり、よく似ていますよ。というは、仲が悪くてどうしよ

 

うもない姉妹とツンツンいがみ合って自分勝手に咲く山茶花の花。全く似

 

たようなものですよ。

 

 

                                 

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  トラック島に蛙も蛇もいなければ蝙蝠焼いて食べたと兜太

 

      (前橋市)荻原葉月

 

 兜太さんは二次世界大戦で召集されて南洋へと向かう。軍部は兵は送

 

り込んでも、食料は十分に供給しなかったので、戦地の兵のほとんどが

 

食糧難の飢餓状態に陥り、手当たり次第に現地で虫や小動物を口にして

 

命を永らえざるをえなかった。公報は戦死であろうと、そのほとんどは

 

餓死によるものとされている。兜太さんの生命観や戦争を忌避する思い

 

の全てがこの異国の地での苦難に満ちたの日々の体験から、確固な信念

 

として定着している。

 

               

 

      (2018.4.15)

 

 

URL: http://columneye.blog.so-net.ne.jp/ 
   

 

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                  


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共通テーマ:日記・雑感

381 飾焚くとき楪(ゆずりは)のこぼれ落つ [文芸(短歌・俳句) 時事]

 

    随想コラム「目を光らせて」NO.381「朝日歌壇・朝日俳壇

 

 

      俳壇 期間 2018.2.4~2.26

 

 

             

              飾焚くとき楪のこぼれ落つ

 

 

 

       * : 

       朝日新聞 201.2.04堺市)吉田敦子作

              アオウ ヒコ

 

28-DSC_0038.JPG

    洋画家青沼茜雲 画伯 の作品集から。44.天空を行く磐井

 

イギリス王立美術院名誉会員 フランスサロン ド トンヌ会員

ノーベル ノルウエー財団認定作家 ・世界芸術遺産認定作家 日展所属

                   

       「朝日歌壇・朝日俳壇から

  朝日新聞の歌壇・俳壇の入選作の中から最新の世相を鋭く切り取った

 

 作品を新た選び、コメントを付けています。コメントは文芸上の範を

 

 超えることがあります。

 

  作品の頭に印が付いている作品は、時の政権が推進る前のめり

 

 右傾化路線平和憲法を無視し、国会の存在をないがしろにするさまを

 

 危惧する市民の投稿になるものです。

 

  これらの作品は、ここでは個々の作品の文芸上の軽重を問うことなく

 

 注目すべき最新の世相を凝縮した作品として、そのすべてを採録してい

 

 ます。これらの作品に対しては、投稿者の真摯な叫びに読者の耳、素直

 

 従うべしとして、コメントはつけておません。

 

  また、文中敬称は省略しております。(筆者)

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     朝日俳壇 2018

02-DSC_0426.JPG

                                

                                                                                                                                                                                                                                                                                                       

                                                          

   飾焚くとき楪のこぼれ落つ

 

             (堺市)吉田敦子

 

 正月飾りに用意した注連飾りの季が終ると、飾りを火にくべて(焼い

 

て)正月気分とお別れする日が来る。飾り焚く、である。しめ縄、裏白

 

橙(だいだい)などをまとめて裏庭でくべたとき、そのほとんどは乾燥

 

しているため、火付きがよく燃え上がるが、楪(ゆずりは)だけは一蓮

 

托生の燃焼をしなかった、という。楪は常緑高木。葉は長楕円形で厚く

 

暗緑色、新しい葉が成長してから古い葉が譲って落ちるので、橙と楪は

 

(一家代々譲る)の縁起物として欠かせない。

 

 さて、このお宅の「飾り焚き」の焔は他のものは軽く焼き尽くしたの

 

に、楪だけが仲間から零れ落ちた。これは何かの予兆であるのか。

 

「わが家は代々譲るがしっかり根付いている証拠として焼けずにしぶと

 

く残ったのよ」」安堵されるのであれば、これに勝る慶事はなしである

 

が、もし、注連飾りの具の面々が同時に燃え尽きなければ凶なり、とす

 

る言い伝えがあれば、ダイダイユズルの吉相に異変が生じる。

 

                                                                          

         

 

   恐竜の哀しみ鶴の目に残る

 

           (芦屋市)瀬戸幹三

 

 

 鶴の姿を遠くから見て、美しい均整の取れた肢体よな、と思うことは

 

あるが、個体の近くに近寄って鶴の目をしげしげと見詰めたことがない

 

ので、どういう眼を持っているのか、皆目見当がつかない。しかし「恐

 

竜の哀しみ鶴の目に残る」とあるから、大きく全天候型の機能を備えた

 

