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376  富士山の肌に日の差しおもむろにやがて元気にばったは跳べり [文芸(短歌・俳句) 時事]

 

 

   随想コラム「目を光らせて」NO.376朝日歌壇朝日俳壇」から

       

     歌壇 期間 2017.11.06 ~ 12

 

  

    富士山の肌に日の差しおもむろにやがて

 

     元気にばつたは跳べり

 

 

 

     題 目:

      朝日新聞201.11.6熊谷)内野 修 氏作



                 アオウ

 

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   洋画家 青沼茜雲 の作品集から。39.望郷 [ポルトガルにて】

           ・イギリス王立美術院名誉会員

           フランスサロン・・トンヌ会員

           ・ノーベルノルウエー財団認定作家     

          ・世界芸術遺産認定作家 ・日展所属

 

 

                  

       「朝日歌壇・朝日俳壇から」 

 朝日新聞の歌壇・俳壇の入選作の中から最新の世相を鋭く切り取った

 

 作品を新た選び、コメントを付けています。コメントは文芸上の範

 

 を超えることがあります。

 

 作品の頭に印が付いている作品は、時の政権が推進る前のめり

 

 右傾化路線平和憲法を無視し、国会の存在をないがしろにするさま

 

 を危惧する市民の投稿になるものです。これらの作品は、ここでは個

 

 々の作品の文芸上の軽重を問うことなく、注目すべき最新の世相を凝

 

 縮した作品として、そのすべてを採録しています。

 

  これらの作品に対しては、投稿者の真摯な叫びに読者の耳、素直に

 

 従うべしとしてコメントはつけておません。

 

  また、文中敬称は省略しております。

  

.昨201712ヶ月間の朝日歌壇、俳壇の入選作品全てを拝見しての

 

 感想を記します。春過ぎて真夏の8,9月は猛暑続きに頭脳明晰ならず

 

 だったのか、優れた作品が極めて少なく意外でした。セプテンバー

 

 ソングが流れた後の11,12月の冷涼季に移ると一転して、佳句、秀歌

 

 が充ち溢れました。通常の月なら当ブログに採択されたであろう作

 

 品が競り負けて姿を消したのは残念なことでした。平和主義で過ご

 

 してきた国民を再び戦争に加担させようとする政府の動きに対する

 

 批判と反対は事あるごとに峻烈を極めました。「文芸」が政治の動

 

 向を左右する時代として認められたことでもありました。今後も、

 

 使われる言葉もしっかり吟味して一層のご努力に期待する思いや切

 

 です。「文芸」にかかわる人は善き「政治」を唱道し、唱導に繋げ

 

 ねばなりません。AIが人の仕事を奪いつつある社会において、こ

 

 れに対抗しうるのは「文芸」の道を極める人の知能にほかなりませ

 

 ん。より上質の作品の提供がなされ、鑑賞後の余韻に浸る人間の喜

 

 びをエンジョイ致しましょう。(筆者

 

 

 

   朝日歌 2017.106

 

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        らん      aou.hiko

                                                                                                                                                                                     

 

 ★「核の傘」の下にあっても条約に参加することICAN

   (わたしはできる)     

              (神栖市)寺崎 

 

 ★「まだ」と「もう」二つの間に今があるつかめない鏡の

 

   中にように      (神奈川県)九螺ささら

 

              

 

 *富士山の肌に日の差しおもむろにやがて元気にばつたは

 

    跳べり       (熊谷市)内野 修

 

 富士山麓の叢に冬を生きるばった。朝が来て太陽の日差しにいのちを

 

もらったのか、しばらくしてばったは元気よく跳びあがった。雄大な景

 

観を背景に小さな命との対比を描く。

 

 在りし日に父が書きたる表札を最後に外し更地となりぬ

 

             (郡山市)菊池亮子

 

 典型的な日本家屋の一代記。戸建て家屋を手に入れた父君は表札を墨

 

書、玄関に掲げた。以来、父とその家族がその家に住み続けて幾星霜。

 

子らは巣立ち、両親も旅立った。住まう人なき今、娘の私は古びた表札

 

の最後の外し役になった。家は解体されて更地になった。

 

 

 ★責任は電力会社と国と出る福島原発二〇〇〇〇の死者よ

 

             (橿原市)澤 正宏

 

 

 

    朝日歌 2017.112

 

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らん         aou.hiko

 

  沖縄に重ね見守りしカタルーニヤ今日自治権の停止を

 

   知れり       (水戸市)中原千絵子

 

                                                                         

  川三つ秋を蒐めて淀となる湾処に揺れる一艘の雲

               

             (吹田市)辻井康祐

 

 川三つ流れ流れて、途中の秋の景を蒐めて淀となり、最後に落ち着く

 

 は湾処。白い一艘の雲がここに浮かび、揺れている。船ではなく雲が。

 

 

   よりましな地獄を選ぶしかないと手を引かれ来ぬ

 

   第2投票      (所沢市)風谷 螢

 

 

  ★殺す側と殺される側どちらから考えているか考えてみる

 

                (伊丹市)宮川一樹

 

 

  あちこちが痛きと老いら嘆きつつミサイル飛べば熱く

 

   怒れり          (枚方市)鍵山奈美江

 

 

  総選挙に沖縄の辺野古や福島の被災地のことは棄民の

 

   ごとくに         (東京都)松崎哲夫

 

 

  ミサイルが飛べど仕事に向かうだけいつもの朝のいつも

 

   の電車           (東京都)山崎昌実             

 

 

  仙台味噌スティック野菜にちょいとつけ旅の夜ふかむ酒は

 

   一の蔵           (名古屋市)山守美紀

 

 日本酒の味わい方を指南している。さっぱりと芳醇な日本酒を楽しむ

 

にはごてごての味付けをした料理は要りません。味深い仙台味噌を、包

 

丁で◇の棒状にした野菜(セロリか胡瓜など)にちょいとつけて召し上

 

がれ。そこで盃に満たした上等の日本酒(私は「一ノ蔵」なんですけど)

 

とくれば、旅の夜はいっそう深まりゆきますよ。

 

 

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           らん      aou.hiko  

 

 

  再々会短く約し去りゆくを一期一会のこころに送る

 

              (茅ヶ崎市)若林禎子

                                                                                                                                                                 

 会の終わりに「近いうちにぜひぜひまたお会いしましょうね」という

 

挨拶言葉。若い頃はただただ習慣みたいに放なってきたが、この頃は違

 

った。「ああ、この方との縁にしは今日のそれが最後であるかもしれな

 

い」という思いが付いて回り、口から出る「また会いましょう」の挨拶

 

にも心からの思いを込めているように思われてならない。

 

 

 北限の石蕗(つわぶき)は忘れはしないこの地に原発禍の

 

   あったこと       (福島市)美原凍子

 

 

          (2018.01.15)

 

 

               つづく [→] NO.376-2


 


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376-2 雪虫を子らは追えども手のひらに捕らへてみれば雪となりけり [文芸(短歌・俳句) 時事]

 

  随想コラム「目を光らせて」NO.376-2朝日歌壇朝日俳壇」から

 

 

    歌壇 期間 2017.12.04 ~12 .25

 

  

   雪虫を子らは追へども手のひらに捕らへて

 

   みれば雪となりけり

   

 

    題 目:

     朝日新聞(2017.12.25 (奈良市)山添聖子氏 作。

 

                アオウ ヒコ

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171027 赤い薔薇  酒井 健 (水彩画家) 
 

       

   日歌壇 2017.12.04

 紅葉のまた黄落のやまに光るいざよひ月に露天のゆあみ

 

               (大分市)岩永知子

 十六夜の月(陰暦16日の月は満月よりも遅くためらうように出てくる

からこういう【広辞苑】)が紅葉や黄に染まる山を照らす頃、私は独り温

泉の露天風呂に身を委ねている。なんという眼福と快感。この幸せがい

 

つまで続くのか。やおら露天で立ち上がり裸身を月光に纏えば金色の十

 

六夜月に映えて一段と美しかろうと肩まで湯に浸かりながら身を竦めて

 

、眼を閉じているのかも。

 

 

 菊花展ありて賑はふ大寺の裏山にあり猪の罠

 

               (熊谷市)内野 修

 近くの大寺の境内で、恒例の菊花展が開かれている。近郊の菊好きの

 

園芸家は自らが出品する菊花の仕上り具合を調整し、わが菊の展示位置

 

の確認のために数日前から会場へ出かけ展示に協力する。

 

 展示した後も、会場荒らしに会わぬように寝泊り警備も欠かせない。

 

 近郊の畑荒らしのイノシシの跋扈が伝えられるだけに、大寺の裏山に

 

は猪罠が仕掛けられている。せっかく仕上げた菊花展の精華が猪に荒ら

 

されるのは忍びないので、念のために菊花より美味な餌付罠を仕掛けて

 

いるのだろう。

 

 

 ミサイルを打ち落とすとう兵器らしセールスマンも大物

 らしき          (名古屋市諏訪兼位

  子を生さぬわれがとうとう母になる百五歳の母から「母さ

 

   ん」と呼ばれ     (佐世保市)近藤福代

 

 ずうっと母の介護を続けて今や母は御年百五歳。その母が今日、子を

 

生さずに来た私のことを「母さん」と呼んだ。そこにいるあなた とい

 

う意味で呼んだのでしょうが、自分の腹を痛めた娘の名も思い出せずに

 

「ホイ、そこの母さん」とやったのですよ。しかたがない。「ハイハイ

 

母さんはここに居ますよ」という以外に道はなしでした。

 

 

   朝日歌壇 2017.12.10                   

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                  らん      aou.hiko

   走者なく日当たるままに走路あり雪来る前の静けさの中

                     

               (熊谷市)内野 修

                   

 高学年向き学び舎に設設されている競技用走路を見ている。秋の日が

 

誰もいない走路に陽を落としている。もう間もなく雪の季節が来て、白

 

雪に埋まる走路の静かなこと。何の変哲もない走路を題材に歌を詠むこ

 

とができる自然詠の好例。

 

 

  地軸傾ぐ音して冬に入る日に林檎剥く妻 地球は廻る

 

             (日立市)加藤 宙

 

 十二月二十二日頃、地球は冬至を迎える。地球は人間のサイズに比較

 

すれば相当に巨大だから、軸の傾ぐ音がギィと聞こえるわけではないが、

 

この夫婦は円いものを手にして、その様を疑似体験している。林檎剥く

 

妻にも上手下手あり、皮を厚く剥く人、薄く剥く人。近くの表面がそぎ

 

取られるの厚薄が覿面に影響する地表もありて。

 

 

  花びらの薄さになったかみねんど三年生の男子がくれた

 

              (奈良市)山ぞえ 葵

 

 紙粘土を時間をかけて、指先で薄く薄くのばしてゆけば、花びらほど

 

の薄さになって、次の工程の花作りの材料になるのだろう。時間をかけ

 

て作った大変な代物である。そう簡単には他人に与えられるものではな

 

い。あの上級生の男児が私にこれを呉れたのよ、私を憎からず思い、大

 

切なひとと思ってのことなんだわ。私、もててるのね。きっと。

 

 

  ★搬入車待ちて立つ人杙のごとし中間貯蔵の巨穴の底 

             (福島市)青木崇郎    

  ねむり込み車庫まで行きし中学生やさしい車掌と共に

 

   帰り来        (摂津市)内山豊子

 

 悪質な犯罪もどきの世相がゴロゴロの今。この世相にあって、電車を

 

乗り越して終点まで行った中学生。帰宅が遅くて一家が心配している中、

 

