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373  渦潮に揉まれし海月は永遠に戻ってこないま白き帽子 [文芸(短歌・俳句) 時事]


 

       随想コラム「目を光らせて」NO.373 「朝日歌壇」から。

 

 

       歌壇 期間 2017.9.04 ~ 9.25

 

  

   渦潮に揉まれし海月は永遠に戻ってこない

 

   ま白き帽子

   

 

      題 目:

     朝日新聞(2019.18)奈良市)山添聖子 氏作



                 アオウ ヒコ

     4-DSC_0059.JPG

     洋画家 青沼茜雲 の作品集から。36.「櫨 路」

          ・イギリス王立美術院名誉会員

          フランスサロン・・トンヌ会

          ・ノーベルノルウエー財団認定作家     

          ・世界芸術遺産認定作家 ・日展所属  

 

 

 

            ■

   

       「朝日歌壇・朝日俳壇から」 

  朝日新聞の歌壇・俳壇の入選作の中から最新の世相を鋭く切取った

 

 作品を新た選び、コメントを付けています。コメントは文芸上の範

 

 を超えることがあります。

 

 作品の頭に印が付いている作品は、時の政権が推進る前のめり

 

 右傾化路線平和憲法を無視し、国会の存在をないがしろにするさま

 

 を危惧する市民の投稿になるものです。これらの作品は、ここでは個

 

 々の作品の文芸上の軽重を問うことなく、注目すべき最新の世相を凝

 

 縮した作品として、そのすべてを採録しています。

 

  これらの作品に対しては、投稿者の真摯な叫びに読者の耳、素直に

 

 従うべしとしてコメントはつけておません。

 

  また、文中敬称は省略しております。  (筆者)

 



      朝日歌 201704

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                            aou.hiko

負の日本に学びし数多なる国が核兵器を禁止せよと言うのに                       

          (近江八幡市)寺下吉則                                                                                                                                                  

広島は広島の鐘長崎は長崎の鐘鳴る原爆忌

 

               (広島市)岡山玲子

 

                                                          

「ヒバクシャの条約になぜ参加せぬ」忖度をせず長崎市長

 

            (町田市)冨山俊朗

 

 

市長の役務めるうちに本物の市長になりし長崎市長

 

             (神奈川県)神保和子

 

                                                                                     

今こそは田上市長が立ち上がる政府に迫る核兵器禁止条約

 

             (たつの市)藤原明朗

 

 

草むらにキリギリス鳴く平和あり原爆の図の地獄の外に

 

             (熊谷市)内野 修

 

 

八月九日、三七度でたへがたし原爆投下の地上は一〇〇〇

 

 度超          (三鷹市)増田テルヨ

 

 

上等兵と刻みし墓の無言にて若き兵士は平和を知らず

 

             (大阪狭山市)山本信子

 

 

しんじつを言えばこんなに悲しくて長崎市長の平和宣言

 

             (水戸市)中原千絵子

 

 

原爆忌どこの総理かと問いただす日本の総理黙して語らず

 

             (小金井市)チャオ菰田

 

 

<核兵器禁止条約.>に一言も触れぬ首相の六日、九日

 

             (安中市)鬼形輝雄

 

 

大人でも泣くと初めて知ったのは雑音だらけの玉音放送

 

             (青森県)岩舘 順

 

 

黙祷のひとりのしじま原爆忌五人兄弟われのみ残る

 

             (国分寺市)越前春生

 

 

「どこの国の総理ですか」と総理に問うナガサキのヒバク

 

シャ核禁止への意思    (埼玉県)島村久夫

 

 

墓碑に読む叔父は衛生上等兵友を看護しつつ撃たれしと

 

             (前橋市)荻原葉月

 

 

被爆の日過ぎて一日一日と報道の減ることへの不安

 

             (長崎市)田中正和

 

 

             

 

 びっくりなされたでしょう。今号はのっけから歌の頭にを戴いた作

 

品がかくもずらりと並ぶとは、日本国の世情になにか、大異変が出来し

 

たとしか思えないではありませんか。

 

 

                 

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  aou.hiko

 

 日本国民は戦後70年間の穏和な平和の世情の中に、日常の安寧と安

 

堵を感じ取り、その継続を希求しているにも拘らず、戦争を知らぬ世代

 

が政治の中枢を占めるようになってから、かつて軍国主義の先導の下、

 

無謀な大戦を引き起こし、関係諸国はもとより自国も膨大な人的物的損

 

害を蒙り、苦しい戦時下の生活を強いられたことなど、戦争がもたらし

 

た歴史的教訓への理解が浅薄皮相で推移していることは真に嘆かわしい

 

ことではありませんか。

 

 第二次世界大戦の一、太平洋世界戦争とも称された日米戦争は、最終

 

期に於いて米国大統領トルーマンは首都無差別爆撃に次いで、新兵器の

 

原子爆弾を日本帝国の広島、長崎の無辜の市民の頭上に投下させ、無差

 

別大量殺戮作戦の仕上げに打って出ました。炸裂したきのこ状の雲の原

 

子爆弾が発した高熱と放射線によって、この日本の中堅都市は惨憺たる

 

被害を蒙り、そのあまりのむごさに、国は戦意喪失、漸くに収束に向か

 

った事実があります。

 

 

 この事実を身近に体験することなく育った世代が、指導者を含めて日

 

本だけでなく世界でも「核戦争を知らない世代」として大半を占めるよ

 

うになり、好戦的な妄動が始まっています。知らないことこそ、げに恐

 

ろしきことかな、の謂いです。

 

 戦後、日本は平和憲法を選択、世界に二度と戦争を仕掛けたりはしな

 

いと世界に向けて宣言、その言行一致により世界諸国も承認するように

 

なり、爾来、戦後七十年間の平和が保証され、実現し、今日に至ります。

 

 だが、国民はあの戦争のことを忘れてはいない。戦争に巻き込まれる

 

こと、平和が失われることへの惧れは本能的なものになっている。これ

 

が今年の夏、ひろしま・ながさきの原爆忌、核兵器禁止条約への不参加、

 

それらに触れた田上長崎市長の平和宣言、現首相の式辞と陛下のお言葉

 

との格差等。これらを取り上げて詠んだ歌として私たちの目に触れるこ

 

とになりました。

 

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                               aou.hiko

 

                 

 

 朝日歌壇の選者も全国から寄せられたこの澎湃たる平和への希求の声

 

を前にして、竦むほどの感動に支配されたようです。従来とおり花鳥風

 

月を題材にした短歌も寄せられていたが、今週の投稿に限ると、平和へ

 

の願い、戦争反対を叫ぶ歌が圧倒的であり、これだけの数のつき文芸

 

品が揃うと、それは国民輿論を担うものであり、簡単には無視したり

 

できない性質のものと理解すべきでしょう。

 

 

 本来の文芸作品としての投稿もあったが、本ブログではこの週、次の

 

一首だけが筆者の選に残り、コメントを付ける作業が大幅に減りました。

 

 

            

 

 

 お土産の貝殻六つ耳に当て海鳴り聴かむ君見し浜の

 

          (さいたま市)伊達裕子

 

 

 遠くの海からの貝殻に耳を当てて耳を澄まそう。その浜の海鳴りが聞

 

こえる、という詩がその根底にあるのか。どこかの詩人のように、貝殻

 

を耳に当てて、その海の海鳴りを聞いて下さい。と、彼はその浜の貝殻

 

を6個送ってくれたので、今から海鳴りの音を聞いてみるつもり。

 

 どうして6個も送ってくれたのか。大ぶりの貝を1個でよかったに、

 

その方が、大きな海鳴りがとよむかもしれないのに。

 

 

          

 

    日歌壇 2017..1       

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  死亡した母の手握る我が手には無言の愛の温もり残る

                   

              (三郷市)木村義

 

 

 母が亡くなった。遺体は命が滅すると次第に冷えてゆく。私は何度も

 

母の手を取って握る。そのたびに無言ながらも母の手から愛の温もりが

 

伝わってくる。いつもそうだった母の愛の温もりが。

 

 

 戦争を<憎む>はあれど<反省>は無き日本の首相の式辞

 

              安中市)鬼形輝雄

 

 

 

 ★八月の死者の魂語らねど沼一面に咲く蓮の花

 

              仙台市)矢口つとむ

 

 

 

 くちびるを噛みて「焼き場に立つ少年」直立不動に七十

 

   余年         宮崎市)木許裕夫

 

 

                                                                                                                                                                        

 トランプをモノクロ画面で鮮やかに虚仮にするだろ

 

   チャップリンなら  ひたちなか市)十亀弘史

 

 

 

          (2017.11.15)

 

 

           つづく → NO.373-2

 

 

 

 

   。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

 

 

 

 

 

 

 


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373-2  人類が滅亡をする引き換えに恒久平和のやってくるかも [文芸(短歌・俳句) 時事]


 

 

   随想コラム「目を光らせて」NO.373-2 朝日歌壇」から

 

 

 

    歌壇 期間 2017.9.18 ~ 9.25

 

  

 

   人類が滅亡をする引き換えに恒久平和の

 

     やって来るかも

   

 

      題 目

    朝日新聞(2019.25)岡山県)丸山敏幸 氏

                         アオウ ヒコ

 

 

                  

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             カラス瓜  22-151105  酒井 健 

 

                

  **************************************************************                      

 

      日歌壇 2017.9.18

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                                aou.hiko

 

  壮烈な戦死と碑文にある叔父は飢えて餓死せし

   インパールにて    (長野県)小林正人

  偽薬(プラセボ)と知っていて服めというようなミサイル

 

   避難説明の人    

              (水戸市中原千絵子

 

 

  御生憎七十五日待ってても忘れはしない森友加計

 

              (川崎市小島 敦

 

 

  船底に押され押されて引き揚げき記憶のはじめにありし

 

   苦しみ           

              (横浜市)笠松一恵

             

                                       

 

   ガラス戸に薄羽蜉蝣羽震う懐かしき顔で不意に死はくる

 

               (東京都)渡部鈴代

 

 お風呂場のガラス戸かなあ。ウスバカゲロウが一尾羽振るわせている。

 その顔、見覚えがある懐かしい顔で。が、ストンと落ちてしまった。

 不意に死がやってきたのだ。

 

「せんせい」とホームに呼ばるる義母のいて九十九も

   心は教師               

              (町田市)冨山俊朗

  他の職業についていたら、そうはいかないでしょうが、長らく教師を

 務めていたお陰で、義母はホーム内で「センセイ」と呼ばれる。すると、

 先生は「ハイ、なに?○○さん」と返事する。もう、歳は九十九歳にな

るんですよ。でも、先生と呼ばれるのが身についているんです。

 

 

 一羽さえ潜らず舟を曳くごとく火に照らされて六羽の鵜過ぐ

 

                  (東京都)豊 英二

 

 鮎呑の儀式現場に出る前までは、普通の恰好をさせてもらいますよと

 

 鵜匠と語らったわけではなかろうが、鵜飼の現場に着くまでの間、六羽

の鵜は一羽も潜ることなく昂然と頭を上げ、篝火に照らされ、六羽揃っ

 