立派な目をしているのであろう。恐竜が栄えたジュラ紀(約一億四千年

 

前)始祖鳥が現れ、その系で鶴の祖先も姿を見せていただろう。突如と

 

して巨大な小惑星が隕石として地球に降り、古生代の動植物相に激変を

 

もたらした。恐竜の命は抹殺された。そのころ、始祖鳥から枝分かれ

 

て進化していた鶴の祖先は上空高く舞い上がり、命を永らえたが、そ

 

の時の恐竜の死屍累々の惨状を目に留めたことだろう。それ以来、鶴の

 

渡りを目にするとき、人はそれとなく鶴の代々記に思いを馳せるように

 

なる。あの惨事を目にした鶴は必ずやその記憶を自らの眼の記憶素子に

 

留め続け、以来、鶴の祖先の眼にはあの時の恐竜の哀しみを留めた遺伝

 

子が伝えられている、と信じているようだ。

 

 

                                    

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   立春や痩せて倒るる炭俵

 

       (大分県日出町)松鷹久子

 

 

 今年の冬はことのほか寒く、暖を取るために準備し戸外に立てておい

 

た炭俵がみるみる減り続け、痩せて終に倒れてしまうまでに。漸く春に

 

なり、助かりました。

 

 

 

   埋火のごと言ひかねてをりにけり

 

         (群馬県東吾妻町)酒井大岳

 

 

 まだ地方では、冬の朝には火鉢を出し、炭火を熾して火鉢に移し、真

 

中で灰に埋めて埋火とする習慣が残る。灰の中では埋もれ火は真っ赤に

 

なったままの静かな炭火として永持ちするが、一旦、灰を脇に寄せて埋

 

火に直接空気を当てたりすれば、本来の炭火の勢いを盛り返してくる。

 

 

 このごろ、私は外見では、言い出したいことを言わないでいるので物

 

静かそのものだと見られているが、本当は埋火のように、きっかけがあ

 

れば、ばあっと燃え上がるのを待っているのだ。亡くなった妻に対して

 

も、ぐっと抑えている自分がいる、と思うことがある。

 

 

 

   一湾の底の底まで初凪に

 

        (泉大津市)多田羅紀子

 

 

 正月の朝。近くの海へ出た。大洋からは隔絶した一湾の海は無風とあ

 

って、鏡のような凪でそよともしない。これじゃ海面から海底の底まで

 

海水すべてが動かないように思える。初凪である。大洋の海ではこうは

 

いくまい。

  

  

 

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    朝日俳壇 2018.2.12

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   大海の雄叫び浪の花と化す

 

          (浜田市)田中由紀子

 

 

 大海が深海の總エネルギーを巻き上げてまでして咆哮し、陸地の岩場

 

めがけて殺到する時、大海の雄叫びは細かく千切れて泡となり、おりか

 

らの北風に乗って飛ばされ、岩礁に咲く浪の花となる。

 

 

 

   熱燗や昭和を語る者ばかり

 

          (一宮市)岩田一男

 

 

 昭和10年と11年生まれが同窓だった九州K市のM高卒の男女が中心

 

に、東京に出て大学を経て、それぞれに実業をこなし、今は目出度くリ

 

タイアーの身。細る命をお互いに鼓舞しつつ、八十の冥途坂をどうやら

 

歩ける身体能力で東京銀座のライオン本店に出かけ、月一度の「竜胆

 

会」を重ねている。ライオンはサッポロビールを主に酒食を提供するが

 

10年ほど前に比較すると、この会は豪快にビールを呷る姿が細り、ア

 

ルコールだめ、ノンの字がつく似非ビールならウイよの諸子が増えた。

 

 

 暫らくは赤ワインも飲まれていたが、は藷焼酎のロックが主役。話

 

題は病気にまつわる報告が済むと、談論風発に移行。葉室麟への惜別、

 

競馬の魅力、サブちゃんの優勝馬の種付け相場、惜別の金子兜太の兜太

 

何て読む? 日経にも俳句欄があるが朝日のレベルが高いようだな。

 

三月の清瀬稲門会のオペラ鑑賞会、ジュリエットがロメオを待つベラン

 

ダの地上からの距離の低さよ。手をチョイと伸ばせば手が届く、あんな

 

バルニーはないやね。つい最近まで、冷酒専門に飲んでいた野郎

 

「熱燗」を注文、盃を4、5個申し付けての配布。「この頃急に熱燗の

 

良さが判ってね。あの冷酒専門時代が何だったか、という気分だよ」と

 

言い訳する。その時、ふと思う。一宮市の俳人、岩田さんが「熱燗や昭

 