親切な電車の車掌さんがその子を連れて家に戻ってきた。ほっとした一

 

家。感謝感激雨あられであったことだろう。

 

 だが、そんなにも眠りこけるほど、勉強させてどうする。大概にせん

 

かい、という声も澎湃として起きる。これにも気づく必要がある。

 

だが、ともあれ親切な車掌さん、ありがとう。本当にありがとう。

 

 

  ★貝殻を耳に当てれば聞こえ来る遠き潮騒水爆の音       

              (長野市)原田浩生

 コロッケもうどんも五円だった頃真面目にお札を刷ってた

  日銀        (大和郡山市)四方 護

  渓流の音も揺れゐる蔓橋母の手にぎり阿波の国ゆく

               (越前市)内藤丈子

 母と二人で阿波の国を遊覧している。ここは蔓で作った橋を二人で渡

 

っている。下を流れる渓流が発する音も蔓橋ともども揺れている。二人

 

は手を取り合ってゆっくりと渡り始めている。母が大切だ。自分も怖い

 

のだが。

 

 

   朝日歌壇 2017.12.18

 

らん        aou.hiko

             

 

  婆ちゃんのもんぺと並び柔道着物干し竿のまん中占める

 

               (霧島市)久野茂樹

 

 働き者のばあちゃんの日常着はもんぺ、これがなければ仕事ができな

 

い。一方、息子は学校の部活で柔道を選択、しとどに汗を流すので、洗

 

濯もほぼ毎日である。一家の洗濯物は干し竿に通して干されるが、モン

 

ペと柔道着はその頻度と重要性においてほゞ互角、よって常に干し竿の

 

中央部を両者が占めることとなる。

 

 

   最終の貯蔵地もなく列をなし大熊町に集まるダンプ 

      

              (茂原市)植田辰年

  ★昼夜なく地表を覆うヒトもまた絶滅危惧種ボタン一つで      

              (島田市)水辺あお

  ★もう一度ゆっくり言ってくれないか核持つ国が持たせぬ

    理由         (守口市)小杉なんぎん

  黄色だけなぜ「ばむ」と言うのだろうか「病床六尺」いよ

  いよ黄ばむ       (坂戸市)山崎波浪  

 「ばむ」;≪接尾語≫ 動詞の連用形、形容詞の語幹などについて五

 段活用の動詞を作る。そのさまを帯び、その様子のあらわれることを

現す。上代には例がなく、源氏物語に次の記載がある。

(蜻蛉);「すきばみたる気色あるかと・・・」、(夕霧);「なよら

かにをかしばめる事を、このましからずおぼす人は」。があり、このほ

か古語には、「汗ばむ」「黄ばむ」「黒ばむ」「心ばむ」「戯ればむ」

「塵ばむ」「萎えばむ」「情けばむ」「生ばむ」「濡ればむ」「辺りば

む」「優さばむ」「気色ばむ」「怪しばむ」「老いばむ」「隠ろへばむ」

「嗄ればむ」などがある。(広辞苑)

 この歌の作者は子規の歌を大事にして「病床六尺」をいつも手にして

おられるようだ。いつのまにか、この冊子は黄ばみ、その愛読度が判る

というもの。ばむは黄ばむのほかにいくつもありますね。「濡ればむ」

など憎いことです。

          

     朝日歌壇 2017.12.25

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                らん    aou.hiko

 

 線量は遺骨にまでも沁み込んで持ち出せぬという条理

 

  が悲し          

               (さくら市)大場公史

 

 かばねなき漁夫らいずこに漂うや木造船は佐渡に着き

 

  しも          

               (小金井市)神蔵 勇

 

  ★ゴルフしてステーキ食べてさようなら武器購入は

 

   決まったらしい    

               (大津市)佐々木敦史

 

 

  雪虫を子らは追へども手のひらに捕らへてみれば雪と

 

   なりけり        

               (奈良市)山添聖子

 

 晩秋の一日、そろそろ雪が待たれるころ、子供たちは雪が降るのを心

 

待ちにしている。そのころ、林檎などの果実に着く白い切片に似た雪虫

 

も空中に浮遊する頃でもある。子供たちは「ワアーイ雪虫だよ。」と声

 

を上げて白い雪虫を追いかけ、手に捕まえようとする。「雪虫取れたよ」

 

の声がまもなく上がる。手を開いた子が次に発したことば、「違わーい

 

雪だ雪だ。雪虫とは違わーい」そしてすぐに「融けっちまったよー」が

 

続く。

 

 

 しぐれ来て又しぐれ来て雪になる石蕗の一叢黄の明るうて

 

               (福井市)甘蔗得子

 

 冬の庭の隅に植えられていたつわぶきの一叢がその黄の深さを如実に

 

示す時が来た。しぐれが次々に来て雪になり叢を覆う中、丈夫な太い花

 

茎はすっくと立ち、丈余の積雪も花茎尖端の黄を覆いつくすことはない。

 

 

 本人に書けぬ届は二つあり出生届と死亡届と

 

               (東京都)東 賢三郎

 

 今生に命を享けた命の印として出生届をその両親が届け出る。この

 

ことは確かに本人にはできない。爾後その命は命を燃やし続けていつの

 

日にか、その終わりを迎える。登場の届と同様に、退場の届を死亡届と

 

して届けるのは確かに自分ではない。血を分けた後胤の誰かにお世話に

 

なることはこれまた確かであろう。人はこの二つの届け出は自分では書

 

けぬことを知ってはいるが、自分事とは承知していないように見えるの

 

は今一つ不思議だ。

 

 

  秋の日が斜めに射せば満天星(どうだん)と櫨(はぜ)がもっとも

 

   赤く滴る

                (幸手市)森 暁香

 

 冬が近くなると多くの樹木は冬支度をする。樹々は紅葉し、実をつけ

 

るなかで、赤色の極にまで至るのは満天星と櫨の木。その赤は滴るまで

 

に美しく外観を変えて秋を彩る。まもなく寒風が吹き、雪にとじ込めら

 

れる厳冬が来る。寒さに震えながら、あの秋の日に照り映えた満天星と

 

櫨の実の赤の滴りを懐かしく思わずにはいられない。 

 

 

                 (2018.01.15)

               


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375 花々に埋もれ彼の地へ嫁ぎゆく母よ真白き髪整えて [文芸(短歌・俳句) 時事]

 

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   随想コラム「目を光らせて」NO.375朝日歌壇朝日俳壇」から

 

       

     歌壇 期間 2017.10.02 ~ 10.30

 

  

       花々に埋もれ彼の地へ嫁ぎゆく

 

        母よ真白き髪整へて

 

   

     題 目:

    朝日新聞201.10.16(新居浜市)東 京子氏 作

 

                 アオウ ヒコ

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    洋画家 青沼茜雲 の作品集から。 38. 望郷 ギリシャにて

 

 

                 ・イギリス王立美術院名誉会員

                 フランスサロン・・トンヌ会員 

                 ・ノーベルノルウエー財団認定作家     

               ・世界芸術遺産認定作家 ・日展所属  

 

                     

       「朝日歌壇・朝日俳壇から」 

 朝日新聞の歌壇・俳壇の入選作の中から最新の世相を鋭く切り取った

 

 作品を新た選び、コメントを付けています。コメントは文芸上の範

 

 を超えることがあります。

 

 作品の頭に印が付いている作品は、時の政権が推進る前のめり

 

 右傾化路線平和憲法を無視し、国会の存在をないがしろにするさま

 

 を危惧する市民の投稿になるものです。これらの作品は、ここでは個

 

 々の作品の文芸上の軽重を問うことなく、注目すべき最新の世相を凝

 

 縮した作品として、そのすべてを採録しています。

 

  これらの作品に対しては、投稿者の真摯な叫びに読者の耳、素直に

 

 従うべしとしてコメントはつけておません。

 

  また、文中敬称は省略しております。  (筆者

 

 

 

        朝日歌 2017.1002 

              

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                           aou.hiko                                                                                                         

                                                                           

             

 

 ★基地あれば「ミサイル落ちるのはやがべ」と床屋の主人

 

  語る秋の日

             (三沢市)遠藤知夫

 

 

 

  アボガドの寿司巡り来て颯と過ぎぬまた巡り来て

 

   淋しアボガド

             (小美玉市)津嶋 修

 

 

 回転すしもすっかり定着、シャリの上にに乗せる具材もあれこれと工

 

夫され、目新しさを見せているが、客がすぐに手を伸ばすまぐろと違っ

 

て、新参アボガドの人気はサッパリのようだ。食感や味、風味で言えば、

 

海の鮟鱇の肝、陸のアヒルの肝フォアグラ、畑産のアボガドは共通した

 

食味を持ち、美味しさもそれぞれ抜群である。だが、アボガドは日本で

 

は輸入されてまだ日が浅く、愛好者の層が薄い。輸入当初は恐る恐る@

 

90円で売り出し、長い100円前後​の時期を経て、今は~@160円。

 

 鮟キモやフォアグラが回転寿司に登場しないのはコストが高いからだ。

 

アボガドがお敬遠されているうちに早めに手を出した方がいい。今日の

 

寿司はうまかったなあ、アンキモ、フォアグラと同じ味だぜ。アボガド

 

を淋しがらせるなんて、あなた、食通の名が泣きますぜ。

 

 

 

  若きとも老いともつかずあどけなさ残す埴輪の眼窩の

 

   深遠

             (横浜市)竹中庸之助

 

 

 亡き人を悼み、出来ることなら死者との陪席を願い、その代わりに埴

 

輪を創った。衣装装束は、当時のそれを模したが、顔付をどうするか、

 

特に眼をどうするかに困ったようだ。当時の切れ者が眼球は切り抜いて

 

眼窩を太く大きくデザインした。お陰で眼窩の深遠を覗くとき、そこに

 

は老若を超えたあどけなさが揺曳するようになった。

 

 

 

 ★知らぬふりしようが先に延ばそうが不都合な過去を

 

   終わりにはできぬ

             (橿原市)福田示知恵

 

 

 

  風わたる気賀汽水に竿をうち鯊またハゼを釣る秋にゐる

 

             (浜松市)松井 恵

 

 

 人ようやく、ハゼ釣りに出かける秋になったよ。汽水ゾーンの川岸に

 

腰をおろし、竿を伸ばして当りをみる。餌をつけて竿を軽く撓らせて

 

汽水の沖まで糸を打つなり、すぐに食いつくあたりが早い。ゆっくり腰

 

をを下ろしている暇もなく竿を上げたり、鯊を取込んだり、餌の付け替

 

えも、とこの忙しさ、忙しなさが秋のハゼ釣りで、堪えられない。

 

 

 

  ブータンには墓は見当たらぬ人はみな死して転生して

 

   生まれ変わると言う

 

             (名古屋市)諏訪兼位

 

 

 人は長く生きても、百歳前後。30歳までには基礎的な学業を終え

後は70歳までの40年間、自らのいのちが命ずるままに命が生きた時

 

代のために懸命に努力し、尽くして果てる。この間に遺していくものが

 

そのまま消滅してしまうとあれば、いかにも勿体ない。そのブータンで

 

は転生して新たに生まれ変わるという命のサイクルの由、次は前世とは

 

違うジャンルでの100年間、改めて幼児の時代から勤め上げる。

 

お墓?前世の100年間の記録がどこかのAI簿に遺されて、いつでも

 

照会出来るというシステム。確かにお墓はいりませんね。

 

 

 

  僧父の受けし布施にて育てられ吾も僧となり布施受け

 

   生き来

 

             (三原市)岡田独甫

 

 

 日本の宗教は、古来から自然発生的に形成されてきた「神仏習合」の

 