て、あたかも鵜舟を曳くように、いなせな姿を見せて、今、目の前を過

 

ります。

 

 

 遠近を大小に見せ闇沖に漁火灯る頃となりたり

 

              (舞鶴市)吉富憲治

 

 絵を描くとき、見た目に映るような描法を取るときは、いわゆる遠近

 

法でスケッチする。手前にあるものを大きく、遠くにあるものは小さく、

 

中ほどにあるものは中くらいの大きさで配置する。

 

  夜の港に出て、遠い漁火の明滅を楽しんでいる。そして、これは絵を

かくのとは違って、自然そのままに見える景色を説明するために「遠近

を大小に見せ」て闇沖で漁火が明滅する」と説明している。

 

 

 渦潮に揉まれし海月は永遠に戻ってこないま白き帽子

 

             (奈良市)山添聖子

 

 渦潮で有名な現場で、橋の上から、または船の上から壮大な渦潮

 

を息を詰めて観ている。渦潮が逆巻く海流の動きは吸い込まれるよう

 

な波の動きが恐ろしい連想を見せ、音をたてて動き回る。現実には渦の

 

中心に海月(くらげ)などは見えていない。だが、人は想う。白い海月

 

があの渦中に引き込まれ、揉まれたら二度と戻っては来ない。もし、あ

 

の白くらげに似たわたしの白い夏帽子があそこにあれば同じことよね。

 

引き込まれて二度とは戻っては来ない。

 

 

 ★ヴェルレエヌ詩集私に貸したままいとこは逝けり

    インパール作戦      

          (武蔵野市)関口はる子

 

 

  *******************************************

 

 

   朝日歌壇 2017.9.25

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                                                      aou.hiko

 

 戦没の父無き苦しみ続きしにミサイル発射に戦の恐怖                    

 

              (飯田市)草田礼子                   

 

 ★ミサイル通過のJアラート高く響きし後ホッホホッホと

     山鳩泣けり        

               (牛久市)伊藤夏江

 

 われはまだ生れてなくても責を負ふ朝鮮人虐殺の過去の

   歴史の          

               (入間市)有賀政夫                   

 

 稲のはな咲く山里の朝六時「地下へ避難!」とJアラー

 

   トは           

               (飯田市)鬼形輝雄

 

           ■                  

 

 先導しはた随行し時にまたタッチアンドゴー秋あかね翔ぶ

 

               (伊勢原市)宇佐美正治

 

 秋の一日、真っ青に晴れた空を仰いで、群れ飛ぶ秋つあかねの飛翔を

 

愉しんでいる。特に仲間同士がお茶目たっぷりに飛び交わす飛翔の数々、

 

 その昔アカトンボと愛称された練習機が秋空に展開した、のどかな練習

 風景。あれとまったく同じ飛び方をするじゃないか秋あかね君。とケチ

 をつけたら、いやそれは違うと言われた。われら秋アカネは昔からこの

飛び方をしていたのを人間アカトンボ操縦士が目ざとく見けて「彼ら

の飛翔法をわれらの(飛翔操典)に加えよう」とされたのですよ。

 

7-DSC_0284-006.JPG

 

 

 水銀のるるところがり球体は宇宙の実在を示す現象 

 

               (神奈川県)九螺ささら

 

 

 私は6歳のころ、肺門淋巴腺を患って、大気療法のため庭に「バンコ」

 

( 縁台:畳1帖大)に蒲団を載せた寝台に寝かせられて安静を保つ日々

を送った。朝、出勤する父は私に体温計を渡し午後3時の検温を命じた。

夕に帰宅した父はその体温計を見て、7度(37℃)以上の時は眉を曇ら

した。

 ある日、私は検温した体温計が7度に届かないのを見てこれは大変、

 父が心配すると思った(実は逆だったのだが)そこで、家に上り、

薬缶の蓋の穴から出ている蒸気に体温計の水銀部を当てた。すると水銀

の部分がポキッと折れ、中身がぽろっと飛びだした。水銀だった。

不思議な性質を持っていた。小球はころころと動き、手の掌に集めると

一つの集合体となって震えていた。この歌にある「るるところがり球体」

である。帰宅した父には薬缶の蒸気に当てたとは言わなかった。父は子

供だから落として壊したと思ったらしく、なにも言わなかった。

 

                              

6-DSC_0280.JPG

 

 

 人類が滅亡をする引き換えに恒久平和のやって来るかも

  

               (岡山県)丸山敏幸

 

  それはまた天地悠久の果てを見るごとく、到来する平和と文化のほど

 が高度の文明を持っているのだろうか、などと心配する現地球人の蒼褪

 めた貌を見よ。そう簡単に恒久平和は来ませんよ。第一、そこに人類を

初めとする全生物が滅している地球の模様を、どなたが確かめる?。

  死に絶えた荒廃の地球に、今のように四季の花々を取り戻すには数10

世紀は要る。新生物の発現から気の遠くなる進化の過程が続くのか。

殺戮を繰り返す種族が跋扈する新世界にならぬことを祈るや切である。

 

           (2017.11.15)

 

 

 

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372 指先に情かよひけり風の盆 [文芸(短歌・俳句) 時事]

   

     随想コラム「目を光らせて」NO.372 「朝日歌壇・朝日俳壇

 

       俳壇 期間 2017.9.04 ~ 9.25

 

  

       指先に情かよひけり風の盆*   

 

      題 目:

     朝日新聞(2019.10玉野市)勝村 博氏 作

 

                   アオウ ヒコ

 

25-DSC_0041.JPG

      洋画家 青沼茜雲の作品集から。35.「春雪の大宰府天満宮御本殿」

              ・イギリス王立美術院名誉会員 フランスサロン・・トンヌ会員 

              ・ノーベルノルウエー財団認定作家 ・世界芸術遺産認定作家 ・日展所属  

   

         「朝日歌壇・朝日俳壇から(略) 


        朝日俳壇 2017.9.04                                                                                                                                                 

  ★夾竹桃原爆の死は続きをり

                                                       (浜松市)北川 覚

                                                          

 

 野地蔵の肩を選びし蝉の殻

              (群馬県東吾妻町)酒井大岳

 

 

 愛する妻を失った夫は確かに現世の日常の暮らしの場で妻の姿を見る

 

ことはできなくなった。だが、彼は妻は自分の身の回りの諸物に姿を変

 

えて自分を見守ってくれているのを発見、それを俳句に詠み込む形で投

 

稿がなされるようになった。

 

 この句では(蝉の殻)が妻の化身として置かれている。峠の傍に立つ

 

野地蔵は行きかう人の目に良く触れる。地蔵の肩であれば、よく目立ち

 

、見逃すことはなかろう。夫の目からすれば「あゝ、ここにも居て見守

 

ってくれたようだね」である。

 

 数多い自然界の「もの」に宿るかのようにして、彼を見守る彼女の息

 

吹や配慮をそこはかとなく感じさせてくれる日常があることに気付き、

 

その幸せを感じる日が増えて行く。

 

 俳句をよくする夫君は、今は亡き夫人との彼我間の交流をさりげなく

 

句の形に整えようと努力し、昇華させ続けている。

 

 この句を読む立場にある人へ。(蝉の殻)は単なる抜け殻ではなく、

 

亡き夫人が小さくなって此処に籠っている。夫君が野地蔵の前に現れる

 

のを待っていると読み取られよ。

 

 一見、平凡に見えたこの句が途端に佳句、秀句に転じるの不思議。

 

                                                                          

 

 ★吾にある加害の恥骨終戦日

                (本庄市)福島光良

 

 

 ★サングラス敗戦国に降り立ちぬ

                      (西海市)前田一草

 

  

 クリスチャンなれど先祖へ盆用意

                                  (伊那市)北原喜美恵

 

 秀吉の時代から、近くは熊本の天草地方のキリスト教信者まで、クリ

 

スチャンは迫害を受けてきた歴史があり、明治時代にも神仏分離の大鉈

 

が振るわれたりした。が、いまは信仰の自由の時代とあって、日本では

 

他の宗旨に対する態度は「海容」そのもので、先祖は他の宗教を迫害し

 

たりしない宗教観が深く根付いている。

 

 うちは今キリスト教だが、先祖には仏教徒だった人もいるようだし、

 

「お盆」も用意しているという。どの宗教も「汝、殺すなかれ」の教義

 

を第一にしているし、これは自分以外の宗教に寛容であれ、というのに

 

通じる。その姿勢を取りうる教義と風習を大切にしたいものである。

 

 

                       

     日俳壇 2017..1

           

   夕立雲けんかいよいよ三つ巴

                      (稲城市)三原正彦

 

 

 灼熱の一日を終えた夏の夕べにむくむくと発生する夕立雲。局地的な

 

界雷を抱いた黒い雲のいくつかが急速に膨張を極める情景を見上げてい

 

る。どの雲が先手を打って界雷を落とし雹を叩きつけるか、喧嘩腰の

 

勢、三つ巴じゃ、と楽し気に見守っている。

 

 

 

  存在の忘れられたり夕端居

                     海老名市)川上益男

 

 

 これはどうしても主人公の年齢に大きく関わっている、と言わざるを

 

得ない。かつて、まだ矍鑠とした風采と積み増した知識と知恵が豊かな

 

人格を誇示していた頃は、同年代の同僚、学友、知人が健在で群れをな

 

していた。自宅の庭の縁側や庭内のベンチで一日の日照りを鎮めている

 

姿を見つけては「お涼みですか」と声をかけてくる人に事欠かなかった。

 

 だが、時は流れた。私という存在を知る人々が櫛の歯が抜けるように

 

消えてしまった。夕端居の私は次第に残された数少ない櫛の歯になって

 

残っている。寂しさの募る夕端居をなんとしよう。

 

 

                                                                                                                                                                         

  夏痩せて妻の後ろを歩きけり

                (東京都)小山公商

 

 今年は夏の猛暑に負けて目立つほどに夏痩せをした。妻と一緒に出掛

 

ける時は、堂々たる体躯を保持する妻との比較を恐れるではないが、い

 

つの間にか歩幅も狭くなり、繰り出す足並みも遅れをとり、気が付くと

 

妻の後ろを歩いている。後塵を拝しているのだ。

 

 夏痩せとともに老齢化が進み、肉体の衰えが目立つのは情けないこと

 

である。夫君の脚力が衰えていることに気づき、聡くも足並みを揃える

 

ような妻女であれば、これこそ賢婦の鑑として永久に称えられるべしと

 

する夫君の願いが満たされる日が来るのか。やせっぽっちの夫君の嘆き!

 

 

 

  墓掃除無縁仏の増えにけり

               (安西市)小川 弘

 

 

 秋の彼岸を機に一家の墓掃除とお墓参りをなされたお方も多かろう。

 

お墓掃除をされながら周りをぐるりと見まわしたところ、草ぼうぼうの

 

、掃除がなされていないお墓(無縁仏)がいくつも見られ、その数が明

 

らかに増えていることに気付いた。親族の地理的拡散、少子化の進展、

 

檀家の経済的疲弊などが原因。

 

 

 

  苧殻焚く姉妹を雲が見て通る

 

                    (群馬県東吾妻町)酒井大岳

 

 

 苧殻(おがら)を焚くのは盂蘭盆会の慣わしで、祖先代々が実家に間

 

違いなく到着するために合図する煙である。この句の作者は、本稿(9.