和を語る者ばかり」と詠んでいたよなあ。ほら、ここに集まる十人余、

 

熱燗飲みつつ昭和を語りおるのう。

 

 

 

   憶念の凝り固まれる海鼠かな

 

           (東京都)望月清彦

 

 

 海から揚がったばかりの海鼠の姿を見ての謂いか、刃で細かく捌いた

 

刺身状の海鼠を口にしての感覚を句にしたものか。憶念;深く心中に銘

 

記して忘れぬ考え(広辞苑)という言葉を寄り添わして海鼠の身の引き

 

締まった姿を描いている。酢醤油でナマコを食するときのじんわりと固

 

い深い感覚を現して出色。

 

 

                                   

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   秩父には狼・兜太山笑ふ

 

        (八王子市)北野妙子

 

 

 秩父には俳句の雄、狼と称される兜太先生がいた。春になりましたよ。

 

 

 

 

   屠蘇祝ぎて八十路峠を越えゆかむ

 

             (大津市)井上孝夫

 

 

 正月の料理も、主婦が手料理で時間をかけて揃える姿が、次第に減っ

 

て、数か月前に注文した「おせち重」の配送に依存するようになった。

 

また、屠蘇散を清酒に浸した「お屠蘇」を準備する家庭もめっきり減

 

ったようだ。

 

 正月に家へ来た孫たちには「屠蘇儀式」は不評だった。「辛い!」な

 

どとぬかしおった。連綿と続いた屠蘇文化も、それを支える世代の退潮

 

と共に、そろそろ終束に向かうようでもある。命ある限り、年の初めに

 

は屠蘇祝ぎを忘れず八十路峠を踏み越えて行く気概を持つ青年よ。いつ

 

までもお達者で。

 

 

                 

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    (つづく → NO.381-2.)

 

 

              (2018.4.01)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                                                                                                                                                                         


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381-2 もしや͡兒等来るかも知れず雛飾る [文芸(短歌・俳句) 時事]

    随想コラム「目を光らせて」NO.381-2 朝日歌壇・朝日俳壇 



 

    俳壇:もしや兒等くるかも知れず雛飾る

 

                 (津市)森川はづき

 

 

                                                                                                                                                                                                

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   朝日俳壇 2018.2.19

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  美しく消ゆるは難し残る雪 

          (東京都)徳竹邦夫

 滅多に降らない雪。東京などでは初雪の白が降り始めると、歓迎の思

いに駆られる。白く、美しい。特に、子供や、アジア諸国からの観光客

の目には歓喜の声が上がる。東北や北海道の雪国の住民は雪害に悩み続

けているため、怨嗟の情著しい。狭山でも今冬23センチの積雪があっ

た。美しい雪に目を細めたが、なかなか融けず黝ずんだ雪があちこちに

残った。確かに、美しく降って美しく消えるとはなかなか思うようには

いかない。

 

  会ふ人もどんどの尉を髪にのせ 

           (町田市)村井田貞子

 どこかで大型のドンド焼が行なわれているようだ。冬の去るのを惜し

むかのように行われるドンド焼は、次にやって来る春の魁でもある。

 よし私も行ってみようと出かけたが、既に帰路にある人の髪にはどん

ど焼に参加した証しの「尉」を載せている。(註)「尉」(じょう)と

読む。;炭火の白い灰になったもの。(広辞苑)

 ドンドの火が豪勢に高く舞い上がり、正月の縁起物や何かが炎に焼か

れて燃え上がり、その後周りに落下する。取り巻く観衆の髪の上に落下

したものは打ち払わずにいるのが邪気を寄せ付けぬ縁起物であるのかも。

 

 憲法をつつき回すや寒鴉 

         (筑紫野市)二宮正博

 

  枯れゆくか腐りゆくのか日向ぼこ

             (いわき市)馬目 空

 まあ、そこまで自嘲気味に言うことはなかろう、ではあるが、確かに

日向ぼこは残る命の時間を快適さと引き換えに消滅し続けているには違

いない。新しい人生への転生などには結びつく時間の流れではないこと

は確かだ。  

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   兜太選紙面に探す寒の朝

          (横浜市)下島章樹 

 兜太選の入選者に自分が選ばれているかもしれぬと、朝日俳壇の誌

面を探したころの懐かしさ。生きておられればなあ、とする惜別の句で

あろう。(2018.2.26)の日付で上記の句とほとんど同様な句

の入選作あり。 ■  立春や兜太の選を待つ朝

                (安来市)祖田敞至

 

  争うて息白きこと悲しけれ

         (玉野市)勝村 博 

  本号では、冬の寒気厳しい中にいると、人は息をするたびに白い

息を出すことを中心にした句が奇しくも揃った。ここでは冬の寒気の中

で、争うて白い息を吐くなぞ、これは悲しいね、と言っている。

 