状況にあったが、明治維新直後の明治政府はその宗教政策の一として、

 

天皇制の下で神道のいづれを国家宗教に選ぶかについて、大議論を展開、

 

議論沸騰結論を得ないため、その採決を明治天皇に一任、天皇は三日三

 

晩熟慮した後、天照大神を選択したと言われる。以後、天照大神は皇室

 

の祖神とされ、伊勢神宮(内宮)に祀り皇室崇敬の中心となる。

 

 この神仏分離令が出たあと、神道家などによって各地で寺院・仏像の

 

破壊や僧侶の還俗強制などが起きた。しかし廃仏毀釈の過渡期を経て仏

 

教の革新も行われ、戦後は多くの新興宗教をも生んだ。

 

 仏教も生き残り、葬式を司る専門職のような形で存続するお寺と僧侶。

 

この歌にあるように、檀家制度の下にお布施を頂いて生活している。

 

だが、はたして、次世代にはどうなるか、安穏とお布施に頼れるのだろ

 

うか、と僧侶の悩みは尽きない。

 

                                                                                            

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     朝日歌壇 2017.10.09

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                                                            aou.hiko

 国内の問題処理はは二の次で外交好きで外交が下手

 

                (川崎市)小島 敦

 

 

 西郷像の前で待ち合うふるさとの竹馬の友を探すときめき

 

              (流山市)葛岡昭男

 

 

 長年月の交歓なしで過ごした故郷の親友が上京する。どこで会おうか

 

が上野の西郷さんの銅像前でとなり、その日を思うと、心が落ち着かな

 

い。お互いに相貌の変化がある。すでに到着しているのにともに気付か

 

ない。スマホ時代の今、その扱いに慣れないとしたら、ここは一番、次

 

のセリフを投げ掛けよう。「失礼ですが、もしかしてあなたは○○さん

 

?」「え?お前さん××君かいね」。これでよかった、邂逅成立。後は

 

積る話をごゆるりと。

 

 

 

 葛の葉の土手に連なるまんじゅしゃげ地上に出でし

 

  マグマの華燭

 

               (桑名市)土井寿美子

 

 

 秋口の河川の土手は曼殊沙華の赤で延々と彩られる。この紅色の形容

 

もありきたりが数多いが、地中のマグマが地上に噴出したとするのは珍

 

しい。マグマの華燭である。

 

            ■

 

 今ならば勝てそうだからやろうかと試合の話では

 

   ないらしい

                (大津市)佐々木敦史

 

 

 ★世界終末時計は二分三十秒残るのみだがまた進むだろう

 

                (東京都)野上 卓 

       

 

 ★国民の命を守る参戦と言ひだしかねず米に請はれて

 

                (長野県)井上孝行

           

 

 ★さしば舞う一万倍余の上空をミサイル飛ぶと緊急放送

 

                (栃木県)荷見泰一

 

 

 執拗に恋猫の啼く夜は更けて閣僚指名まだ揉めてをり

 

                (茅ヶ崎市)若林禎子

 

            ■ 

 

 

 終焉の息たえだえのこの集落を看取るごと棲む梟が鳴く

 

              (岩手県)山内義廣

 

 

 山間部の集落の高齢化が進むと、住民の話し声も聞こえず、終焉もま

 

近い夜、フクロウの鳴き声が看取りの声に聞こえる。寂しいまでも深刻

 

な夜の推移。

 

 

 

 花々に埋もれ彼の地へ嫁ぎゆく母よ真白き髪整えて

 

             (新居浜市)東 京子

 

 

 旅立つ先が「彼の地」でなく「かの地」であれば、嫁ぎ先の選択の幅

 

も広がり、想像の巾も広がりゆくであろうに、と惜しまれる。

 

せっかく、ま白い髪を整えて出かけても先に逝った夫が黒髪で現れたり

 

すれば、どうなるかね。そこまで考えると、広大な彼岸を指す「かの地」

 

とした方がいい、とそうは想いませんか。

 

 

                                                 ■

 

                           つづく → NO.375-2

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                


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375-2  弦楽の音の水位の上がり来てトランペットのソロを呑みこむ* [文芸(短歌・俳句) 時事]

 

  随想コラム「目を光らせて」NO.375-2 「朝日歌壇・朝日俳壇」

 

    歌壇 期間 2017.10.16 ~10 .30

  

 

         弦楽の音の水位の上がり来て

 

          トランペットのソロを呑み込む

   

 

      題 目:

  朝日新聞(2017.10.16 (可児市)前川泰信氏 作。

 

            アオウ ヒコ

                

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                 151031 柿  酒井 健

 

 

 

 

 

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       日歌壇 2017.10.16

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                                           aou,hiko

 頑丈な建物もない地下もないJアラートも寝て

   やり過ごす     (西海市前田一揆

 

 沖縄の戦禍を知らぬ沖縄の少年居ると知り目が眩む

    

             (大阪市)由良英俊

 

 

 母は終戦の前日空襲で死にましたと穏やかに言ふ

   老女の歳月     (茅ヶ崎市)若林禎子

 

 帰るべき家あるごとく白き蛇夕陽を受けて海に入りゆく

 

             (東京都)渡部鈴代

 そろそろ、蛇穴に戻るの時季、夕陽を浴びて蛇が行く。白い蛇はよく

 

あるとしても海に入りゆくが判らない。あ、海蛇であれば別ですがね。

 

                  

 

 白い小花朝もやのごと立たす風会津盆地にそば畑ふくらむ

 

               (郡山市)昆 キミ子

 この畑に何が植えてありその花の状況について延々と説明している。

 

読み下す最後の方で、あ、そば畑か、その花粉かと納得する。

 

 

 ★戦死者はもう日本から出しません墓地を囲みて赤曼殊沙華  

              (村上市)鈴木正芳                
                  

  弦楽の音の水位の上がり来てトランペットのソロを

 

   呑み込む 

             (可児市)前川泰信

 この頃、クラシック音楽会は、youtubeのクラシックパート(登録して

 

おけば、この曲どうですかと、世界一流レベルの演奏家と曲目を向うか

 

ら示してくるので、これを自由に選び出して視聴できる)を利用する

 

ようになってから、生のホールにはとんと出かけなくなった。というの

 

も、一時帰京したスペイン在住の友人Ishiが「向こうではyoutube

 

クラシックがふんだんに聴けて、これ以上の至福ったらないね」と囁い

 

たからだ。なるほどと思い、早速日本の我が家でも、家内の外出中には

 

4KTVにyoutubeのクラシックを呼びだし大音響で楽しんでいる。

 

奏家の中には新人の他、かつての演奏大家も混じるが、ピアノのルー

 

ビンシュタインがショパンを弾く姿や運指に接したときは確かに至福の

 

ひと時だった。

 

 シンフオニイの演奏会で、曲の内容を短歌に詠むケースに出合ったこ

 

とはないが、それは、人は耳から音を受容して、脳に流すことに懸命で

 

あり、リサイタルの外形的な報告などあまり重用しないからでもある。

 

 だが、この歌の弦楽の音の水位の上がり来て という表現はシンホニ

 

ーの弦楽パートの音のうねりの強弱を水位に例えてこれまでにない素晴

 

らしさがある。

 

 DVDやCDからの音楽では、この水位のあげさげ、うねりの強弱を

 

体感することは難しい。特に優れた楽士を揃えた交響楽団のストリング

 

パートが練達の指揮者が振るタクト通りに音の水位を微妙に上げ下げす

 

る場面、高潮するストリングのうねりに包まれるところ、などは演奏会

 

場ならではキャッチできない。たまには、演奏会に出かけて、あなたの

 

耳を精練させる必要があります。

 

 

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      朝日歌壇 2017.10.22

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                  aou.hiko

 

 妻と来て山ぶどう買う道の駅嗅げば蔵王の秋かおりたつ

                     

               (仙台市)沼沢 修 

 

                  

 今年10月2,3の両日、新潟へ大学の旧友と小旅行をした。3日は

 

大型タキシーをチャーターして新潟界隈を見て回ったが、稲田の取り入

 

れを終えた田圃に、イチジク盛期の看板があり、無性に食べたくなって、

 

運転女史に近くの道の駅に立ち寄ってもらった。盛期は過ぎていると聞

 

いたが、新鮮な大粒のイチジクがパック詰めで6ケ400円で売ってい

 

た。これはうまそうだ、として諸君用と運転女史用に2箱求め、1果ず

 

つ分けるつもりだったが、後からぞろぞろ従いてきたかれらも「美味し

 

そう」などと言いながら、1パックずつ買うじゃないか。分けて食べる

 

算段の私のイチジクはどうなる、だったが。

 

 「道の駅」は車持ちには便利で、ちょくちょく立ち寄っては、新鮮な

 

季節の果物をエンジョイしている。この歌の持ち主も蔵王の秋が香り立

 

つ山ぶどうを道の駅で買い求めたようだ。道の駅讃。

 

 

 ぶら下がるパンは上から攻めるべしライオンの獲物

 

  襲ふがごとく 

           (東久留米市)関沢由紀子

 

 

 パン喰い競争に参加されたか。実戦の経験から言われているのか。

 

、この競技では、パンは競技者の頭上すれすれあたりに吊り下げられ

 

おり、ブラブラの餌を求めて人は仰向けに口をむけるが、これではなか

 

なか餌にありつけない。身長の低い人思えらく「あゝ私の口が上の方に

 

あればなあライオンのように。短足嘆息す、ウオーの咆哮である。

 

 

 

 年子でも双子のように育てられコスモスゆれる兄一周忌

 

              (仙台市)木村次郎

 

 

 一つ違いの兄弟。両親は均等に可愛がり、二人も仲良く育った。兄は

 

昨秋死去し、この秋コスモス揺れる一周忌を迎える。懐かしい兄。

 

 

 

  ゆさゆさと道に沿いつつ稲刈りの鎌持つ男の時間は続く

 

                (奈良市)宮田昌子

 

 

 幸いにも今年の稲作は豊作であった。道沿いの稲田にはゆさゆさと稔

 

った稲が稲刈り鎌を手にした男の刈り取りを待っている。この調子だと、

 

まだ相当な時間がかかるようだ。

 

 

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       朝日歌壇 2017.10.30

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                    aou.hiko

 

  鳥海に初冠雪の日白鳥の最上川に五羽飛来の律儀

 

            (酒田市)富田光子

 

 

 今年も五羽やってきたのか、律儀だねえ。鳥海山に初冠雪の日、最上

 

川に白鳥飛来す。律儀なことです。が、嬉しい。

 

 

  アルプスの峰より紅葉始まってふもとに下る安曇野が好き

 

               (安曇野市)曽根原幸人

 

 

  安曇野を故郷にする人が町内にいる。カラオケの番になると必ず

 

「安曇野の歌」を歌う。柔らかい音程が流れ、温かい包容力に満ちた故

 

郷を思わせる。彼はこの歌しか歌わない。この歌にぞっこん嵌っている。

 

 

 ★飯館の唯一未帰還長泥地区風の萩むら見る人無しと

 

             (福島市)青木崇郎

 

                    

 

  スカートの裾を広げて零余子採る誰も通らぬ逢魔が時に

 

                (茨木市)窪田宣子

 

 逢魔が時は大禍時(オオマガトキ)から来ている。この時間には何か

 

が起こりそうな時間帯になるから、留意せよ、である。この時間だれも

 

見てはいないからと、スカートを前にまくって受袋にし、零余子を投げ

 

入れる。「だいじょうぶよ、だれも見ちゃいないからさ」とは元気なお

 