 

04)「野地蔵の肩を選びし蝉の殻」の作者に同じ。この句の作者の作

 

風については多くの字数を使ってコメントしてある。(乞うご参照)。

 

 本句に於いては、キーワードは である。この雲に乗って、作者の

 

亡妻がこの世にやってくる。苧殻を焚いて迎える姉妹(亡妻の姉妹。現

 

世在)の姿を雲の上から見ている。その様子(おお、あの雲に乗ってや

 

って来ているな。苧殻を焚いて迎え火をしている姉妹をも見ているよう

 

だ)と、下界から現世の夫君(俳句の作者)が見上げている。

 

 

 

  指先に情けかよひけり風の盆

 

                 (玉野市)勝村 博

 

 

 富山県八尾町では、町中の男女が毎年二百十日の九月一日から3日、

 

風の神を鎮め、豊作を祈って、越中小原節を三味線・胡弓・太鼓で囃し

 

つつ唄いながら夜を徹して踊る。若いお女中は頭に深く折った菅笠を結

 

んでいるために女の貌が見えず、細やかな踊りの所作で、若い細い女の

 

白い指をしなやかに夜空に交錯させて踊る姿が見物の男衆には堪えられ

 

ない。かつては八尾の局地的な踊りだったが、近時、爆発的な人気を呼

 

び、あの、指先に情通わすおなごしの踊りを見たい、近くで接したいと

 

する外からの男客で会期中、町は溢れかえるようになった。

 

 

 

  父母の声を探してゐる墓参

 

               (神戸市)岩水ひとみ

 

 

 お盆には必ず先祖のお墓参りをする、という人も多かろう。久しぶり

 

に墓参したら、周りは雑草だらけ、お墓の花受には水も枯れ、先に墓参

 

した時の花の咲殻が汚くこびりついていたりする。草を引き、墓石を洗

 

い、花をお供えして線香を手向ける間、この頃は口頭で、父母に語り掛

 

ける後裔たちも増えてきたようだ。亡き父母や、それに近い祖先たちが、

 

生者に声で話し掛けたり、返事したりする可能性の一番高いところは遺

 

骨が収納されているこのお墓界隈であろう。向こうも生者たちが何かも

 

のを言わなければ、返事のしようがない。「お墓の周りがやっときれい

 

になりました。そちらの様子をお聞きする前に、こちらの近況をお知ら

 

せしましょう」周りが急にシーンとなる。彼岸では耳を澄ませている様

 

子。こちらでは長幼の順で近況報告が始まる。

 

 残念ながら今はまだ、彼岸と此岸を跨ぐだけの電磁システムが未完成

 

で、双方ともやきもきと不自由な思いをしている。そのうち、空海のご

 

とき俊秀が輩出。次々に難題を解決していくことだろう。楽しい父母や

 

愛した妻や夫、との素晴らしい邂逅も夢ではない。

 

 

 

  蜻蛉を追うて視線は点と線

 

               (泉大津市)多田羅紀子

 

 

 捕虫網を手に持って野原で蜻蛉を追っているのか、蜻蛉飛ぶ高原に居

 

て、トンボの飛ぶさまを観察しての結論なのか。いずれにしても蜻蛉は

 

点として空に在るときはホバリングしての静止の状態にあり、餌を見つ

 

けたのか、蜻蛉がそれを中止してほかの場所へ移行するまでの過程は最

 

短距離の「直線」で結ばれる。蜻蛉を観察するにしろ、捕虫網を翳して

 

野原を駆けるときにしろ、点(静止時)と線(飛翔時)の二つを考えれ

 

ばいい。シンプルですっきりしている。

 

 

  露といふ儚きものを零しけり

 

               (今治市)横田晴天子

 

 

 台風の時はさておき、静かな夜では、一晩中夜気中の水分が樹葉や草

 

の葉に宿り続け、朝には露となって人の目に触れる。それは、ちょっと

 

でも触れれば落ちる儚いものである。あゝそれを知りながら今朝は葉に

 

触れてしまい、せっかくの露玉を零してしまいました。

 

 

    つづく → NO.372-2   (2017.11.1)

 

 

 




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372-2  赤とんぼ虚空に翅をやすめをり [文芸(短歌・俳句) 時事]

  

      随想コラム「目を光らせて」NO.372-2朝日歌壇・朝日俳壇

 

 

      俳壇 期間 2017.9.18 ~ 9.25

  

 

     赤とんぼ虚空に翅をやすめをり

   

 

      題 目:

         朝日新聞(2019.18米子市)中村襄介氏 作

              アオウ ヒコ

 

19-151022コスモス.JPG

        コスモス  151022  酒井 健

 

                 

 

    日俳壇 2017.9.18

  赤とんぼ虚空に翅を休めをり 

               (米子市)中村襄介

 昭和の初期あたりまでは、水田や沼、溜池が農薬に汚染されることも

 

もなく、トンボはヤゴの卵を無数に産み付け、それが孵って蜻蛉となり

 

 秋の大飛翔につながるのが普通だった。群れを成す赤とんぼの飛翔が

 

見られなくなって久しいが、今では回復の過程にあるらしく、場所によ

 

っては赤とんぼの姿が見られるらしい。この作者も空の青に飛ぶ赤とん

 

ぼを見つけ、観察し「虚空で翅を休めています」としている。

 

 ヘリの停止飛行(ホバリング)よろしく、しかも無音で留まる瞬間を

 

みつけたらしい。次に直線で飛行する先は浮遊する獲物の小昆虫であろ

 

うか。このところ、人が作ったヘリやオスプレイがしばしば墜落炎上す

 

る事故が頻発しているが、蜻蛉が翅を前後左右に動かし、回転させる筋

 

肉エンジンシステムの足元にも寄れていないからである。

 

 

 ★ミサイルの次から次へ稲雀

 

              (埼玉県)佐藤 茂

 

 

 

  老いてなほ野球少年獺祭忌

 

              (向日市)松重幹雄

 

 

 十九日正岡子規の忌日。九月である。糸瓜忌ともいうが、獺祭忌の方

 

がよく知られている。数年前に大吟醸級の日本酒が「獺祭」の名で売り

 

出され、一躍名を揚げたが、それまでは「だっさい」と読むことを知ら

 

ない人が多かった。

 

 六、七年前の夏、恒例の高校仲間による軽井沢ゴルフコンペの打上げ

 

を地元の居酒屋で行ったとき、有名ラベルを張った一升瓶をずらりと並

 

べた棚があったが、それを見ながら、九州から参加していたIw君が

 

「獺祭」の瓶を指して「これ、読めますか」と吾に問うたのだ。即答で

 

きず、ウーンと唸って過去の漢字記憶歴を辿り、漸くに子規の獺祭忌を

 

朧げに召喚するにこぎつけ、あれは確か「だっさい」だったな、と声に

 

出したが、Iw君はにこりとして「流石やな」と肩を叩いてくれた。

 

 

 子規は晩年不治の病に伏したが野球好きでも知られ、Baseballを「野

 

球」と翻訳したのではなかったか。

 

 この句は「年をとってもいつまでも野球少年ですよ、私は」と言い

 

「今年も子規の獺祭忌が来ますね」と懐かしがる人が日本にはごまんと

 

る。

 

 

 

  餓死という戦死もありし敗戦忌

 

               (高槻市)池田利美

 

 

                    

   蜩や古里を去る無人駅

 

                 (高松市)白根純子

 

 

 久しぶりに尋ねた故郷はさびれて、帰りに乗った電車の駅は無人駅に

 

なっていた。折から蜩の鳴き声が聞こえてきて、さびしさをいや増す秋

 

の暮れでありました。

 

 

 原爆忌嫁がず逝きし友思ふ

                (横浜市)本多豊明

 

 

 

  八朔を選び天寿を全うす

 

                (横浜市)松永朔風

 

 

 これはおそらく百歳をなんなんとするお方が、死期の迫る日、看取る

 

家族から、「何か欲しいもの、食べたいものありますか?」と問われて

 

「八朔」を指名し、口にした後、満足げに天寿を全うされたのであろう。

 

幸せなお方でありました。

 

 

 

 大空襲・特攻・沖縄・原爆死 罪なき人の命し無残

 

                (アメリカ)大竹幾久子

 

 

 

  濃竜胆一茎挿して色足れり

 

              (尼崎市)田中節夫

 

 

 伝統的なヨーロッパ人の花の活け方、楽しみ方は、この伝で言うと

「多色多茎の花を太口花瓶にドバッと投げ込む活けかた」にありか。

 

古来から、伝統ある華道の教えは、一輪の花を挿して、その花の精の美

 

しさを極めるにありか。例示しているのが「濃い紫の竜胆の花一茎を一

 

輪挿しに挿せば十分。これ以上の色を加える必要はない」である。日本

 

人の美意識の典型を示して十分である。

 

 

 

 生きる者みな遺族なり曼殊沙華

 

                 (尼崎市)ひじり純子

 

 

 

  ふかふかの富士の座布団すすき原

 

                (伊万里市)萩原豊彦

 

 

 富士山はどこから見ても美しい、絵になる、と言われる。この句も絵

 

の構成から見ると、遠景には富士山が中心をなし、手前の前景には広々

 

としたすすき原が広がり、あたかも富士山がこのふかふかの座布団にど

 

っかと座っているように見える構図である。

 

 場所の特定はなされていないが、広大なススキが原を擁する地形を基

 

に探すと、栃木県奥日光中禅寺湖の北方、男体山の西方に広がる湿原。

 

戦場が原ではないかと思われる。だが、手前の広大な湿原に裾野を埋め

 

るようにススキが育っているところは数多くあるであろうし、そこが日

 

本一のお山と呼ばれる所以でもあろう。

 

 

     朝日俳壇 2017.9.25           

 

  秋といふ駅に降り立つ目覚めかな 

                    

                 (東京都)青木千禾子

 

                   

 夏の残骸の終りの日々を暮らしていたが、今朝目覚めてみると、今日

 

は違う。すっきりした冷涼な朝がこの身を包んでいる。昨日までいた夏

 

を脱して秋という新駅に降り立つ気分だ。季節の切り替えはこれほどド

 

ラスチックに行われるものか。

 

 

 

  ことごとく風に消えゆく法師蝉

 

            (熊本県菊陽町)井芹眞一郎

 

 

 秋の終焉を告げる蜩の啼き音があちこちで聞かれていたものだが、秋

 

風が立ち、次々に風吹くにつれて、いつの間にか法師蝉は居なくなった。

 

 

 

  コスモスを叩く風あり跳ね返す

 

                (東京都)望月喜久代

 

 

 コスモスの茎は細い。あれだけの花を支えて、折れるのではないかと

 

思われるが折れない。前後左右に揺れて風をやり過ごすのだ。偶に叩き

 

つけるような風がコスモスを襲うことがある。だが、茎は伏せない、折

 

れない。風が行き過ぎると、ピョンと跳ね上がるように立ち上がる。コ

 