  冴え返れ兜太戦後を終はらすな

          (鹿児島市)青野迦葉

 これも兜太追憶の惜別の句。兜太さん、死んだとは思っていません。

戦後の政治の紊乱、傲慢を嘆き、追及に心したあなたの日々の継承と継

続を忘れるな、としている。心酔するあまり、叱咤調になった。

 

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  蝋梅を月の滴と思ひけり

        (岡山市)和田大義

 早咲きの梅花とほぼ同じ時期に蝋梅は咲く。ほぼ円形の円く整った薄

い黄の花がしっとりと花開く。あれは天から降った月の滴ですと思う。

 

   はこべ摘む戦後の飢を子に語り

            (大阪市)田島もり

 はこべは春の七草の一。鳥の餌または人の食用に、利尿剤にも。はこ

べ摘みに野へでかけ、戦後、食べるものが不足するという食料危機があ

ってね、飢えに瀕したことを子供に言って聞かせました。今は考えられ

ぬことですが、長い人生、何が起きるかわかりません。飢えたときに何

が食べられるかを知っておくことも大切ですよ、と。 

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      朝日俳壇 2018.2.26

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    美しや働く人の息白し

         (戸田市)蜂巣厚子

 冬の寒気の中で生きていく人の姿。その人々がそれぞれの態様で白い

息を吐く。美しくもあれば、醜くくもありで、息に変わりはないけれど

である。

 

    もしや兒等来るかも知れず雛飾る

              (津市)森川はづき

 来るかも、来ないかも。実家のお雛様を見に。どちらでもいい。来て

くれれば嬉しいし、来なければ、ちょっとがっかり。忙しいことだろう

しね。家ではこの季節には私のために雛飾りをするのよ。

 

  軍手いまも死語とはならず余寒かな

            (みよし市)稲垣 長

 粗末な綿系の繊維を材料にして編んだ手袋。昔の兵隊に支給されたこ

とから「軍手」というのか。今もスーパーでは20対を300円程度で使

い捨てとして売っている。庭仕事や野良、山、海その他あらゆる軽作業

の際、手指を守るのに欠かせない。冬には防寒用の手袋として使う人も

いる。しかし、軍手とはよくも言ったものである。

 

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  柚子風呂に心の修羅を沈めけり

           (東京都)有賀三奈子

  冬の寒さの中、一日をせかせかと働き詰めると、身も心もささくれ

出して、気持ちも荒れてすさんだ状態になる。こうした日の夕べか夜に

柚子を浮かべた風呂に浸かれば、ほっと心が安らいで、心の修羅が癒さ

れていく。

   猫柳壷中の命惚けたる 

        (姫路市)黒田千賀子

 銀の和毛に包まれて光る猫柳の枝を伐り、花瓶に挿して数日。しなや

かな銀の苞はいつのまにか、輝きを失い、はらりとほどけて初々しさを

なくしている。

 

  一握に百の命の種を蒔く

        (大阪市)田島もり

 春が来れば、ありとあらゆる草木の種蒔きの季来たるである。春蒔く

種を一握りすれば、「ああ、私はここに一握百の命を持つ。これから命

を蒔いてやらねば。」 

  

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  音といふ音封じ込め雪の朝

         (高松市)桑内 繭 

 今朝はばかに静かじゃないか、もしかしたら、と雨戸を繰れば、案の

定、外は銀世界、という経験をお持ちでは。やはり雪だったか、である。

 昔、英語で雪は音をマッフルmuffleする(消す、包み込む)と習った

ことを思い出す。首に巻くマフラーも車のエンジンのマフラーも何かを

緩和している。            

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          (2018.4.01)

                                                                                                                                                                                         



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380  泣かぬだけなお悲しきは少年の背負う弟死者なればなり [文芸(短歌・俳句) 時事]

 

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  随想コラム「目を光らせて」NO.380 朝日歌壇朝日俳壇」から

     歌壇 期 間 2018.2.04~ 2.26

  

  泣かぬだけなお悲しきは少年の背負う弟

   死者なればなり

     目

    朝日新聞 2018.2.19 (佐賀県)白武留康 作

 

              アオウ ヒコ

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  洋画家 青沼茜雲画伯  作品集から 43.「八女津媛」

        イギリス王立美術院名誉会員

        フランスサロン・・トンヌ会員

        ノーベルノルウエー財団認定作家     

        世界芸術遺産認定作家

        日展所属

                   