女中連。この時間帯、それは危ない行為でありまするぞに、かまわんか

 

まわん秋の暮れさ、と露出した脚の白さよ、を誇っている。

 

  

 この選挙明らかになる憲法を守れる人とそうでない人

  

              (姫路市)綾部佳子

 

 

 ICANは日本政府を非難せず「核廃絶のリーダーに」

 

  と乞う 

             (近江八幡市)寺下吉則

 

 

 

 水がめの蓋に一匹のカマキリと影のカマキリじっとしており

 

 

             (仙台市)小室寿子

 

 一匹のカマキリがじっと動かないのは近くにもう一匹のカマキリがい

 

るからである。自分の影だとは思っていないらしい。動かない。じっと

 

している。このまま推移したらどうなる。共倒れの死が待っているだけ

 

だ。いつ気付くか、どちらが行動を起こすのか。

 

 

 

 一人子に子を授かりし秋の日よ深き安堵にわれは年寄る

 

             (徳島市)上田由美子

 

 

 漸くに一人息子の連れ合いが子を出産した。このまま子に恵まれなけ

 

れば、孫なしで、一家が途絶えるところだった。これで一安心。深い安

 

堵が今度は急に老化に向かうように思えてくる。

 

 

 三年ぶりの家は朽ちゆくと言うフクシマのかなしみ黙過す

 

  る再稼働

             (帯広市)小矢みゆき

 

 

 ★分断の元なる軍事境界線いつか無窮花咲ける野となれ

 

             (岡崎市)石川休塵

 

 

 銃さえも規制できずに苦しめる地上に唯一核使用国

 

             (水戸市)中原千絵子

 

 

                                       (2017.12.15)

                               


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374  秀麗や地球を守るパリ協定 [文芸(短歌・俳句) 時事]


 

     随想コラム「目を光らせて」NO.374 「朝日歌壇・朝日俳壇

 

       俳壇 期間 2017.9.04 ~ 9.30

 

  

       秀麗や地球を守るパリ協定

 

   

     題 目:

    朝日新聞201.10.02ドイツ)ハルツオーク洋子氏 作

           

                アオウ ヒコ

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 洋画家 青沼茜雲 の作品集から。37.桜の明治の館「グリーンピア」

                ・イギリス王立美術院名誉会員

                フランスサロン・・トンヌ会

                ・ノーベルノルウエー財団認定作家     

              ・世界芸術遺産認定作家 ・日展所属  

 

                     

       「朝日歌壇・朝日俳壇から」 (略) 

 

     朝日俳壇 2017.1002

 

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                                      aou.hiko

  秋天を秋天らしく描く雲                                 

                   (高松市)白根純子

 空が青一色、または鉛色の曇天、雨天しか、ないとすれば、これまた

 

面白くないこと甚だしであろう。そこで活躍するのが空に浮かぶ雲であ

 

る。夏の夕立の前に空に垂直に盛り上がる積乱雲。

 

 そして秋が来て空気が澄むと、天空高くには巻雲が一面に拡がる。こ

 

の雲がなければ、秋天らしさはなく爽やかに吹く風に包まれることもな

 

い。中秋の名月にも、翳めて過ぎる千切れ雲がなければ、お月見の芒や

 

団子にも風情なしにて。

 

                                                                                                                                                                                                                                                                                                        

                                                          

  わが筆よ祭りとなれよ虫時雨

 

                (秩父市)浅賀信太郎

 

 普段から使い慣れた筆よ。万年筆、ボールぺん、サインペン、鉛筆よ。

 

私が命じたように字句を書いて呉れてありがとう。そのあいつが「やっ

 

たあ!」の祭り(入選)となればなあ。家の外では、虫たちが秋のお

 

前奏曲を奏でている。盛大にやっておくれ。間もなく冬だからね。

                                                                           

             

 

 ★敬老日「きけわだつみのこえ」読破

 

             (札幌市)渡辺健一

 

 

 

   運動会頑張れ母のにぎりめし

 

             (大分県姫島村)堂園美和子

 

 

 走るからには頑張っておくれ。今日の運動会。心こめて、ぎゅっと

 

力を入れておにぎり作っておいたから。お昼に食べれば 母さんの力

 

がぐっと乗り移ってくれるは必定。大声で応援もしますよ。

 

 

 

  秀麗や地球を守るパリ協定

 

             (ドイツ)ハルツォーク洋子

 

 

 人類の歴史始まって以来、多くの発見・発明が行われて今日があるが、

 

そのすべての智慧集積のなかでも、秀麗(すぐれて麗しいこと)のベス

 

トワンは「18,19世紀の産業革命以降爆発的に増加した機械エネルギーが

 

排出した炭酸ガスの累積増加が地球温暖化の元凶とする考察」だという。

 

 地球の温暖化により、極地の氷山が次々に融け出し、海水量が増えて

 

いる。洋上の小島の渚は海面上昇によって頓に水没が進み、住民は近い

 

将来島を離れる運命にある。

 

 また、世界各地で頻々として起きる超大型台風、ハリケーン、集中豪

 

雨が齎す水害、逆に極度の少雨による大規模の山火事、土地の砂漠化の

 

進行etc.今までにない自然現象を前にしてこれはおかしいと皆が感じ

 

出していたころだった。この「地球温暖化」の進行を極力防止せねば、

 

地球の未来はないとして、世界の指導者は真剣に検討を始めた。その嚆

 

矢は日本国で行われた「京都会議」による提言(議定書)であり、その

 

重要性に目覚めた世界大国の指導者たちであった。そして対策の実現に

 

向けて協調が得られつつあった。

 

 最新の会議はパリで行われ、その内容は「パリ協定」と呼ばれ、各国

 

は目標年次までに実施可能な目標を持ち寄り、行動に移す段階へと進む

 

ことを国際確約した。

 

 ああ、ところがどうだ。米国大統領は「地球温暖化は米国だけによる

 

ものではない」とこれに反旗を翻した。世界一の産業国家の米国大統領

 

が、地球の将来を救う施策立案に脊を向けた。何たる資質の持ち主であ

 

ろうか。その名はトランプ。他の資質では秀でていようと「パリ協定」

 

に背を向けるようでは話にならない。このままでは、米国が毎夏、超大

 

ハリケーンに見舞われるは必至であり、全世界が異常気象の被害を受け

 

て悲嘆にくれることになる。必ず、そうなる。

 

 

 

   稲の香の颯と乗り込む無人駅

 

              (東京都)望月清彦

 

 

 稲刈りが済むと、稲穂を束ね穂を下にしたものを乾燥するために稲掛

 

けをする。掛ける物や場所を、稲木(いなぎ)稲畑(いなばた)稲掛

 

(いなかけ)稲架(はざ、はさ)などと呼び地域により異なる(広辞苑

 

 ちょうど旅をされた時が稲刈りを終えて稲架にかけられて稲穂の乾燥

 

に回っていた頃だった。稲作地帯を走る電車が無人駅に停車して、ドア

 

が開いた瞬間、稲の香りがさっと乗り込んできた。秋の稲の香りを胸い

 

っぱいに吸いこんだ。

 

                                                                                                    

 

    朝日俳壇 2017.10.09

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                                      aou.hiko

 

   まだ歩くまだまだ歩く敬老日

 

               (嘉麻市)松井春光

 

 

 大相撲の今九州場所、久しぶりの稀勢里復帰とあって、対戦する相手

 

との取組みに観衆の目が集中する。この日は逸ノ城との取り組みだった

 

が、稀勢里の勢い鈍く、あっけなく逸ノ城に押し出された。取組後、ア

 

ナは好調の原因を逸ノ城に質したが「体が一人で動いてくれるものです

 

から」とだけ云った。肉体は、若い時には脳がああせい、こうせいと言

 

うまでもなく、おのづから動くようである。

 

 ところで、敬老日である。人は歳をとると脚が弱る。そこで、脚さえ

 

丈夫であれば、健康な老齢期が送れるとして、歩くことが奨励される。

 

脚はみずからは動かないので、脳が指示を出して初めて脚が出る。そこ

 

で、この句のように「まだ歩くまだまだ歩く」となる。脳が意識さえす

 

れば脚が動くように脳を訓練するためにである。

 

 脚は敬老日など、認めていない。

 

 

 

   台風や蝋燭の火に父と母

 

               (高松市)島田章平

 

 

 台風が吹き募って近所の電線が切れたりすることは珍しくない。停電

 

である。人は暗闇で過ごすことに慣れていないので、慌てて蝋燭を取り

 

出して灯を点ける。

 

 外は台風が通過する音がごうごうと吹き荒んでいる。その時、弱弱し

 

い蝋燭の火の周りに父と母が座っている。「この位の風、大丈夫ですよ」

 

と私が話し掛けると、二人ともしきりに頷く。妻が言う「お茶でも淹れ

 

ましょうか」父母は揃って頷く。「御萩があったね」と私が付け加える。

 

 甘党だった老夫婦は蝋燭の揺らぎの中で、大きく頷きあう。表情のな

 

いまま。瞬きもしないようだった。

 

 

 

    はたはたやこどもみたいに笑ひたい

 

               (加賀市)西やすのり

 

 

 その昔、鰰(はたはた)は網さえ入れれば、大魚間違いなしの魚だっ

 

た。秋田を代表する魚で、ハタハタ漁の最盛期1966年(昭和41)には、

 

秋田県で21000tも獲れていた。それがピークで、次第に右肩下がり

 

なって、1978年(昭和53)に3500tに激減、終に1991年(平成3には

 

71tしか捕れなくなった。

 

 それで漁業関係者の中から「このままでは秋田でハタハタが獲れなく

 

なってしまう」という危機感が現実味を帯びて、3年間(平成47年)

 

の禁魚が決まり、漁師はそれに随い、愛好者もしぶしぶこれに従った。

 

 禁魚期間が過ぎ、鰰の資源は見事に回復、はたはたは漁師の網に一杯

 

に獲れるようになった。なんと嬉しいことか。

 

鰰の大魚をよろこびたい。子供が嬉しい時に歓ぶように、わたしも大笑

 

いして歓びたい。

 

              

 

 ★反戦が最後の仕事敬老日

                (伊佐市)清水ひさし

 

 ★引き揚げを語り聞かせる秋彼岸

 

                (福島市)引地こうじ

 

             

 

   膝さへもわからぬ霧の登り道

 

               (芦屋市)酒井湧水

 

 

 登山家でなければこのような経験はできない。登る道が深い霧に閉ざ

 

されていれば、頂上を目指す者としては安泰とは言いかねる。まもなく

 

晴れて視界も広がるだろうという見通しも確率は五分五分で、このまま

 

雨天になるやもしれぬ。しかし霧の朝は、日中は晴れるというのが常識

 

だから、うまくいくだろう。

 

                       つづく [→] NO.374-2

 

         (2017.12.1)

 

 

 

 

 

                


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374-2  あちこちで籾殻焼きぬ眠れぬ夜 [文芸(短歌・俳句) 時事]

                                                   随想コラム「目を光らせて」NO.374-2 朝日歌壇・朝日俳壇
俳壇 期間 2017.10.02 ~10 .30

  

 

    あちこちで籾殻焼きぬ眠れぬ夜

   

 

        題 目: 朝日新聞(2019.10)

                    (玉野市)勝村 博氏 作

                アオウ ヒコ

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              1315080 スイス・ベルン 黄薔薇  

                    水彩画  酒井 健

 

 

 

 

     日俳壇 2017.10.16

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                             aou.hiko

 

  運不運菜を間引きつつ思ひけり 

                (知多市)岩崎光子

 菜園に植えた菜が育って間引きの頃を迎えて、しゃがんで生育の遅れ

 