スモスの茎は強靭にして、しなやかな構造をしていることだ。

 

 

 

  道違へ噂にまさる大花野 

 

          (奈良市)田村英一

 

 

 道を間違えてよかった。前から噂に聞いてはいたが、これほど広い花

 

野だとは思わなかった。暫らく呆然と立ちつくしていた。

 

 

 

  庭で焼く旬をけぶらせ初秋刀魚

 

             (大阪市)大川隆夫

 

 

 庭でコンロの火で初秋刀魚を焼いている。煙が揚がるが、なに旬をけ

 

ぶらせているんだと気にしないでいる。近時、市井で焚火を禁じるとこ

 

ろが増えたが、サンマのけぶりくらいは許せよやい、である。隣の奥さ

 

ん窓を開けて「いいですね、初秋刀魚でしょ?うちはまだですよ」と歓

 

迎してくれましたぜ。

 

 

  三十回咀嚼につるべ落としかな

 

             (松山市)正岡唯真

 

 

 歯が悪くなったこともあるが食事の度に「よく噛んでね。一口30

 

咀嚼、お願いね」と家人に言われる。そのたびに頷くのだが、これをや

 

るには時間がかかる。一方、外をご覧なさい。時はつるべ落としで進行

 

しているのですよ。軍隊で早飯、早○を強いられてきた癖がなかなか抜

 

けなくてね。「餓死するなよ」と言われた方が効き目があると思います

 

よ。

 

 

   湖のごとコスモスのごと妻眠る

 

             (三郷市)岡崎正宏

 

 

 広々とした湖が静かにねむるように、また美しいコスモスの花野が静

 

かに揺れもせずにいるように、愛妻は静かな睡眠をとっている。

 

 

   桐一葉月の光を浴びて落つ

 

            (飯塚市)釋 蜩硯

 

 秋が深み行くにつれて、桐の葉は次々に落ちていったが、残る葉一枚

 

は病み呆けた老人のいのちを繋ぎとめるかのように、落ちずに残ってい

 

た。が昨夜満月の光を葉一杯に受けて、ついに落ちてしまった。

 

 

  人間も桃もおほかた皮と水

 

            (北本市)萩原行博

 

 

 そう言ってしまえばお仕舞よ、であろうか。薄い果皮の下に甘い果実

 

を秘めた桃も、分別も盛りの旬の人間も、つづめて言えば大方は皮と水

 

よ、と達観するに至るのは、水分が半分以下の干からびた個体の状態で

 

既に死に至っているからである。何もわざわざ言及するには及ばない。

 

 

 

  俳壇のいつしか秋の香り満つ

 

            (平塚市)日下光代

 

 

  そうでしたね。酷暑の夏は創造的な技術の開発も、優れた文芸々の

 

創造もなかなか出来にくい季節でした。この欄への投稿数も少なく、数

 

合わせのために入選させたような作品もあり、これはどうしたことかな

と嘆じた盛夏の月がありました。ひと月くらいは投稿なしの月を設定す

 

るのもよろしからん、と嘆じた日々がありましたね。

 

 しかし、その俳壇(歌壇も同じく)にも、いつしか、秋の香りが満つ

 

日が戻ってきたようです。投稿数も回復したのでしょう。内容も文芸の

 

香りが満ちて参りました。嬉しくも忙しさも秋の香りのなかにこれあり。

 

 

 

                      (2017.11.01)

 

 

 

 

 

                


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371  新しき菜箸下す米寿の日 夫と二人の朝餉善しとす [文芸(短歌・俳句) 時事]


                             

   随想コラム「目を光らせて」NO.371 「朝日歌壇・朝日俳壇」

  

 

      歌壇 期間: 2017.8.7~8.28

 

 

  

     新しき菜箸下す米寿の日

 

       夫と二人の朝餉善しとす

 

 

     題 目:

   朝日新聞(2017.8.21)(川崎市)佐伯恵子氏入選作。

               アオウ ヒコ

 

24-DSC_0042.JPG
  洋画家 青沼茜雲 の作品集から。34.「大宰府天満宮御本殿」

           ・イギリス王立美術院名誉会員

           フランスサロン・ド・トンヌ会

           ・ノーベルノルウエー財団認定作家     

         ・世界芸術遺産認定作家 ・日展所属  

 

 

                     

        「朝日歌壇・朝日俳壇から」 

  朝日新聞の歌壇・俳壇の入選作の中から最新の世相を鋭く切り取った

 

 作品を新たに選び、コメントを付けています。コメントは文芸上の範を

 

 超えることがあります。

 

  作品の頭に印が付いている作品は、時の政権が推進する前のめりの

 

 右傾化路線、平和憲法を無視し、国会の存在をないがしろにするさまを

 

 危惧する市民の投稿になるものです。これらの作品は、ここでは個々の

 

 作品の文芸上の軽重を問うことなく、注目すべき最新の世相を凝縮した

 

 作品として、そのすべてを採録しています。

 

  これらの作品に対しては、投稿者の真摯な叫びに読者の耳、素直に従

 

 うべしとして、コメントはつけておりません。

 

  また、文中敬称は省略しております。  (筆者)




  朝日歌壇 2017.8.07

39-IMG_0066.jpg

         ラン  国際らん展から (aou.hiko) 以下同じ。

 

 汚れたる神田川にも水草に摑まり揺れるオハグロトンボ

           (東京都)宮田義昭

 あゝ、こんなにも環境が悪いところに棲んでいるのか、すまんなあ

びっくりしたり、同情したりしている                                                                                                                                                                                                                           

 ホタル撮る君のカメラをのぞくふりをしながら触れる背中

 

 のぬくみ  

               (西条市)丹 佳子

             

 なるほど、そういう手もありにしか。ついでにぐっと重心を前にかけ

 

れば、二人は前なる蛍棲む疎水の中へ。しばらくは蛍交えて水中の踠き

 

になったであろうに。親切な「ぬくみ」君の介抱を受けたであろうに。

 

                                                    

 湯畑は夏の花燃ゆる匂いする草津に湯もみ唄が流れて

 

              (越前市)内藤丈子

 

 

 ひさしぶりに行かれたか草津温泉 。草津は数年前から町を挙げての

 

リニューアルが一段落。明るい街並みの温泉町へと変貌した。街の入

 

口にある「湯畑」は前と同じく、長方形の浅い箱を50㍍余の長さに連

 

ね、高温の源泉をゆるゆると流すうちに湯温を下げる冷却装置として機

 

能させている。周りに漂う匂いは硫黄泉の証し、湯畑の近くでは昔なが

 

らの「湯揉み」興行が行われている。長い厚い板を熱泉に差し入れ、そ

 

の板を表、裏と交互に返して湯そのものを攪拌して冷ますものである。

 

湯もみには一般客も参加できるが、小さい子供には重い板は手の負えな

 

い。また、結構疲れが伴うから、ショーを見るだけの方がいいか。

 

 草津の湯は、唄の歌詞には恋のやまい以外は万病に効くとあるが、今

 

どきの若い男女はさして気にしていない。なに、ここで新しく恋を得り

 

ゃいいのよ、ということらしい。

 

 

36-IMG_0059.jpg

 

 

 猛暑日のウオーキングはデパートで冷房効いた全階巡る

 

               (広島市)坂田敏暉

 

 

 個人やサークルでこれを実施するとなると、理に適っているとは言え

何の知らせもなく売り場のあちこちを半端ないでたちで老幼男女が走り

 

まわるとあれば、デパートの経営者は眉を顰めるにちがいない。そこは

 

談判のしどころというか、相手にもこの企画がウインウインの関係にな

 

りうることを事前に説明し、納得を得なければなるまい。こそこそと一

 

人だけでやるのは勧められない。

 

 

 ★積極的平和なる言葉には大東亜共栄と同じ匂いす

 

                (須賀川市)伊東伸也 

                                                             

 

 ★灼かれ撒かれたあなたの志に会へますか劉暁波氏よ明日は

 

  海の日

             (三島市)福崎享子

                                                                           

             

 

 ★ノーベル賞受賞の空席 空席のままに残して劉暁波氏逝く

 

             (本庄市)福島光良

 

 

 ★受賞者は天安門の犠牲者と遺して逝きし劉暁波氏

 

            (名古屋市)諏訪兼位

 

 

 ★明けぬ夜はなきとぞ思う暁波なる人逝きにけり獄死と言わ

 

  ず

             (福山市)武 暁

 

 

 ★雲行きは怪しけれども我らにはまだ人権が劉暁波死す

 

             (三原市)岡田独甫

 

 

34-IMG_0056.jpg

              

 

 

 ★記録なく記憶もなくば如何にして仕事するらむ内閣官房

 

             (吉野川市)喜島成幸

  

  

 ★十三にてヒバクシャとなり七十余年廃絶を問へど国答へ

 

  ざり

             (浜松市)松井 恵

  

 

 

    朝日歌壇 2017.8.14

32-IMG_0050.jpg

                        

 

  傘寿越す兄弟集ふランチ会昔の五歳を七歳は笑ふ

 

                   (町田市)高梨守道

 

 傘寿(80歳)を超す兄弟の賀の祝いが目出度く行われている。兄弟

 

のお歳はどうやら兄八十七歳、弟八十歳であろうか。こういう会はな

 

べく早く挙行したほうがいいとして、本日のランチ会が持たれた。

 

 ところが兄者は矍鑠しすぎて、挨拶を独占。後から生まれてきた弟の

 

幼時の振る舞いや失策の数々を皆に披露して、参会者の爆笑を誘ったか

 

らたまらない。弟君から「おれの話すことがないじゃないか」と抗議も

 

たが、ここでも兄者は「俺の葬式の時には独占させてやるよ」と一蹴。

 

 とまあ、仲がいいお二人の傘寿を祝うランチ会はつつがなくお開きに

 

なりました。兄弟そろって傘寿を迎えるランチ会。この家系の優れた長

 

命DNAが綺羅星のごとく並ぶランチ会の凄さ。この家系のゆったりと

 

した幸せを心からお祝いしたい。

 

 

 ゲートルを巻きて炭焼きに行きし父長き休暇としての戦争

 

               (佐渡市)小林俊之

 

 

 戦友の死のおおかたは餓死なりと伝えし人も老いて逝き

 

 たり

             (津市)塩地慎介

 

 

 

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  此処だけは時間が止まっているみたい君と別れたコーヒー

 

   ショップ            

              (八幡浜市)大下まゆみ

 

 このコーヒ店の前に来ると(または店内に入ると)君と別れたあの日

 

のことが始めから終りまで、一幅の巻絵を見るように、ゆるゆると再現

 

することができる。いつ来ても、その凝縮された過去と会えるというの

 

は、あの恋を忘れたくない、留めておきたい、とする脳の指令があるか

 

らであろう。

 

                                                                                                                                                                           

 丁寧に真摯に説明すると謂ふ記録と記憶は無いと言ひつつ

 

               (神栖市)寺崎 尚

 

 

  空高くピチュルピチュルと揚げ雲雀塒に帰る鷺の上飛ぶ

 

               (つくば市)高力栄子

 

 ピーチクパーチクが定番化した雲雀の鳴き声のようだが、そのほかに

 