       「朝日歌壇・朝日俳壇から」 

 朝日新聞の歌壇・俳壇の入選作の中から最新の世相を鋭く切り取った

 作品を新た選び、コメントを付けています。コメントは文芸上の範

 を超えることがあります。

 作品の頭に印が付いている作品は、時の政権が推進る前のめり

 右傾化路線平和憲法を無視し、国会の存在をないがしろにするさま

 を危惧する市民の投稿になるものです。これらの作品は、ここでは個

 々の作品の文芸上の軽重を問うことなく、注目すべき最新の世相を凝

 縮した作品として、そのすべてを採録しています。 

  これらの作品に対しては、投稿者の真摯な叫びに読者の耳、素直に

 従うべしとして、コメントはつけておません。

  また、文中敬称は省略しております。(筆者

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    朝日歌 2018

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              蕗の薹                                                                                                                                                                 

 岩国の友は嘆けり米軍のための道路が出来タヌキ来と

             三原市岡田独甫

  アイライン引いてすずしい目元です笹啼きを追い垣を

   覗けば       松坂市)こやまはつみ

 鶯の初音がそろそろ、と思うまだ冬のある日、鶯のまだ整わぬ鳴き音

を耳にした。ジエッともジュッとも聞こえる、ちょうど人が何か気に入

時に舌先で、低く短く鳴らす「舌打」に似た撥音である。昔から日本の

風流人は鶯の初鳴きを「笹啼き」とも称し、珍重したものだ。鶯の完成

した啼き音とは程遠い未熟な音なのだが、この過程を経ないと成鳥のホ

ーホケキョの美声に到達できない。人は完成されたウグイスの啼き音を

称えるが、それに至る修練過程の笹啼きをも珍重し、何処で啼いている

かを確かめに近くの笹薮へ出かけたりする。作者も笹啼きをキャッチす

るなり、家の裏へ飛び出し笹啼きの鶯の姿を見つけようと目を凝らす。

 垣の向こうに、いましたねえ。円い目のまわりにアイラインを入れた

涼しい目元をした笹啼きの主が。

 私の一票が役に立てるなら行きて投じたし名護市長選          

             所沢市)風谷 螢

 ホスピスに友を見舞えば「待ってて」とアイスクリーム

 を買ひきて呉るる      

                           (横浜市) 坪沼 稔

  病を得た友人がホスピスにいる。見舞おうとするが、さて、どうい

う話題を持って行ったものかと、事前に三つ四つ考えていった。確かに

普通の病気見舞いとは違うから、それなりの配慮をしたこともあり、友

はことのほか喜んでくれた。「ちょっと待ってて」とにこやかにいうな

り、部屋から出て行きアイスクリームを手にして戻り「一緒に食べよう」

となった。氷菓を舐め舐め、二人で楽しい話題に興じた。「また来るよ」

彼は言った。「今日は楽しかった。ありがとう。一期一会をありがとう」

にこやかに固い握手。じゃ。                 

 新聞の紙子のぬくみを語りたる祖母を思えり雪の降る夜

              石川県瀧上裕幸

 今は防寒具も選り取り見取り、厳寒の極地やアルプスに行こうとも、

それなりの準備をしていけば、寒さに震えることはない。だが戦前の、

あるいはもっと昔には厳冬を過ごすに十分な衣類がなく、あれこれと苦

心したようだ。その一つに紙子がある。紙製の衣服である。紙子;厚紙

に柿渋を引き、乾かしたものを揉みやわらげ、露に曝して渋の匂いを取

って作った保温用の衣服。もとは律宗の僧が用いたが、のちには一般に

も用いられ、元禄の頃には遊里などでも流行した。(広辞苑)

 冬の防寒着に悩んだ日本民族が紙に柿渋を塗ってまでして作り上げた

紙子。それがフアッションにまでなった歴史を持つとは。

「おい、山に登って寒い時には、新聞紙一枚シャツの上に挟めば、相当

な効果があるぞ」と話してくれた父を思い出す。作者の祖母も同じこと

を言っている。紙子を新聞紙で作れ、とは言っていないようだ。

 

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   アザレア

  鷹匠の少女は父に伴われしんとしづかにその時をまつ

                     川崎市宇藤あおい

 おそらく鷹匠の父に伴われて、この鷹匠の少女は鷹狩の場へやってき

たに違いない。少女の腕を止まり木にして鷹が静かに止まっている。鷹

狩を前に、放鳥を待つしじまを歌う。少女の澄んだ目、鷹の鋭い眼、少

女を見守る慈愛に満ちた父の目。

 