た菜を間引きしている。そして思うよう、菜っ葉にも運不運があります

 

ね。この私にその運が任せられていると言えないこともない。大きく

 

えば生殺与奪の権利。ごめんなさいね、不運な菜っ葉さん。難しいわよ、

 

このような権利の付与というか、運命の選択。

 

 

 

 

   新米の五風十雨の光かな

 

              (大阪市)平谷茄美

 脱穀された新米を手に取って眺めている。田植えの時の稚苗を水田に

 

植え付けて以来、めでたく造粒を終えたこの新米。この日があるために

 

はあなたは生育を左右する五風十雨と呼ばれる自然の災難を旨く経てき

 

たことでしたね。その結果結実した穀粒が発する光のたくましさ、美し

 

さ。完璧なお米の誕生。

 

 

 

 

  終に来しひとりの暮らし秋刀魚焼く

 

                  (二宮市)岩田一男

 老境にある夫婦の関心事は、どちらが先に行くか、であろう。夫が先

 

に逝けば、あとは妻に託せばいい。が、その裏の展開だったら、どうし

 

よう。掃除も洗濯も三度の食事も、何の準備もなされていない。困った

 

なあ、に陥る。

 

 しかし、現実に伴侶に先立たれれば、日本の男子たるもの、異なれる

 

境地や境遇に投げ込まれても何とかなる、何とかするようだ。現にこの

 

夫君、どこかのスーパでさんまを調達、ぶら下げて帰り、ざっと水洗い、

 

サッと塩して、すぐさま塩焼きにしているではないか。しかし、終に来

 

しというやつ、いつまでも来ないで欲しかったなあ、が先に立つ。

 

 

 

  懐かしや母の御萩の秋彼岸 

 

               (木更津市)本郷政信

 どこにも、秋のおはぎ作りにかけては抜群、名人というおばあさんが

 

いる。大粒の小豆をコトコト、甘く煮含めて、糯米をやわら目にに焚い

 

て、太めに丸め、これに粒小豆餡をたっぷりと塗り付ける。懐かしや母

 

の手になる秋彼岸のおはぎ、あの甘い香り立つ小豆餡のおはぎを、今ま

 

でに何回食したことだろう。「春は牡丹餅、秋は御萩というのよ」が口

 

癖だったこともあわせて、♪ 彼岸が来ると思い出す、母の御萩よ^^♪

 

ある。

 

 

  

  千畳の波よせ崩る大夕焼 

  

             (西宮市)黒田國義

 通常、大夕焼けが海岸を赤く染める時分は風もなく、波も静かである

 

ことが多い。この日も穏やかな夕焼けの景色に恵まれたままの落に恵

 

まれたかと思われたが、突然海の彼方から千畳もの広さの波が現れて、

 

周りの海の景をかき混ぜたものだから、大夕焼が崩れてしまった。

 

津波じゃなく、大型船舶通過によるものさ、などと言うあいだに日没は

 

終っていた。

 

             

 

 ★かぎりなき廃炉の空を鳥渡る 

               (敦賀市村中聖火

 

 

 

 

 

       朝日俳壇 2017.10.22

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                                                   aou.hiko

 

  天空にコスモス揺るる棚田かな

                     

               (加古川市)森木史子

                   

 棚田の最上段(もちろん棚田にも大小さまざまある)を最下段の下

 

から見ると、かなりの距離であり、しかも仰ぎ見る姿勢になるから、

 

天空と称しても可笑しくはなかろう。また、その最上段の田にコスモ

 

スが植えてあれば、粋なことよと賞賛されるだろうが、これが、畦道

 

の縁にあればなおさら、野趣も加わり天空の花として、秋の好日には

 

色とりどりのコスモスが揺れていることだろう。

 

 この句の作者は、棚田の何処ら辺に居て、この天空詠をなしたのか。

 

最下段の田からか、中段田からか、天空近くの最上段の田に身を置い

 

ての句作か。一考するだけの価値がある。

 

 結論的には、三者択一いづれもありうるが正解だ。検地せずに断じ

 

た最下段からが、想像の付与がより加わる分だけやや有利の評価にな

 

るようだ。ほんの少しだけ。

 

 

 

  夫在さぬ寂しき自由夜長の灯 

 

             (香川県琴平町)三宅久美子

 

 濡れ落ち葉のどこがいい、だれからも拘束されぬ自由よ万歳と唱えて

 

みたが、この夜長、夫いまさぬ寂しさをなんとしよう。何とかして、と

 

叫んでおります。( 妻在さぬ寂しさ、これも同じです。)

 

 

 

  夕霧をうすくれなゐに染め落暉

 

                (神戸市)涌羅由美

 

 

 海山がある景色に落ちる夕日をテーマにしている。日没に近い夕べに

 

「夕霧」が発生し、景色はすべて霧に包まれたが、落暉に近いこともあ

 

って、白い霧が落暉の赤を受けて薄い紅色に染まり、そのまま日没とな

 

った。

 

 

 

  日の陰り色に出にけり鳥兜

  

              (熊谷市)内野 修

 

 

 夏の終わり、秋の日に近い一日。日が急に蔭って、これまで陽を受け

 

てキラキラ明るく輝いていた多くの花々の色が俄かに退嬰して目立たな

 

くなった。鳥兜の花も本来、その美しい紫碧色で知られるが、曇り日と

 

なって、他の花の色が薄れ、目立たなくなったいま、トリカブトの花だ

 

けが俄然、人を蠱惑する強い美しさを見せ始めている。おお、恐わ、怖

 

いぞ、近寄るな!のサインでもあるのだが、人は「どこ?どこ?どこに

 

咲いてる?」と目の色を変えてこの有毒の花を捜し始め、近づいてゆく。

 

         ■ 

 

 人類の滅びしのちも鳥渡る 

 

              (町田市枝澤聖文

 

 

 

  あちこちで籾殻焼きぬ眠れぬ夜

 

               (摂津市)内山豊子

 

 

 稲作の収穫時に山形へ旅行したことがある。稲の刈取、乾燥、脱穀

 

を終えた頃だった。広い山形平野の稲田のあちこちに籾殻が山の形に

 

積まれ、裾の数か所に小火が放たれ、炎ではない火がじわじわと籾殻

 

を焦がして行く。火が生きている証拠に煙が低くたなびき、燻煙の匂

 

いが広く拡散して行く。燻炭作りは山形だけではなく、全国各地で行

 

なわれているのだろう。眠れぬ夜を過すとき、鼻腔を通過する薄い薄

 

い燻煙の匂いが懐かしく戻り、浅い眠りに留めているのか。

 

 

 

  光りつつ飛びゆく命草の絮

 

              (横浜市)森 晶子

 

 

 多くの植物がわが命を次世代に残すために種々の方策を考えだしてい

 

る。その一つは風媒花の類い。また草の絮を風に流して子孫の種子を拡

 

散させるものも多い。憎いことに、風に運ばれるとき、種子が太陽の光

 

に曝されてキラリと光るのは、命の巣立ちを寿ぐ印しであるかも。

 

 

 

 

        朝日俳壇 2017.10.30

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                                      aou.hiko

 

   菜虫とる野を舞ふ未来知りつつも

 

             (兵庫県太子町)一寸木詩郷

 

 

 キャベツ畑の上に舞う蝶の乱舞は蝶がキャベツの葉に卵を産み付けて

 

いる種付けの舞である。にぎやかだね、可愛い蝶の舞だねなどと、目を

 

細めるわけにはいかない。蝶の卵はすぐに青虫になり、キャベツや野菜

 

の葉を旺盛に食害する。この青虫、蛹になった後、蝶になり、野を舞う

 

美しい蝶になることは重々承知なんだが、ここではキャベツを駄目にす

 

る悪い奴だからな、取っちまうのさ、と。

 

 

 

   大鯉のなすことのなき秋日和

 

            (神奈川県松田町)山本けんえい

 

 

 秋日和は冬を前にして、暖かな快晴の日である。さざ波一つ立たぬ池

 

や湖沼に住まう大鯉は湖底での捕食にも飽きたのか、することがなくて

 

やってきましたという風情で水面に浮上し、悠然と水面近くを遊弋する。

 

胴はまるまると太り、貫禄十分な泳ぎを見せる。池の端から餌を撒けば

まことに大きな大口をぽっかりと開けて食するから、満腹の状態でもな

 

いらしい。人も秋日和には外に出て、大鯉のアングリ口を見守っている。

 

   

 ともに聞けわたつみの声虫の声

 

             (岸和田市)小林 凛

 

 不戦こそ何より嬉し敬老日

 

             (長崎市)松尾信太郎

 

 露の世の忘れ去られし兵の墓

 

             (堺市)松木みゆき

 

 

 

  稲架棒を担ぎ踏切渡けり

 

            (塩尻市)古厩林生

 

 

 稻刈を終え、稻を束ねたが、稲架場には少し距離がある。こういう時

 

近時は、軽トラの出番であろうが、ここでは稲架棒名人がいるので、彼

 

に任せたのか。「私に任せなさい」と天秤棒担ぎ手は主張したのであろ

 

う。稻架棒の両端の荷台に稲束を荷重一杯に置き、エイヤとばかりに持

 

ち上げる。稻架棒は中心部で円くしなり、担ぎ手の肩と両脚が過重をし

 

っかりと支え歩き始める。近くに踏切がある。ここでは一気に渡りたい。

 

素早く左右を見渡して車輛の姿認めずであったので、そのままの揺歩運

 

搬を継続、無事に踏切を渡りにけり。

 

 よかったですね。

 

               

 

           (2017.12.01)

 

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      随想コラム [目を光らせて]so-netブログ

     
      e‐mailhiko@yc5.so-net.ne.jp

                       

 

 

 

   


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373  渦潮に揉まれし海月は永遠に戻ってこないま白き帽子 [文芸(短歌・俳句) 時事]


 

       随想コラム「目を光らせて」NO.373 「朝日歌壇」から。

 

 

       歌壇 期間 2017.9.04 ~ 9.25

 

  

   渦潮に揉まれし海月は永遠に戻ってこない

 

   ま白き帽子

   

 

      題 目:

     朝日新聞(2019.18)奈良市)山添聖子 氏作



                 アオウ ヒコ

     4-DSC_0059.JPG

     洋画家 青沼茜雲 の作品集から。36.「櫨 路」

          ・イギリス王立美術院名誉会員

          フランスサロン・・トンヌ会

          ・ノーベルノルウエー財団認定作家     

          ・世界芸術遺産認定作家 ・日展所属  

 

 

 

            ■

   

       「朝日歌壇・朝日俳壇から」 

  朝日新聞の歌壇・俳壇の入選作の中から最新の世相を鋭く切取った

 

 作品を新た選び、コメントを付けています。コメントは文芸上の範

 

 を超えることがあります。

 

 作品の頭に印が付いている作品は、時の政権が推進る前のめり

 

 右傾化路線平和憲法を無視し、国会の存在をないがしろにするさま

 

 を危惧する市民の投稿になるものです。これらの作品は、ここでは個

 

 々の作品の文芸上の軽重を問うことなく、注目すべき最新の世相を凝

 

 縮した作品として、そのすべてを採録しています。

 

  これらの作品に対しては、投稿者の真摯な叫びに読者の耳、素直に

 

 従うべしとしてコメントはつけておません。

 

  また、文中敬称は省略しております。  (筆者)

 



      朝日歌 201704

14-DSC_0670.JPG

                            aou.hiko

負の日本に学びし数多なる国が核兵器を禁止せよと言うのに                       

          (近江八幡市)寺下吉則                                                                                                                                                  

広島は広島の鐘長崎は長崎の鐘鳴る原爆忌

 