鳴き声を模するものがあってもいい。ここではピチュルピチュルが使わ

 

れ清新な印象を与えている。塒に帰る鷺が下を通り過ぎても、ひばりは

 

そのまま高空に止まってピチュルピチュルと囀っている。

 

 

         66-IMG_0134.jpg       

 

                

 

          ( 続く) → NO.371-2

 

 

 

      URL: http://columneye.blog.so-net.ne.jp/

     

      随想コラム [目を光らせて]so-netブログ

     
      e‐mailhiko@yc5.so-net.ne.jp

                  

 

 


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371-2 [文芸(短歌・俳句) 時事]

    ブログ NO.371 から続く。

  「朝日歌壇・朝日俳壇」から 随想コラム 「目を光らせて」 NO.371-2

      歌壇 期間 2017.8.21~8.28

   朝日歌壇 2017.8.21

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                 らん 日本国際らん展  (aou.hiko)                      

 短歌なんかやめてしまえと上司言いき「なんか」谺す夜更

 けの河に           (名古屋市)長尾幹也

 配転されて地方に来た彼はなにかと上司と反りが合わない。時には派

 

手に言い争いをする。彼は短歌を生甲斐にしているが、上司は短歌なん

 

かやめてしまえ、と放言する。往々にして、他人の趣味や求道を理解で

 

きず、ただただ排斥する輩がいる。無教養の極の類であるが、それを平

 

気で雑言される身になると、その神経がか細いこともあって、真剣に受

 

け止める。ショックともいえる{なんか}を忘れようと、夜更けに近く

 

の河原に出てみたが、とてもとても忘れようがない。その言葉が大きく

 

谺しつづける。 

            

 

 ★はみな嘘混じるとき目が泳ぐ前次官のみ正面睨む

 

             (埼玉県島村久夫

 

 

 ★若和尚我から引き継ぎ原爆の投下時刻に寺の鐘つく

 

         (三原市)岡田独

 

 

 竹やりを皆で作りし日のありき「私がまもる」と総理

 

  言う国 

               (相模原市)日野 一

 

 

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 新しき菜箸下す米寿の日 夫と二人の朝餉善しとす

 

              (川崎市)佐伯恵子

 

 折から国会が解散されて「立憲民主党」ができたが、その党首が「真

 

っ当な政治を」と叫んでいる。党是として広く迎え入れられるかには不

 

安が残るが。さて、この歌をみて感じるところあり。このお二人(夫は

 

既に)めでたく米寿を迎えられた。夫人はこの日を記念して、台所で料

 

理を作る菜箸を新しいものに替えられ(おろされ)その箸で二人の朝食

 

を整えられた。そして言われる。このような生活が真っ当な生活という

 

ものですよ、私たち夫婦はこの道を取り、辿ってきたことを誇りにして

 

おります。

 

 真っ当な ;(社会的に)まともに、ちゃんとした、適切な・・。

 

         真っ当なふるまい「暮らし」をして;

        on the straight and narrow way [path]

 

          (通例 be, keep の後に用いる。) 広辞苑(和英)

 

               

  国会で嘘を言わない人は誰わが読心術に頼るほかなし

 

            埼玉県小林淳子

 

 国会でしゃべる議員や参考人たちの言辞はみな嘘だらけ。信用できる

 

のはわが読心術のみ。まったく困ったものですね。

 

 

 肯定も否定もしない官僚の「記憶にない」が記憶に残る

 

                (柏市)菅谷 修

 

 

 幼子が母を見上げるその度の空気の肌理のやわらかいこと

 

                (札幌市)森越裕里

 

 幼子とその母がごく近いところにいる。子は何かを求めて母を見上げ

 

る。母はそれに応えて身をかがめて手を伸ばす。この二つの存在がある

 

だけで場は和むのに、傍から見守る人の目には二人はごくごく肌理の柔

 

らかい空気に包まれているように感じられる。幼子を育てる母が持つ圧

 

倒的に濃密な厚い愛情のオブラートに包まれて。

 

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 大空襲・特攻・沖縄・原爆死 罪なき人の命し無残

 

           (アメリカ)大竹幾久子

 

 

 菩提寺の兵士の墓の碑文読む若者だけがに戦死している

 

               (三郷市)木村義

 

 

 慰安婦とされし少女の像かなし憎しみ煽る企みかなし

 

               (名古屋市)能登正嗣

 


    朝日歌壇 2017.8.28

            

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 死ぬときはどうでもいいといふやうに蝉のかたちは土に

 

 近づく                      

                 (生駒市)土岡暎雄

                   

 秋の終りを迎える路傍には、盛夏を通じて懸命に啼き仕切ったオスの

 

蝉の死骸があちこちに見受けられる。昆虫の形としては実に優雅な美し

 

い形状で、盛夏の王としての鳴き声であたりを睥睨、制圧したことだっ

 

たが、ある日、ボトリと枝を離れ墜ちた。もう動かない。風の吹くごと

 

に、隅に吹き寄せられて、今日はもう土塊のそばだ。蟻の出動も今日あ

 

たりからはじまるのか。

 

 

 日盛りの午後の静けさセリセリと紫蘇の葉を食む小さな

 

 飛蝗 

                (越谷市)黒田祐花

 

 ここでも、小動物のバッタがセリセリと音を立ててシソの葉

 

を食む情景が歌われている。細かい観察がなされている。

 

 

 核のゴミの処分場適地公表さる「科学」の向こうの過疎

  交付金

               (橿原市)福田示知恵

 

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 酒は好き?煙草は吸うの?男は好き?いきなり聞かれた君

 

 との出会い  

          (桐生市)久保塚文子

 

 彼に会った時、続けざまにこんな質問をされたそうな。立て続けにで

 

はないらしいが、初めて事務的に聞きたいことを重点的に総ざらいした

 

といえようか。一方的に相手の手に乗らず、こちらからも同じ質問をし

 

て、やり込める手もあっただろうが、近ごろの若者気質が窺われて面白

 

かった。

 

男からズバリ訊かれた。私の答は;酒 好きよ。煙草 吸わない。男

 

好きよ。とあたりさわりのない返事をしたつもりだった。

 

 私も逆に訊いてやった。酒への答;へべれけ。煙草 もくもく 女

 

それはもう。 と、手練れた返事が返ってきた。

 

 もっと深耕質問に​移る?とわたしが言ったら、シンコー?「親交」

 

の方?というから、チャウ、深く耕す方、と言ったら首をひねってね。

 

しばらくして「君への答の一つを取り消す」というから「それなによ

 

と気色ばむとね。「女のところ。それはもう。を取り消す」「ほう、そ

 

れで?」「女;君だけが好き」に決然と変更する。と本気顔で。

 

私さんは、「再びの変更はコンリンザイなしですよ、いいですね!」と

 

決然と言い放った。

 

 

 ★核兵器禁止条約回避してどの面下げて原爆忌の客

 

            (水戸市)中原千絵子

 

 

 HIBAKUSHA と初めて記されし条約の批准果たせぬ

 

 この国の夏

            (長野県)井上孝行

 

 

 

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 祖母と母はや明らかに区別せり甘ゆるときの一歳の児は

 

             (茅ヶ崎市)若林禎子

 

 幼子は同性の祖母と母をどのように区別するのか? それは大好きな

 

母乳をくれるのが片肌脱ぎで与えてくれる母親、その体温と匂い。これ

 

だけで十分だろう。残念ながら、おばあちゃんにはこれらはない。

 

 

 ★変わり者が先駆者となる例もあれば残しておきたし九条

 

 だけは

            (愛知県)関谷道雄

 

 

 ★灰になるもあなたを抱擁するという灰は撒かれたり国

 

 意思にて

            (東京都)羽場百合子

 

 

 ★内容のない反省は反省といはずにそれはごまかしといふ

 

            (入間市)有賀政夫

 

                                  


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370  山百合を山ごと負うて妻の墓 [文芸(短歌・俳句) 時事]

 

  随想コラム「目を光らせて」NO.370「朝日歌壇・朝日俳壇から」

 

        俳壇 期間 2017.~731

 

  

        山百合を山ごと負うて妻の墓

 

 

       題 目:

   朝日新聞(20110)(群馬県東吾妻町)酒井大岳入選作。

                 アオウ ヒコ

22-DSC_0045.JPG

     洋画家 青沼茜雲 の作品集から。33古代の雄「若き日の磐井」

          ・英国ロイヤルアカデミー名誉会員

                                  フランス・サロン・トンヌ会

                                  ・ノーベルノルウエー財団認定作家     

                     ・世界芸術遺産認定作家 ・日展所属  

 

 

                          

        「朝日歌壇・朝日俳壇から」 

  朝日新聞の歌壇・俳壇の入選作の中から最新の世相を鋭く切り取った

 

 作品を新た選び、コメントを付けています。コメントは文芸上の範を

 

 超えることがあります。

 

  作品の頭に印が付いている作品は、時の政権が推進る前のめり

 

 右傾化路線平和憲法を無視し、国会の存在をないがしろにするさまを

 

 危惧する市民の投稿になるものです。これらの作品は、ここでは個々の

 

 作品の文芸上の軽重を問うことなく、注目すべき最新の世相を凝縮した

 

 作品として、そのすべてを採録しています。

 

  これらの作品に対しては、投稿者の真摯な叫びに読者の耳、素直に従

 

 うべしとして、コメントはつけておません。

 

  また、文中敬称は省略しております。(筆者)

 


     朝日 2017

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新狭山団地の夏祭り 8月27日 曇天。 昨年は夕立にやられた。

                                                                                                                                                                                                                             

 ★蟻の群共謀罪を疑われ  

             

                (八千代市)川原文男

            

 

 死に際の母の希いし心太

 

                (町田市)佐藤隆市

 

 現実の場面として臨終の場を思いやる。「お母さん、何か欲しいもの

 

ありますか?」そう訊かれて母はか細い声で「ところてん」と答える。

 

看取りの最後に集まっていた親族たちに動揺が走る。「水じゃないのか」

 

「と言われてもなあ、急には」。孫の一人が「おれ、病院の食堂かコン

 

ビニに行ってみるわ」とさっと席を立つ。さあ、どうなったことやら。

 

「欲しいならそう前から言ってほしいよなあ」とは腰の重い親戚連中の。

 

                                                                                                                                    

 足音に水の沸き立つ鰻桶

 

              (枚方市)嶋林岳紹

 

 土曜の丑の日ちかくともなれば、鰻屋には多数の鰻を入れた鰻桶がい

 

くつも並ぶのだろう。焼くのも忙しいが、捌くのもこれまた忙しい。鰻

 

桶が置かれた土間は静かなものだが、ここに鰻を捌くお兄イの忙しいい

 

足音がするなり、数百匹もの鰻を容れた水桶が急に沸き立つというのだ。

 

次に捌かれるのはおいら達の桶だぞ、と動揺しているらしい。

 

   

 麦熟る広野の倉や婚の宴

 

           (ドイツ)ハルツオーク洋子

 

 この頃になるとドイツの広野の麦が熟れて収穫の時季を迎える。また

 

この季には、婚儀の宴があちこちで賑やかに行われる。洋子さんはそれ

 