  瞑れば天にとどけと耕しし半島のしろき冬畑の見ゆ

                    東京都)松本知子

 私の一生といえば、半島の斜面の原野を上へ上へと耕し続けたこと以

外にはない。今は立派な耕地となってわがものになっている。目を瞑れ

ばその冬畑が雪を冠ぶって白く見えてくる。これまでに至る懸命の開墾

作業の日々と私のいのちの日々が。

  鳥海山の裾野に橇を曳く馬の背に湯気立ち春が近づく

              (春日部市)阿部 功

 厳冬の期間中であれば、馬の背に湯気が立つことはなかった。だが、

ふと気づけば、橇を引く馬の背に湯気立ち昇る見ゆ、じゃないか。あゝ

春が近い。

  戦止まぬ国へと日輪めぐりゆき山の端暗き夕焼け残る

                 (八王子市)原田なつ子

 この地球どこかで人の命を奪う戦争が絶えず行なわれている。なぜに

そのような諍いが起きるのか。毎日、太陽は同じように日の出から日没

を繰り返している。私が住む地球のここでは、今、山の端が陰り、少し

夕焼けが残っている。なんという人の性。傍観していていいのか。

  七年の避難生活、借り上げの二間の物の隙間に辛く生く

                     いわき市)守岡和之

 

  新幹線トンネル抜けてただならぬ雪しまく野の奥へ奥へと

              (平塚市)石川桃瑪

 東北地方にも新幹線が開通して、冬季には雪の中を突っ走る姿が見られ

るようになった。一号車の先頭に座席を占めて、吹雪の中の突っ走りを体

感している。こんなにも雪しまく野の中へ走り込んで大丈夫ですかねと。

                     

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       朝日歌 201812

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                               まんさく

  えらそうな口の利き方する人はえらいんじゃなく

    えらそうなだけ       

                            (堺市)一条智美

 

  赤子抱き訪ね来し嫁はお母さん猫は土足ですよねと聞きぬ

               横浜市)小山房枝

 赤子は清潔な環境で育てねばなりません。不潔なものを部屋に入れた

りすることは困ります。という子育てのモットーを嫁はやんわりと母へ

申したことだった。それを聞いて双方の展開がどうなったか。

母;「猫は清潔だから、家へ入る時は足を舐めて綺麗にするから大丈夫」

嫁;「お母さんは孫が病気になっても構わぬ、とおっしゃるのね」

 この二つの主張が行きつくところ、不毛の極であることを、聡くも感

じ取った母はしかるべき処置を取らざるを得なかった、ようだ。

 

穏やかな住みたい街」に選ばれぬ伊方のリスク

   識らぬ人らに         (松山市)宇和上 正

 

  未練なく放って子らは巣立ちたり筆箱、マフラー、

   漫画、木刀        

                            (宗像市)巻 桔梗

 今の若者は巣立つに当たって、このようなやり方をするものか。放任

自在に育てた親の貌が見たいものだが、親は決して、怒ったりはしてい

ないようだ。却って残されたものに付随する思い出の片鱗を甘受し慈し

んでいる気配が濃厚。「まあ、そのうち、やってくるでしょうから」と

鷹揚なものである。

 

  水仙の丘に登れば風荒び軍艦島に白波高し

              小城市)福地由親

 嘗てこの孤島には鉱業関係の企業が立地し、高層団地が作ら

れ多くの住民が生活した。経済環境が変わると共に住民は去り

無人島に変貌した歴史を持つ。とおく水仙の丘から眺める軍艦

島は風が吹き荒れ白波が立っている。

                 

  ひっそりと君を抱けばセーターの編み込みビーズの

   冷たい拒絶      

                           (横浜市)岡田紀子

 この歌は不思議な歌。両性のいづれが歌っても成立するが、作者はど

うも女性らしい。み込みビーズのセーターを着用するのは男か女か。ど

ちらもありうるとなれば、冷たい拒絶に遭うのは両性のいずれもありう

る。両性ジェンダーが同じく両性ジェンダーの君を抱けばとなれば、こ

れまた不思議な拒絶に遭うらしく、より複雑な展開を考えねばならぬのか。

 

  「朽人」とふ由来悲しき口太山姥捨て伝説秘めて雪降る

             (高松市)島田章平

 「姨捨山」伝説は日本古来の悲しい物語。朽ちる人を言う「朽人」の

名負う口太山は朽ちた人を捨てに行く山との伝説を担う。ああ、その山

に雪が降る。人が居れば、嗚呼さぞや寒かろう、である。

                                          