               (広島市)岡山玲子

 

                                                          

「ヒバクシャの条約になぜ参加せぬ」忖度をせず長崎市長

 

            (町田市)冨山俊朗

 

 

市長の役務めるうちに本物の市長になりし長崎市長

 

             (神奈川県)神保和子

 

                                                                                     

今こそは田上市長が立ち上がる政府に迫る核兵器禁止条約

 

             (たつの市)藤原明朗

 

 

草むらにキリギリス鳴く平和あり原爆の図の地獄の外に

 

             (熊谷市)内野 修

 

 

八月九日、三七度でたへがたし原爆投下の地上は一〇〇〇

 

 度超          (三鷹市)増田テルヨ

 

 

上等兵と刻みし墓の無言にて若き兵士は平和を知らず

 

             (大阪狭山市)山本信子

 

 

しんじつを言えばこんなに悲しくて長崎市長の平和宣言

 

             (水戸市)中原千絵子

 

 

原爆忌どこの総理かと問いただす日本の総理黙して語らず

 

             (小金井市)チャオ菰田

 

 

<核兵器禁止条約.>に一言も触れぬ首相の六日、九日

 

             (安中市)鬼形輝雄

 

 

大人でも泣くと初めて知ったのは雑音だらけの玉音放送

 

             (青森県)岩舘 順

 

 

黙祷のひとりのしじま原爆忌五人兄弟われのみ残る

 

             (国分寺市)越前春生

 

 

「どこの国の総理ですか」と総理に問うナガサキのヒバク

 

シャ核禁止への意思    (埼玉県)島村久夫

 

 

墓碑に読む叔父は衛生上等兵友を看護しつつ撃たれしと

 

             (前橋市)荻原葉月

 

 

被爆の日過ぎて一日一日と報道の減ることへの不安

 

             (長崎市)田中正和

 

 

             

 

 びっくりなされたでしょう。今号はのっけから歌の頭にを戴いた作

 

品がかくもずらりと並ぶとは、日本国の世情になにか、大異変が出来し

 

たとしか思えないではありませんか。

 

 

                 

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  aou.hiko

 

 日本国民は戦後70年間の穏和な平和の世情の中に、日常の安寧と安

 

堵を感じ取り、その継続を希求しているにも拘らず、戦争を知らぬ世代

 

が政治の中枢を占めるようになってから、かつて軍国主義の先導の下、

 

無謀な大戦を引き起こし、関係諸国はもとより自国も膨大な人的物的損

 

害を蒙り、苦しい戦時下の生活を強いられたことなど、戦争がもたらし

 

た歴史的教訓への理解が浅薄皮相で推移していることは真に嘆かわしい

 

ことではありませんか。

 

 第二次世界大戦の一、太平洋世界戦争とも称された日米戦争は、最終

 

期に於いて米国大統領トルーマンは首都無差別爆撃に次いで、新兵器の

 

原子爆弾を日本帝国の広島、長崎の無辜の市民の頭上に投下させ、無差

 

別大量殺戮作戦の仕上げに打って出ました。炸裂したきのこ状の雲の原

 

子爆弾が発した高熱と放射線によって、この日本の中堅都市は惨憺たる

 

被害を蒙り、そのあまりのむごさに、国は戦意喪失、漸くに収束に向か

 

った事実があります。

 

 

 この事実を身近に体験することなく育った世代が、指導者を含めて日

 

本だけでなく世界でも「核戦争を知らない世代」として大半を占めるよ

 

うになり、好戦的な妄動が始まっています。知らないことこそ、げに恐

 

ろしきことかな、の謂いです。

 

 戦後、日本は平和憲法を選択、世界に二度と戦争を仕掛けたりはしな

 

いと世界に向けて宣言、その言行一致により世界諸国も承認するように

 

なり、爾来、戦後七十年間の平和が保証され、実現し、今日に至ります。

 

 だが、国民はあの戦争のことを忘れてはいない。戦争に巻き込まれる

 

こと、平和が失われることへの惧れは本能的なものになっている。これ

 

が今年の夏、ひろしま・ながさきの原爆忌、核兵器禁止条約への不参加、

 

それらに触れた田上長崎市長の平和宣言、現首相の式辞と陛下のお言葉

 

との格差等。これらを取り上げて詠んだ歌として私たちの目に触れるこ

 

とになりました。

 

08-DSC_0692.JPG

                               aou.hiko

 

                 

 

 朝日歌壇の選者も全国から寄せられたこの澎湃たる平和への希求の声

 

を前にして、竦むほどの感動に支配されたようです。従来とおり花鳥風

 

月を題材にした短歌も寄せられていたが、今週の投稿に限ると、平和へ

 

の願い、戦争反対を叫ぶ歌が圧倒的であり、これだけの数のつき文芸

 

品が揃うと、それは国民輿論を担うものであり、簡単には無視したり

 

できない性質のものと理解すべきでしょう。

 

 

 本来の文芸作品としての投稿もあったが、本ブログではこの週、次の

 

一首だけが筆者の選に残り、コメントを付ける作業が大幅に減りました。

 

 

            

 

 

 お土産の貝殻六つ耳に当て海鳴り聴かむ君見し浜の

 

          (さいたま市)伊達裕子

 

 

 遠くの海からの貝殻に耳を当てて耳を澄まそう。その浜の海鳴りが聞

 

こえる、という詩がその根底にあるのか。どこかの詩人のように、貝殻

 

を耳に当てて、その海の海鳴りを聞いて下さい。と、彼はその浜の貝殻

 

を6個送ってくれたので、今から海鳴りの音を聞いてみるつもり。

 

 どうして6個も送ってくれたのか。大ぶりの貝を1個でよかったに、

 

その方が、大きな海鳴りがとよむかもしれないのに。

 

 

          

 

    日歌壇 2017..1       

01-DSC_0583.JPG

          

 

  死亡した母の手握る我が手には無言の愛の温もり残る

                   

              (三郷市)木村義

 

 

 母が亡くなった。遺体は命が滅すると次第に冷えてゆく。私は何度も

 

母の手を取って握る。そのたびに無言ながらも母の手から愛の温もりが

 

伝わってくる。いつもそうだった母の愛の温もりが。

 

 

 戦争を<憎む>はあれど<反省>は無き日本の首相の式辞

 

              安中市)鬼形輝雄

 

 

 

 ★八月の死者の魂語らねど沼一面に咲く蓮の花

 

              仙台市)矢口つとむ

 

 

 

 くちびるを噛みて「焼き場に立つ少年」直立不動に七十

 

   余年         宮崎市)木許裕夫

 

 

                                                                                                                                                                        

 トランプをモノクロ画面で鮮やかに虚仮にするだろ

 

   チャップリンなら  ひたちなか市)十亀弘史

 

 

 

          (2017.11.15)

 

 

           つづく → NO.373-2

 

 

 

 

   。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

 

 

 

 

 

 

 


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373-2  人類が滅亡をする引き換えに恒久平和のやってくるかも [文芸(短歌・俳句) 時事]


 

 

   随想コラム「目を光らせて」NO.373-2 朝日歌壇」から

 

 

 

    歌壇 期間 2017.9.18 ~ 9.25

 

  

 

   人類が滅亡をする引き換えに恒久平和の

 

     やって来るかも

   

 

      題 目

    朝日新聞(2019.25)岡山県)丸山敏幸 氏

                         アオウ ヒコ

 

 

                  

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             カラス瓜  22-151105  酒井 健 

 

                

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      日歌壇 2017.9.18

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                                aou.hiko

 

  壮烈な戦死と碑文にある叔父は飢えて餓死せし

   インパールにて    (長野県)小林正人

  偽薬(プラセボ)と知っていて服めというようなミサイル

 

   避難説明の人    

              (水戸市中原千絵子

 

 

  御生憎七十五日待ってても忘れはしない森友加計

 

              (川崎市小島 敦

 

 

  船底に押され押されて引き揚げき記憶のはじめにありし

 

   苦しみ           

              (横浜市)笠松一恵

             

                                       

 

   ガラス戸に薄羽蜉蝣羽震う懐かしき顔で不意に死はくる

 

               (東京都)渡部鈴代

 

 お風呂場のガラス戸かなあ。ウスバカゲロウが一尾羽振るわせている。

 その顔、見覚えがある懐かしい顔で。が、ストンと落ちてしまった。

 不意に死がやってきたのだ。

 

「せんせい」とホームに呼ばるる義母のいて九十九も

   心は教師               

              (町田市)冨山俊朗

  他の職業についていたら、そうはいかないでしょうが、長らく教師を

 務めていたお陰で、義母はホーム内で「センセイ」と呼ばれる。すると、

 先生は「ハイ、なに?○○さん」と返事する。もう、歳は九十九歳にな

るんですよ。でも、先生と呼ばれるのが身についているんです。

 

 

 一羽さえ潜らず舟を曳くごとく火に照らされて六羽の鵜過ぐ

 

                  (東京都)豊 英二

 

 鮎呑の儀式現場に出る前までは、普通の恰好をさせてもらいますよと

 

 鵜匠と語らったわけではなかろうが、鵜飼の現場に着くまでの間、六羽

の鵜は一羽も潜ることなく昂然と頭を上げ、篝火に照らされ、六羽揃っ

 

て、あたかも鵜舟を曳くように、いなせな姿を見せて、今、目の前を過

 

ります。

 

 

 遠近を大小に見せ闇沖に漁火灯る頃となりたり

 

              (舞鶴市)吉富憲治

 

 絵を描くとき、見た目に映るような描法を取るときは、いわゆる遠近

 

法でスケッチする。手前にあるものを大きく、遠くにあるものは小さく、

 

中ほどにあるものは中くらいの大きさで配置する。

 

  夜の港に出て、遠い漁火の明滅を楽しんでいる。そして、これは絵を

かくのとは違って、自然そのままに見える景色を説明するために「遠近

を大小に見せ」て闇沖で漁火が明滅する」と説明している。

 

 

 渦潮に揉まれし海月は永遠に戻ってこないま白き帽子

 

             (奈良市)山添聖子

 

 渦潮で有名な現場で、橋の上から、または船の上から壮大な渦潮

 

を息を詰めて観ている。渦潮が逆巻く海流の動きは吸い込まれるよう

 

な波の動きが恐ろしい連想を見せ、音をたてて動き回る。現実には渦の

 

中心に海月(くらげ)などは見えていない。だが、人は想う。白い海月

 

があの渦中に引き込まれ、揉まれたら二度と戻っては来ない。もし、あ

 

の白くらげに似たわたしの白い夏帽子があそこにあれば同じことよね。

 

引き込まれて二度とは戻っては来ない。

 

 

 ★ヴェルレエヌ詩集私に貸したままいとこは逝けり

    インパール作戦      

          (武蔵野市)関口はる子

 

 

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   朝日歌壇 2017.9.25

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                                                      aou.hiko

 

 戦没の父無き苦しみ続きしにミサイル発射に戦の恐怖                    

 

              (飯田市)草田礼子                   

 

 ★ミサイル通過のJアラート高く響きし後ホッホホッホと

     山鳩泣けり        

               (牛久市)伊藤夏江

 

 われはまだ生れてなくても責を負ふ朝鮮人虐殺の過去の

   歴史の          

               (入間市)有賀政夫                   

 

 稲のはな咲く山里の朝六時「地下へ避難!」とJアラー

 

   トは           

               (飯田市)鬼形輝雄

 

           ■                  

 

 先導しはた随行し時にまたタッチアンドゴー秋あかね翔ぶ

 