遠くから眺めているのか。または、大きな倉の内や外で開かれた披露

 

宴に招かれているのかもしれない。

 

 

 

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                      息も合う三連太鼓

 

 

 ビル風に燕のごとき黒揚羽

 

             (熊谷市)時田幻椏

 

 建て込んだビル間を吹く風は、相当な強さと速さで吹きすぎるものだ。

 

そのビル風の中、黒揚羽が燕のような勢いで飛んでいった。どこかに叩

 

きつけられるのではないかと心配しておいでのようだが、その心配は無

 

用だ。クロアゲハは本当に頑強な体躯に恵まれている。

 

 

 退屈は人間のもの蟻地獄

 

             (秋田市)中村榮一

 

 蟻地獄の巣というか、仕掛けを発見すると、わざわざ蟻や小さい昆虫

 

を捕まえてきて、巣穴に流し込む人がいる。これから起きる地獄図を見

 

よう、楽しもうとするのだ。この姿を見ていると、ああ、退屈は人間の

 

ものかいな、と呆れてしまうことだ。

 

 

 ★核兵器廃絶のデモ梅雨の星

  

             (埼玉県宮代町)酒井忠正

 

 ★南(みんなみ)の孤島が墓標六月来 

 

             (桑名市)藤井シゲ子

 

 

 

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                 なによりも姿勢のいいバチ捌き

   

        

 

 風鈴の修羅から一つ選びけり

 

               (日光市)渡辺全朗

 

 風鈴を創る職人は、それぞれに風鈴の外貌と鳴り音の創造に腐心する

 

ようだ。風鈴市に脚を運んで、我は我なりに、その修羅の内から、気に

 

入った風鈴一個を選んだ。我が家に吊るしてみて、二つの修羅が合致し

 

ているのに、甚く満足した。

 

 

 草刈り女脚は白いと見せてをり

 

               (長浜市)雨森多鶴

 

 草刈り女を見る視点は、下から後ろからである。見せる相手は男衆め

 

にである。あたし白いでしょ、色っぽいでしょと。脚とは踝から膝の下

 

まで。鎌で草を刈る時間を通してこの部所は常時露出しているのよ、と

 

の親切な情報の開陳。

 

 


        日俳壇 2017.7.1

 

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                  盆踊りで身体を動かそうぜと。

  山百合を山ごと負うて妻の墓

 

               群馬県東吾妻町酒井大岳

 

 妻の墓は山百合が沢山咲く山にあります。の意であるが、この句にも

 

今は亡き妻への尽きぬ思いが溢れんばかりに、籠められている。

 

 多くの花をつける山百合の芳香に抱かれた山をそっくり負ぶって鎮も

 

る妻の墓。美しかった妻にふさわしい山百合よ、山を覆うばかりに殖え

数多の花をつけ、噎ぶ芳香に亡き妻を包んでおくれ、とする想いが込め

 

られている。 

         

 

 雲の峰昭和に飢えという記憶

 

               日立市)国分貴博

 九条抱き締め茅の輪くぐりけり

 

                (前橋市)荻原大空 

 為政者の驕り露見や青嵐          

                 (野洲市)深田清志

                                                                                                                                                                           

 反故にする約束一つ沖縄忌

                 東京都野上 卓

 

 沈黙にただちかづかん古浴衣 

        

                  (広島市)茶屋七軒

         

 

 早苗田の一日毎の青さかな

               (前橋市)荻原葉月

 

 稲作農家は田植を終わると、おそらく出穂までの毎日をこうして青田

 

観察を続け、たゆみない青田成長に生甲斐を感じるのであろう。出穂か

 

ら稔りまでの間には、稲作への最大のリスク台風に始まり、多雨、冷温

 

などが待ち構える。これを無事に切り抜ければ渇仰の豊作が待っている。

 

 

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                     色を合わせたか和洋が踊る

 

          

 鷺草の鷺は巣立ちの時を得ず

 

             (岐阜県揖斐川町)野原 武

 

 名に負いし鷺草の鷺よ、いつ巣立ちの時を迎えるのかね?と飛翔訓練

 

を始めた鷺草の白鷺に問いかける人も多かろう。鷺草の祖はいつの頃、

 

空翔ける白鷺の姿を自らの草の茎の先尖に花とすることを決め、その改

 

良に営々とした努力を重ねてきたことか。その執念の強さがいつまでも

 

鷺の巣立ちを遅らせて、ついに巣立ちの時を得ずとなり申した。

 

 

        朝日俳壇 2017.7.17

 

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      じいっと観察するのも大切です。

                                    

 沖縄は今日も盾なり慰霊の日

 

                   (佐久市)鶴岡木葉

  ★福島の責任取らず蝉の殻

 

              (福島県伊達市)佐藤 茂

 

             

 

 

 蝉落ちて地は喝采の蟻の列 

                (東京都)朝田冬舟

 

 「おーい、ここにも落ちているぞよー」と発見蟻は仲間に蝉の骸の在

 

りかを伝達。それを聞いた蟻は「喝采、喝采」(と称呼し合って)「仲

 

間と行くべえ」と骸解体と輸送チームが編成されて、延々長蛇の列が出

 

来た。

 

 

 吾の腎ひとつ親父に返し夏

 

               (河内長野市)西森正治

 

 親父が腎を損ねた。透析にならぬためには生腎を供給してやらねばな

 

らない。市場で求めるわけにはいかないから、供給先は限られる。家族

 

または親族の中から健康な個体を保持している人が提供者候補としてリ

 

ストアップされる。人は自分の臓器を進んで他人に提供するいわれはな

 

い。人の臓器は(全てがそうではないが)万一の際に備えて、自らの命

 

を繋ぐために代替できるようにスペアが用意されている。

 

 息子の我、考えてみれば、その臓器は父母の臓器から出来ていると言

 

えなくもない。白羽の矢が立つのは致し方ない。そこで、予備の一つを

 

父に差し上げることにしようと、渋々納得した。今年の夏はその儀式が

 

行われた記念すべき年となる。

 

                ■ 続く → NO.370-2

 

 

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       22-151105 からすうり    酒井 健 

 

 

              (2017.10.01)  

 

 

 

 

 

 

 


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370-2  合歓の花暮れ逝く山を優しゆうす [文芸(短歌・俳句) 時事]

 

 随想コラム「目を光らせて」NO.370-2「朝日歌壇・朝日俳壇から」

 

 

       俳壇 期間 2017.731

 

  

       合歓の花暮れ行く山を優しゆうす

 

     題 目:

     朝日新聞(201.31)(尼崎市)田中節夫入選作。

               

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  8月22~23日、妻と娘と3人で伊香保温泉「福一」に一泊旅行をした。車を買
  い替えたのでお披露目したい、どこか温泉に行きましょう、というので、伊香保の
  「福一」に宿をとった。当日は気圧配置が乱調で、夕べにかけて雹も混じるスコー
  ルに襲われて、榛名神社や榛名湖の散策はままならず、雷雨の中をほうほうの体で
  宿の車寄せに駆け込んだ。雨にたたられて広いロビイも閑散としていた。
   宿はつい最近大幅に改装したとかで、一流ホテルのたたずまい。連れもこれには
  予期しない思いであったらしい。翌日は一転快晴に恵まれ、伊香保近郷の名所の幾
  つかをめぐった。この日は甲子園の野球決勝戦の日。埼玉代表が勝利したので、幾
  たび快哉を叫んだことか。
   文中に、立ち寄ったいくつかの写真を載せる。おいしいうどんをてんぷらなしの
  大盛りで賞味した。                    アオウヒコ

   

          朝日俳壇 2017.7.17

            

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秋近しを思わせる花活けが垂直に立っている

                

 

  

   諷詠の行き着く先は遍路かな

 

                (藤沢市)細井華人

 

 家に籠って短歌や俳句を作るとなると、題材が限られて優れた作品に

 

仕上げることが難しくなりがち。となると、外に出かけて新しい風物や

 

人物に出会えれば、新しい道が開けるのではないか。そうだ、あの空海

 

の修行の遺跡である四国八十八か所の霊場を巡拝する「遍路」。あのお

 

遍路さんになるのも一案だぞ、と思い巡らしている。

 

 

   存(ながら)へて煮たり焼いたりなすびかな

 

                     (岐阜市)阿部恭久

 

 永らえるためには日々の食事が大切だ。夏の野菜の茄子など、煮たり

 

焼いたりしてよくたべてきたものだ。これまで永らえてきたのはなすび

 

であるとすれば、これからもなすびからは離れられそうにない。

 

 

 

   かつて男かつて女の夕涼み

 

                (福岡市)杉野順子

 

 かつてお互いに若い頃、とある男と女がどこかで夕涼みをすれば、何

 

かがきるよと蔭口された。だが歳月を経て、共にかつての若さを失っ

 

た男と女が夕涼みに出ても、心配ない、何も起きないよ、と断じられる

 

のはことのほか淋しい。かといって、それになんら反論しないと言うの

 

は、かつて男かつて女の沽券にかかわるじゃありませんか。ここは一つ

 

涼しい中に二人の熱さを冷ます寄り道もいいじゃありませんか。

 

 

               

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水沢観音は多くの信者を集めている

 

 

 

   風鈴に深き眠りのありにけり

 

              群馬県東吾妻町)酒井大

 

 風鈴屋が修羅を尽くして作ったという風鈴を一個、店で贖い、庭の廊

 

に吊るしておいた。風鈴は風立つにつれ、おしゃべりや囁きまで、それ

 

なりの音を立て、私の耳元にとどけてくれた。

 

 あるとき、風はあるのに風鈴の音がしない、鳴らない時があるのに気

 

付いた。妻が亡くなって暫らく経った午後のことだった。いつもは微風

 

を受けても、風鈴は鳴った。台風前夜にはそれこそ気忙しく鳴り響いた。

 

その時に気付いた。風鈴の音を介して妻は私と話しをしている。私を見守って

 

いる。風鈴の音は彼女の声だった。

 

 今、そよ風が流れる初夏の昼過ぎである。風鈴が鳴らない。鎮まって

 

いる。遠い空を見上げて、「そうか、何かと忙しいらしいな。今は午睡

 

を取っているらしいな。こちらの風鈴に深い眠りがありましたよ。大切

 

な午睡だ、そっとしておきますよ。心行くまでまどろみたまへ。

 

 

 ★難民を乗せきれぬ船天の川

               (川崎市)多田 敬 

 

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      この観音像の台座を、信者は取っ手を押してぐるりと回したようだった。  

  パソコンを脅かすものはたたがみ

                (東京都)藤森荘吉

 はたたがみ; 霹靂神。ハタハタガミの約。はたたく雷。(広辞苑)

 一天俄かに黒雲現れて、沛然たる豪雨のなかに走る稲妻、轟く雷鳴。

このようなとき、パソコンを操るご仁は何をなすべきか。それは電源を

切りなさいである。そのままにしておれば、雷神の落下によって、パソ

コンやTVに支障が出る惧れがある。はたたがみ(霹靂神)にご用心、

と云われている。

 

  手で掴みとれさう鮎の瀬を探る

 

                      (浜田市)田中青龍

 