 〈焼き場に立つ少年〉は歯を食いしばる耐えて堪えて

   生きるしかなかった  

                          (長岡京市)田原モト子

 米国のトルーマン大統領が命令した広島への原爆投下。核爆発の閃光

と共に広島住民は瞬時に焼け爛れて、大多数の市民が死に絶えた。米

関係機関による、原爆投下後の広島の惨状撮影の中に、小さな弟の亡

を負ぶって火葬場の端にスックと立つ少年の写真が〈焼き場に立つ少

年〉と題して公開され、全世界にショックを与えた。

 この歌はその少年の思いを歌にした。(弟は死んだ。僕は生き延びた。

まずは背の弟を焼いてあげねば。そのために順をまたねば!)その心を

思いやる歌である。

 広島を訪いしアイキャンの代表と会ふこともなし日本の

   首相        (牛久市)伊藤夏江

 

  情深き人となりけり若き日に我悩ませし子にてありしが

              (東京都)寺田知子

 情深い人とは具体的に何を指すのだろう。おそらく、歳老いた母が入

居した老人の家へ足繁く通い詰めてくれているのを指すのだろう。あり

がとう。今は若い日に母を悩ませた子ではありません。

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             朝日歌壇 2018.19

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     アザレア

 墨を磨るときにほのかに流れくる香りはしんと秘密めきたり

             奈良市)山添聖子

 書道を能くする人には覚えがあることだろう。ほのかに流れてくる墨

の香り。その香りは決して華々しくも肉感的でもない。しんと静まって

、知覚しうる人にだけそっと届けてくれる秘密めくかほりちゃん。

 

 米軍のヘリの脅威が北朝鮮のミサイルよりも恐い沖縄

             (三郷市)木村義煕

 かんじきを履いて跡追う雪原を腹を滑らせ猪泳ぐ

              新潟県涌井武徳

 猪追いのかんじきマタギの腕を知ればこそ、獰猛の猪は逃げる逃げる

白い広い雪原を腹を滑らすようにして逃げまくる。

 

 十津川村の雪は山々降り隠すひと来た跡もひとゆく先も

               (生駒市)辻岡瑛雄

 一度来てみやしゃんせ十津川村の雪の深さ。スケールが違うでしょ。

いくつもの山を降り隠し、人の動きの何もかも跡の全てを消して行く。

 

「アベ政治を許さない」人病みたまうアベ政治なお続く厳冬

              水戸市)中原千絵子

  兜太選休みの月曜ものたりぬ木の芽ふくらむ春待ち遠し

                倉吉市)谷本邦子

  兜太選がない月曜はさびしくものたりません。快癒されての春の

まちどおしいこと。              

 *泣かぬだけなお悲しきは少年の脊負う弟死者なればなり

             (佐賀県)白武留康

 本欄前掲:2月12日。〈焼き場に立つ少年〉を歌う別の作品。

  かの少年へ。あの写真を見て私が悲しいのは、あなたが泣かずに毅

然として立っている姿を見たからですが、もっと悲しいのはあなたが背

負っている弟さんが既に死んでいるからです。なんと痛ましいことかと。

 おしゃべりをしながら人は決めている話せることと

  話さないこと     (堺市)一條智美

 これはすべからく人体の脳の働き、仕組みのすばらしさ以外にない。

いかに早く会話しようと、この決りを逸脱することがない、というのが

本来の脳が持つ機能であるが、それは宜うとして、どんなにゆっくりと

話そうとも、このきまりからだらだらと、容易に逸脱する人もいるでは

ないか。これをどう見る?脳が弱いのか、訓練が不足しているのか。人

間の域、人格の保持に達していないのか。さて?   

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       朝日歌壇 2018..2

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                       アザレア

  見えぬとは怖きものなり近未来服も仮想になるかもしれず

             東久留米市)関沢由紀子

 国が保証する通貨の使い勝手が悪いとして、若気の至りの若者が仮想

 

通貨を流通させた。国はこの二重制度は認められないとして禁止し葬る

 

べきだったが、ゆるふんで推移させた。近未来の通貨の理想の影を持っ

 

ているから、と読んでのことだったか。案の定、その綻びはすぐに表れ

 

た。金融当局は大慌てで収拾策を講じている。言わぬこっちゃない。近

 

未来的な代物はどう転ぶかわからない。それは未経験のうえ先が見え

 

からである。またそういう御仁が当局にいる限り、この危険性は増大す

 

る。眉に唾をつけて、またつけて、対処せねばなるまい。素人や、もど

 

きはその眉も唾も効き目は薄い。危ういものや、ことにはすべからく近

 

寄ることなかれ、の教訓を忘れずに近未来に立ち合うことにしよう。

 

               

  ★「使える人」「使えない人」排除する人の賞味期限も短い

               室蘭市)佐々木 淳

 