               (伊勢原市)宇佐美正治

 

 秋の一日、真っ青に晴れた空を仰いで、群れ飛ぶ秋つあかねの飛翔を

 

愉しんでいる。特に仲間同士がお茶目たっぷりに飛び交わす飛翔の数々、

 

 その昔アカトンボと愛称された練習機が秋空に展開した、のどかな練習

 風景。あれとまったく同じ飛び方をするじゃないか秋あかね君。とケチ

 をつけたら、いやそれは違うと言われた。われら秋アカネは昔からこの

飛び方をしていたのを人間アカトンボ操縦士が目ざとく見けて「彼ら

の飛翔法をわれらの(飛翔操典)に加えよう」とされたのですよ。

 

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 水銀のるるところがり球体は宇宙の実在を示す現象 

 

               (神奈川県)九螺ささら

 

 

 私は6歳のころ、肺門淋巴腺を患って、大気療法のため庭に「バンコ」

 

( 縁台:畳1帖大)に蒲団を載せた寝台に寝かせられて安静を保つ日々

を送った。朝、出勤する父は私に体温計を渡し午後3時の検温を命じた。

夕に帰宅した父はその体温計を見て、7度(37℃)以上の時は眉を曇ら

した。

 ある日、私は検温した体温計が7度に届かないのを見てこれは大変、

 父が心配すると思った(実は逆だったのだが)そこで、家に上り、

薬缶の蓋の穴から出ている蒸気に体温計の水銀部を当てた。すると水銀

の部分がポキッと折れ、中身がぽろっと飛びだした。水銀だった。

不思議な性質を持っていた。小球はころころと動き、手の掌に集めると

一つの集合体となって震えていた。この歌にある「るるところがり球体」

である。帰宅した父には薬缶の蒸気に当てたとは言わなかった。父は子

供だから落として壊したと思ったらしく、なにも言わなかった。

 

                              

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 人類が滅亡をする引き換えに恒久平和のやって来るかも

  

               (岡山県)丸山敏幸

 

  それはまた天地悠久の果てを見るごとく、到来する平和と文化のほど

 が高度の文明を持っているのだろうか、などと心配する現地球人の蒼褪

 めた貌を見よ。そう簡単に恒久平和は来ませんよ。第一、そこに人類を

初めとする全生物が滅している地球の模様を、どなたが確かめる?。

  死に絶えた荒廃の地球に、今のように四季の花々を取り戻すには数10

世紀は要る。新生物の発現から気の遠くなる進化の過程が続くのか。

殺戮を繰り返す種族が跋扈する新世界にならぬことを祈るや切である。

 

           (2017.11.15)

 

 

 

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372 指先に情かよひけり風の盆 [文芸(短歌・俳句) 時事]

   

     随想コラム「目を光らせて」NO.372 「朝日歌壇・朝日俳壇

 

       俳壇 期間 2017.9.04 ~ 9.25

 

  

       指先に情かよひけり風の盆*   

 

      題 目:

     朝日新聞(2019.10玉野市)勝村 博氏 作

 

                   アオウ ヒコ

 

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      洋画家 青沼茜雲の作品集から。35.「春雪の大宰府天満宮御本殿」

              ・イギリス王立美術院名誉会員 フランスサロン・・トンヌ会員 

              ・ノーベルノルウエー財団認定作家 ・世界芸術遺産認定作家 ・日展所属  

   

         「朝日歌壇・朝日俳壇から(略) 


        朝日俳壇 2017.9.04                                                                                                                                                 

  ★夾竹桃原爆の死は続きをり

                                                       (浜松市)北川 覚

                                                          

 

 野地蔵の肩を選びし蝉の殻

              (群馬県東吾妻町)酒井大岳

 

 

 愛する妻を失った夫は確かに現世の日常の暮らしの場で妻の姿を見る

 

ことはできなくなった。だが、彼は妻は自分の身の回りの諸物に姿を変

 

えて自分を見守ってくれているのを発見、それを俳句に詠み込む形で投

 

稿がなされるようになった。

 

 この句では(蝉の殻)が妻の化身として置かれている。峠の傍に立つ

 

野地蔵は行きかう人の目に良く触れる。地蔵の肩であれば、よく目立ち

 

、見逃すことはなかろう。夫の目からすれば「あゝ、ここにも居て見守

 

ってくれたようだね」である。

 

 数多い自然界の「もの」に宿るかのようにして、彼を見守る彼女の息

 

吹や配慮をそこはかとなく感じさせてくれる日常があることに気付き、

 

その幸せを感じる日が増えて行く。

 

 俳句をよくする夫君は、今は亡き夫人との彼我間の交流をさりげなく

 

句の形に整えようと努力し、昇華させ続けている。

 

 この句を読む立場にある人へ。(蝉の殻)は単なる抜け殻ではなく、

 

亡き夫人が小さくなって此処に籠っている。夫君が野地蔵の前に現れる

 

のを待っていると読み取られよ。

 

 一見、平凡に見えたこの句が途端に佳句、秀句に転じるの不思議。

 

                                                                          

 

 ★吾にある加害の恥骨終戦日

                (本庄市)福島光良

 

 

 ★サングラス敗戦国に降り立ちぬ

                      (西海市)前田一草

 

  

 クリスチャンなれど先祖へ盆用意

                                  (伊那市)北原喜美恵

 

 秀吉の時代から、近くは熊本の天草地方のキリスト教信者まで、クリ

 

スチャンは迫害を受けてきた歴史があり、明治時代にも神仏分離の大鉈

 

が振るわれたりした。が、いまは信仰の自由の時代とあって、日本では

 

他の宗旨に対する態度は「海容」そのもので、先祖は他の宗教を迫害し

 

たりしない宗教観が深く根付いている。

 

 うちは今キリスト教だが、先祖には仏教徒だった人もいるようだし、

 

「お盆」も用意しているという。どの宗教も「汝、殺すなかれ」の教義

 

を第一にしているし、これは自分以外の宗教に寛容であれ、というのに

 

通じる。その姿勢を取りうる教義と風習を大切にしたいものである。

 

 

                       

     日俳壇 2017..1

           

   夕立雲けんかいよいよ三つ巴

                      (稲城市)三原正彦

 

 

 灼熱の一日を終えた夏の夕べにむくむくと発生する夕立雲。局地的な

 

界雷を抱いた黒い雲のいくつかが急速に膨張を極める情景を見上げてい

 

る。どの雲が先手を打って界雷を落とし雹を叩きつけるか、喧嘩腰の

 

勢、三つ巴じゃ、と楽し気に見守っている。

 

 

 

  存在の忘れられたり夕端居

                     海老名市)川上益男

 

 

 これはどうしても主人公の年齢に大きく関わっている、と言わざるを

 

得ない。かつて、まだ矍鑠とした風采と積み増した知識と知恵が豊かな

 

人格を誇示していた頃は、同年代の同僚、学友、知人が健在で群れをな

 

していた。自宅の庭の縁側や庭内のベンチで一日の日照りを鎮めている

 

姿を見つけては「お涼みですか」と声をかけてくる人に事欠かなかった。

 

 だが、時は流れた。私という存在を知る人々が櫛の歯が抜けるように

 

消えてしまった。夕端居の私は次第に残された数少ない櫛の歯になって

 

残っている。寂しさの募る夕端居をなんとしよう。

 

 

                                                                                                                                                                         

  夏痩せて妻の後ろを歩きけり

                (東京都)小山公商

 

 今年は夏の猛暑に負けて目立つほどに夏痩せをした。妻と一緒に出掛

 

ける時は、堂々たる体躯を保持する妻との比較を恐れるではないが、い

 

つの間にか歩幅も狭くなり、繰り出す足並みも遅れをとり、気が付くと

 

妻の後ろを歩いている。後塵を拝しているのだ。

 

 夏痩せとともに老齢化が進み、肉体の衰えが目立つのは情けないこと

 

である。夫君の脚力が衰えていることに気づき、聡くも足並みを揃える

 

ような妻女であれば、これこそ賢婦の鑑として永久に称えられるべしと

 

する夫君の願いが満たされる日が来るのか。やせっぽっちの夫君の嘆き!

 

 

 

  墓掃除無縁仏の増えにけり

               (安西市)小川 弘

 

 

 秋の彼岸を機に一家の墓掃除とお墓参りをなされたお方も多かろう。

 

お墓掃除をされながら周りをぐるりと見まわしたところ、草ぼうぼうの

 

、掃除がなされていないお墓(無縁仏)がいくつも見られ、その数が明

 

らかに増えていることに気付いた。親族の地理的拡散、少子化の進展、

 

檀家の経済的疲弊などが原因。

 

 

 

  苧殻焚く姉妹を雲が見て通る

 

                    (群馬県東吾妻町)酒井大岳

 

 

 苧殻(おがら)を焚くのは盂蘭盆会の慣わしで、祖先代々が実家に間

 

違いなく到着するために合図する煙である。この句の作者は、本稿(9.

 

04)「野地蔵の肩を選びし蝉の殻」の作者に同じ。この句の作者の作

 

風については多くの字数を使ってコメントしてある。(乞うご参照)。

 

 本句に於いては、キーワードは である。この雲に乗って、作者の

 

亡妻がこの世にやってくる。苧殻を焚いて迎える姉妹(亡妻の姉妹。現

 

世在)の姿を雲の上から見ている。その様子(おお、あの雲に乗ってや

 

って来ているな。苧殻を焚いて迎え火をしている姉妹をも見ているよう

 

だ)と、下界から現世の夫君(俳句の作者)が見上げている。

 

 

 

  指先に情けかよひけり風の盆

 

                 (玉野市)勝村 博

 

 

 富山県八尾町では、町中の男女が毎年二百十日の九月一日から3日、

 

風の神を鎮め、豊作を祈って、越中小原節を三味線・胡弓・太鼓で囃し

 

つつ唄いながら夜を徹して踊る。若いお女中は頭に深く折った菅笠を結

 

んでいるために女の貌が見えず、細やかな踊りの所作で、若い細い女の

 

白い指をしなやかに夜空に交錯させて踊る姿が見物の男衆には堪えられ

 

ない。かつては八尾の局地的な踊りだったが、近時、爆発的な人気を呼

 

び、あの、指先に情通わすおなごしの踊りを見たい、近くで接したいと

 

する外からの男客で会期中、町は溢れかえるようになった。

 

 

 

  父母の声を探してゐる墓参

 

               (神戸市)岩水ひとみ

 

 

 お盆には必ず先祖のお墓参りをする、という人も多かろう。久しぶり

 

に墓参したら、周りは雑草だらけ、お墓の花受には水も枯れ、先に墓参

 

した時の花の咲殻が汚くこびりついていたりする。草を引き、墓石を洗

 

い、花をお供えして線香を手向ける間、この頃は口頭で、父母に語り掛

 

ける後裔たちも増えてきたようだ。亡き父母や、それに近い祖先たちが、

 

生者に声で話し掛けたり、返事したりする可能性の一番高いところは遺

 

骨が収納されているこのお墓界隈であろう。向こうも生者たちが何かも

 

のを言わなければ、返事のしようがない。「お墓の周りがやっときれい

 

になりました。そちらの様子をお聞きする前に、こちらの近況をお知ら

 

せしましょう」周りが急にシーンとなる。彼岸では耳を澄ませている様

 

子。こちらでは長幼の順で近況報告が始まる。

 

 残念ながら今はまだ、彼岸と此岸を跨ぐだけの電磁システムが未完成

 

で、双方ともやきもきと不自由な思いをしている。そのうち、空海のご

 