 渓流の岸近くに瀬があり、底近くに鮎が多数群れている。手掴み出来

 

そうな鮎の群れ。さすがにそれは出来ぬので、やおら短い鮎竿を出して、

 

瀬を探ってみるか、と楽しさ一杯の鮎師ひとり。

 

 

 

         朝日俳壇 2017.7.24

 

 

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         おみくじには 汝の運勢「広大無辺」なりと書いてあったのかも    

 

 

 

  田も山も昼寝してゐる小さき村

 

              (松戸市)をがわまなぶ

 

 多くの人がいつも行きかう都会の住人が、人口疎密な田舎を訪れて感

 

じることは、人がいない、姿が見えないことに驚きを感じるようだ。

 

「どうしたの、皆昼寝をしているの?」と感じるらしい。鶴瓶の家族に

 

乾杯(NHK)などで、無人の家並みを人を求めて歩き回るシーンによ

 

く出会う、それがこれだ。

 

        

 

  ★敗戦の一句八十一の夏

 

             (川崎市)池田 功

 

    いづれの日にか国に帰らむ生身魂              

 

             豊橋市)河合 清

 

  人魂のやうに鵜篝現れし

               (岩倉市)村瀬みさを

 鵜飼のシーズンには、篝火を舳先に着けた鵜匠の舟を見るために出す

 

涼み船もある。川の中ほど岸に錨を入れ酒食の饗応を受けるうち、日は

 

っぷりと暮れ、川面も暗くなる。そこへ上流から鵜飼舟が姿を見せる。

 

ちょうど人魂のように鵜飼の篝火が見えてきた、とその感懐をのべてい

 

る。さあ、これから鵜匠に細引で操られる鵜が篝火に寄って来る鮎めが

 

けて潜るページエントの始まりだ。岸に舫っていた涼み船もやおら、人

 

魂の方に魅かれていく。

 

 

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 香煙は絶えず立ち昇る。線香に火を点けるタドンコンロの備えもありて

                

 

 

   あの岩に新たな鮑毎年よ

            (長崎県小値賀町

 海女たちが苫屋で、潜った漁場の様を話題にしている。あの岩へ行け

ば、大きな鮑に出会うのよ、それも毎年よ。「それどこ、どこ?」と他

の海女が訊くこともなく、プランクトンに恵まれた豊かな 漁場で

 

   鵜篝や悲しきことを美しく

                 (向日市)松重幹雄

 鵜の立場からすると、篝火に集まった鮎めがけて潜り、口に咥えても

匠から細引きを手繰られて、喉をクイッと抑えられれば口腔内の鮎を

出さずにはおられない。その悲しい繰り返しである。しかし、観光

客のには外から鵜篝は川面に映えてとても美しく見える。

  ★昼寝覚め子に赤紙の来てをらず

 

               (前橋市)荻原葉月

 

 

  忘るるは呆けるに非ず只涼し

 

               (高崎市)山本春樹

 

 高齢になると、何かと物忘れするようになる。人はこれを「呆け

る」というようだが、そうじゃありません。ただ、頭の中の風通しが良

くなったというか、涼しい感じはしますね。

 

  入選の一句記せる扇かな

 

                (伊万里市)田中南国

 

 「素敵な扇子をお持ちで」と声が掛かる。「お気付きでしたか」と誘

うと「賛がありますね」と顔を寄せてくる。「これこれしかじかの俳壇

コンテストの入選句ですよ」「ほう、達筆でもいらっしゃる。なんて書

いてあります?」「入選の一句記せる扇かな・・・ですよ」「おー、こ

れはたちまち涼しくなりますね。」と、判っているのか、ないのか。

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水沢観音は近時の彫琢か、どれもこれも美しい

               

  ★核なくせ灼けて丸山定夫の碑

            (相模原市)柴岡友衛

 

  ★ヒアリ来る地球はますます炎えてくる

            (横須賀市)友松 茂

  ★政(まつりごと)泰山木をひと目見よ

              (東京都)三輪 憲

  ★撤回の言葉に落ちよはたた神

                (東京都)無京水彦  + 

 

        朝日俳壇 2017.7.31

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    この辺り豪勢な造りの「水沢うどん」店が櫛比しメニューも多彩、姸を競っている。    

 

    空蝉や人は脱皮を繰り返し

              (本巣市)清水宏

 いいですか、蝉はただ一回だけ脱皮して生涯を終える。それにひきか

え、人はどうでしょう。何度も何度も飽かず繰り返して脱皮し続けじゃ

りませんか。覚悟を決めなさい。蝉に倣って。ああ、その日から地球

の殻の表面には脱皮し損ねたヒトの骸、空蝉ならぬ「空人」が累々、延

々と転がっているでしょうね。

  雷神に鯱(しゃちほこ)喰われ犬山城

               (尼崎市)橋本絹子

 

 犬山城のてっぺんに据えてあった鯱に雷が落ちて損傷した。雷神に喰

われた、ともっぱらの評判です。

   蝉生る白き天使のごとき翅

 

             (泉大津市)多田羅初美

 

 夏の朝か夕刻、7年間の地中生活を経て、ようやく地球の表皮に這い

上がった土蝉(幼虫)はそこらの樹木や建物など足がかりの良いものに

足爪を固めて晴の脱皮作業を開始する。この場面に出合った人は蝉の生

命誕生の神秘に触れて、脱皮が終わるまでそこから離れがたい時間とな

る。脱皮の仕上げは折畳まれていた弱弱しい翅が地球の涼風空に触れて、

第に伸びてシャンと硬まるまでの過程。天使のごとき翅が讃嘆の境地

へと誘う

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       天麩羅の奥の三角笊に盛られているのが水沢うどん。太い。     

 

   合歓の花暮れ行く山を優しゆうす

                  (尼崎市)田中節夫 

 この合歓の花が咲いていなかったならば、この暮れ行く山に何の取

も趣向もなかった。この合歓の花が何でもないこの山を優しい雰囲気

包み込んで行ってくれた。短形文字による表現の一つとして、この「優

しゆうす」の包容力の大きさには、比類なき洗練された表現として記憶

されていい。やさしくて柔らかな京言葉のどこかに通じるものがある。

 

   雨の日の棺にひとつパナマ帽

                  (明石市)江尻順子

 

 葬儀ががあって、出棺前の故人とのお別れに、お花を供えに近づかれ

たのであろうか。ふと見ると、お棺の中にパナマ帽がひとつ入れてある

その日は生憎雨の日の葬祭だったが、雨が上がったら、これをかぶって

元気だったころのように、都会の鋪道や野山を闊歩して頂戴とするのだ

ろう。モダンなお人だったようだ。

 

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榛名神社の山門。これをくぐって、まもなく、雷雨になり、車に戻った。

                     

 

  冷酒(ひやざけ)と冷酒(れいしゅ)の違い談論す

              (横浜市)犬山達四郎

 酒飲みはいろいろな趣向で酒を嗜む。「熱燗にしますか、温めのお酒

にしますか」の対極は何もしないお酒(ひや)であり、常温の酒を指す

冷酒は仕込みの過程はさておき、物流に乗る時点から店頭で酒飲みの手

に渡るまで、冷蔵環境の内に収蔵されるため、その分コスト増。冷蔵の

手間がかかる分販売価格は割高になるようだ。

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欄干の下を流れる細流がみるみる膨れ上がって渦巻いた。

 酒飲みは自分の飲み方が一番と思っているが大吟醸を熱燗で飲む酒仙

もいて、酒席での酒談義などいい加減なものだ。酒を楽しむ方法の粋は

純米酒以上の酒を買い、徳利でもいい、ガラス器でもいい、小分けして

氷を水に入れた桶(容器)に突っ込んでキリキリに冷やして、これまた

冷やしておいた酒盃で飲む。これに勝る飲み方はないだろう。

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            14-150802 スイス ベルン

                  ピンク薔薇  酒井 健 

 

               (2017.10.01)

                  


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369 こでまりの花咲く寺のやさしさよ良寛禅師の眠る墓訪ふ [文芸(短歌・俳句) 時事]

 


     

     随想コラム「目を光らせて」NO.36 「朝日歌壇・朝日俳壇から」

 

        歌壇 期間 2017..2

 

  

           こでまりの花咲く寺のやさしさよ良寛禅師

 

   眠る墓訪ふ

 

     題 目:

     朝日新聞(201.5)(越前市)内藤丈子入選作。



                アオウ ヒコ

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     洋画家 青沼茜雲 の作品集から。 32. 「いにしえの夢」

          フランスサロン・・トンヌ会員

          ・ノーベルノルウエー財団認定作家     

          ・世界芸術遺産認定作家

 

         ・日展所属  

 

 

                       

       「朝日歌壇・朝日俳壇から」 

朝日新聞の歌壇・俳壇の入選作の中から最新の世相を鋭く切り取った作品

 

を新た選び、コメントを付けています。コメントは文芸上の範を超える

 

ことがあります。作品の頭に印が付いている作品は、時の政権が推進

 

る前のめり右傾化路線平和憲法を無視し、国会の存在をないがしろに

 

するさまを危惧する市民の投稿になるものです。これらの作品は、ここで

 

は個々の作品の文芸上の軽重を問うことなく、注目すべき最新の世相を凝

 

縮した作品として、そのすべてを採録しています。

 

 これらの作品に対しては、投稿者の真摯な叫びに読者の耳、素直に従

 

べしとして、コメントはつけておりません。

 

 また、文中敬称は省略しております。(筆者)

 



      朝日壇 2017

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  8月23日、伊香保温泉の帰りに「ハラ ミュージアム アーク」へ立ち寄る。

  今回 NO.369で紹介するのは広大な敷地に建つ美術館の点描です。

                                                                                                                                                                                                                   

   抱き収め君のお骨を膝に置くみどり明るき納骨への道

  

               (三島市)渕野里子

             

 これであなたとは「抱き収め」になりますね。納骨式が終われば後は

 

お墓への納骨、安置になりますからね。膝の温みはこれっきりですよ。

 

車の外を見ると、街路樹は新緑に明るく萌えていますよ。きつい病との

 

明け暮れに、よく頑張ってくれました。私も、ちょっとほっとしてまし

 

てよ。めそめそしないで、明るく生きていくつもり。

 

                                                    

みんなみへ兵の慰霊に来るたびに木彫りの像買う父だと思い

 

             (富士吉田市)萱沼勝由

 

 

 田沢湖におかえりなさい西湖より風光る日にクニマス帰る

 

                (男鹿市)三浦善隆

 

 東北のいくつもの湖では昔から魚が棲まず、これを何とかしようとす

 

る試みがそれぞれになされてきた。よく知られているのが十和田湖養魚

 

の開発者和井内貞行(18581922)によるヒメマスの養殖の成功。一方、

 

田沢湖にはクニマスが棲んでいたが湖に酸性河川水が流入して1940代に

 

絶滅。以後西湖でクニマスの生存が報道され、田沢湖への帰還運動が

 

されていたのか。

 

 どうやら、その帰還運動の実が結び、田沢湖にクニマスが戻ったよう

 

歓んでいる。その日、田沢湖の地元では「クニマスおかえり」「西湖

 