  医師からの宣告受けても脳内に浮かんだ言葉はまじかの

   三文字        奈良市)渡辺春乃

 重病の患者に病気の宣告をする医者も大変な仕事だが、その宣告らし

 

きものを聞かされる患者もあはれである。頭に血がのぼり、自分の命が

 

まじかの三文字であることだけを覚えている。

 

 

  スマホ見る母に抱かれてその母を見上げる幼の何かを

   思う眼       

                           (横浜市)毛涯明子

 母に抱かれている幼子は母に何を期待しているのか。それは、自分を

見守る暖かなまなざしが注がれて、柔らかい笑顔で包んでくれているこ

とだろう。だが、子を抱く肝腎の母親が、スマホに夢中で、母を見上げ

る幼の眼にも気づかずにいれば、幼い子の柔らかい脳に刷り込まれる母

の像を思うべし。この子が育ち、未来の母になったとき、スマホ片手の

育児は当然、と思う母親になることは避けられないであろう。

 

  晩酌し三食きっちり食べる夫冬眠という手立てはないか

              (福岡市)永井祝子 

 日本は今や高齢者だらけ、というような状況にある。二人が揃う健康

所帯の他、すでにどちらかを亡くして一人住まいの老人も数多い。彼ら

が追憶してやまぬのは、かつて二人で共に過ごした幸せな日々。当たり

前のように過ごし、それぞれ不満もぶちまけた二人だけの生活。思えば、

なんと貴重な日々であったことか。後悔先に立たず、というが、夫冬眠

という手立てはないか、などと。まあ、共に晩酌、共に三食、共に冬眠

の粋を探られよ。そのうち判る。

 

  目閉じればとおいとおい日囁かれし<帯は解くもの>耳朶

    焔立つ        広島市)平加ミチコ

 これは、いつ思い返しても、古びれず、懐かしく、活き活きと追憶の

日が蘇える私の財産。あの日、それから、どのように展開して、今の私

がここにいるのでしょう。ほんとうに遠い昔に、あの囁きに抗しきれな

かったこの私。思うだけで耳たぶが燃え立ち、赤く染まります。

 

誤解など招きませんよその野次の発現趣旨はよくわかります             

                 (長野県)山口恒雄

わからなくなってきたのが日本語で真摯、寄り添う、謙虚、

 丁寧            (行方市)前野平八郎

解釈はたったひとつで九条を読めば誰でも解る九条

                 (東京都)東金吉一

黒々と兜太書く文字掲げられる国会の前声うねる頃

              (大分市)穴井香代子

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             (2018.3.15)

                   


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379  春待つや頼みの綱の兜太選 [文芸(短歌・俳句) 時事]

 

 

  随想コラム「目を光らせて」NO.379「朝日歌壇・朝日俳壇」から

 

 

       俳壇 期間:2018.1.8~1.29

 

  

       春待つや頼みの綱の兜太選

   

        :

        朝日新聞 2018.1.29下関市)内田恒生 作

               アオウ ヒコ 

      

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  洋画家 青沼茜雲 画伯 の作品集から。42.「飛形山と矢部川」2 

      ・イギリス王立美術院名誉会員

     ・フランス・サロン・・トンヌ会

      ・ノーベル ノルウエー財団認定作家     

      ・世界芸術遺産認定作家日展所属  

 

                            

        「朝日歌壇・朝日俳壇から」

  朝日新聞の歌壇・俳壇の入選作の中から最新の世相を鋭く切り取った

 

 作品を新た選び、コメントを付けています。コメントは文芸上の範を

 

 超えることがあります。

 

  作品の頭に印が付いている作品は、時の政権が推進る前のめり

 

 右傾化路線平和憲法を無視し、国会の存在をないがしろにするさまを

 

 危惧する市民の投稿になるものです。これらの作品は、ここでは個々の

 

 作品の文芸上の軽重を問うことなく、注目すべき最新の世相を凝縮した

 

 として、そのすべてを採録しています。

 

  これらの作品に対しては、投稿者の真摯な叫びに読者の耳、素直に

 

 うべしとしてコメントはつけておません。

 

  また、文中敬称は省略しております。(筆者)

               

 

      朝日俳壇 2018

                      

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       今春、埼玉県狭山市に降り積もった雪景色のいくつか   aou.hiko

 

 

  沖縄の虐げられる年惜しむ

       (福島県伊達町)佐藤 茂

 

  炎にも見えて選手の白き息  

             (藤岡市)飯塚柚花

 四季を通じて、運動選手は練習を欠かさない。特に冬季の戸外訓練と

あれば、ランニング中の選手が吐き出す息が瞬時に凍って白く見える。

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