とき俊秀が輩出。次々に難題を解決していくことだろう。楽しい父母や

 

愛した妻や夫、との素晴らしい邂逅も夢ではない。

 

 

 

  蜻蛉を追うて視線は点と線

 

               (泉大津市)多田羅紀子

 

 

 捕虫網を手に持って野原で蜻蛉を追っているのか、蜻蛉飛ぶ高原に居

 

て、トンボの飛ぶさまを観察しての結論なのか。いずれにしても蜻蛉は

 

点として空に在るときはホバリングしての静止の状態にあり、餌を見つ

 

けたのか、蜻蛉がそれを中止してほかの場所へ移行するまでの過程は最

 

短距離の「直線」で結ばれる。蜻蛉を観察するにしろ、捕虫網を翳して

 

野原を駆けるときにしろ、点(静止時)と線(飛翔時)の二つを考えれ

 

ばいい。シンプルですっきりしている。

 

 

  露といふ儚きものを零しけり

 

               (今治市)横田晴天子

 

 

 台風の時はさておき、静かな夜では、一晩中夜気中の水分が樹葉や草

 

の葉に宿り続け、朝には露となって人の目に触れる。それは、ちょっと

 

でも触れれば落ちる儚いものである。あゝそれを知りながら今朝は葉に

 

触れてしまい、せっかくの露玉を零してしまいました。

 

 

    つづく → NO.372-2   (2017.11.1)

 

 

 




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372-2  赤とんぼ虚空に翅をやすめをり [文芸(短歌・俳句) 時事]

  

      随想コラム「目を光らせて」NO.372-2朝日歌壇・朝日俳壇

 

 

      俳壇 期間 2017.9.18 ~ 9.25

  

 

     赤とんぼ虚空に翅をやすめをり

   

 

      題 目:

         朝日新聞(2019.18米子市)中村襄介氏 作

              アオウ ヒコ

 

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        コスモス  151022  酒井 健

 

                 

 

    日俳壇 2017.9.18

  赤とんぼ虚空に翅を休めをり 

               (米子市)中村襄介

 昭和の初期あたりまでは、水田や沼、溜池が農薬に汚染されることも

 

もなく、トンボはヤゴの卵を無数に産み付け、それが孵って蜻蛉となり

 

 秋の大飛翔につながるのが普通だった。群れを成す赤とんぼの飛翔が

 

見られなくなって久しいが、今では回復の過程にあるらしく、場所によ

 

っては赤とんぼの姿が見られるらしい。この作者も空の青に飛ぶ赤とん

 

ぼを見つけ、観察し「虚空で翅を休めています」としている。

 

 ヘリの停止飛行(ホバリング)よろしく、しかも無音で留まる瞬間を

 

みつけたらしい。次に直線で飛行する先は浮遊する獲物の小昆虫であろ

 

うか。このところ、人が作ったヘリやオスプレイがしばしば墜落炎上す

 

る事故が頻発しているが、蜻蛉が翅を前後左右に動かし、回転させる筋

 

肉エンジンシステムの足元にも寄れていないからである。

 

 

 ★ミサイルの次から次へ稲雀

 

              (埼玉県)佐藤 茂

 

 

 

  老いてなほ野球少年獺祭忌

 

              (向日市)松重幹雄

 

 

 十九日正岡子規の忌日。九月である。糸瓜忌ともいうが、獺祭忌の方

 

がよく知られている。数年前に大吟醸級の日本酒が「獺祭」の名で売り

 

出され、一躍名を揚げたが、それまでは「だっさい」と読むことを知ら

 

ない人が多かった。

 

 六、七年前の夏、恒例の高校仲間による軽井沢ゴルフコンペの打上げ

 

を地元の居酒屋で行ったとき、有名ラベルを張った一升瓶をずらりと並

 

べた棚があったが、それを見ながら、九州から参加していたIw君が

 

「獺祭」の瓶を指して「これ、読めますか」と吾に問うたのだ。即答で

 

きず、ウーンと唸って過去の漢字記憶歴を辿り、漸くに子規の獺祭忌を

 

朧げに召喚するにこぎつけ、あれは確か「だっさい」だったな、と声に

 

出したが、Iw君はにこりとして「流石やな」と肩を叩いてくれた。

 

 

 子規は晩年不治の病に伏したが野球好きでも知られ、Baseballを「野

 

球」と翻訳したのではなかったか。

 

 この句は「年をとってもいつまでも野球少年ですよ、私は」と言い

 

「今年も子規の獺祭忌が来ますね」と懐かしがる人が日本にはごまんと

 

る。

 

 

 

  餓死という戦死もありし敗戦忌

 

               (高槻市)池田利美

 

 

                    

   蜩や古里を去る無人駅

 

                 (高松市)白根純子

 

 

 久しぶりに尋ねた故郷はさびれて、帰りに乗った電車の駅は無人駅に

 

なっていた。折から蜩の鳴き声が聞こえてきて、さびしさをいや増す秋

 

の暮れでありました。

 

 

 原爆忌嫁がず逝きし友思ふ

                (横浜市)本多豊明

 

 

 

  八朔を選び天寿を全うす

 

                (横浜市)松永朔風

 

 

 これはおそらく百歳をなんなんとするお方が、死期の迫る日、看取る

 

家族から、「何か欲しいもの、食べたいものありますか?」と問われて

 

「八朔」を指名し、口にした後、満足げに天寿を全うされたのであろう。

 

幸せなお方でありました。

 

 

 

 大空襲・特攻・沖縄・原爆死 罪なき人の命し無残

 

                (アメリカ)大竹幾久子

 

 

 

  濃竜胆一茎挿して色足れり

 

              (尼崎市)田中節夫

 

 

 伝統的なヨーロッパ人の花の活け方、楽しみ方は、この伝で言うと

「多色多茎の花を太口花瓶にドバッと投げ込む活けかた」にありか。

 

古来から、伝統ある華道の教えは、一輪の花を挿して、その花の精の美

 

しさを極めるにありか。例示しているのが「濃い紫の竜胆の花一茎を一

 

輪挿しに挿せば十分。これ以上の色を加える必要はない」である。日本

 

人の美意識の典型を示して十分である。

 

 

 

 生きる者みな遺族なり曼殊沙華

 

                 (尼崎市)ひじり純子

 

 

 

  ふかふかの富士の座布団すすき原

 

                (伊万里市)萩原豊彦

 

 

 富士山はどこから見ても美しい、絵になる、と言われる。この句も絵

 

の構成から見ると、遠景には富士山が中心をなし、手前の前景には広々

 

としたすすき原が広がり、あたかも富士山がこのふかふかの座布団にど

 

っかと座っているように見える構図である。

 

 場所の特定はなされていないが、広大なススキが原を擁する地形を基

 

に探すと、栃木県奥日光中禅寺湖の北方、男体山の西方に広がる湿原。

 

戦場が原ではないかと思われる。だが、手前の広大な湿原に裾野を埋め

 

るようにススキが育っているところは数多くあるであろうし、そこが日

 

本一のお山と呼ばれる所以でもあろう。

 

 

     朝日俳壇 2017.9.25           

 

  秋といふ駅に降り立つ目覚めかな 

                    

                 (東京都)青木千禾子

 

                   

 夏の残骸の終りの日々を暮らしていたが、今朝目覚めてみると、今日

 

は違う。すっきりした冷涼な朝がこの身を包んでいる。昨日までいた夏

 

を脱して秋という新駅に降り立つ気分だ。季節の切り替えはこれほどド

 

ラスチックに行われるものか。

 

 

 

  ことごとく風に消えゆく法師蝉

 

            (熊本県菊陽町)井芹眞一郎

 

 

 秋の終焉を告げる蜩の啼き音があちこちで聞かれていたものだが、秋

 

風が立ち、次々に風吹くにつれて、いつの間にか法師蝉は居なくなった。

 

 

 

  コスモスを叩く風あり跳ね返す

 

                (東京都)望月喜久代

 

 

 コスモスの茎は細い。あれだけの花を支えて、折れるのではないかと

 

思われるが折れない。前後左右に揺れて風をやり過ごすのだ。偶に叩き

 

つけるような風がコスモスを襲うことがある。だが、茎は伏せない、折

 

れない。風が行き過ぎると、ピョンと跳ね上がるように立ち上がる。コ

 

スモスの茎は強靭にして、しなやかな構造をしていることだ。

 

 

 

  道違へ噂にまさる大花野 

 

          (奈良市)田村英一

 

 

 道を間違えてよかった。前から噂に聞いてはいたが、これほど広い花

 

野だとは思わなかった。暫らく呆然と立ちつくしていた。

 

 

 

  庭で焼く旬をけぶらせ初秋刀魚

 

             (大阪市)大川隆夫

 

 

 庭でコンロの火で初秋刀魚を焼いている。煙が揚がるが、なに旬をけ

 

ぶらせているんだと気にしないでいる。近時、市井で焚火を禁じるとこ

 

ろが増えたが、サンマのけぶりくらいは許せよやい、である。隣の奥さ

 

ん窓を開けて「いいですね、初秋刀魚でしょ?うちはまだですよ」と歓

 

迎してくれましたぜ。

 

 

  三十回咀嚼につるべ落としかな

 

             (松山市)正岡唯真

 

 

 歯が悪くなったこともあるが食事の度に「よく噛んでね。一口30

 

咀嚼、お願いね」と家人に言われる。そのたびに頷くのだが、これをや

 

るには時間がかかる。一方、外をご覧なさい。時はつるべ落としで進行

 

しているのですよ。軍隊で早飯、早○を強いられてきた癖がなかなか抜

 

けなくてね。「餓死するなよ」と言われた方が効き目があると思います

 

よ。

 

 

   湖のごとコスモスのごと妻眠る

 

             (三郷市)岡崎正宏

 

 

 広々とした湖が静かにねむるように、また美しいコスモスの花野が静

 

かに揺れもせずにいるように、愛妻は静かな睡眠をとっている。

 

 

   桐一葉月の光を浴びて落つ

 

            (飯塚市)釋 蜩硯

 

 秋が深み行くにつれて、桐の葉は次々に落ちていったが、残る葉一枚

 

は病み呆けた老人のいのちを繋ぎとめるかのように、落ちずに残ってい

 

た。が昨夜満月の光を葉一杯に受けて、ついに落ちてしまった。

 

 

  人間も桃もおほかた皮と水

 

            (北本市)萩原行博

 

 

 そう言ってしまえばお仕舞よ、であろうか。薄い果皮の下に甘い果実

 

を秘めた桃も、分別も盛りの旬の人間も、つづめて言えば大方は皮と水

 

よ、と達観するに至るのは、水分が半分以下の干からびた個体の状態で

 

既に死に至っているからである。何もわざわざ言及するには及ばない。

 

 

 

  俳壇のいつしか秋の香り満つ

 

            (平塚市)日下光代

 

 

  そうでしたね。酷暑の夏は創造的な技術の開発も、優れた文芸々の

 

創造もなかなか出来にくい季節でした。この欄への投稿数も少なく、数

 

合わせのために入選させたような作品もあり、これはどうしたことかな

と嘆じた盛夏の月がありました。ひと月くらいは投稿なしの月を設定す

 

るのもよろしからん、と嘆じた日々がありましたね。

 

 しかし、その俳壇(歌壇も同じく)にも、いつしか、秋の香りが満つ

 

日が戻ってきたようです。投稿数も回復したのでしょう。内容も文芸の

 

香りが満ちて参りました。嬉しくも忙しさも秋の香りのなかにこれあり。

 

 

 

                      (2017.11.01)

 

 

 

 

 

                


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