ありがとう」と歓迎一色であったようだ。

 

 

 

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避難地に移転六年閉校とふ母校のニュース訃報のごとし

 

                   (水戸市)紺野告天子

                                                              

 

リハビリの発声にふと言いてみぬ「九条守れ」と験すが如く

 

              (東京都)丸木一磨

 

                                                                           

   はつ夏の若葉かがやくバス停にスマホと同じ数の黙あり

 

              (垂水市)岩元秀人 

 

 初夏のバス停。新緑の中にバス待ちの人が集まっている。昔なら挨拶

 

や世間話に少なからず花が咲いたであろう。だが、バス待ちの客は黙し

 

たまま。手にはそれぞれスマホを持っている。

 

             

 

  辛い時悲しい時も堪えられるうれしい時は友と飲みたい

 

              (三郷市)木村義煕

 

 長いあいだの修練によって、大抵のつらさ、苦しさには他人に知らせ

 

ることもなく、堪えられるようになった。それはまかしておけである。

 

だがなあ、うれしいことができた時は心打ち解けた友人と酒を飲みなが

 

ら話したい。こんなことがあってなあ、この喜びは君にも分けたいのだ。

 

 

 

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  ゆうぐれをおいかけるうち子供らは老いと向き合う年齢となる

 

              (尼崎市)ひじり純子

 

 それは確かにそうだが、幼気な子供たちに、その事実を知らせてどう

 

なる?である。人の一生は短いことをこれまでに古今東西の学者や識者

 

が箴言を重ね、警告を発して来ている。だが、これは蛙の面に水で、い

 

つ本人がそれを感じ取るようになるかは千差万別。早く知ってどうする

遅く知ってどうなる、である。夕暮れを追いかける子供に「時の歩みは

 

早いから」と諭しても「ボクの夕暮れ追いかけっこの速さとどっち?」

 

とちゃかされるがオチであろう。

 

                   

                            

 

 四人の子あれば四人の名を呼ばむ臨命終の時の来たらば

 

             (三原市)岡田独甫

 

 誰を最初に呼ぶか、順位はどうする、程度のことを考えておられるよ

 

うだ。だが、今は四人の子が揃って同時刻に顔をそろえる可能性は低い。

 

また臨命終が来た老衰の極者が前もって考えた口頭での遺言を順序立て

 

て、その場で行いうるか」となると、甚だ疑問である。このために通常

 

作成されるのが「遺言」である。臨命終の内容を前もって盛られたし、

 

である。そうしておけば、いかに老齢極に近く呂律回らずであれど「じ

 

ゃ行くよ、さらばじゃ ありがとう」くらいは口頭でしのげるだろう。

 

 

                 

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 亡き妻のベッドをそっとふりかえる静かな静かな春の夕暮

 

             (さいたま市)阿曽義之

 

 ああ、あそこにいたんだよなあ。今はいない。でも、あそこにいたん

 

だよな。音のしない静かな春の夕暮れに、またしても、妻のベッドを見

 

ためにここを訪れては、静かに納得する。そして、出るときにそっと

 

り返る。いないのは判っているのだが、どうしても振り返る。居てく

 

れたらいいのになあ。

 

 

  的の基地からおよそ五十キロホトトギス鳴く原発予定地

 

                       光市田中 径

 

 

 弾道ミサイル落下時の行動Q&A岩国市報に挟まれ届く

 

             岩国市)木村桂子

 

 

 上空を飛行機雲が交差して共謀罪強行採決の朝

 

          (北広島市)岩瀬義丸 

 

 

 まっ先に狙われるのはほんとうのことを言う人、NOと言

 

  う人            (佐渡市)藍原秋子

 

                                                                                                                                                                            

  焼夷弾で右手を火傷せし伯母の長き戦後もホームに終る

 

               静岡市)堀田 孝

 

 

 

 

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  こでまりの花咲く寺のやさしさよ良寛禅師の眠る墓訪ふ

 

               (越前市)内藤丈子

 

 

 もうこの頃では良寛禅師のお墓詣でをする人はごくごく少なになった

 

ことだろう。だが、良寛の遺徳を偲ぼうとするひとと、まだ覚えてくだ

 

さっているとは、ほんにほんに恐縮至極とする人との交歓が白い小さな

 

こでまりの開花に誘われて。

 

 

  五限目の授業終えたりただ一人頷きくるる生徒を杖に

 

               (可児市)前川泰信

 

 余りバカ受けする授業とは縁のない教師のようだ。今日最後の授業と

 

もなれば、疲れも来るし、早くベルが鳴らないかとする生徒たちの顔が

 

チラチラする。中に一人、頷きながら真剣に授業を聞いて呉れて居る生

 

徒を杖に何とか授業を終える。

 

          

 乳牛の乳房の太さ搾らねば死ぬとう乳房のそのあたたかさ

 

              (佐世保市)近藤福代

 

 これは実際に搾乳を経験した人ではないと、わからない。これを、人

 

の手で搾れというのは実際には酷な仕事であろう。搾乳機を差し込んで

 

スイスイびゅうびゅうとやれば、みるみる乳房はちいさくなるのだろう。

 

 

 

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    もの言わぬ国民なれどもの言えぬ国になりてしまわぬ

 

  ように         (埼玉県)島村久夫

 

 

 「ちょっと来い」呼ばれて初めて分かるだろう「共謀罪」

 

  の空恐ろしさ      (鎌倉市)佐々木 眞

 

 

 歌壇欄も目を付けられておらぬかと恐るる時の来るを

 

  恐るる         (熊本市)垣野俊一郎

 

 

 あぐらかき自浄能力なくせしか森友出ても加計が出ても

 

              (千葉市)鈴木一成

 

 

 ★九条は死文となりてこの国は核に呪われ核に死すかも

             

              (銚子市)網中章夫

 

 

 国民は共謀罪で監視されマイナンバーで括られている

             

               (三郷市)木村義煕

 

 

 

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              つづく → 369-2

 

 

                                                           (2017.9.15)

 

                   

 

 

 

 


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369-2  何の咎の鰯にありやひとつらの<目刺し>に海の群青にじむ [文芸(短歌・俳句) 時事]

  随想コラム「目を光らせて」NO.36-2 「朝日歌壇・朝日俳壇から」

 

      

   何の咎の鰯にありやひとつらの<目刺し>に

 

   海の群青にじむ

 

 

 

                                                                            

       日歌壇 2017.6.19

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 *何の咎の鰯にありやひとつらの〈目刺し〉に海の群青

    にじむ  

               (宝塚市)櫂 裕子

 鰯は海中では個々に生きようとすれば、簡単に捕食されてしまうこと

 

を知っているのか、海洋では多くの仲間が集まり、巨大な塊状の集合体

 

として、上下左右に常に移動、捕捉を狙う鯨や鮫の攻撃に出会っても最

 

小の犠牲で終わるノウハウを確立している。だが、ヒトの知恵に抗しか

 

ね、鰯は塊のまま網でそっくり捕捉されて、ここに無残な眼貫ぬきの極

 

刑として天日に曝されている。そうです、鰯に何の咎がありましょうぞ。

かわいそうにね、と悼んでくれる女系のヒト一人。かの人は一串に連な

 

る目刺しの鰯連に海の群青が残っていますね、と優しげに。

 

            

 

「沖縄の平和運動が真っ先に」と共謀罪を憂ふ意見書

 

               (長野県小林正人

 

 

どうせ駄目 そう言はれてもデモへ行く集会の隅 ひとり分

 

 の声             (長野県)千葉俊彦

 

 

あの行進膝にはよくないだろうなあ北朝鮮の軍事パレード

 

               (大和郡山市)四方 護

 

 

                            

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 ロボットがときどき歩くことがあるつくばの道を行く

 

 我はヒト

             (さいたま市)大久保 歩

 

 

 日本が主として日本の理系の頭脳の精髄を集めて作った学園都市「つ

 

くば」順調に育っているようだ。当時の男女が結婚して生まれた子が双

 

親譲りならぬ超えた才能を持つことが分かって、将来が楽しみだとする

 

見方もある。つくばの道を歩いているとき、やおらロボさんが近づいて

 

きて、「筑波とつくば、どう違います?」と訊かれる日もそう遠くはな

 

い。「それはよ、あんた、かんじとひらがなのちがいよ」とでも答えよ

 

うものなら、「あんたいうんはあっしのことかいね

。ほい、ほい。あん

 

たの返事はな、それにしてもまっとうな返事にゃなっておらんがの。ま

 

あまあ、ヨカタイ。ヒトさん、またたのんまっさ」とヒトさんがロボさ

 

に凌駕されるの図。まあ、我はヒト、俺はヒトと威張りくさることは

 

いが、俺には絶対にロボさんに負けない、凌駕されぬ分野をもちたい

 

のだ。なあ、ヒトさん、どうかの? つくばの道を歩くヒトさん。

 

              

鳩が鳴き蛙が鳴きてヤギが鳴く平和なりけり鳴き声とふは

 

            前橋市)荻原葉月

 

 

 

 

 

       朝日歌壇 2017.6.26

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ゆるゆると人に近寄る戦車見つゆるゆると寄るものの

 

 こわさよ        

            (水戸市)中原千絵子

 

「国民の選んだ政治家しかいない」日本国民黙すほかなく

 

              (霧島市)久野茂樹

 

 

 

 死なせない死ねない時代たらちねの母の呼吸器はずす

 

 夜明けよ         (東京都)無京水彦

                   

 これは「後悔先に立たず」の格言そのもの。20年前に医者に「でき

 

るだけ延命させてつかわさい。」と言ったばっかりに。まさか20年も

 

いのち永らえるとは。だれにでも来る、看取りと看取られ。ここは自然

 

体のイノチへの対処をなされるが大切。その夜明けを後悔なく迎えられ

 

るように格言は喝破している。

 

 

 和太鼓をどんどんカッカと打ち鳴らす白人女性は八十歳とや

  

          (アメリカ)古田パーキンス和子

 

 日本だけじゃない、アメリカにも元気な白人女性がいますよ。体格が

 

いいものだから鳴り響いてね、和太鼓のどんどんカッカが。

 

 

 

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あったことなかったとせし歴史ありたわやすからむ書類

 

 くらいは       (水戸市)中原千絵子

 

 

 弔電を送った後に遠くまで歩いて歩いて偲び続ける

  

          (綾瀬市)小室安弘

 

 あのひとがなくなった。遠方だから、葬儀には出席ができない。こう

 

いう時、とりあえず弔電を打つ。近くの郵便局まででかけて、ありきた

 

りの文面の弔電をうつ。それから歩く。長く歩く。かの人との交友の一

 

つ一つを思い出しては、偲び続ける。あの時、こう言ったが、気を悪く

 

したのではないか、もっとはっきり謝った方がよかったなあ、など長い

 

間のことを歩いて歩いて。

 

 

 ★KYは空気を読めぬ略といふ読み過ぎたればST(忖度)

 

  となる        (村上市)鈴木正芳

 

 

 

 

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                          (2017.9.15)

 

                   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                        

 

 

 

 

 

 

 

 

 

         

 

 

 

 

 

 

 

 

                   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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